北村からのメッセージ

 第98回(11月16日) 新潟中越地震 評価高い自衛隊救援

 10月23日に発生した新潟県中越地震は、ようやく余震が収まり、電気、水道、ガスなどライフラインの復旧が急ピッチで進められています。被災した37市町村約10万人の皆さんには心からお見舞い申し上げます。どうか、襲い来る豪雪に負けず厳しい冬を乗り切り、復興に立ち上がって下さい。地震発生わずか7分後に出動した陸上自衛隊の諸君の救援活動は、山古志村約1千7百人の全村避難や救援物資のヘリ輸送、テント設営などで被災者に深く感謝されました。防衛庁長官政務官の立場からも深甚の敬意を表します。私は県議時代に長崎大水害や雲仙・普賢岳噴火、衆院災害対策特別委員としては三宅島多発地震の視察など、多くの自然災害と取り組んできました。だが、今年ほどの大規模な台風、豪雨、地震災害に見舞われた年はありません。私は豪雪地帯・中越の民生安定のため、陸自東部方面総監部(東京)の第一線諸君とともに防災活動に励む傍ら、国会では激甚災害の指定、阪神大震災と同様に道路・住宅・砂防の復興、生活再建支援の特別措置法の制定、列島災害の救援活動を重視した防衛予算の獲得などに力を尽くしたいと考えています。

 寒空に震える被災者多数

 気象庁によると、震源地である新潟県川口町の震度計は、阪神大震災(1995年1月)以来2回目の、震度最高「7」を観測していることが分かりました。震度7はほとんどの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する揺れとされています。震源地に近い小千谷市や隣接市町村では、倒壊家屋の下敷きになったり、長引く避難生活の疲労やストレス、狭い車中泊などで静脈に血の塊が出来る「エコノミークラス症候群」などによる高齢者の「震災関連死」を含むと、地震の死亡者は38人、負傷者約2千2百人(10月末現在)を数えました。ラッキーにも上越新幹線が脱線だけで惨事を引き起こさず、2歳男児が4日ぶりに救出されるという奇跡も起こりました。豪雪地帯で住居の梁が太く耐震構造がしっかりしていたこと、火災が少なかったことも阪神大震災に比べ死傷者が少なかった要因で、不幸中の幸いでした。しかし、学校などへの避難者は震災直後の9万9千111人を最高に、避難解除後も約6万8千人が仮設住宅の建設を待って寒空の下に震えています。

 心強い自衛隊に救援活動

 そうした中で、被災者にとって何よりも心強かったのは自衛隊の救援活動でした。10月末現在の自衛隊の派遣規模は、人員約3600人体制(1日当たり最大は4067人)、炊事車165両を含め車両約千両、ヘリ約20機を含め航空機約80機で、宿泊用テント2千張り、乾パン・非常食など救援物資も提供しています。自衛隊は被災地での活動の重点を、当初の被災者救出・避難から給食・給水、入浴など被災者の生活支援に移しました。今回の活動では、発生直後に積極的な初動対応を展開、自治体と緊密な連携を取るなど、過去の教訓が生かされました。阪神大震災では、兵庫県知事からの災害派遣要請が地震発生から4時間後と遅かったため、自衛隊の出動が遅れる原因となりました。阪神では兵庫県担当の陸自中部方面総監部が全隊員を1時間以内に集める「第3種非常勤務態勢」を命じたのが、地震発生44分後。情報収集のヘリが離陸したのは1時間28分後と、初動が遅れました。このため、阪神大震災後の95年10月に防災業務計画を見直し、震度5以上の地震では各部隊が自主的に情報収集活動を行えるように改めるなど、自衛隊法の自主派遣の基準を明確化しました。新潟中越地震では、その成果が十分に現れています。

 ヘリ暗視装置で映像生中継

 今回の地震発生は23日午後5時56分でしたが、東部方面総監部は7分後にすかさず「第3種非常勤務態勢」を発令。新潟県を警備区域とする第12旅団(群馬・相馬原)と、高田駐屯地の隷下部隊・第2普通科連隊(新潟・上越)、第30普通科連隊(同・上越)などの部隊に出動を命じました。各隊は午後7時45分までに被災自治体の対策本部などに向かい、12旅団長を指揮官に、作戦指揮所を新潟県庁の対策本部に設置し、発生36分後には映像を生中継できるヘリが離陸しました。新潟県知事から午後9時5分に出された要請は、災害派遣では異例の「情報収集」でした。12旅団が大小20機のヘリコプターを運用する空中機動旅団であり、夜間にヘリを飛ばして隊員が暗視装置で情報を収集するという部隊の特性を、県が熟知していたことが、「情報収集」要請に繋がったものです。ヘリは23日夜、暗い山間地から収拾しにくい様々な被災情報を集めました。

 月末まで約19万食と給水支援

 翌24日は山古志村の全村避難民のヘリ輸送、25日以降は支援物資のヘリ輸送や炊事車による給食支援を始め、27日までに食料計47万食と毛布計3万9千6百枚を輸送、10月末までに計約18万6千食を提供しました。220人の隊員で1日に合計1万8千食を炊き出せます。炊事車165両、水トレーラー148両で給食・給水支援を行いました。27日からは被災者用の野外入浴セットを16個、水タンク車8両を稼働させ、テント内に4メートル4方の浴室を3つ設営、初日は千人、29日は1360人、10月末までに延べ2万3千人が利用しました。これらは阪神大震災を境に教訓を生かし、自衛隊と自治体が連携強化を図った結果によるものです。緊急時対応の東部方面総監部と新潟県など全国の共同訓練は、年間4百件を超すまでに急増、阪神大震災当時の3倍近くに達しています。今後も国民の期待に応え、初動体制重視の緊急救助計画を練り直しています。

 南関東発生時は阪神の6倍

 防衛庁はこのほど、マグニチュード7程度が予想される南関東直下型地震に備えた災害派遣計画案を策定しました。阪神大震災の被害状況分析を踏まえたもので、陸上自衛隊は地震発生から24時間以内に1万9千百人(従来計画は1万5千4百人)、72時間以内に7万3千3百人(同6万4千百人)の自衛官を投入し、最終的には阪神大震災の6倍の約8万5千人(同約7万人)で対応する方針です。このほか、海上自衛隊は人員約5千人、航空機約50機、艦艇約50隻、航空自衛隊は人員約5千人、航空機約75機を投入し、避難民の救助や救援物資・人員の輸送などに当たる計画です。これまで、被災地で活動する自衛隊の部隊としては、北海道旭川の第2師団(40人)、山形県東根市の第20普通科連隊(40人)、新潟県上越市の第2普通科連隊(225人)、長野県松本市の第13普通科連隊(200人)、栃木県宇都宮市の第12特科隊(180人)、大阪府和泉市の第37普通科連隊(60人)、福岡県春日市の第4後方支援連隊(40人)などがあります。

 自治体防災担当にOB隊員

 今回は第2普通科連隊が大活躍しましたが、いずれも十分な訓練を積み、専門知識を備え、人脈を生かせる、防災のマンパワーです。読売新聞によると、「阪神大震災後、防災担当者として退職自衛官を採用する地方自治体が増加している」そうで、大変喜ばしい限りです。同紙は、「今年9月末現在、退職自衛官は1都1府23県17市の防災・危機管理担当部局に49人が在籍している。阪神大震災の翌年の96年4月に、元1等陸佐が静岡県の情報防災研究所に入ったのが最初だった。阪神大震災では、自治体と自衛隊の連携のまずさが目立ったため、防衛庁は地方の各部隊や各都道府県の地方連絡部を通じて、自治体との連絡体制を強化。自治体側でも、防災や救出活動に詳しい人材を求める声が上がった」と伝えています。99年以降は退職自衛官を採用する自治体が増えていますが、特に今年6月に成立した国民保護法で、各都道府県、市町村に「国民保護計画」の策定が義務づけられたため、今年は24人が自治体の防災・危機管理担当者に採用されています。

 イラク派遣延長に赤ランプ

 政府が年内に策定する新防衛大綱の中では、4本柱のうち、@テロや弾道ミサイルなど「新たな脅威」対処の防衛力整備A国連平和維持活動やイラク復興支援など国際的な自衛隊活動の法的地位確立――が重要視されています。自衛隊によるイラク・サマワでの人道復興支援は地区住民に深く感謝され、イラク暫定政府から高く評価されています。ところが、12月14日に期限切れとなる自衛隊のイラク派遣期間の延長問題に赤ランプが灯っています。「自分探しの旅に出たい」などとのんきにバグダットに潜入した福岡県の青年が、武装集団に斬首・殺害されて、野党が自衛隊派遣の延長阻止、即時撤退を唱え出したからです。小泉首相は「残虐非道な行為に改めて憤りを覚えるが、自衛隊派遣の延長には直接影響しない。日本として出来るだけの支援はしなければならない」と派遣延長の決意を表明しています。犯行グループは、ヨルダン人テロリスト、アブムサブ・ザルカウィ容疑者が率いる「イラク聖戦アルカイダ組織」で、冷酷無比なイスラム過激派のテロ組織。

 延長実現と予算の大枠堅持

 このようなテロ組織の犠牲にされたことは「痛恨の極み」(首相談)であり、ご冥福を祈りますが、反米、反イスラエルの人質獲得のため「外国人狩り」が横行する最も危険な場所に青年が足を踏み入れたことは、軽率な行動であったとの誹りは免れません。さぞかし、ご家族は無念でしょうが、純情青年の「自分探し」というより「墓場探し」の無謀な旅であったように思われ、残念でなりません。そうした中で、サマワの自衛隊宿営地にはロケット弾が撃ち込まれ、隊員の日常生活を脅かしています。自衛隊諸君はサマワでも中越でも、身の危険を顧みず、使命感に燃えて黙々と救援活動に従事しています。にもかかわらず、財務省は、来年度からの中期防衛力整備計画で、戦車や護衛艦など従来型の正面整備削減に加え、自衛隊の要員減らしなどを主張しています。私は、危険地域で活躍する忍耐強い隊員の崇高な精神に報いるためにも、予算編成では装備、要員ともに従来の大枠は堅持し、自衛隊派遣の延長は必ず実現しなければならないと肝に命じているところです。