北村からのメッセージ


  第77回(12月16日) 自衛隊派遣と予算編成の焦点
 
 政府与党は、緊迫するイラク情勢の中でようやく自衛隊派遣の基本計画をまとめました。しかし、04年度予算編成では小泉構造改革の取り扱いが難航しています。そこで今回は、派遣の基本計画と三位一体の地方財政改革、年金改革に絞って問題点を取り上げました。
 
 <1> 自衛隊派遣の基本計画 日米同盟・国際協調を重視

 イラク北部の危険地帯で11月末、外交官2人がテロとおぼしき銃撃で殺害されました。奥克彦・在英大使館参事官(大使に昇格)と、井ノ上正盛・財イラク大使館3等書記官(同1等書記官)です。奥大使は早稲田大の後輩で、イラク復興に使命感を抱き、知力、体力ともにフル回転、八面六臂の活躍をされていました。早大時代はフルバックをつとめた名ラガー。私も森喜朗元首相らと稲門のラグビー仲間ですが、奥氏の現役時代の活躍を知っているだけに、惜しまれてなりません。心から哀悼の意を表します。小泉首相は6日の外務省合同葬で、2人の熱い思いと功績を讃え「遺志を受け継ぎ、イラク復興に取り組む」と決意を表明。9日の臨時閣議で自衛隊を1年間イラクに派遣する基本計画を決めました。

 人道・復興と後方支援

 基本計画は「イラク復興のため、主体的かつ積極的に、出来る限りの支援を行う」とし、イラク人向けの人道・復興支援と、米軍などの治安維持活動の後方支援を挙げています。骨子によると、(1)陸上自衛隊はサマワを含む「ムサンナ県を中心とするイラク南東部」で、医療、給水、学校など公共施設の復旧・整備を行う(600人以内、車両200両以内)(2)航空自衛隊はクウェートとイラク両国内の空港間で陸自部隊と復興関連物資の輸送を実施(C130輸送機4機と隊員輸送の政府専用機など計8機以内)(3)海上自衛隊はペルシャ湾を含むインド洋で、陸自部隊と装備の輸送、補給を実施(輸送艦2隻以内、護衛艦2隻以内)(4)文民はイラク国内で医療、施設の復旧、整備、南東部で利水条件の改善を実施(5)派遣期間は12月15日から一年間(延長も考慮)――とされています。

 携帯の対戦車砲も携行

 米軍などの後方支援に当たる安全確保支援活動は、医療、輸送、保管、通信、建設、修理、整備などを列挙しましたが、米軍の武器・弾薬は輸送しません。基本計画は事前に、私の属する党の内閣・国防部会と外交部会の3部合同部会で慎重に検討したうえ、了承されました。陸自の装備は、ブルドーザー、装輪装甲車、軽装甲機動車などの車両や機関銃のほか、無反動砲や個人携帯式の対戦車弾を海外派遣で初めて携行することになりました。防衛庁は詳細な活動内容を定める実施要綱を作成、石破茂防衛庁長官が近く派遣命令を下します。今月下旬には空自の先遣隊をクウェートに先行派遣しますが、陸自は現地の情勢を見極めつつ、年明け以降に派遣する考えです。2外交官の殺害事件を受け、非武装の文民派遣は、安全確保が困難であるとし、当面は見送る予定です。

 憲法違反と野党反対

 衆院のイラク復興支援特別委は15日に基本計画の閉会中審査を行いましたが、民主党は「イラク戦争や米英中心の戦後体制に正当性がなく、派遣の大義名分がない」と反対、共産、社民両党も憲法違反だと反対しました。佐世保基地からも再び、輸送艦などがペルシャ湾、インド洋上に派遣されることが予想されます。首相は記者会見で「日米同盟と国際協調が外交の基本。イラク再建に責任を果たすには資金のみならず人的支援が必要」と強調しましたが、自衛隊の派遣にはご苦労だけが多く、厳しい危険な仕事が待っています。私は衆院安保委、党国防・内閣部会の1員として、派遣隊員の皆様が安全に任務が遂行できるよう、派遣の時期、具体的な支援内容、携行武器の訓練状況などを十二分に点検し、万全な態勢で送り出したいと思っています。同時に、国際テロ組織が「イラクに派兵すれば東京を攻撃する」と物騒な“警告”をしたこともあり、私は武力攻撃対処特別委のメンバーとして基地や原発、公共施設の安全を目指し、警戒態勢を強めたいと考えています。

 <2>大詰めの三位一体改革 「地方自治を憂える会」が決議
 
 首相が突如「1兆円縮減」

 04年度予算編成はいよいよ大詰め。政府は5日の臨時閣議で、一般会計の歳出規模を実質的に前年度以下に抑制する基本方針を決めました。一般会計の規模は82兆円前後ですが、来年度税収は今年度並みの41〜42兆円程度の見通しであることから、新規国債発行額は今年度の36兆4千億円から40兆円に増えそうです。予算編成では、年金制度の改革と地方財政の三位一体改革が最大の焦点。小泉首相は11月18日の経済財政諮問会議で突如、「来年度に1兆円の補助金廃止・削減を目指す。合わせて税源移譲も行う。全国知事会などの要望を踏まえて、しっかり改革を進めてほしい」と指示しました。補助金の削減は6月に改定した「骨太の方針2003」で、今後3年間で4兆円を削減するとの大枠を示し、自民党のマニフェスト(政権公約)でもその方針を掲載することに止めていました。それを首相が急遽「1兆円の縮減」と発表したのは、民主党が18兆円の補助金廃止をマニフェストに掲げ、総選挙で善戦したことから、より具体的な数値目標を提示し、改革を断行するのが、来夏の参院選に向けて国民受けすると判断したからでしょう。

 「看板の掛け替え」批判

 これには、初年度5千億円程度の削減と想定していた補助金配分側の文部科学、厚生労働、国土交通など各省庁は、大いに慌てました。取り急ぎ補助金削減額を積み増し、何とか首相指示の1兆円に届くメドを立てたものの、急な上乗せの結果、地方自治体にとっては様々な不利な問題が生じてきました。例えば、1兆円の中には、細かな使途が決められている補助金を、大まかな使途だけを決めた「交付金」に変更するものも含まれており、「看板を掛け替えただけ」とマスコミが批判するようなものがありました。とくに、文部科学省が示した「義務教育教職員の退職手当と児童手当に対する補助金2300億円を削減し、一般財源(地方税や地方交付税)化する」案や、厚生労働省の「生活保護や児童扶養手当給付に対する国庫負担割合を4分の3から3分の2への引き下げて、1965億円を削減する」案などには、総務省や全国知事会、市長会などが猛反対しました。

 地方への責任転嫁

 なぜなら、地方自治体は退職手当・児童手当の一般財源化について、「補助金を減らす見返りに税源をもらっても地方が自由に使える金は全く増えない。退職手当などを自由に減らせるものではなく、むしろ、教職員は間もなく“団塊の世代”が大量退職を迎え地方の負担が重くなる」と反発。生活保護費などの国庫負担割合引き下げについても、「生活保護の支給を打ち切るわけにはいかないし、制度見直しが行われないまま、国の負担だけ引き下げるなら、単なる地方への責任転嫁だ」と反対しました。このため、総務省は文科省に対し再考を促し、代わりに習熟度別授業などに上乗せして追加配置している教職員や事務職員の給与費に充てている補助金3100億円分を一般財源化するよう提案しました。また、厚労省に対しては、地方から要望が強い公立保育所の施設運営費に対する補助金約1700億円を、自治体が自由に使える一般財源にすることを逆提案しました。このように各省庁は“ひも付き補助金“配分の権限に固執し、税源を移譲しても地方の自主性拡大どころではありません。下手をすると教育の機会均等も脅かされる心配があります。

 有志で「憂える会」発足

 そこで私は、総選挙後に合併・復党された二階俊博氏(前・保守新党幹事長)らと相談し、12月4日に「地方自治を憂える会」(二階会長・有志議員14人)を立ち上げ、「平成16年度地方財政対策に関する決議」をまとめ、同5日に自民党の安倍晋三幹事長、額賀福士郎政調会長、柳澤伯夫同代理、中川秀直国会対策委員長、青木幹雄参院幹事長、久世公尭参院政審会長、谷垣禎一財務相、竹中平蔵経済財政・金融相に提出しました。「憂える会」は、私が地方議員の経験者で、党団体総局の地方自治関連団体副委員長も務めたことから、幹事役を仰せつかっております。三位一体改革は、先のホームページで詳しく取り上げたように、「補助金削減、税源移譲、地方交付税改革の3つを同時に進め、国から地方の自立を目指す」のが狙いです。それには“骨太の方針”の「官から民へ」、「国から地方へ」の考え方に立って、(1)地方は自らの創意工夫と責任で政策を決める(2)地方が自由に使える財源を増やす(3)地方が自立できるようにする――ものでなければなりません。

 地方の自由度高める決議

 決議は「地方分権の理念を踏まえ、地方が決定すべきことは地方が自ら決定する地方自治本来の姿の実現に向けて取り組むべきであり、地方の歳出・歳入両面での自由度を高めていく観点から、国庫補助負担金の改革、基幹税の充実を基本とした税源移譲、交付税の改革を一体として進めていくべきである。これを基本に、地方団体の期待に応え、指示される改革とすべきである」との前文をつけて、4項目の改革に特段の配慮を求めました。決議提出の効果はたちまち表れ、9日深夜まで財務、文科、厚労、総務の各省が折衝した結果、懸案の多くが片付きました。それは(1)厚労省の生活保護費引き下げ案に替えて、新たに公立保育所の施設運営費に対する補助金の一般財源化を図り、削減額が不足する場合は生活保護費の一部を削減する(2)義務教育費の国庫負担金削減案は、将来退職者が増えることによる負担増を懸念する地方自治体に配慮して、地方交付税(交付金)の増額などで財源を手当てする――などで、「憂える会」や総務省の主張に沿ったものです。

 総額約1兆円削減

 これをもとに政府・与党は10日、総額約1兆円の補助金削減で合意しました。目玉は(1)厚労省案に替えて、公立保育所向け補助金約1700億円を削減(2)文科省案の公立小中学校教職員の退職手当・児童手当2300億円は「税源移譲予定交付金」に切り替える――で、削減内容は、厚労省が公立保育所(1700億円)、介護保険事務費交付金(800億円)、公共事業補助など計2750億円、文科省が義務教育負担金の退職手当など(2300億円)を含め2630億円、国交省が公共事業補助、まちづくり支援(530億円)で3254億円、農水省が公共事業補助、非公共事業の一部を合わせ800〜900億円、環境省が廃棄物処理施設整備など170億円、経産省が工業用水道整備など120億円、内閣府が沖縄開発の公共事業補助110億円、総務省が消防防災施設など40億円です。
 「憂える会」の決議四項目は次の通りです。

 (1) 国庫補助負担金の改革は、税源移譲につながる廃止・縮減を中心としたものにし、地方からの提案を尊重し、地方の自由度を拡大する。義務教育費国庫負担制度の「退職手当」等の一般財源化や「生活保護費負担金」等の国庫補助負担率の引き下げは、地方の自由度の拡大に繋がらず、国の責任を地方へ転嫁するものに過ぎず、絶対に行うべきでない。また、国庫補助負担金の削減のみを優先させ、税金移譲を後回しにするようなことは、三位一体改革に反しており、断じて容認できない。

 (2) 税源移譲は平成16年度から、上の国庫補助負担金の改革に応じて、地方の基幹税(個人住民税・地方消費税)の充実により実施すること。税源移譲では、税収の偏在性を極力少なくするとともに、なお地域間で財政力格差が拡大する場合には地方交付税の財源保障機能と財源調整機能を強化する等により万全の措置を講ずること。

 (3) 地方交付税は、国民に対する基本的なサービスを確実に確保するため財源保障と財源調整を一体として行う制度の基本を堅持すること。そのうえで、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」に沿って改革に取り組むこと。

 (4) 以上のように、三位一体改革の実現を図るとともに、現下の厳しい地方財政の状況に鑑み、地方交付税法第6条の3第2項を踏まえ、地方財政の運営に支障が生じないよう万全の措置を講じ、地方が必要とする地方交付税総額を確保すること。

 「地方自治を憂える会」の議員メンバー(アイウエオ順)は、次の通りです。
石田真敏 今井宏 岩崎忠夫 宇野治 大野松茂 嘉数知賢 北村誠吾 滝実 田中英夫 谷公一 谷本龍哉 二階俊博 西川公也 西銘恒三郎

 政府税調はタバコ税移譲

 なお、首相の諮問機関・政府税制調査会(石弘光会長)は、補助金削減の見返りに国から地方に移す税源を、来年度はタバコ税だけとしたい考えです。理由は「所得税など基幹税の移譲には兆円単位が必要だ。地方に移す額が限られ、検討の時間もないなかで選ぶなら、タバコ税だ」とし、石会長は、税収の大きな基幹税を移譲するまでのつなぎ措置であることを強調しています。タバコ税は税収に地方間の隔たりがないため、1954年の地方税創設以来8回にわたって国から地方に移譲されてきましたが、国税分をそっくり移譲しても1兆円には届きません。これも先にホームページで紹介したように、塩川正十郎前財務相がタバコ税、酒税、揮発油税をセットに移譲の提案をしていたものです。

 地方消費税などの充実を

 しかし、酒税、揮発油税はいずれも出荷時課税の「蔵出し税」で、蔵元や製油所がある地方だけが潤う仕組みのため、政府税調はタバコ税を選んだようです。私は自民党税調にも毎回出席し、税源移譲を見守っていますが、党内には「タバコ税では安易過ぎる。基幹税の移譲や消費税の移譲も検討すべきだ」との声が高まりました。そこでタバコ税の移譲は来年度1年間の特例とし、所得税など基幹税を移譲するまでの「つなぎ」措置とする方針が固まりました。首相が任期中の消費税引き上げを封印しているため、消費税の本格的移譲は先送りされそうですが、「憂える会」の決議文でも述べたように、私は個人住民税、地方消費税の充実による税源移譲を実現すべく、日夜頑張っているところです。ご支援ください。