北村からのメッセージ

 

 政局展望 2 第7回(11月28日)

 内閣不信任案の攻防は、まさに政界を二分する関ヶ原の戦いでした。仕掛けた自民党の加藤紘一元幹事長が「名誉ある撤退」をし激突は避けましたが、党内亀裂の傷口は深く、新世紀冒頭の政局は依然波乱含みです。「不信任案否決は森喜朗氏の信任を決定したわけではない」との、野中広務幹事長の発言が波紋を描いているように、来夏の参院選に向けて与党内には首相批判が高まっており、世論の動向次第では来年3月の党大会で9月総裁選の繰り上げなど「森降ろし」が再燃する気配にあります。平成の関ヶ原は天下統一の決戦ではなく、派閥再編による新たな群雄割拠、政治動乱の始まりといえましょう。

 それにしても、同案が上程された20日は、各紙のドキュメントが伝えたように緊迫そのもの。私は得難い修羅場を体験しました。野中幹事長ら執行部は同日昼過ぎ「4票差で否決」と僅差の勝利を取材陣に伝えました。加藤派の切り崩しが成功し、昼の加藤派決起集会に 池田行彦・元総務会長ら17人のベテラン議員が欠席したことで、執行部が否決の確信を持ったからです。しかし、執行部は我々21世紀クラブが行使する評決次第では形勢が逆転するとみて、本会議開会直前まで我々に懸命の説得工作を展開しました。つまり、我々が完全にキャスティング・ボートを握っていたわけです。
 
 それだけに責任が重く、同志は結束を固めて時局を徹底的に分析、グループ結成の原点に立って統一行動をとることを申し合わせました。21世紀クラブは「保守の原理原則をしっかり踏まえ、国の財政再建を最重視し、21世紀に向けて種々の提言を積極的に行い行動する一騎当千の集団」であります。不信任案の対応では@長野、栃木県知事選をみても国民の政党離れは深刻で、加藤氏が「このままでは日本は壊れる」と案じた姿勢には共感できる Aだからといって野党の提案する内閣不信任案に同調する禁じ手は使うべきでないB臨時国会には景気対策に重要な総事業費11兆円の補正予算案が上程されており、これを潰し、来年度予算編成を遅らすなら、それこそ日本は崩壊するC不信任案は堂々と否決し、党内改革を断行、国民の信頼を回復すべきだD我々の復党・入党は政変とは別次元の問題であり、事態収集の取引材料に使われてはならないE入党が遅れる場合は政党化など独自行動を検討するーーなどの点で合意しました。

 その過程ではハムレットの悩みを続けた同志もいましたが、結果的に6人が不信任案に反対票を投じ、3人が独自行動をとりました。同案の否決により政治の空白、混迷が避けられたことは国民から一定の評価を受けたと確信します。同時に世紀末の政局安定に我々同志が存分に活躍できたことを誇りに思っています。この長い10日間、地元で、あるいは長距離電話でご激励、ご助言くださった支持者の皆様に深く感謝申し上げます。
  
 不快なのはマスコミが21世紀クラブを加藤、山崎派の別働隊と位置づけるあまり、「主流派幹部が入党を餌に一本釣りした」などと低次元な記事を載せていることです。我々は自公保連立の選挙協力などの影響で公認が得られず、無所属で苦しい戦いを経て当選しました。本来なら当選翌日に追加公認を受けるのが自民党の習わしです。即座に入党を認めていれば自民党は242議席で、大敗したとはいえ単独過半数を維持、こんな不信任騒動も起きなかったでしょう。なのに、連立した他党への気兼ねや非主流派の勢力減をねらってか、執行部は我々の入党を頑なに拒否し続けました。おまけに執行部は騒動のさなか、長崎4区の支部長に落選議員を指名する暴挙を企てました。無党派の議員だからといって、遠慮もなく「森政権を支えてほしい」と握手を求めながら足蹴にする姿は、コメの援助にテポドン発射で脅し返すどこかの国に似ています。こんな屈辱を味わされるゆわれはありません。

 そうした怒りの感情を抑えて、北村はなぜ執行部が喜ぶ行動に出たか。いやしくも北村は県連3役の総務会長を務めた筋金入りの党員です。自民党崩壊の危機を目前にすれば、やむに止まれぬ愛党精神から行動を起こさざるを得ませんでした。親しい政治記者は「関ヶ原の合戦で大将首を挙げたのは21世紀クラブの6人。執行部は謝罪して、逆に復党をお願いすべきだ」と述べています。我々の復党は当然であり、論功行賞とみられるのは迷惑千万です。我々は復党しても政策グループとしての交流は深めたいと考えています

  ところで、「加藤政局」は世論やマスコミを味方に首相退陣を迫る加藤氏と、公認取り消しや支部長剥奪などの脅しで組織を締め付けた執行部との壮烈な戦いでした。しかし、「私は不信任案に賛成する。100%勝てる。今日から日本は変わる」と大見えを切っていた加藤氏が欠席戦術に転換したことは、マスコミが指摘する通り公約違反であり、森首相の失言に劣らぬ失態といえましょう。政治家の発言は「綸言汗の如し」で取り消せません。加藤氏のホームページには11万人の激励が届いたそうですが、有言不実行は国民の信頼を一気に失う結果になりました。 また、加藤氏が大平、宮沢両政権当時の造反劇を引き合いに除名勧告を拒否し欠席戦術に出たことは、同氏が単なる怨念試合で抗争を仕掛けたものと映り、相も変わらぬ党内権力闘争の印象を国民に与えてしまいました。残念なことです。

 そこへいくと、加藤氏への友情・信義から自派を率い、一糸乱れぬ行動を起こした山崎拓元政調会長の方が数段も株が上がったようです。それは、関ヶ原から薩摩勢を鮮やかに撤収させた島津義弘の姿に似ています。分裂した加籐派とは対照的な結束ぶりです。

 さて、政局は内閣改造、予算編成に入ります。マスコミは「加藤派分裂の後、池田グループが主流派の一翼を担う」と予想していますが、亀裂が走っているだけに、森首相が挙党態勢を築き上げるのは容易ではありません。予算編成では従来型公共投資のばら撒きか、それとも財政構造改革かに焦点が絞られます。加藤、山崎両氏は2年前から「単純な需要(デマンド)刺激策は効果がない。供給(サプライ)サイドからの構造改革が必要。規制緩和など市場原理を重んずる小さな政府の実現」を一貫して唱えてきました。毎年の国債発行で国と地方を合わせた借金は645兆円。これが21世紀の若年層に重い負担となるため、個人消費は伸び悩み、景気は回復できず、政治不信を助長しています。21世紀クラブが財政再建を最重視する理由はここにあります。

 橋本龍太郎政権は加藤氏ら当時の執行部とともに構造改革路線をひた走り、「アクセル(積極財政)を噴かす時に、ブレーキ(消費税アップ)を踏んだ」と批判され退陣しましたが、放漫な日本の財政赤字は国際信用を落とし、財界も将来を危惧しています。小渕恵三政権の路線を継承し、景気浮揚の一兎のみを追い続けてきた森政権の支持率は低迷するばかり。「これでは参院選は戦えない」と総裁選の前倒しを求める機運が党内に高まってきました。マスコミは「河野洋平外相または、高村正彦・旧河本派会長の暫定政権か」などと報じていますが、橋本氏は省庁再編など諸改革の生みの親で、党内きっての政策通。再登板があってもおかしくない存在といえましょう。

 「加藤政局」のもとで、憂国の情に駆られた北村がどのような行動をとったかを皆様にご報告しました。今後も激動政局は続きます。さらなるご支援をお願い申し上げます。