北村からのメッセージ

 


 第65回(5月16日) 養殖フグにホルマリン 県が出荷中止要請

 

 長崎県は4月22日、トラフグの養殖にホルマリンを使っていた業者に対し、出荷中止を要請しました。ホルマリンは発ガン性が疑われ、水産庁が使用しないよう指導してきましたが、県内養殖業者の約6割が使用していた事実が県の調査で明るみに出、今回の要請となったわけです。長崎県は養殖トラフグの生産量、生産額ともに全国一。一時は1キロ7千円もの高値で取り引きされた高級魚で、ドル箱的存在。オフシーズンとはいえ、都会では安売りの養殖トラフグが大繁盛です。中止要請で消費者からの“風評被害”が出る恐れもあり、県水産界にとっては大きな痛手です。農林水産省は食用動物への未承認薬品の使用禁止規定を盛り込んだ薬事法の改正案を国会に上程。私の属する衆院農林水産委員会で審議する予定ですが、同法案が成立すれば厳しい取り締まりが予想されます。「出荷停止で廃棄処分にするなら、政府が損害を賠償せよ」と養殖業者は怒っていますが、私は審議を通じ、ホルマリンに代わる薬品の開発や環境基準の整備などを強く主張する考えです。

 

 エラの寄生虫駆除

読売によると、長崎県内でトラフグを養殖している業者は151軒で、その6割の95業者が過去3年間に寄生虫駆除の目的でホルマリンを使ったことが調査で判明。県は養殖中の約359万匹のうち、“薬浴”済みの約166万匹について、出荷を中止するよう要請しました。トラフグの養殖は共食いの防止とエラにつく寄生虫の駆除が成功のカギ。共食いの方は音、光、水流などを工夫した“ゆらぎ効果”でリラックスに飼育することで防げましたが、駆除力が強いホルマリンに代わる適当な薬品が見当たらず、業者の間では「魔法の水」として、この劇薬が長年使われてきました。世界保健機構(WHO)は、ホルマリンに発ガン性の指摘もあることから、高濃度で吸い込めば身体へ深刻な影響が出るとし、30分間の平均で大気1立方メートル中0・1ミリグラムという指針を勧告。英国やオランダなどは、大気中の濃度について環境基準を設けているそうです。

天然か薬品かの判断困難

工業用に使われるホルマリンは、わが国では毒物劇物取締法の対象となっているホルムアルデヒドの水溶液。食品衛生法では、食品への添加が禁止されていますが、目的が寄生虫駆除だと食品添加物とはいえないため、規制されていません。毒物劇物取締法でも販売や譲渡の方法は規制・取り締まりの対象ですが、手続きを踏んで個人が自分目的のために使用するケースは例外とされています。水産庁は81年、養殖トラフグへのホルマリンについて、「食品への残留が十分解明されていない」として使用しないよう通達しましたが、96年頃から、近隣の真珠養殖への影響などが問題化し、水産庁もその都度使わないよう指導の徹底を指示してきました。しかし、天然のフグでも10ppm程度のホルムアルデヒドを含んでいるものがあり、天然なのか使用薬品なのかの判断が難しく、漁協側が「使っていない」と否定すれば、それ以上突っ込んだ調査が出来なかったといいます。また、環境基準となると大気は環境省、薬事関係は厚生労働省、水産関係は農水省と所管が分かれ、法令の整備に多少あいまいな点があっても、各省の調整は難航していたようです。

輸入農産物も使用中

 「ホルマリンは科学的にも医学的にも害があると証明されたわけでなく、疑いがあるとの段階だ。その使用は成魚のみを禁止し、稚魚は対象にしてない。全面禁止なら、及び腰でなく、もっと強い通達を出すべきだった。いまさら全面禁止といわれても納得できない。損害を負担すべきだ」と養殖漁業者は怒っています。また、輸入水産物でもノルウエイの養殖サケ、中国・山東省の養殖トラフグにはホルマリンを、韓国の養殖ヒラメには抗生物質が使われているとの情報があるとして、不公平にならないよう輸入相手国の実態調査をするよう求めています。読売は、昨年11月に東京水産大から厚生労働省を通じ、「長崎県と愛媛県のトラフグ養殖でホルマリンが使われている」との指摘があり、長崎県は調査に乗り出したと報じています。だが、養殖業者は「熊本の民放が真珠とトラフグの養殖業者の喧嘩に飛びつきスクープしたが、テレビ局だけが正義の味方のような姿勢をとるのは遺憾だ」と批判しています。

 抜本的な海面漁業育成を

 BSE(牛海綿状脳症)問題や雪印食品の牛肉産地偽装事件以来、国民は食の安全に敏感になっていますが、養殖業者は、テレビ局がホルマリンに実害があるかどうかという本質的な問題を避けて、いたずらに食の不安を煽り立てることは公正・公平を旨とする報道機関の使命にもとると抗議しています。いずれにしても、丹精込めて育て上げたフグが廃棄処分ともなれば、高級魚だけに漁民にとっては死活問題。全漁連はホルマリンの代替品にマリンサワーを許可していますが、その原料である過酸化水素水が人体に与える影響についてはまだ解明されていません。水産資源枯渇時代に入り、水産庁は「作り育てる漁業」を奨励してきましたが、養殖の「海面漁業育成策」や安全な代替薬品の開発について、私はもっと抜本的な検討が必要であろうと考えております。