北村からのメッセージ

 第68回(7月1日)  イラク特措法案の攻防 出遅れた日本

 間もなく梅雨明けですね。今年は梅雨入り前に豆台風が列島を縦断、6月には6号台風が九州、中・四国を襲うなど日本は異常気象。政界もジトジトと湿った閉塞感が漂い、不快指数は高まるばかり。7月はイラク特措法案の攻防、8月は「三位一体」地方改革などを肉づける来年度予算編成の作業、9月は自民党総裁選、その後の解散・総選挙と、不安定政局の中で数多くの台風が発達しつつあります。その渦中に私はイラク特措法案を審議する衆院特別委員会にかり出され、同法案の成立に汗を流しています。NHKは次のテレビ小説に「てるてる家族」(なかにし礼原作、石原さとみ主演)を決め、6月の佐世保ロケから撮影に入りました。国民が青空期待の“照る照る坊主”を願って暮らしていることを読み取り、明るいホームドラマの制作に踏み切ったようです。私も同法案などの懸案を処理し、すかっとした真夏の青空が開けるよう、延長国会で頑張っているところです。これで私の所属する委員会は議運委を含め5つとなり、めっぽう多忙ですが、よろしくご声援下さい。

 人道と安全確保の2分野

 政府は6月13日、イラクへの自衛隊派遣を可能とする「イラク人道復興支援特別措置法案」を閣議決定し、衆院に提出しました。法案の骨子は、
 @ 自衛隊の派遣根拠は「イラク経済制裁解除の国連安保理決議1483号」で、4年間の時限立法
 A 自衛隊の活動は生活関連物資配布などの「人道・復興支援活動」と、治安維持に従事する米英軍などへの後方支援の「安全確保支援活動」の2分野
 B 物資輸送では輸送対象から武器・弾薬を除外しない
 C 活動地域は非戦闘地域
 D 武器使用は自己とその管理下にある者の正当防衛・緊急避難に限定
 E 派遣内容を定めた基本計画を閣議決定し、派遣は国会の事後承認――などです。
 イラクに暫定行政機構が発足して治安が安定した場合は、行政事務への指導・助言などに従事する自衛隊員以外の要員派遣も必要になるとし、文民の派遣規定も盛り込みました。

 会期末の成立目指す

 同時に、11月1日に期限切れとなる「テロ対策特別措置法」(対テロ掃討作戦への後方支援が目的)を2年間延長する改正案も国会に提出、同委で一括審議となりました。延長国会は野党の審議拒否で空転が予想されたものの、6月24日の本会議でイラク特措法案の趣旨説明と質疑、翌25日からイラク復興支援特別委員会(高村正彦委員長、定員45人)で順調に実質審議入りしました。政府与党は7月初旬に衆院を通過させ、会期末の28日までに成立を図ろうとしています。自衛隊派遣の後方支援と復興への協力は、イラク戦争で米英を支持した日本の果たすべき当然の責務であります。政府は各国に後れをとらぬようイラク特措法を早期成立させ、8月にも陸、海、空の自衛隊約1千人を派遣、まずはC130輸送機を使って、食糧など生活物資輸送、傷病者の搬送に協力する方針です。

 フット・ソルジャーの派遣

 「ショウ・ザ・フラッグ(補給艦など派遣)」――。米国はアフガン戦争で、日本にこう要求しました。今度は「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上部隊)」「フット・ソルジャー(歩兵)」の派遣を4月の初めから強く求めてきました。小泉首相が米英のイラク戦争支持を一早く決断したからには、イラクの治安維持に日本の大きな役割が期待されるからです。従って、イラク支援特措法の中核業務は、治安維持に従事する米英軍などへの後方支援と人道・復興支援とし、野党を刺激しないよう「治安維持支援」の表現を「安全確保支援」に置き換えました。だが、野党各党は国会審議で、武器・弾薬の輸送は憲法9条で禁じる武力行使と「一体化」した行為であり、米国が戦争終結を宣言しても、事実上占領継続の戦闘地域に展開する外国軍隊に自衛隊が水や医薬品を提供することは、「戦闘行為に加担」するものだと反対。国会では野党が、派遣の根拠、非戦闘地域の定義、武器弾薬の陸上輸送、武器使用、国会の承認などをめぐって、政府を厳しく追及しています。

 全土が戦闘地域と米司令官

 特に、米陸軍司令官が6月13日の記者会見で「イラク全土がコンバット・ゾーン(戦闘地域)」と発言したことから、野党側は「危ない地域に自衛隊を派遣しない方がいい」と“戦争状態”への派遣に強く反対しました。これに対し、首相は「捕虜になったら、略奪者に襲われたらと、1%でも可能性があるという前提で議論したら、言葉遊びになりかねない」と色をなして反論、「戦争だからどこまでも危険だというのは、神学論争みたいで混乱する」と指摘しました。与党質問でも「自衛隊員の安全は十分に確保すべきだ」、「テロ特措法と違い、武器弾薬の陸上輸送を認めた理由は何か」などの危惧や慎重論が示されました。確かに、国会では首相が言うような憲法を巡る“神学論争”が延々と続いています。

 成るか民主との修正協議

 こうした中で、与党3党が最も重視しているのが、民主党との修正協議です。9.11同時テロ後の緊急を要するテロ対策特措法は、民主党の修正要求を入れて30時間という短い審議で早期制定、先の有事法制3法も同党との修正協議が実り成立しました。今回は民主党が、自衛隊の活動業務として当初の政府案に盛り込まれていた「大量破壊兵器処理支援活動」に強く反対しました。このため、法案決定の最終関門である自民党総務会では、「大量破壊兵器が発見されない段階で活動を盛り込む必要はない」(野中広務・元幹事長)などの意見が相次ぎ、続いた与党3党幹事長・政調会長会談でも同活動が削除され、支援活動は非戦闘地域での前記2分野に限定されました。それでも、イラク戦争に反対してきた民主党は「国連憲章違反の疑いが濃厚で、イラク戦争は支持できないが、人道・復興支援には積極的に取り組むべきだ」との態度を示しつつ、多くの慎重論を唱えています。

 審議引き延ばしを警戒

 同党は
@ 自衛隊でなければ果たせない需要は薄い
A 戦闘地域と非戦闘地域の区別が困難
B 現在の武器水準では不十分
C 米軍指揮下の活動は反対勢力の標的になりやすい
D 現在の武器使用基準では米軍の信頼を損ねる
E 派遣期間の見通しが不透明――などの党見解をまとめ、「法の根拠となる国連決議の明記などは削除し、特措法の期限4年間を圧縮、自衛隊派遣命令後の国会事後承認を事前承認に変更する」などを主張しています。一方、自民党内には政府与党が国会対策上、削除した「大量破壊兵器処理活動」について不満があります。なぜなら、米英両国は、核や生物・化学など大量破壊兵器の廃棄をフセイン政権が証明しないとして戦争に踏み切り、今も懸命に捜索を続けています。これら兵器の廃棄処理は自衛隊の得意とするところ。大量破壊兵器が発見された場合、「法律に書いていない」ことを理由に、そ知らぬ顔が出来るか――といった不満です。また自民党内には「有事関連法の時と違って民主党内にはイラク特措法反対論が根強い。だらだらと修正協議を重ね、審議引き延ばしを図るのではないか」との警戒心もあり、安易な修正には反発しています。

 43カ国が支援軍派遣

 衆院の特別委は連日審議を続けていますが、参院審議には3週間程度かかる見通し。そこで、「修正協議が決裂すれば、与党3党だけでの採決もやむを得ない」との声が上がっています。同時に提出されたテロ特措法を2年間延長する改正案は切り離しても、イラク特措法を成立させるべきだとの主張もあります。しかし、国連の求めに応じて、韓国が700人の工科部隊を派遣するなど、既に13カ国が自国軍隊をイラクへ送り、治安維持や医療活動、被災施設の復旧などに取り組んでいます。ほかにも13カ国が派遣を決定、検討中を加えると、派遣支援国は43カ国にも上ります。湾岸戦争で130億ドルもの巨額で復興支援をしながら、評価されなかった日本としては、一刻も早く自衛隊を派遣しなければ再び国際社会の笑いものになります。イラク特措法案を継続審議として秋の臨時国会で仕切り直しするなどの時間的な余裕はありません。まずは2法案を終盤国会で成立させ、その後に、パッチワーク(つぎはぎ)と評判の悪い有事法制や安全保障の基本的な恒久法を早急に制定すべきだと考えつつ、私は衆院特別委の審議に全力を傾けているところです。