北村からのメッセージ

 第97回(11月1日) 波乱含み郵政秋の陣 首相が宣戦布告

 第161臨時国会は、12月3日まで53日間の日程で開かれています。私は防衛庁長官政務官に就任したため、衆院予算委に公務で出席する機会が増えました。また、本会議場の議席も、本来なら当選3−4回生議員が居並ぶ、前から6列目の後段に移されました。与党執行部と打ち合わせる都合による移動ですが、諸先輩の間でいささか面映ゆい気分を味わっています。小泉首相は「明治以来の大改革」の郵政民営化を熱っぽく国民に訴えていますが、野党側は、「政治とカネ」に照準を合わせて攻め立てたほか、イラク大量破壊兵器の事実認識、北朝鮮の拉致疑惑などの問題を追及するばかりで論議はかみ合っていません。対決法案も見あたらず、緊張感は薄れています。しかし、首相が全閣僚参加の郵政民営化推進本部を発足させ、着々と郵政関連法案提出の足場固めに入ったことで、自民党内の反発が強まっています。中日ドラゴンズが優勝した年は政変が起きるとのジンクスがあります。首相周辺からは、ブラフ(脅し)的な「郵政解散」説が意図的に流され、不穏な空気も漂ってきました。政局は波乱含みですが、一層のご支援をお願いいたします。

 側近が郵政解散匂わす

 「皆さんの中にも消極論があるのは承知しているが、選挙公約ということをよく考えて欲しい。(公社の)40万人の役員集団に振り回されている政界を正したい。公務員でなければ郵便局の仕事は出来ないのか。こんなばかげたことはないでしょう。郵政民営化は私が首相でなければ議題にもならない。私が首相になってやっと進む」――。首相は10月5日、首相官邸で開いた郵政民営化推進本部(本部長=首相)の初会合で、全閣僚を見回し、内閣が一丸となって取り組むよう叱咤激励、協力を呼びかけました。これに先立つ自民党役員会でも、「反対ばかりでは困る。それで選挙が勝てるか」と党側を挑発し、夜になっても「外務省の大使館職員は5千人、自衛隊20数万人、警察官20数万人。何故40万人の公務員じゃないと郵政の仕事が出来ないのか」と記者団に繰り返しました。山崎拓首相補佐官も同日、「法案審議で反乱が起きるのはほぼ必定だ。最終的には衆院解散・総選挙の事態もあり得る」と福岡市の講演で語り、首相側近の中川秀直国対委員長もメールマガジンで郵政解散を匂わせました。5日は首相の「戦闘開始」宣言の日だったようです。

 識者会議を助言機関に昇格

 首相が推進本部で示した策定指針は、郵政民営化法案について@基本方針に忠実に作成A簡素かつ一貫性ある制度・法律構成にするB制度設計のプロセスを透明化する――の3指針です。下部組織には各省事務次官の「幹事会」を置き、政府一体の形を整えました。竹中平蔵郵政民営化相は、この指針をもとに内閣官房の「郵政民営化準備室」(室長=渡辺好明前農水次官)で関連法案を策定しますが、「郵政民営化に関する有識者会議」(長は置かず、金融や行革の有識者で構成)を同準備室の助言機関から同相の助言機関に昇格させ、週2回ペースで会議を開き、制度設計をまとめることにしました。策定案については閣内で意見を集約、与党との調整を行うことにし、今後の調整過程は国民に公開する方針です。推進本部の初会合では、竹中郵政民営化相が「実現に向け、身を引き締めて最大の努力をしたい」と決意を述べ、有識者会議と公社の協議機関を設置すると報告。麻生太郎総務相は「よりよい民営化実現のため、積極的に貢献したい」と協力姿勢を示し、谷垣禎一財務相も「納税者の負担に頼らず、自立できるような改革が重要」と発言しました。

 「急がば回れ」と首相を牽制

 首相は12日、衆参両院の所信表明演説で、@改革の本丸・郵政民営化の法案を次期通常国会に提出し、平成19年4月から実現するA郵政事業は40万人公務員でなければ運営できないのかB350兆円もの膨大な郵貯や簡保の資金が民間で効率的に使われるような仕組みが必要C全国津々浦々の郵便局ネットワークを活かし、より便利なサービスを提供、経営体質を一層強化するため民営化を進める――と郵政民営化の意義を強調しました。だが、各紙、テレビ各局の世論調査を見ても国民の郵政改革への関心は2−10%程度でしかなく、民主党の岡田克也代表は「郵政改革は日本が直面する課題の1つに過ぎない」と衆院代表質問で郵政偏重を批判、各野党の質問もどちらかというと、お手並み拝見の冷ややかな態度を示しました。むしろ、首相に手厳しい注文を付けたのは、自民党の片山虎之助参院幹事長(前総務相)。「(政府の基本方針は)問題点が少なくない。急がば回れと言うではないか。国民のためになる民営化なら賛成だが、そうでなければ考え直さざるを得ない。法案成立には与党の協力が欠かせない」と、参院代表質問で首相を牽制しました。

 政治手法に党内不満高まる

 これには首相も「忠告と激励を込めたご質問、ありがたい」とかわし、「与党とも緊密に調整して詳細な制度設計を取りまとめる」と述べたものの、「民営化法案は閣議決定の基本方針に忠実に策定する」と答え、大幅な修正には断固応じない姿勢を示しました。首相は郵政民営化を“踏み絵”にした内閣改造・党役員人事を断行、党の意向を無視して民営化の基本方針を閣議決定しましたが、こうした首相の人事、政治手法に党内の不満は一段と高まっています。郵政事業懇話会会長の綿貫民輔前衆院議長は「党に対する宣戦布告だ」と批判、野呂田芳成元農水相ら旧橋本派の同志とともに反小泉グループの「平成懇話会」(仮称)設立を目指しています。これには亀井派会長の亀井静香元政調会長も呼応しており、亀井、野呂田氏らは我が掘内派会長の掘内光雄前総務会長、高村正彦元外相、加藤紘一元幹事長ら各派閥の領袖クラスとの連携を模索、首相包囲網を形成しつつあります。

 「反小泉」の亀井氏ら新総務

 国会に法案を提出する際、党議決定する最終関門は党総務会(久間章生会長=旧橋本派)です。「反小泉」の笹川尭総務会長代理をはじめ、新総務メンバーには、昨年の党総裁選で小泉首相に敗れた亀井、高村両氏、藤井孝男元運輸相が顔を揃えたほか、郵政民営化慎重論を唱える村井仁・前党郵政事業改革特命委員長や民営化反対派が多く入っています。また、総裁選以来、小泉首相を支える姿勢を見せてきた青木幹雄参院議員会長も、首相が党の了承抜きに民営化の基本方針を閣議決定したことに怒り、「基本方針通りの法案なら、参院では反対せざるを得ない」と自民、公明両与党幹部の会合で語っています。青木氏は民主党参院幹部ともパイプがあります。民主党は郵便貯金、簡易保険の将来民営化の方針を決めていますが、同党内には郵政公社労組などの支援を受ける衆院議員を中心に90人を超す「日本郵政公社を発展させる民主党議員の会」という根強い民営化反対勢力があるため、参院での法案審議に影響行使の“含み”を持たせた「青木発言」は重たく響きます。

 3派領袖クラスが結束確認

 派閥横断的な「反小泉連合」は、十分な出席者が確保できなかったため、10月21日の結成は先送りしたものの、同日夜には綿貫、野呂田、亀井、堀内の4氏が都内のホテルで会食して改めて結束を確認、首相の政治手法に反対する立場で3派が連携を強化することで一致しました。掘内会長はその前日に都内で講演し、「首相は郵政民営化というものが何か分からないまま、本気で命がけでやろうとしており、ドン・キホーテを連想する。ドン・キホーテは真剣に命がけで水車小屋や羊の大群と一生懸命に戦った。よく分からない中でやらなくてもいい党との争いだ」と皮肉を交えました。その前にも大阪での講演で「今、首相として、国民のためにしなければならない重要な問題はいっぱいある。(首相と自民党の対立は)蝸牛角上の争いだ」と批判しています。掘内会長の真意は、反小泉感情ではなく「首相はもっとやるべき仕事に取り組んでもらいたい」という1点にあるようです。

 自民2長老が相反する論評

 中曽根康弘元首相は、第2次小泉改造内閣の枝振りについて先のテレビ対談で、「株式会社でなく、仲良しを集めた個人商店のような内閣に見える。総理は総合病院の院長であるべきだ。幹事長は“悪源太”のような清濁併せのむ厚みが必要」と論評。郵政改革については「私も電電、国鉄改革をやった。構造改革は必要だが道路、郵政は枝葉ばかりで骨格がない。瞬間タッチ、ポピュリズム(大衆迎合)政治で、世論を支持基盤としても反対勢力を作るだけ」と批判しました。逆に首相の指南番である松野頼三元総務会長は、「内閣支持率はなお50%前後ある。抵抗勢力が法案を阻止するには不信任案を出すぐらいの決意がいる。次期会長も決められない旧橋本派は“台風の目”とはなり得ず、他派も似たようなもの。参院が法案を阻止するシナリオも聞くが、首相のお陰で2001年以降の参院選に当選し、恩義を感じている議員が大勢いる」との趣旨を日経に語り、「1国会で郵政法案がすんなり成立しないかもしれないが、郵政民営化は実現する」と首相びいきです。

 郵政合同部会の活躍次第

 一方、森喜朗前首相は、来年の通常国会で郵政民営化法案が成立しなかった場合の衆院解散・総選挙について「当然想定できる。首相が自分だけで中央突破しようとすれば潰されるかもしれない。自民党は改革に及び腰だったということで、選挙に負けるだろう」と解散の危険性を指摘しています。自民党は10月8日、郵政事業特命委員会(村井仁委員長)の役割は終えたとして廃止、代わりに総務、財務金融、国土交通部会による「郵政改革に関する合同部会」(座長・園田博之政調総括副会長、村井氏は顧問に就任)を発足させました。同月15日の初会合では、出席議員から「内閣は郵政民営化を勝手に進めている。党に謝罪すべきだ」「議院内閣制である以上、政府が党に相談しない方が問題だ」など反発する声が相次ぎました。合同部会は、政府の基本方針に左右されず、週1回ペースで党の独自案を11月中に取りまとめる方針を確認しています。この合同部会が今後どのように暴れるかによって、「郵政秋・冬の陣」は様子が多少、変わってくるでしょう。

 常在戦場の気持ちで励む

 ところで、中日ドラゴンズが日本一となった50年前の昭和29年は、吉田茂元首相が造船疑獄で指揮権を発動、これに対する反発から内閣不信任案上程の動きが強まって総辞職し鳩山一郎内閣が成立。同49年のセリーグ優勝では、椎名悦三郎副総裁が「神に祈る気持ち」で総裁に指名して三木武夫内閣が誕生。同57年のリーグ優勝では、鈴木善幸政権の後継に中曽根康弘内閣が生まれるなど、政変が続いています。その後、昭和63年と平成11年に星野仙一監督の手で2度リーグ優勝し、63年夏はリクルート旋風が竹下登政権を激しく揺さぶり風前の灯。後継は翌平成元年6月の宇野宗佑短命内閣でした。だが、平成11年は、小渕恵三内閣が政権2年目の半ばで安泰でした。さて、今年はどうか。仮に「反小泉連合」が結成されても、かつて三木内閣を包囲し、退陣に追い込んだ挙党体制確立協議会(挙党協)のような勢いはなく、ジンクスは起きそうにもありません。といっても来年の風向きは読めず、私は常在戦場の気持ちで公務、政務に励んでいるところです。