北村からのメッセージ

 第91回(8月1日) 臨時国会の攻防 野党が証人喚問を主張

 真夏の臨時国会が7月30日に開会しました。参院選で躍進した民主党は政権交代を迫る第1歩の国会と位置づけ、先の通常国会で成立した年金改革関連法の廃止とイラク問題、日歯連献金疑惑などで論戦を挑もうとしています。野党の攻撃材料は、@40ヶ所の条文直し漏れがあった、年金改革関連法A日本歯科医師会(日歯)が自民党橋本派へ提供した、政治資金規正法違反の疑いがある1億円の献金――など。献金では証人喚問を要求し、リクルート事件並みに徹底追及する構えです。残念ながら参院選後も各紙の世論調査は、内閣支持率が低下するばかり。小泉首相は、曽我さん1家の帰国処理、7月下旬の訪韓など、年金・イラク問題で離れかけた民意を引き戻そうと、懸命な努力を続けています。与党は参院選後も絶対安定多数の議席を維持しており、敗北したわけではありません。しかし、マスコミは「自民党の長期低落傾向の始まり」などと厳しい評価を下しています。8月からは首相の金看板、郵政民営化の議論取りまとめも大詰めの段階を迎えます。猛暑続きですが私はもう一踏ん張り国政に励んだうえ、月末には西部アフリカを視察する考えです。

 年金改革法の廃棄要求

 臨時国会の開会に当たり、自民党は参院正副議長人事と議席の指定、首相がシーアイランド・サミットに出席した報告などで会期を5日間、その後、9月下旬に公務員制度改革関連法案などを審議する臨時国会を改めて召集することを提案。これに対し、民主党は年金改革関連法の廃止とイラクからの自衛隊撤退を求めて委員会審議を要求したほか、日歯献金で橋本龍太郎元首相らの証人喚問、豪雨対策などの追及で1ヶ月以上の会期を要求。冒頭から対立して採決の結果、8月6日までの8日間と決まりました。野党攻勢を勢いづかせているのが、年金改革関連法の条文直し漏れ問題で、精査した結果40ヶ所にも上っており、政府は衆参両院の議運委理事会の了承を得て、開会前に修正の正誤表を官報に掲載しました。政府は参院選で年金改革への取り組みが有権者の強い批判にさらされたことから、「国民に深くお詫び申し上げ、監督者の責任を明確にする」(細田博之官房長官)こととし、内閣法制局の秋山收長官、阪田雅裕次長、石木俊治第4部長らを「厳重注意」よりも厳しい「訓告処分」とし、給与の1部(俸給月額の10%)を1ヶ月返納させました。

 内閣法制局に厳しい処分

 「行政府の最高裁」といわれる内閣法制局にとっては、120年の歴史始まって以来の重い処分でしたが、安倍晋三自民党幹事長は「条文修正ミスは、形式面の誤りとはいえ、国民の信頼にかかわることだ」と述べ、政府の厳しい措置は妥当であると評価しています。坂口力厚生労働相も社会保険庁職員が業務外で個人の年金加入記録を閲覧していた問題などで、真野章同庁長官を訓告処分としたほか、年金改革関連法案の条文直し漏れや、合計特殊出生率の公表遅れの監督責任を問い、大塚義治事務次官、鈴木直和官房長ら幹部を訓告処分(給与カットも内閣法制局長官と同様)としました。その後真野長官、大塚次官らを更迭し民間人を社保庁長官に起用する人事を断行しています。条文の直し漏れは、国民年金法や厚生年金保険法などを改正する際、新たな条文を挿入したことにより、前後の条項にずれが生じた誤りの是正が大半ですが、従来はこうしたケアレスミスは滅多に無いことでした。国家公務員の弛み現象の現れであり、立案側の厚生労働省とチェックする側の内閣法制局の双方がともに処分を受けたことは当然で、綱紀粛正が強く求められています。

 リクルート事件並みに重視

 日歯連献金問題は、01年7月の参院選直前、日本歯科医師会の前会長で業務上横領容疑の臼田貞夫被告が自民党橋本派(平成研究会)会長の橋本元首相に1億円の小切手を都内の料亭で直接手渡しましたが、同派の政治団体の政治資金報告書にはこの1億円収入が記載されていなかったというものです。同派は7月14日付で収支報告書を急遽訂正しましたが、野党は政治資金規正法違反(虚偽記入)の疑いがあるとして、かつてのリクルート事件と同様に重視し、橋本氏はもとより、料亭に同席したといわれる野中広務元幹事長、青木幹雄参院幹事長らを証人喚問に呼んで、徹底追及する構えを見せています。これを前哨戦に民主党は「秋の臨時国会で与党を揺さぶり、来年の通常国会を(政権交代の)主戦場にする。そこで内閣不信任案を提出し、衆院解散に追い込む」(岡田克也代表)と対決姿勢を強めています。短期間ながら、夏の今国会は緊迫しそうです。

 挙党態勢確率の人事を

 中曽根康弘元首相はテレビ番組で「自民党の性急な年金改革やイラク多国籍軍への自衛隊参加に反発した国民の1部は、反射的に民主党に流れた。いわば民主党は反射政党だが、国民が政権を託そうとしたわけではない。小泉首相が政局を乗り切るには、9月の内閣改造で全実力者を取り込み、英国の議院内閣制のような挙党態勢を確立することだ」との趣旨で語り、内閣改造・党役員人事の重要性を指摘しています。首相は国会対策と並行して、「改革の本丸」と位置づける郵政民営化を断行し、政権浮揚を図ろうと懸命になっています。内閣改造では参院比例選に担ぎ出し、自民党でトップ当選させた竹中平蔵経済財政・金融相を郵政担当相に任命する腹で、7月21日の経済財制諮問会議から郵政民営化の議論を再開、9月に最終報告書をまとめる方針です。これに対しても、後藤田正晴元副総理は「郵政民営化は枝葉のこと。最重要な政策課題は、フリーター4百万人といわれる雇用問題、国・地方の借金合わせて1千兆円になるとされる財政の改革、社会保障と負担の在り方を正す税制改革など取り組む課題は多い」とテレビの“時事放談”で語っています。

 郵政民営化の“踏み絵”

 「郵政民営化は小泉改革に熱心かどうかを見極めるのにいい法案だ。これに協力してくれるかどうか、よく見極めて人事に生かしたい。適材適所、党全体の力を発揮できる老壮青のバランスという観点から人事をやり、派閥順送りの考えは取らない」――。首相は7月22日、郵政民営化への賛否を“踏み絵”として内閣改造・党役員人事を行い、党内の反発を抑え込む考えを示しました。首相にしてみれば、郵政民営化の断行により、内閣支持率の下落傾向に歯止めをかけ、小泉人気回復の契機にしたいと考えたようですが、これが党内では波紋を描いています。かつての郵政のドン・野中元幹事長は「党の役員、閣僚・副大臣を合わせたら140〜50人は下らない。組閣は郵政民営化だけのためにやるのではなく、政権運営に必要な有為な人材を神に祈る気持ちで任命する厳粛なものだ」との要旨でテレビの“時事放談”で語り、首相の暴走を批判しています。人事という人参を目前にぶら下げても党内は踊らず、かえって内閣改造後には大きな不満が渦を巻きそうです。

 首相独走にブレーキ

 全国特定郵便局長会の支援を受けて自民党3位で当選した長谷川憲正・元郵政審議官や、同11位で当選した荒井広幸・前衆院議員(元党総務部会長)ら新参院議員が公然と民営化反対を唱えているほか、党郵政事業改革特命委員会(委員長=村井仁・党政調筆頭副会長)も8月2日に参院選後の初会合を開き、党独自の改革案策定に入るなど、首相の“独走”にブレーキをかけようとしています。7月27日の党役員連絡会でも郵政民営化に異論が続出、安倍幹事長が「どういう姿がベストか、議論を深めるべきだ。首相、担当閣僚に直接説明を求めることも考える」と、荒れ模様の場を取りなしました。首相が抵抗勢力との対決姿勢を演じ続けて世論の支持回復を狙おうとしても国民は醒めていて、“2匹目のドジョウ”とはいかないでしょう。中曽根、後藤田、野中の各氏が指摘するように、首相が政権の求心力を維持するには、郵政民営化を踏み絵とするような露骨な人事ではなく、“抵抗勢力”も含めた適材適所の公正かつ強力な内閣改造と、党内の意見に十分耳を傾けて郵政民営化の最終報告書をまとめることが望まれます。

 組織と活力の復元を

 参院選の結果についてマスコミは厳しく総括しています。某社の政治部長は「勝敗ラインを低く設定しながら、自・公の与党合計で改選議席の過半数にも届かなかった。明らかに自民党は敗北だ。参院選で国民からイエローカードをもらった。終わりの始まりで、来年の結党50周年記念日は下手をすると解党記念日になりかねない。その時は与党の味をしめてきた公明党が下野するはずがなく、民主党と握手する可能性が強まってくる。小泉さんは残り任期に日朝正常化、北方領土返還など、歴代内閣が出来なかった課題を仕上げる夢を見ているようだが、これまでのようなパフォーマンス政治では実現出来そうもない」と厳しく警告しています。我々若手政治家は国民にレッドカードを突きつけられないようさらに研鑽を積み、制度疲労を起こしかけた自民党の組織と活力を復元しなければならないと覚悟しています。さて、私はAU友好議連(森喜朗会長)の西部アフリカ視察団(村田吉隆団長)に参加し、8月22日から9月2日までロンドン、パリを経由してセネガル、ギニア、モーリタニア、マリのアフリカ西部4カ国を訪問、見聞を広めてくる予定です。このように元気いっぱいですが、皆さんも猛暑の最中、呉々もご自愛下さい。