北村からのメッセージ

 第63回(4月16日) 崩れた安全神話 多様化する犯罪            

 進学に就職に、希望の春が訪れました。新しい社会に巣立つ皆様には、心からお祝いを申し上げます。しかし、日本の安全神話は崩れ、ピッキング、車上盗、引ったくり、居直り強盗、ストーカー傷害から、大胆なパワーショベルのATM(現金自動預払い機)破壊に至るまで、主として不法滞在外国人による犯罪が激増、警察は取り締まりに音を上げています。携帯電話の出会い系サイトによる犯罪や、インターネット情報を利用した香典ドロ、ネット銀からの不正アクセス、老人父母をだます「俺だって詐欺」など、IT(情報技術)社会や少子高齢化社会を狙った新手口の犯罪も登場しました。イラク戦争は終息に向かっていますが、その後もイスラム過激派によるテロ、日本近海での北朝鮮のミサイル実験などが予想され、わが国は危険がいっぱいです。国元のご両親の心配は尽きません。そこで、今回は治安の悪化と対策について、皆さんと共に考えてみましょう。

 外国人の刑法犯激増

 読売新聞は2月、「治安の再生」をテーマに、「不安の侵食」をシリーズで取り上げました。特集に沿って治安の実態を見ると、98年に200万件を超えた刑法犯は、昨年は285万件に激増。それに反比例して、88年に60%を割った検挙率は、97年には40%を割り、昨年はさらに20%に落ち込んだと報じています。刑法犯で目立つのは、引ったくりなどの街頭犯罪や侵入犯で、日本の暴力団と結びついた中国人組織や韓国人の外国人犯罪が激増、外国人刑法犯の検挙件数は93年に1万件を突破、昨年は前年比33%増の2万4千件に達したそうです。80年代半ばに比べ10倍ですが、これも“氷山の一角”と見られています。横浜などを拠点とする中国人の犯罪組織は当初、被害届が出せない不法滞在中国人を狙って、誘拐、金券・クレジットカードの偽造、パチンコ店荒らしなどを重ねてきましたが、ここ数年は警戒が薄いマンションのピッキング盗が急増しています。

 ピッキング盗4年で百倍

 かぎ針状の特殊工具を使い、数十秒で鍵を開けるピッキング盗は、都内で96年まで年百件程度に過ぎなかったものが、98年には千百件まで増え、2000年には4年前の百倍の1万件、全国では2万9千件を突破したと読売は伝えています。埼玉や神奈川、千葉など首都圏全域でも激増しているようです。鍵穴の奥に小さな傷が付くのがピッキング盗の痕跡。警視庁は鍵穴を覗くスコープを全署に配備、さらに、高価なモニター付き内視鏡も導入しましたが、イタチゴッコで最近は、特殊工具を改造して痕跡を残さない新手の犯人も出始めているといいます。また、ドアと鍵のすき間に針金を差し込んで開錠する「カム送り」とか、ドアに穴を開けて内側からつまみを回す「サムターン回し」という手法もあるそうです。留守の多いマンション居住者は、精密な高性能シリンダーや2重装置の鍵などで自衛手段に出ていますが、警察庁は、ピッキングの特殊工具を所持する者に刑罰を科す新法を国会に提出する考えです。恐ろしいのは外国人の侵入盗で、発覚すると催涙スプレーを掛けたり手足を縛り上げ、強制送還を恐れて目撃者を殺害するケースもあります。

 ATM破壊も6倍に激増

 読売によると、昨年11月末、英・エコノミスト誌に「金庫破りは熟練技術者が屋内でする仕事だが、日本では違う。重機やトラックで、誰もいない路上に転がっている金庫を運ぶだけでいい」と茶化した記事が載ったそうです。ATMをパワーショベルなど重機でブースごと破壊し、1千万円以上を強奪する犯罪は昨年57件で、前年の6倍に激増しているといいます。重機は機種が同じなら1つのキーでエンジンが掛かるものが多いため、盗んだ重機を運ぶトラックと逃走用の乗用車さえあれば犯行はたやすく、プロの手に掛かれば7―8分でATMを破壊、現金収納箱抜き取りが出来るそうです。中には車に電波探知機をつけてパトカーの接近を察知したり、警察無線を傍受する例もあると聴きます。「大きな破壊音がすることだし、お巡りさんが常時パトロールすれば防止できるのでは」との声もありますが、ATMは全国で15万台以上もあり、しかも夜間の人通りがない場所にも設置されているため、覆面パトカーが隠れて警戒していても検挙は難しいといいます。

 言葉巧みに居直り強盗

 安全神話の日本では、人里離れた過疎地にもアルコール、飲料水、たばこ、コメにいたるまで自動販売機が設置されて便利ですが、ATM強盗を放置すれば、偽造コインの使用だけでなく、やがては米国などのように、ハンマーで無人スタンドが破壊される犯罪も生まれてきそうです。金融界ではATM設置に1千万円かかり、ブースの強度を高めるとさらに3、4割費用がかさむため、対策には2の足を踏んでいます。読売によると、英国のATMは3年前から、衝撃を受けると紙幣に特殊インクが吹きかけられて使えなくなる工夫がされ、ATM荒らしは途絶えたそうです。日本も見習う必要があります。注目されるのは最近、宅配便、ガス・水道検針、市の職員、郵便局員、営業マン――などを装い、言葉巧みに「上がり込み」、「居直り」、「押し入り」する強盗が増えたことです。昨年は前年比13%増の1370件を数え、5年前の倍に増えたと、読売は報じています。金品の強奪ばかりか、老婦人が殴殺、女子大生が絞殺されるなど、悲惨な事件があとを断ちません。

 年寄り騙す「俺だよ詐欺」

 ストーカー規制法は、埼玉県桶川市の女子大生刺殺事件をきっかけに制定されました。「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情と、それが満たされなかったことへの怨恨」が、規制法の対象とする「つきまとい」の動機と定めています。施行の00年11月から昨年6月までに、警察が介在した「つきまとい」などの事件は2万3千件もあったというから驚きです。「俺だよ詐欺」というのは、電話で声色を使って、相手が老父母であることを確かめ、次は息子になりすまし、「俺だよ」「お前OOかい?」「そう。OOだ!今交通事故に遭って病院にかつぎ込まれ重傷だ!友人が取りに行くから治療費を50万円渡してくれ!」とか、「今すぐ銀行に100万円を振り込まないと差し押さえられる。友人が取りに行くから」とせっぱ詰まった声を出して電話を切る手口。気も動転した父母は、何時もと違う声だと思っても「息子の一大事」とカネを用意して来訪者の犯人に手渡すという、手の込んだ詐欺事犯。結構引っかかる老人が多く、全国で被害が続出しています。

 大型、巧妙化の詐欺事件

 通常の詐欺事件も、かつての「ネズミ講」より悪質で、次第に大型化、巧妙化しています。組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で幹部8人が昨年に逮捕された「全国八葉物流」を中核とした八葉グループは、「一年間で出資金が倍になる」の誘い文句で、全国の主婦、お年寄り約4万8千人から約1,550億円を集め、うち約4万人が計約5百億円の損害を受けました。カニの殻や蜂の巣のエキスを原料にした健康食品などの販売で得た利益を配当するとの触れ込みでしたが、配当を餌に自転車操業的に資金を調達するだけ。実際の商品販売はほとんどなく、配当金を手にしたのは初期の会員に限られました。配当の味を占めた会員には親しい知人や親類を次々に勧誘させてグループ地域法人である「統括販社」の幹部会員に採用、この方式で雪だるま式に会員を増やしていきました。このため、知人が勧誘者を相手に損害賠償を求めるなど、被害者同士が訴訟合戦を起こすという悲劇が起きています。不景気に詐欺はつきものですが“うまい話”には用心が肝心です。

 訃報調べ通夜に空き巣

 友人の新聞記者はこう話しています。「福岡支社長を務めた役員OBが83歳で急逝した。未亡人は死亡した夫名義の預金を下ろすのは面倒と思い、生前を装って葬式費用4百万円を引き出し、自宅に置いて寺院で通夜を司祭した。その隙に空き巣ドロに現金と宝石類、預金通帳、印鑑を盗まれ、翌朝150万円が引き下ろされていた。計約1千万円の損害だとこぼしていた」――。葬儀場の香典ドロと違って、犯人はインターネットに掲載された各界知名氏の訃報や案内地図を入念に調べ、悠々と一晩がかりで犯行に及んだものです。一方、携帯電話の出会い系サイトをきっかけに、子供の売買春が急増、性病が蔓延するなどゆゆしき事態が起きています。今国会には子供にも罰則を科す出会い系サイト規制法案も提出の運びですが、米大手銀行「シティバンク」のネットバンキングに不正アクセスして、顧客口座から1千6百万円を盗んだ悪質事件も発生しました。

 ネットが縁の集団自殺

 驚くべきことは、インターネットの自殺志願者が利用するサイトで知り合った若い男女数人と、車内に置いた練炭火鉢の一酸化炭素中毒で集団自殺する事件が2件も発生しました。このようにIT社会を反映して、複雑多岐な犯罪がはびこっています。また、女が犯人と見られる名古屋の刃物による引ったくり殺人事件や、女子中学生による集団暴行・殺人事件など、女性犯罪も凶暴化、低年齢化しています。犯罪防止の第一線は都道府県警の警察署ですが、島国の文化・伝統である「世界一治安の良い国」を復活させ、国民の安全、財産を守るのが政治の役割。国家の安全保障ばかりでなく、私は自民党団体総局の地方自治関係団体委副委員長として、各種犯罪の取り締まりも強化していきたいと考えています。