北村からのメッセージ

 第62回(4月1日) 激戦続く統一地方選 市町村合併が論点            

 4年に1度の統一地方選が全国で熱く闘われています。15回目の今回は、21世紀最初、地方分権一括法成立後初の統一地方選で、重要な節目の選挙です。まず4月13日には、東京など11都道県知事選と長崎など44道府県議選、同27日には、667の市区町村長選と1634の市区町村議選があり、両日の選挙で全地方選挙の3割強に当たる2356件の自治体の首長選、議員選が実施されます。地方選の最大争点は市町村合併ですが、介護・福祉、家庭・教育、治安に加え地域生活共同体の崩壊などの問題が山積しています。それにイラク開戦、デフレ不況が追い打ちをかけ、株価暴落、雇用不安、商店街の空洞化、犯罪増加など、地域住民の不安が一層増大しています。政治不信からか、有権者の政党離れが目立ち、候補者の多くが「無党派」「純粋無所属」を装って闘っています。中央政治に携わる者としては情けない限りです。年内にも国会解散・総選挙が想定されますが、自民党はまず、その前哨戦である地方統一選に勝利し、保守政治の危機打開のため明確な国家戦略を再構築し、具体的なマニフェスト(数値的な政権公約)を示さなければならないと肝に銘じております。

 知事は世代交代

 3月27日に告示された知事選には、石原慎太郎東京都知事が再選出馬しましたが、“1村1品運動”で名を挙げた平松守彦大分県知事、衆院議員から首長に転じて県政に新風を吹き込んだ北川正恭三重県知事、それに神奈川、福井、佐賀の計5県知事が引退しました。早大大学院教授に招聘された北川氏は中央政界復帰が噂されていますが、平松氏らは高齢批判を受けて世代交代を進めるものです。知事の後継者には国会議員や元官僚の転身が多く見られますが、地方分権が進み知事の権限が拡大したことが、国会議員の知事志向を高めたようです。今回の統一地方選では、後半27日の投・開票に、衆参の統一補欠選挙がダブって実施される初めてのケースとなるため、さらに国民の関心が高まっています。国会ではイラク開戦に伴い、株価急落などの市場安定化、経済対策、治安強化、イラク復興・難民支援などの対応策に忙殺されていますが、我々国会議員はその合間を縫って、地方選の支援にも全力投球しなければなりません。政界に春が訪れるのは、まだ先のようです。

 半数が平成の大合併望む

 統一地方選と総選挙が同じ年に行われたのは「55年体制」以降4回ありますが、通常国会会期末の解散はなく、最も間隔が短い時でも統一地方選の半年後でした。「自分たちの選挙に疲れた地方議員は国政選挙に動いてくれないし、公明党も3ヶ月〜半年後の解散を望んでいる」と政治記者は解説しています。早くても自民党総裁選後の秋以降解散が常識でしょう。しかし、内外多難な政局では解散が何時あってもおかしくなく、心を引き締めているところです。さて、統一地方選の焦点は、「平成の大合併」と言われる市町村合併です。財政上優遇される合併特例法の期限が2年後の2005年3月に迫っているため、全国約3200市町村のうち、合併を正式に話し合う法定協議会、その前段階の任意協議会に参加した市町村は1600以上あり、全市町村の半数を超えています。長崎県でも島嶼部の合併が進み、法定協議会を経て関係町議会が可決し、一両年中に対馬市、壱岐市、五島市、新上五島町が誕生します。吉井町では2月23日、隣接の佐々、小佐々両町と合併するか、それとも佐世保市と合併するかをめぐり住民投票した結果、3町合併の支持が僅差で勝ちました。

 口だけの「三位一体」

 読売新聞の自治体首長3287人に対するアンケート調査(2月)によると、統一地方選で争点となる重要課題では、81%が市町村合併を挙げ、次いで福祉政策、地域経済活性化、地方財政再建、農林水産業対策、教育問題、地方行革、環境対策、地域起こし――の順となっています。地方の財源不足は03年度には16兆7千億円と過去最悪を更新、同年度末の地方の借金残高見通しも199兆円と10年前のほぼ2倍、と同紙は伝えています。2000年4月の地方分権一括法施行で、自治体を国の下請け機関と見なす機関委任事務が廃止され、大半が自治体固有の事務となりました。これは、権限移譲と同時に国が握る財源を大幅に地方に移譲することが前提になっています。そこで、小泉内閣は地方分権を強力に進めるため、1地方への税源移譲、2地方交付税見直し、3国庫補助金の削減・廃止――という「三位一体の改革」を打ち出しました。ところが、口だけで03年度予算を見ても、税源移譲や交付税見直しは進展せず、地方自治体の不満は高まっています。

 自治体台所は火の車

 デフレ不況で地域経済は衰退し、市町村の有力財源である固定資産税などが落ち込んだ半面、少子高齢化や介護保険の実施などによる影響で「福祉関係費」の増加、地方債残高の膨張による「公債費」の増大などで地方自治体の台所は火の車。一方、農漁町村では高齢化による後継者不足が深刻化し過疎化現象がますます進展。逆に首都圏などでは、「埼玉都民」といわれるほどベッドタウン化が進み、“車社会”による近郊の都市化現象が飽和点に達しています。こうした「生活圏」、「経済圏」、「行政圏」の急激な変化に対応しようと、市町村合併特例法が制定されました。狙いは「充実した地方自治を、少しでも安い経費で実現する」ことを目標に、生活権や経済圏が重なる自治体を合併してゴミ処理施設や消防などを一体的に運営、各種事務を合理化して人件費を節減するなど、新しい「行政圏」の下で行政運営の効率化を図ろうとするものです。明治維新、戦後に次ぐ50年に1度の「平成の大合併」といわれるゆえんです。

 在任特例と合併特例債

 合併特例法では、色々の優遇措置を講じていますが、合併誘導のアメとなっているのが「議員の在任特例」と「合併特例債」の2つです。自治体の「新設合併」の場合、本来は全議員が一旦退職し、合併後50日以内に地方自治法の人口基準に基づいた新定数で選挙を行うことになっています。ところが特例法では、合併後も任期を最長2年延長する「在任特例」、または次の選挙までの間、一時的に定数を自治法上の上限の2倍以内の範囲で増やす「定数特例」を定め、議員の身分を保障しました。この結果、1昨年5月に誕生した「さいたま市」(浦和、大宮、与野の3市合併)の場合、人口105万人なのに議員数は、2年間在任特例の100人(法定の定数上限64)で、人口350万人の横浜市の議員定数92を上回り、全国の市町村で最大の議会となっています。しかも、合併前の議員報酬は浦和、大宮両市が同額、与野市はそれを下回っていたのに新市は高い方を採用し、議会費用は約10億円も割高になっています。経費節減どころではありません。

 元利償還の7割補てん

 もう1つの誘導策は、05年3月までに合併すれば、合併に連動した公共投資のための地方債なら、元利償還の約70%を地方交付税交付金で補てんするという「合併特例債」です。これは国債の地方版であり、地方交付税を政策誘導に使う「第2の補助金」に変質させるものといえます。「自治体の借金の7割を国が肩代わりしてくれるなら」と、魅力的な財源をあてにして新庁舎に隣接する「市民センター」、「中央図書館」など次々とハコもの作りを計画する自治体が増えています。その計画に長引く不況下の大手ゼネコンや地元建設業者が群がるなど、合併バブルの様相を深めつつあります。各レベルの地方議員候補者に建設業関係者が例年以上に多いといわれます。03年度の都道府県予算案を見ても、交付金や貸付金など市町村合併支援の予算を計上している府県が多く、島が多い広島県は合併関係予算を前年度の1.6倍に当たる82億3千万円に増額しています。同様に離島が多く五島列島、壱岐、対馬の合併が進む長崎県も7,844億円の当初予算のうち、45億6千万円を合併関係費に計上しています。

 広域連合、道州制も

 市町村合併にはこのほか、生活圏、経済圏の重なり具合から「越県合併」を模索している県があります。青森・秋田の8市町村、栃木・群馬の20市町村、埼玉・茨城の2市町、静岡・神奈川の2市町、岐阜・長野の2市町、広島・山口の3市町、福岡・熊本の2市などがそれです。また、全国町村会(会長=山本文男・福岡県添田町長)は2月、市町村合併を円滑に進めるため、一定の権能を持って住民の身近な事務を行う「新自治組織」の創設と、地方分権推進のため、市町村が連携を深める広域連合の「市町村連合」(仮称)構想を打ち出しました。さらに、総務省は3月、都道府県が市町村合併と同様に、住民投票などを行わずに合併できるよう、地方自治法を改正する方針を固めた、と読売は報じています。東北の青森、秋田、岩手の3県では、合併して「道州制」に移行する論議が高まっていますが、そうした広域行政を目指して総務省も道州制の検討に入ったようです。

 強固な地方自治確立を

 このように、統一地方選では、市町村合併が大きな争点となりますが、「そんな名称では町の歴史、文化が消えてしまう」、「役場が遠くなって不自由だ」などの不満から、合併志向の市町村では新自治体の名称や新庁舎の位置決定を巡り、激しい論争が起きています。
@財政規模が大きくなれば福祉は充実できるのか
A上下水道、交通など公共料金は安くなるのか
B職員削減、行政の効率化で人件費は節減できるのか
C組織再編や職員の意識改革が出来るのか――。有権者はこれらの疑問点をよく点検し、行政の担い手を選ばなければなりません。私は多年地方議員を経験した立場から、自民党の団体総局では地方自治関連委員会の副委員長を拝命しています。まさに「中央集権から地方分権へ」の地方の時代。中央政府に依存する体質を改め、住民主体の強固な地方自治を確立する時節が到来しました。統一地方選に現れる民意を十分に尊重し、3割自治を返上し、曲がり角に来た地方自治を改革、強化していきたいと思っています。