北村からのメッセージ

 第89回(7月1日) 参院選1人区で激突 年金が最大関心事


 小泉内閣の信任を問う参院選は7月11日に迫りました。選挙区選(改選数73)には192人、比例選(同48)には8党128人の計320人が出馬、前回2001年参院選の496人(競争率4・1倍)を大きく下回る少数激戦(同2・64倍)となりました。これまでは、選挙区選と比例選の組み合わせとなった83年の430人が最低でしたが、その最低記録を更新しました。自民、民主両党の2大政党化が進む中、規模の小さい政党が候補者を絞り、比例選では前回候補を立てた自由連合、二院クラブが今回は候補を見送りました。自民党は51改選議席を勝敗分岐点とし、激しい戦いを展開。特に全国に27ある改選定数1の「1人区」は、政治の風向き次第で勝敗が決まるため、自民、民主両党の候補が激突しています。東京、大阪など20の複数区でも自民党は原則1人に候補を絞り、2人擁立はかつて保守王国と言われた新潟、群馬、静岡の3選挙区だけです。衆院の「政権選択選挙」とは違いますが、党遊説局次長で長崎4区の支部長でもある私は、国会閉幕と同時に地元に張り付き、1人区の長崎選挙区勝利を目指し、参院選の陣頭に立っております。

 夢でない単独過半数

 小泉首相は前通常国会でイラク人道復興支援特措法、年金改革関連法、有事関連7法、道路4公団民営化法、北朝鮮制裁の改正外為法と特定船舶入港禁止法など重要懸案をことごとく成立させたほか、自衛隊のイラク派遣、日朝首脳再会談、G8主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)など外交分野でも成果を上げ、景気も回復の兆しにあるなどで内閣支持率も40〜50%台を維持、参院選の勝利に手応えを感じているようです。自民党は6年前の98年参院選で44議席しか獲得できず、橋本龍太郎首相が退陣。3年前の01年参院選では小泉ブームに乗って64議席を獲得して大勝。その後は旧保守党の吸収合併で非改選議席は66、改選議席は50に計8議席増えています。参院の定数は2000年の公職選挙法改正で252から242へ削減、前回と今回で削減を完了させるため、今回は選挙区選3、比例選2の計5議席減で、改選総数は121です。従って今回56議席を獲得すれば、15年ぶりに非改選66議席と合わせ、単独過半数も夢でありません。

 51議席が勝敗ライン

 参院選に勝利すれば、首相の自民党総裁任期が切れる06年9月まで衆参の国政選挙が無いため、小泉政権は安泰で、首相は「明治以来の大改革」と称する郵政民営化や法制化を終えた道路改革、三位一体の改革など小泉改革の総仕上げに取りかかれます。逆に改選議席を下回れば、青木幹雄参院幹事長が「首相は責任を問われよう」というように“ポスト小泉”を睨んだ次期リーダーや“抵抗勢力”の動きが党内で活発化し、小泉改革の達成は難しくなります。そこで小泉首相や党執行部は「改選議席を上回る51議席」という控え目な勝利目標を設定し、背水の陣で臨んでいるわけです。自民党の現有改選数は50ですがもともと自民の選挙区議席だった鹿児島の参院議員が4月の衆院補選に鞍替え出馬し当選、この欠員1を含めると51議席が自民の改選議席となるからです。低い勝利目標に対し、「単独過半数を目標とすべきだ」と、首相の及び腰を批判する声が党内にはあります。

 首相に思うつぼの展開

 今年前半を振り返ると、首相は2つの人質事件と年金問題で生じた逆境をプラスに転じるマジックで政局を乗り切り、高い内閣支持率を維持してきました。国際テロに毅然と立ち向かい、イラク人質5人全員の無事解放を達成した小泉首相は5月半ば、電撃的に北朝鮮へ飛び、今度は拉致被害者の家族で事実上“人質”とされていた5人を帰国させました。国内では賛否両論が渦を巻く大反響を呼びましたが、帰国した家族5人の喜ぶ姿を見たせいか、世論調査では「評価する」が各社平均63%と軒並みに高く、内閣支持率も50%台を回復しました。年金問題でも、小泉内閣の閣僚を「未納3兄弟」と攻撃した民主党の菅直人前代表は、福田康夫前官房長官辞任の返り血を浴びて失脚。後継候補の小沢一郎氏も本人の未加入・未納問題が発覚して断念。両者より知名度の低い岡田克也前幹事長が代表に昇格。しかも年金改正法が成立するなど首相にとっては思うつぼの展開となりました。

 百年安心の持続的制度

 しかし、各社の世論調査を見ても年金改革関連法に批判的な層が70%以上も占め、年金改革と多国籍軍への自衛隊参加が参院選の最大争点になっています。国民が年金改革に不満を抱くのは、「将来の見通しや財源対策が不十分で抜本改革とは言い難い」との批判があるからです。政府与党は「百年安心」を謳い文句に、@厚生年金の保険料率を毎年引き上げ、2017年9月以降、18・3%(労使折半)に固定A給付水準は現役世代の手取り収入の50%を確保B基礎年金の国庫負担割合は2009年度までに段階的に3分の1から2分の1へ引き上げ――を骨子とする年金改革関連法を成立させました。これは、現行制度を維持すると来年度に累積赤字が4−5兆円に膨らんで年金積立金を食い、年金制度が破綻するため、負担と給付水準を段階的に是正し、まずは出血を止め、少子高齢化が進展しても現役世代が安心して老後を送れるよう、持続的な年金制度に改革するものです。

 野党の国会“秘策”に批判

 だが、厚生労働省は年金に関するデータを出し渋り、法案成立直後に予測よりも低い昨年の「合計特殊出生率」を公表しました。当初は。07年に1・30台で底を打ち、その後は1・39に回復すると想定したものが、昨年は1・29と、ついに1・3を割り込み、出生率に早くも狂いが生じました。試算の前提となった出生率や経済動向が予測を少しでも下回れば、数字は見直しを迫られます。野党は「後出しじゃんけん」と批判しました。給付水準の「50%以上確保」も65歳の給付開始時の話であって、その後は50%を割り込むことがわかり、批判が高まりました。国民は野党にも厳しい評価を下しています。@保険料の未加入・未納問題に終始し、国会での本格的論議はなかったA与党の強行採決に対抗し、野党は55年体制の遺物である牛歩戦術や副議長による“散会宣告”、フィリバスター(議事妨害の長時間質疑)の秘策を繰り出しぶざまな抵抗をした――などの批判がそれです。民主党の女性議員によるフィリバスターは、4時間以上も浪費しながら、自分や同僚の委員会議事録の読み上げ、あげくには自分の経歴紹介で時間を潰すなど国民にそっぽを向かれる中身で、テレビの司会者は「4時間費やし何故年金改革論を滔々とぶたないのか。質疑時間が足りないと採決に反対しながら、あまりにも不勉強」と呆れ顔でした。

 公開討論会で党首応酬

 「改革なくして成長なしの改革路線を堅持し3年間政権を担当、実績を上げてきた。経済活性化の環境を整えるのが政治だ。その信任を問いたい。年金一元化などの協議機関を設置する自・公・民3党合意を尊重し改革を議論したい」(小泉首相)、「改革は進んでいない。与党は数年しか持たない年金改革関連法案を説明不十分のまま強行採決した。やりたい放題だ」(岡田克也民主党代表)、「現行制度が続いたら累積赤字が膨らむ。待ったなし、百年安心の改革だ。3党協議を推進したい」(神崎武法公明党代表)、「際限ない負担増と底なし給付減を強いる年金改悪法を中止させ、年金空洞化を緊急課題として取り組む」(志位和夫共産党委員長)、「負担増だけの年金改悪法は白紙撤回させ、ゼロから抜本改革し、将来不安をなくす」(福島瑞穂社民党党首)――。国会の攻防では与野党が痛み分けに終わったためか、6月21日の公開討論会で5党首は年金改革で激しく応酬しました。

 国民の不信感解消に努力

 自民党は法改正で年金崩壊に歯止めをかけたことで、3党合意に沿って、厚生年金、共済年金、国民年金の一元化など社会保障制度全般の在り方を協議する機関を早急に設置、最近評判を落とした社会保険庁の機構改革も含めて取り組む方針です。民主党は国民年金を含む一元化が最重要であるとし、納税者番号制の導入、年金財源として消費税に3%上乗せなどの案を提案しています。竹下登政権が消費税導入で散々苦労した経緯から、小泉首相は「消費税を上げるとはっきり言える党首がいるか。政治家の直感として消費税を上げる環境にはないと見る」と党首討論会で述べたように、行政改革を通じ税金の無駄遣いをなくすことに専念、自分の総裁任期中は税制改正を検討しても引き上げない態度です。無責任な野党は出来もしない改革案をマニフェスト(政権公約)に掲げていますが、我々は選挙戦を通じ、国民の不信感を解消するため、年金改革の抜本策と具体的なデータを開示し、皆さんの納得が得られるよう、十分に説明責任を果たしていきたいと考えています。