北村からのメッセージ


  第76回(12月1日) 厳しい自衛隊派遣 東京攻撃の脅し


 慌ただしい師走。皆様にはお元気でご活躍のことと、お慶び申し上げます。特別国会から私の持ち場は、安全保障、農林水産の両衆院常任委を従来通り続投しますが、災害対策特別委に変わって武力攻撃対処特別委の担当となりました。これに伴い、農水委の理事を拝命し、1年生時代に汗をかいた議運委と自民党国会対策委員は卒業しました。イラク情勢が緊迫し、衆参予算委では自衛隊のイラク派遣、国際テロ組織の「東京攻撃」などを巡って早くも激しい論戦が展開されましたが、いずれも安保委、武力攻撃対処特委の重大課題。農水委もWTO(国際貿易機関)新ラウンド策定の農業問題で日本が孤立するなど、難題を抱えています。総選挙で生じた政治の空白を埋めるべく、私は予算編成の焦点である防衛、年金、三位一体の地方財政改革にも懸命に取り組んでおります。さらにご支援下さい。

 不安が残るイラク治安

 「赤であれ緑であれ、十字の名が付けば十字軍の再侵略だ。900年前と同様、ジハード(聖戦)を戦う」――。日本の総選挙中に、イスラム過激派はバクダッドの国際赤十字と国連の現地本部に自爆テロを仕掛け、多数の犠牲者を出しました。まさに宗教戦争です。イラク復興、人道支援の総本山を攻撃する無差別テロに怒った国連職員は引き揚げました。国内潜伏中とされるフセイン元大統領の出身地でフセイン残党が多いバクダッド、ティクリート、ラマディの"スンニ派三角地帯"では、米軍ヘリが4機もミサイルで撃墜され、米軍への攻撃は日に30、40件にも増えており、米軍の死者は、11月だけで75人、5月1日の停戦時の120人を含め、合計で436人へと激増しています。フセイン政権と敵対していた国際テロ組織のアルカイダも大手を振って、近隣のシリア、イランから続々とイラクに集結中といわれ、民間の病院、米英系ホテル、民間航空機までがロケット攻撃にさらされるなど、イラクの治安にまだ不安があります。11月29日にはついに日本人の外交官2人も殺害されました。

 中東全域にテロ拡大

 これに対し、米軍は11月に入って「アイアンハンマー」(鉄槌)と呼ぶ、空爆を含めた掃討作戦で武装ゲリラ勢力の一掃に乗り出しました。だが、一般民衆の居住する市街地をハイテク兵器で制圧はできず、ましてベトナム戦争時のように絨毯爆撃をすることも出来ません。"神風特攻隊"的な自爆テロにはお手上げの状態です。さらに困ったことには、我が国が自衛隊の派遣を予定していたイラク南部のサマワ地区から100キロしか離れていないナーシリアに駐留するイタリア警察軍駐屯地で、同月12日に自爆トラックが突入し、警察軍19人とイラク人8人、計27人が死亡しました。その後もトルコのイスタンブールでシナゴーク(ユダヤ教礼拝所)、英国総領事館が自爆テロに襲われたほか、イラク戦争後ではサウジアラビアのリヤド、モロッコのカサブランカなどアルカイダが関与したと見られるテロが中東全域に拡大しつつあります。

 伊軍被害で与党に慎重論

 小泉政権は、イラク復興への自衛隊派遣と50億ドルの復興支援を国際公約したことを選挙戦で国民に訴え、総選挙直後の閣議で基本計画を策定し、年内にも陸海空自衛隊・文民計1200人を非戦闘地域に派遣する方針でした。中東から90%の石油を輸入する我が国が、米英のイラク戦争を支持するのは国益上当然であり、北朝鮮の武力行使を抑制するためにも日米同盟を堅持して米軍の後方支援、国際協調で平和に貢献するのは至極当たり前の責務です。私も国際平和と国民の生命・財産、自由と民主主義を守るために、政府の方針を強く支持してきました。しかし、事前調査で安全地帯と見られたサモア周辺でイタリア警察軍が襲撃されたとなれば話は別です。野党が一致して反対している自衛隊派遣で、仮にも死傷者が出れば小泉内閣の覚悟が問われ、佐世保基地出身の私としても派遣自衛隊の安全は最大限重視されなければなりません。「非戦闘地域という法律の要件をクリア出来ていない可能性もある」と高村正彦元外相はテレビ番組で語りましたが、来夏の参院選を控え、与党内にも慎重論が高まっています。

 湾岸戦争時の二の舞

 党内情勢を見て小泉首相は、ラムズフェルド米国防長官が来日した際にも自衛隊派遣に言及せず年内派遣を事実上断念、慎重にイラクの治安状況を検討しています。しかし、自衛隊派遣にはタイムリミットがあることも事実。テロ組織との抗争が泥沼化すれば来年秋の米大統領選に響くため、ブッシュ米大統領は11月12日、イラク占領政策を転換しました。それは、暫定占領当局(CPA=プレーマー代表)が来年6月に統治主権を暫定政権に移譲。治安維持は米英軍が担当しますが、早急に暫定指導部を選出し、暫定憲法の制定を進め、イラク人主体の政権を作るというものです。国連安保理決議1511号が合意されても仏、独、露、中の安保常任理事国がイラク派兵を拒否しているため、主権移譲を前倒し各国の協力を呼びかけたわけです。このように米政権は焦っていますが、自衛隊派遣が主権移譲後にまで遅れると、カンボジアに派遣した時と同様、国連平和維持(PKO)協力法の適用となり、折角、法制化を急いだイラク復興・人道支援特措法による派遣ではなくなります。それでは湾岸戦争で増税までして160億ドルも拠出しながら、「形の見えない支援だ。ショウ・ザ・フラッグ(日章旗)」と批判された時と同じ結果になります。

 東京攻撃とアルカイダ

 衆院安保委では、自衛隊や与党の調査団報告をもとに、
 (1)自衛隊派遣の時期
 (2)どこが戦闘地域か
 (3)給水や食糧、医療などの補給のいずれに重点を置くか
 (4)陸・海・空自衛隊のいずれを主力にするか
 (5)自衛隊の携行武器・装備内容
 (6)警告、威嚇射撃、戦闘など対テロ・ゲリラ戦の自衛マニュアル
などを入念に検討する考えです。それによって、C130輸送機による物資輸送がよいか、海自輸送艦による車両輸送がベターかなど、派遣の形態は変わってきます。日本が最も注意しなければならないのは、イタリア警察軍攻撃の後、アルカイダの幹部を名乗る人物が11月16日と21日の2回、アラビア語の雑誌「アルマジャラ」(ロンドン発行)に声明を寄せ、「米国と同盟関係にある英国、イタリア、日本、オーストラリアのイラク派兵は許さない」「日本の兵士がイラクに足を踏み入れた瞬間、アルカイダは東京の中心を攻撃する。日本は極めて破壊されやすい」と警告したことです。

 国民保護法を制定

 その後、バグダッドの日本大使館が銃撃されたことを思えば単なるブラフ(脅し)ではないようです。東京の盛り場、自衛隊や駐留米軍の基地、原発などが自爆テロに襲われたら、平和ボケした日本はパニック状態に陥りましょう。ブルドーザーによるATM(現金預払機)強盗ですら、現場到着に10分もかかるという日本の警察力だから、テロやゲリラには無防備に近い現状です。衆院武力攻撃対処特別委ではこうした問題と取り組みます。
 政府は21日、国民保護法制整備本部(本部長・福田康夫官房長官)の会議を開き、有事の際に国民の生命・財産を守るための国民保護法制の要旨を決めました。国民保護法制は6月に施行された武力攻撃事態対処法とともに、有事法制の1部をなすもので、与党と民主党は、法施行から1年以内を目標に保護法制を整備することで合意しています。

 食品・医療、土地収用も

 要旨は、外国から攻撃を受けたか、攻撃を予測できる場合、
 (1)国は警報を発令、避難が必要な地域や避難先を都道府県に指示
 (2)都道府県知事は住民に避難を指示、避難住民に収容施設を提供するなどの救援活動や、現地の状況に合わせた応急措置を実施
 (3)市町村長は避難を誘導、応急措置を実施
 (4)放送、運送事業者などの指定公共機関は警報を放送、避難住民や物資を輸送――
などの役割分担を規定しています。知事には、危険が差し迫った場合の避難誘導や被害復旧に自衛隊派遣を防衛庁長官に要請したり、食品や医療品の売り渡し要請を業者らが拒否した場合には収容、避難住民の収容施設や医療施設開設のための土地、家屋使用を理由なく拒否した場合は合意なく使用できるなど、私権制限の権限を与えています。原発や危険物貯蔵施設、浄水施設などに攻撃が予想される場合は、経済産業相、文部科学相に原発の使用停止を命じられるようにしました。政府は来年2月までに法案を閣議決定し、自衛隊や米軍の行動を円滑化する法制とともに通常国会に提出する方針です。

 強制連行で拉致に逆襲

 私が新しく担当した武力攻撃対処特別委で同法案を審議しますが、国民全体の安全を守る「公益」と、個人の財産など「私権」の制限との調和をどう図っていくかが大きな課題です。また、同特別委と安保委に絡む共通課題として北朝鮮があります。日本は拉致問題を最優先に核開発の停止、国交正常化後の経済協力を包括的に解決するため、「対話と圧力」を対朝外交の基本に据えていますが、今月中旬に再開される日米韓中露朝の6カ国協議では、米国以外は拉致問題に冷淡です。逆に北朝鮮は、日韓併合時代の42万人労働者の強制連行、創氏改名、従軍慰安婦の徴用、日本官憲の虐待などが拉致問題以上の人権侵害であるとし、謝罪と補償を求めています。これに対し、日本は「圧力」として、万景峰号の徹底的査察、出入国管理の強化、近海での不審船警戒など工作員の潜入や麻薬、偽札密輸の防止に全力を挙げています。とくに自民党内では議員立法により外国為替法を改正し、送金停止などの経済制裁を加えるべきだとの声が高まっています。

 武力攻撃受ける恐れ

 しかし、瀬戸際外交を繰り返す北朝鮮は、イラク緊迫の最中にも日本海でミサイル発射実験を行うなど威嚇行為を続けており、わが本土に不測の事態を引き起こす恐れが多分にあります。朝日新聞の企画「北朝鮮の素顔」では、【旧ソ連製の短距離ミサイル「スカッド」をエジプトから入手し改良を重ねた。資金はイランが出し、出来た製品を受け取ったとみる。他の中東諸国などにも売られ、外貨稼ぎに使われた。現在、韓国全土が射程に入るスカッド(射程300〜00キロ)や日本列島がほぼ入る「ノドン」(同約1300キロ)が配備され、98年8月に「テポドン1」(同1500キロ以上)の発射実験をし、「人工衛星を打ち上げた」と発表した。これに加え、米本土も狙う「テポドン2」を開発中】と報道しました。北朝鮮からの直接の武力攻撃がなくても、中東のテロ組織に渡った北朝鮮製ミサイルが、日本の基地など主要施設に撃ち込まれる可能性は否定できないでしょう。私は安保関係の両委で、徹底的に国民が期待する対応策を検討したいと考えています。