北村からのメッセージ

 第95回(10月1日)小泉流人事を断行 外交で数々の成果


 爽やかな初秋。皆様には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、私は第2次小泉改造内閣で、防衛庁長官政務官を拝命いたしました。今年は防衛庁・自衛隊創立50周年ですが、この記念すべき年に、基地の町、佐世保出身の政治家として、常日ごろ勉強している安保・防衛問題を担当する政務官に就任できましたことは、真に光栄であり、これ一重に皆様の厚いご支援の賜物であると、深く感謝申し上げます。
 安全保障問題については、私の9月1日付ホームページに掲載した通り、ブッシュ米大統領が10年間に在外米軍を6−7万人削減する計画を発表。在日米軍基地の再編が進むと思われます。しかし、国際テロの暴発に加え、北朝鮮が日本全土を射程に置いたノドン弾道ミサイルを200基も配備するなど、「北の脅威」は日増しに強まり、海底資源をめぐる東シナ海や台湾海峡の緊張も高まっています。
日米安保体制も、北東アジアにとどまらずグローバルな“不安定の弧”を防衛する「世界の平和と安定に寄与する日米同盟」に変貌しつつあるとの見方があります。防衛庁は当面、本格的な防衛大綱の見直しと、年内に新中期防衛力整備計画を策定することになっています。
私はこれらの策定作業に真剣に取り組み、大いに汗をかきたいと念じています。どうか倍旧のご指導、ご鞭撻を賜りますよう伏してお願い申し上げます。


 小泉首相は、政権担当以来最長期の外遊から帰国した直後の9月27日、自民党役員人事と内閣改造を電光石火に断行しました。「小泉改革に理解と強い情熱を持った人」として、幹事長に武部勤元農相を抜擢、総務会長にわが県出身の先輩・久間章生幹事長代理、政調会長に与謝野馨元通産相を民営化推進の新3役に起用、予想通り竹中平蔵経済財政・金融担当相は金融担当を外して新しい郵政民営化担当相を兼務させ、郵政民営化を実現する布陣を固めました。竹中氏を含め、麻生太郎総務相、谷垣禎一財務相、細田博之官房長官、中川昭一経産相と小池百合子環境相の6閣僚が留任。農相、文相を歴任したベテランの島村宣伸氏が農水相に返り咲き、町村信孝元文相が外相に就任しました。5、6回生の適齢組では村田吉隆氏(堀内派)が国家公安委員長・防災相、大野功統氏(山崎派)が防衛庁長官、中山成彬氏(森派)が文部科学相、村上誠一郎氏(高村派)が行政改革相に、若手では3回生の棚橋泰文氏(旧橋本派)が科学技術相、4回生の伊藤達也氏(同)が金融担当相に起用されるなど、一応は首相の言う「老・壮・青のバランス」が配慮されました。


 官僚OB多い実務型内閣

 旧大蔵、旧通産OBが各3人ずつと官僚出身が多く、実務型内閣の色彩が濃厚です。中山氏の夫人は、旧大蔵省時代の同僚で、組閣後に拉致事件被害者家族対応の内閣官房参与を辞任した恭子氏。村上氏は、民主党の岡田代表と東大時代からの友人で、実妹が岡田氏に嫁いでいて義兄弟。伊藤氏は、政界で多くが活躍している松下政経塾出身者の初入閣者で、この3閣僚の経歴は個性的です。今回最も注目されるのは、武部氏本人が「驚天動地」と記者会見で語ったように幹事長人事です。山崎派に属する武部氏は、昨年の総選挙で党政権公約策定委事務局長として郵政民営化を柱とする政権公約(マニフェスト)作りで中心的役割を果たして首相の信任が厚く、改革を忠実に遂行する人材として抜擢されました。武部幹事長は「半端な気持じゃないんだよ。トコトンやるんだ国のため」と[星影のワルツ]の替え歌を作って感激しているとか。武部氏と郵政民営化法案を作成する渡辺好明郵政民営化準備室長とは、第1次小泉内閣の農水相と農水次官コンビで、息もぴったりです。

 “箔付け”思いやり人事?

 この人事には、落選中の首相の盟友・山崎拓前副総裁が来春、復活するのを見込んで起用された節があります。山崎氏は、学歴詐称疑惑で議員辞職した古賀潤一郎前衆院議員(福岡2区、無派閥)の補欠選挙(来年4月)に立候補する見通しです。首相はこの戦いに山崎氏を楽勝させようと、首相の相談役として頻繁にマスコミに登場させるべく、“肩書きに箔”を付けたようです。マスコミは、山崎氏と退任した川口順子外相の二人を「首相補佐官」に任命したことを“思いやり人事”と報じています。国防族で米国要人とのパイプも太い山崎氏は、安保・防衛などの特命事項を担当する補佐官として、川口氏は外交担当補佐官として、森派の首相側近・町村外相とともに官邸主導外交を支えることになりました。参院選敗北を理由に辞任を固執した安倍晋三幹事長に対して、首相は、幹事長代理に“降格”の形をとりながらも、安倍人気を次期選挙まで温存するため、選挙対策や党改革を推進する本部長の要職にとどめました。このように、これというサプライズ人事はなかったものの、女性は2閣僚を維持し、「脱・年功序列、脱・派閥」を軸に、派閥の領袖は排除する傍ら、旧橋本派の若手2人を1本釣りして同派をかく乱するなど、誰にも相談しないで郵政を“踏み絵”に小泉流人事を貫きました。

 実力者排除し党内にしこり

 首相は組閣後の記者会見で「郵政民営化実現内閣だ」と胸を張っています。しかし、出身派閥の森派を5人に優遇したり、外遊先でポスト小泉を目指す首相と同世代の準・実力者を、「改革の意欲が足りない中二階」と批判して一切起用せず、森喜朗元首相や青木幹雄参院議員会長らが「挙党態勢」として推薦した亀井静香元政調会長、古賀誠元幹事長ら実力者も排除し、党内に大きなしこりを残しました。幹事長が小派閥に属し、政調会長が無派閥でいずれも党内基盤が弱いことも、党内では不安材料とされています。中堅7人、若手2人と初入閣は9人を数えましたが、6閣僚留任の中幅改造であったため、当選5、6回以上の適齢者には依然“入閣お預け”組が残り、不満が高まっています。党内融和は望み薄で、政権の求心力はむしろ弱まる気配にあり、郵政民営化の攻防は一段と激しくなりそうです。

 日・メキシコ経済連携協定

 それはさておき、今回の外遊で首相は、国連安保理事会常任理事国入りの決意を表明、自由貿易協定(FTA)の推進、日米首脳会談での沖縄基地負担軽減の討議など、多くの外交成果を上げました。その中の農業関連を分析してみましょう。首相は9月17日、メキシコのフォックス大統領との会談で、FTAを柱とする日・メキシコ経済連携協定(EPA)に署名し、農産物の市場開放に道を開きました。両国政府は国内の批准手続きを経て、来年四月の発効を目指しています。日本のFTA締結は、シンガポールに次ぐ2国目で、@日本側は豚肉に2.2%の低関税枠を設定、初年度の3万8千トンから5年目に8万トンまで拡大Aオレンジ果汁にも低関税枠を設定、初年度の4千トンから5年目に6千5百トンまで拡大B牛肉、鶏肉、オレンジ生果に無税枠などを設定Cメキシコ側は日本からの自動車輸出でメキシコ国内販売台数の5%の無税枠を6年間設置、7年目には関税を撤廃し完全自由化D鉱工業品のほぼ全ての関税を10年以内に撤廃E自動車用などの鋼板は即時関税撤廃F投資、政府調達、サービスなどで両国企業の公平な取り扱いを義務づける――という内容です。

 成功をモデルにFTA交渉加速

 この協定締結により、日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国全体にほぼ匹敵する経済規模を持つメキシコとの貿易強化や、南北アメリカ市場への参入促進などにつながることを期待しています。両首脳は「大規模かつ調和のとれた市場を創出し、構造改革を加速することで、経済発展を促進することを希望する」との共同声明を発表しました。「農業鎖国は出来ない。農業構造改革は待ったなしだ」――。首相は昨年10月、FTA交渉がいったん決裂した直後に、11月総選挙での日本農民に与える影響も恐れず、農産物の輸入自由化拡大を明言しました。この発言がメキシコとの交渉再開に役立ったと確信してか、署名後の記者会見でも貿易や投資について、「閉鎖的ではなく開放的に、縮小均衡ではなく、拡大均衡を図るべきだ」と協定締結の意義を強調。「メキシコとの協定を成功のモデルにしたい」と述べ、韓国やタイなどとのFTA交渉を加速する意欲を示しました。

 3カ国FTA交渉もヤマ場

 世界規模の貿易自由化を目指す世界貿易機構(WTO)の新ラウンド(新多角的貿易交渉)合意が難しくなる中で、2国間など地域間で自由化を進めるFTA締結が世界の潮流となっています。日本はその流れに乗り遅れ、協定を結んだのはシンガポールだけで、ようやくメキシコとの協定に署名を終えることが出来ました。フィリピン、タイ、マレーシアの東南アジア3カ国との2国間FTA交渉が、年内合意に向けてヤマ場に差しかかっています。韓国とは交渉中ですが、5億人の人口を抱えるASEANとのFTAを含む包括的な経済連携に向けた交渉も、二年以内の終結を目指し来年4月から始めることが決まりました。インドとも、交渉開始へ向けて、年内に次官級の準備協議を開く予定です。一連の交渉で焦点になっているのは、農業と労働の分野での日本市場の開放です。フィリピンなど3カ国は、農業分野でバナナなど熱帯果物やコメの対日輸出拡大を、労働分野では看護師や介護士、マッサージ師などの日本受け入れを強く求めています。

 市場開放に堪える農政改革を

 これには日本側が、農産物の売り上げや雇用に重大な影響が出るとして農業、医療関係の団体が強く反対しています。しかし、日本経済の活力を高めるには、アジア諸国との経済連携を強めなければならないし、日本が工業品の関税撤廃を主張する以上、見返りに農業や労働市場も出来る限り開放していく努力が望まれます。労働市場では、政府が99年に専門・技術職14業種に限って開放を進める方針を閣議決定。14業種以外の看護師、介護士にも早期開放の努力が続けられています。農水省は、WTOの農業交渉でコメなど重要品目の関税が大幅に引き下げられた場合に備え、国内農家への補助金制度の抜本改革などを進めることで、市場開放に堪える競争力を確保しようと農政改革を検討しています。

 「プロ農家」に補助金集中

 同省所管の「食料・農業・農村政策審議会」は8月10日、ばら撒き農政を転換し、担い手となる「プロ農家」に補助金を集中させる方針を中間報告で打ち出しました。中間報告は、経営規模や経営改善の取り組みなどの要件を満たした担い手に、補助金などの経営支援策を集中させることを明確にしています。これまでは毎年、コメ、麦、大豆など品目ごとに補助金の総額が決められ、経営規模に関わらず農家に補助金が払われてきましたが、今後は水田作や畑作については品目ごとの補助金の枠が外され、経営規模が補助金支払いの物差しとなりそうです。従って、補助金の対象となる農家の線引きなど、農政改革の具体化が焦点となっています。補助対象から外れる中小、零細農家の反発は必至で、これをどう調整するか。自民党でも頭を痛めており、私も対策に腐心しています。