北村からのメッセージ

 第96回(10月16日) 防衛大綱見直し着手 大忙し政務官

 防衛庁長官政務官に就任して以来、私は公務多忙の日を送っています。まず9月30日は、首相官邸で辞令交付後、小泉首相、細田官房長官を囲んで組閣時と同じ雛壇形式の記念撮影、続いて第1回政務官会議。10月4日の着任式は、あいにくの雨で儀仗広場が使えず講堂でしたが、栄誉礼のラッパで迎えられて精強の儀仗兵を閲兵。任務の重大さを感じ、身の引き締まる思いがしました。5日は早速、自民・公明与党国対委の役員会で、大野功統防衛庁長官に代わって、今国会に提出する防衛庁職員の給与改正法案について説明。台風通過の10日は、庁舎の屋上をヘリで出発、入間基地で輸送機に乗り換えて小牧基地(愛知県)を日帰り視察。長官に代わってイラクに向かう航空自衛隊員と家族を激励しました。わずか10間でもこのように大忙しの毎日ですが、大野長官と今津寛防衛副長官を補佐し、世界平和と国民の安全を守るために粉骨砕身の努力をしたいと考えています。政務官室は都心の市ヶ谷界隈を見渡せる見晴らしの良い11階。是非1度お尋ね下さい。

 「新たな脅威」対処の報告書

 さて、小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=荒木浩・東京電力顧問)は4日、国際テロや北朝鮮の弾道ミサイルなど「新たな脅威」に対処するため、多様な機能の防衛力確立を求めた報告書をまとめ、首相に提出しました。報告書は、8月16日付のホームページでも、論点整理の段階で詳報しましたが、@米同時テロを21世紀の安全保障の原点に見据え、防衛力整備の新たな概念として『多機能弾力的防衛力』を打ち出したA『国際平和協力活動』を自衛隊の本来業務へ格上げするよう求めたBミサイル防衛の日米共同技術研究の開発・生産段階への移行をにらみ『武器輸出3原則の緩和』にも言及した――の3点が特徴として挙げられます。政府はこの報告書を踏まえ、安全保障会議での議論を経て、新『防衛計画の大綱』(防衛大綱)を年末までに策定しますが、報告書には具体的な数値が示されていないため、防衛事務当局が新防衛大綱と新中期防衛力整備計画をどう肉付けしていくか。年内の策定作業は骨が折れることになりそうです。

 即応対処能力や情報収集

 報告書の第1部は【21世紀の安全保障環境】として、「01年9・11米同時テロ以来、国家からの脅威だけを安全保障の主要課題と考える時代は過去のものとなり、テロリストや国際犯罪集団などの非国家主体からの脅威を考慮しない安保政策は成立しなくなった」と指摘。「東アジアには2つの核兵器国(ロシア、中国)と核兵器開発を断念しない国(北朝鮮)が存在し、北の大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発・配備は日本にとって直接の脅威となる」と強調。日本の防衛では、「国家からの脅威のみを対象にしていた『基盤的防衛力』の概念は見直し、新たな安保戦略を支える『多機能弾力的防衛力』の整備が重要である」と述べています。『基盤的防衛力』は、1976年の最初の防衛大綱以来、必要最小限の防衛力整備を基本原則とした冷戦型の防衛構想ですが、「弾道ミサイルをはじめ国家間紛争に起因する様々な脅威への即応対処能力や情報収集・分析能力を高め、内閣の情報集約・共有体制を強化、多様な機能を持たせた弾力的な防衛力」に見直すよう求めました。

 武器輸出三原則の緩和

 第2部の【新たな安全保障戦略を実現する政策課題】では、@発射から着弾まで10分程度の弾道ミサイル迎撃に備え、閣議決定を経ない迅速な意思決定の仕組みを検討するなど「緊急事態対処」の体制整備A情報収集衛星の能力向上と内閣情報会議の活用など「情報能力の強化」B統合的安全保障戦略実施の中核的組織として、米国の国家安全保障会議(NSC)を参考に年次報告書の作成など「安全保障会議の抜本的な機能強化」C時代に適合した新たな「日米安保共同宣言」や新たな「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の策定など日米同盟の維持・強化D弾道ミサイル防衛に関し日米共同技術研究が共同開発・生産に進む場合は武器輸出三原則等を見直し、少なくとも同盟国の米国との間で武器禁輸を緩和――などを挙げました。日米同盟を重視、米軍再編に関する日米協議を「包括的な戦略対話の重要な契機と捉え、積極的に協議を進めるべきだ」として、新たな「日米安保共同宣言」を策定することでより有効な同盟関係を構築すべきだと提言しています。

 ミサイル防衛能力の整備

 第3部の【防衛力の在り方】では、『多機能弾力的防衛力』の確立に向け、@陸上防衛力は多様な軍事行動への即応体制の構築に重点を移し、戦車・特科等火砲の重装備部隊を中心に削減・効率化A海上防衛力は島嶼防衛や弾道ミサイルの監視・対処、武装工作船対処に重点を移し、艦艇・航空機部隊は縮減・効率化、護衛艦を活用してミサイル防衛能力を整備B航空防衛力は戦闘機を含む航空機部隊を縮減・効率化し、誘導弾部隊はミサイル防衛能力を整備――を挙げました。特にミサイル防衛システムの整備ではイージス艦、地対空誘導弾ペトリオット、自動警戒管制組織(バッジシステム)などの活用を強く求めています。ミサイル防衛との関連で1つの焦点とされたのが、武器輸出三原則の見直しです。三原則は1967年、当時の佐藤栄作内閣が「国際紛争等の助長を回避する」との基本理念の下で、(イ)旧ソ連など共産圏(ロ)国連決議で武器等の輸出が禁止されている国(ハ)紛争当事国――への輸出を禁じたものです。

 自衛隊海外派遣の恒久法

 その後、76年の防衛大綱決定時に、三木武夫内閣がそれ以外の地域への武器輸出も「慎む」との統一見解を発表。中曽根康弘内閣で、米国に限り武器技術供与を例外として認めましたが、事実上は全面禁輸に近い状態が続いてきました。しかし、現行の三原則のままでは、日米が進めているミサイル防衛(MD)システムの共同技術研究が生産段階へ移行する際に、米国への部品輸出が出来ないことになり、さらには武器や関連技術の国際共同開発に参加できなくなる恐れも出てきました。そこで報告書は「少なくとも米国への禁輸は緩和すべきだ」と提言したわけです。報告書はまた、これまで付随的任務とされてきた国際平和協力活動を自衛隊法の「本来任務」に明記することや、人道復興支援に加え、治安維持の警察的活動の実施を視野に入れれば、武器使用の権限を自衛隊に付与することも併せて検討するなど、自衛隊海外派遣の恒久法の整備が必要だと提言しています。集団的自衛権の行使についても憲法の枠内で議論を深め、早期に整理するよう付言しています。

 過去にも繰り返し指摘

 こうした「多機能弾力的防衛力」、「武器輸出三原則の見直し」、「国際協力業務の本来任務化」の3点は、いずれも防衛懇が初めて提示したものではありません。現防衛大綱の策定に向けた1994年の「防衛問題懇談会」の報告書や、今年3月に自民党国防部会・防衛政策検討小委がまとめた防衛政策の提言などで指摘され、防衛庁でも検討していたものです。防衛政策の懇談会・検討機関が同様の指摘を繰り返すのは、今の日本の法制度や政治システムが、アルカイダなど国際テロ組織が引き起こす大規模テロの脅威や、核開発と弾道ミサイルの配備を続ける北朝鮮の脅威に対し、時代遅れの状態にあるからです。1999年3月の北朝鮮工作船事件では、深夜の持ち回り閣議に時間がかかり、自衛隊に海上警備行動を発令するのが遅れたため、1度は停船した工作船を取り逃がしています。仮に弾道ミサイルが飛来した場合、現行の自衛隊法では、安全保障会議と閣議を開き、「武力攻撃の事態である」と認定しなければ防衛出動は発令されないことになっています。

 最良の予算、法制度構築

 また、国際協力活動での自衛隊の武器使用規定についても、現状では、不慮の事態に直面した際に、「正当防衛」という個人の権限でしか自衛官は武器使用が出来ず、部隊行動にとっては致命傷になりかねません。武器使用が憲法で禁じる「武力の行使」に当たるかどうか。同じく集団的自衛権の行使も憲法と絡む重大な問題です。その意味で防衛懇の報告書は極めて重要な提言をまとめています。政府与党としては法制度、政治システムをいかに構築し、戦車、火砲、艦艇、航空機をどのように縮減、効率化するか。年内に策定する新防衛大綱、新中期防衛力整備計画、来年単年度の防衛予算編成は、どれをとっても荷の重い仕事です。とりわけ来年の通常国会では、在日米軍基地の再編や日米安保条約の極東条項を巡って与野党間で大きな安保論争が展開されそうですが、我々はあらゆる課題を徹底討議のうえ、最良の新防衛プランを練り上げ、法制化を図りたいと考えています。