北村からのメッセージ

 第86回(平成16年5月16日)保険料未納の波紋 参院選の攻防激化

 大型連休を皆さんはいかがお過ごしでしたか。連休中は各地で青嵐が吹き、政界も国民年金の保険料未納問題で、メイ・ストームが吹き荒れました。小泉政権は、「災い転じて福と為す」とばかりに、07年3月をメドに年金一元化案をまとめることで民主党と合意、5月11日に年金改革関連法案を衆院本会議で可決しました。しかし、福田康夫官房長官が自らの未納問題で国民の不信を招いた責任をとって辞任。小泉首相は、信任の厚かった大番頭を突如失って大きな打撃を受けました。同時に、福田氏は返す刀で菅直人・民主党代表を斬りつけ道連れ辞任に追い込むなど政界に衝撃を与えました。自民党は今国会の最重要法案が成立の見通しを得、7月参院選に向け臨戦態勢に入りましたが、激戦が予想されます。前哨戦の衆院統一補欠選挙で全勝したことが逆に楽勝ムードを煽っていないかと心配です。私は心を引き締め長崎4区支部長として地元組織のテコ入れに励んでおります。

 7閣僚と民主首脳に波及

 麻生太郎総務、石破茂防衛、中川昭一経済産業3閣僚の「うっかりミス」が発覚した国民年金の未加入・保険料未納問題は、「故人の情報に関すること」と公表を拒んでいた福田官房長官が28日になって未納を認めたのをはじめ、竹中平蔵経済財政、谷垣禎一財務、茂木敏充沖縄・北方の4閣僚が相次いで発表、7閣僚に波及しました。菅代表は衆院統一補選のさなかの敵失と見て、3閣僚を「未納3兄弟」と責め立て、保険料徴収のCMに出演した後に未納が発覚した女優の江角マキコさんを参考人として国会に出席要求するなど、当初は年金関連法案の成立阻止へ向けて攻勢をかけました。ところが「きちんと調べた」(菅氏)ら、菅氏自身が厚相就任時に、国民健康保険と一緒に国民年金も脱退して、未加入になっていたことが分かりました。そればかりか、民主党の鳩山由紀夫前代表や江田五月副代表、元首相の羽田孜・党最高顧問らの未納問題が続々と明るみに出、「目くそ、鼻くそを笑う」結果となりました。また神崎武法公明党代表ら同党首脳や、橋本竜太郎元首相、土井たか子前社民党党首、共産党議員も未納者であることが判明、密かにホームページで明かす未納者をいれると、全党で112議員(読売調べ=13日現在)に及んでいます。

 未加入・未払いの3ケース

 読売に限らず、政治家はマスコミ全社から取材を受けていますが、私に関しては社会人になると同時に厚生年金に加入、県議時代も、代議士になった現在も一貫して厚生年金の保険料を継続して支払っているのでご安心ください。
国会議員が閣僚や政務次官などの公職に就く場合、医療保険は公務員共済に入るが、年金は公務員共済に加入できません。そこで、閣僚、政務次官経験者の未加入・未納問題は、@閣僚就任などで国民健保を脱退する際、市町村窓口で菅氏のように誤って国民年金もやめて未加入になったA企業を退職して厚生年金を脱退し、秘書などを経て議員に当選した福田氏のように国民年金に加入する手続きを忘れたB国民年金への加入が国会議員に義務づけられた86年4月以前は任意加入だったため、中川氏のように国民年金への加入手続きをうっかり怠った――の3ケースに分類されます。それゆえに、菅代表が「国民へ“行政ミス”で未納となった事実を明らかにし、年金一元化の3党合意の道筋をつける、2つの責任がある」と主張し、民社党内で日増しに高まる辞任論に対しても、3党合意達成まで続投の意向を強調した理由は、ある程度理解できます。しかし、一方的に3閣僚を「未納3兄弟」呼ばわりした菅代表が国民へ謝罪もせずに、党首に居座れるはずがありません。

 潔い福田氏の辞任発言

 「私を含め、閣僚の中に年金未加入・未納の問題が判明し、政治に対する国民の信頼を失ったことは慚愧に堪えない。私自身の未払い発表までの対応に不手際があり、内閣のスポークスマンとして、提出法案のとりまとめである内閣官房の責任者として、政治不信を増幅したことについて国民にお詫び申し上げる。3党合意がなされた機会にけじめを付ける意味で、職を辞したい」――。これが5月7日に7閣僚を“右代表”して責任をとった福田氏の潔い辞任の弁です。未加入・未納問題が参院選まで尾を引けば国民の批判の矛先が小泉内閣に向かうと判断、自らの辞任で決着しようと考えたわけです。国民年金加入者2200万人のうち、4割近くは将来の年金制度崩壊などを予測して未納状態にありますが、国民に範を垂れるべき閣僚が7人も未納者とあっては、保険金を支払う気にはなれません。制度上欠陥があるなら、公的年金の一元化など抜本的な改革が必要でしょう。

 5項目の一元化合意

 3党合意は6日、自民、公明両党と民主党の幹事長・国会対策委員長が年金改革関連法案について会談し、公的年金制度の一元化の検討などを付則に盛り込む修正を行うことで合意しました。合意内容は@衆参の厚生労働委員会に小委員会を設置、年金の一元化を含む社会保障制度全般の見直しを行い、2007年3月までに結論を得るA小委員会の設置に合わせ、与野党協議会を設置し、社会保障制度全般の見直しを検討するB年金保険料については、社会保険制度全体の在り方の検討状況や経済社会情勢の変化を勘案して、必要に応じて検討を加えるC11日の本会議で政府案に付則を追加する修正を行うD衆院社労委で年金に関する委員会決議を行う――の5項目でした。民主党は、公的年金の一元化を念頭に、07年までに共済年金を厚生年金に一元化し、09年までに厚生年金と国民年金を一元化するよう求めましたが、与党側が難色を示し、この合意は実りませんでした。

 5年間遡って事後納付

 肝腎の国民年金保険料の未納問題については、未加入・未納者への通知や督促を適正に実施することや、誤って未納となった場合、現行の2年間から5年間まで遡って事後納付出来るよう関係法令の改正を今国会で実施することで合意、民間閣僚については、国家公務員共済年金に加入できるよう、今国会で政令改正を行うことも申し合わせました。民主党は、サラリーマン加入の厚生年金、国・地方公務員加入の共済年金、自営業者加入の国民年金がバラバラだと、@職業によって異なる年金制度は複雑でわかりにくいA年金制度ごとに負担や給付が異なり、不公平感が生じる――などの問題があるとし、これを解決するには公的年金の一本化しかないと従来から主張してきました。小泉首相も「将来は一元化が望ましい」と語ったことから、民社党は「それなら、一元化の抜本改革法案を出し直せ」と迫り、審議を拒否するなど提出法案を廃案に追い込む構えを示していました。

 年金財政改善の政府案

 政府提案は、保険料負担と年金の給付水準を手直しして、悪化する年金財政の改善を目指すもので、保険料は2017年以降、厚生年金が年収の18・30%(労使折半)、国民年金は1万6900円で固定し、将来負担の上限を明文化。給付水準は05年度から経済状況に合わせて徐々に引き下げるが、モデル世帯で現役世代の平均的所得の50%以上を維持するという案です。一方、民主党案は、バラバラの公的年金制度を一本化し、09年度に新制度を導入。統合した「所得比例年金」では、すべての人が収入に応じて保険料を支払い、年金額は納めた保険料に比例して決まるが、年金額が少ない人には消費税を財源とした「最低保障年金」から支給するという内容で、スェーデン方式を参考にしています。政府提案は、現行制度を基本に給付と負担の在り方を見直し、民社党案は、将来に渡る年金制度を抜本的に改革しようとするものです。そこで、衆院社労委を舞台に与野党は激突しましたが、政府与党内には、国民に負担増を求める年金改革法案を野党の反対を押し切ってまで強硬突破することに、警戒感が高まっていました。

 首相も協議機関設置に意欲

 中でも自民党の中川秀直国会対策委員長は「与野党の利害を超えて次世代のために政党間の協議機関を作るべきだ」と提唱。小泉首相も同協議機関の設置に意欲を示し、3党間の協議では与野党協議会の設置で合意にこぎ着けることが出来ました。それには、民主党内にも、@法案の成立阻止を掲げたが衆院統一補選では3敗したA菅代表や党首脳の年金未納問題が発覚し、参院選にマイナス面が出たB審議拒否を続ければ国民の信頼を失う――など参院選への影響を危惧する慎重論が出てきたからです。国民に謝罪した福田官房長官の鮮やかな辞任に対し、民主党の若手議員からは「福田氏がけじめをとったのだから、菅氏が何もないでは済まされない。参院選で与党の批判を受けるばかりだ」との不満が噴き上がり、7日開かれた同党の「次の内閣」会合や10日夕の両院議員懇談会では、年金改革法案の3党合意そのものにも、「有権者との約束を薄める背信行為の修正案だ」「与党に擦り寄っては参院選を戦えない」など小沢一郎代表代行ら旧自由党系から、反対意見が続出、小沢氏は欠席しました。

 3党合意花道に辞任

 菅代表は同懇談会で、こうした党内の反対意見を懸命に抑え、代表を辞任する代わりに3党合意の了承を取り付け、年金を花道に党首の座を去りました。民主党は11日の本会議で、念願の年金一元化に向けた3党合意の修正案に賛成したものの、政府提出法案には反対しました。だが、小沢氏、藤井裕久・元蔵相ら旧自由党系4人を含む9人が欠席・反対・棄権するなど造反し、党内の亀裂を深めました。これを契機に国会では、年金改革関連法案はもとより、私の属する武力攻撃事態対処特別委での有事関連7法案や道路4公団民営化法案など国民生活に密接な重要法案が続々成立の見通しとなり、一方では、4、5両日の日朝協議でも北朝鮮による拉致被害家族8人の帰国問題に明るい兆しが見えてきました。我々はその実績を踏まえ、参院選は苦戦ながら有利な闘いが展開できると確信しています。

 官のたるみ現象をなくせ

 友人の政治記者は、「保険料の重大性を意識すれば、社会保険庁の幹部は橋本元首相や菅代表が厚生大臣当時、未納問題の対応について当然進言すべきだった。自分たちの親分を守れないとは一体どんな役所なのか。三菱自動車製の大型車欠陥事件や外国産食肉の流用事件もひどすぎる。テレビでは政財官トップの謝罪会見ばかりだ。政財官は三位一体でたるみきっている」と嘆いています。確かに社会保険庁がかつて、年金保険料聴取を地方自治体に委ねていた頃のずさんな事務依頼が、行政ミス的な国民年金未加入・保険料未納問題を生んだといえましょう。さらに同庁の事務費が長官交際費や官舎建設費、公用車購入費などに化けていたり、同庁の元長官が受領総額1000万円の贈収賄容疑で再逮捕されるなど、一部官僚の堕落とたるみ現象は目に余ります。公務員は公僕として襟を糺さなければなりません。マスコミは「玉虫色で同床異夢の3党合意」などとけなしていますが、私は3年間、衆院社会労働委で微力を尽くした身として、3党合意で折角出来上がる与野党協議会には積極的に参加し、抜本的な年金改革に努力していきたいと考えています。

<なお、本原稿をプロバイダーへ送稿した直後、小泉首相にも保険の未加入時期があったことが発覚、マスコミは“未加入問題隠し”のための北朝鮮再訪問などと報じています。菅氏辞任の後だけに民主党が徹底追及するとみられ、さらに尾を引きそうです>