北村からのメッセージ

 政局展望 第6回(11月16日) トップ会談で局面打開を

 世紀末は応仁の乱の始まりかーー。皆さんご存じの通り、自民党の加藤紘一元幹事長が11月10日、倒閣を宣言したことで政局は一気にきな臭くなりました。加藤氏は『国民に見放された自民党は危機的状況。タイタニック号の沈没を座して待つより船長交代だ』と、行動を起こしました。野党から内閣不信任案が出れば『同調もあり得る』ことを示唆し、『国民をいれた長い広いドラマの始まりだ』と政権奪取の決意を表明しています。
 これに対し橋本派ら主流派は『熱い鉄板の上で猫踊りをさせればいい』(橋本龍太郎元首相)と冷ややか。森政権支持で結束し加藤包囲網を狭めつつあります。内閣不信任案が可決されれば内閣総辞職か衆院解散しかありません。非主流派の造反・離党による自民党の再分裂、解散総選挙、多党化・連立による政界再々編と、激動のドラマが続きます。まさに応仁の乱による群雄割拠の戦国時代突入です。こうした緊迫政局の中で最も注目されているのが我々「21世紀クラブ」の去就。責任の重大さをひしひしと感じています。『21世紀クラブは政局のキャスティングボートを握る政治集団。政局転換の起爆剤になってほしい』ーーとの支持者の声を、第1回の北村メッセージで紹介しましたが、早くもその時節が到来しました。身が引き締まる思いです。

 我々は保守政治の改革と再生、日本の平和と国民生活の安定、21世紀の限りなき繁栄を目指し、21世紀クラブを結成しました。同志は新世紀の進路をどう策定し推進するかを日夜考え、国政に没頭してきました。現下の国情を見れば、与野党が入り乱れて権力闘争を展開するような時期ではありません。会期末まで2週間弱。政局の推移をじっくり見守り我々は一致団結、キャスティングボートを有効に行使したいと思っています。

 それにしても、加藤氏はなぜ森首相に突如退陣を迫り、ルビコンの橋を渡ってしまったのでしょうか。政界消息筋によると、『民主党の内情は四分五裂で、東京21区衆院補選の結果を見て解散総選挙には怯えている』『野党は満身創痍の森首相が攻めやすく、次期通常国会まで“張り付け”て深追いはせず、参院選で徹底的に叩く作戦だ』というのがもっぱらの観測でした。確かに、主流派の密室的な政治手法による森政権の擁立、日本人拉致疑惑を巡る首相の「第三国発見の打開策」発言など度重なる失言、加えて側近の官房長官の更迭で、森政権の支持率は10%台を低迷、株価は急落しています。『これでは参院選が戦えない』と憂慮する加藤氏は、かつて自自公連立政権を批判した持論に沿って、政策の「部分連合」で経済構造改革を推進することを唱えるなど、森首相との政治路線の違いを明確にし、密かに「ポスト森」を狙ってきました。それが、『改造では入閣しない』との消極的意思表示から『日本の政治は非常に危機的状態。エネルギーのない政治に国民は諦めに似た無力感を感じている。国民の75%が支持しない首相を支持できない』と明確な倒閣宣言にエスカレートしたのは、『森首相シンパの政治評論家との会食で挑発されてつい本音が出た』(政界消息通)からといわれてます。 しかし、一度振り上げた拳を下ろせば、加藤氏の政治生命に致命的な傷が付きます。新聞、テレビなどマスコミが予想した政局展開のケース・スタディは次の通りです。

 1.[内閣不信任案に非主流派欠席]衆院定数 480のうち加藤・山崎両派の計64人が全員欠席すると、不信任案可決に必要な過半数は 208票。野党は 190票なので18票足りないが、加藤、山崎両派に近い議員のいる21世紀クラブの9人や野党系議員を含む無所属議員の9人がともに全員欠席すると過半数は 199票。これでも自民主流派と公明、保守連合の合計票は野党を上回るが、自民主流派に同調者が出れば微妙な状況になり、政局は不安定。

 2.[不信任案の可決]主流派の江藤・亀井派を離脱した渡辺喜美氏や加藤派の若手が多い「自民党の明日を創る会」メンバーが欠席でなく賛成票を投じれば不信任案は可決へ。さらに非主流派半数の約30人が出席し賛成に回れば同案は可決され、自民党は分裂する。その場合は、かつて小沢一郎、羽田孜氏らが不信任案可決で宮沢喜一政権を倒し、離党ーー新党結成ーー野党との提携ーー自民党下野、と追い込んだように政局は混迷する。

 3.[主流派の加藤封じ込め作戦]加藤派には宮沢蔵相ら慎重派の現職閣僚や野中広務幹事長に近い古賀誠国対委員長、池田行彦元総務会長らがいて、不信任案同調に否定的な幹部が少なくない。加藤派と連携を深める山崎派にも、加藤氏が山崎拓元政調会長に何ら事前相談もなく倒閣宣言をしたことに戸惑いを感じる層がいる。そこで、橋本派ら主流派は結束を固め、内閣改造のポストをちらつかせるなど非主流派を切り崩しに努めている。 『加藤総裁の芽は 100%なくなった』と橋本派幹部がいうように、主流派は加藤氏の「ポスト森」の足場を崩そうとしている。この場合は加藤陣営の完全敗北に終わる。

 4.[暫定政権]加藤氏は『内閣支持率の急激な低下や株価の急落が重なると政権は持たないし、参院選は勝てない』と倒閣に踏み切ったが、主流派もその危険性は否定できず、総裁選の繰り上げや内閣総辞職も視野に入れている。その場合でも『後継は主流派から出す』とし、暫定政権に河野洋平外相や高村正彦・旧河本派会長を推そうとしている。中には小泉純一郎・森派会長を担ぎ出し、YKK勢力の分断を画策する動きもある。過去には「40日抗争」の果てに大平正芳氏と福田赳夫氏が首班を争ったように主流派候補と加藤氏が対立、非主流派には民主党など野党連合軍が支援して首班指名選挙を争うことになる。

 以上のように、仮に主流派の多数派工作が功を奏し不信任案が否決されたとしても自民党内には大きなしこりが残り、新世紀冒頭の政局は波乱万丈です。今国会では景気浮揚の補正予算案、新生日本を方向付けるIT(情報技術)基本法案など重要案件が山積しています。一刻の政治の空白、国政の停滞は許されません。政権抗争に明け暮れていては、国民の政治に対する閉塞感がますます深まるばかりです。

 局面打開には、首相と加藤氏双方のメンツが立つような「森・加藤トップ会談」を早急に開くなど自民党が良識を示し、国民の信頼を回復しなければなりません。一説には、野党が不信任案を提出する前に、与党の両陣営が合意できる緊急避難的な「挙党体制が組めるウルトラC候補」を擁立、来夏の参院選までの危機・選挙管理内閣を樹立して乗り切る工作も密かに水面下で進められていると聞きます。

 我々21世紀クラブは、国民の負託を受けた新時代の選良として、また新世紀のナビゲーターとして団結し、政局の推移を熟慮しながら大局的見地から積極的に発言し、的確に事態収拾の行動を起こす決意を固めております。皆さんのさらなるご支援を期待します。


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 少年法改正 第6回(11月16日)北風も、太陽も

 厳罰主義か、教育的処遇の理念尊重かーー。今国会の重要法案である少年法改正案は10月31日、衆院を通過した。現行法施行以来、半世紀ぶりの大改正である。本会議の採決では、与党3党と民主、自由両党などが賛成に回ったが、弁護士出身の反対者が多い民主党では造反者が続出、同党議員の約10人が執行部の意思に反して退席した。同法案の策定をめぐっては、与党内で「北風か、太陽か」の論争があった。現行法では青少年の健全育成の立場から厳罰主義は避け、少年法の適用年齢を20歳未満に、刑事罰の適用も16歳以上とし、家裁の審判では多くの犯人を少年院送りしてきた。「刑事処分が適当」として家裁から検察に「逆送」するケースはまれだった。ごく最近も「下着ドロの口封じ目的」で押し入った大分の一家6人殺傷事件で、大分地検は高1少年を大分家裁に送致、家裁は保護観察処分にした。岡山の金属バット殺人や栃木の嬰児殺しの17歳少年も少年院に送られている。『少年は何をやっても死刑にはならない』ーー。こうした過保護、少年たちの誤った認識が[第2回の北村発]で述べた通り、17歳男女の犯罪を多発させている。そこで自民、保守両党は、@刑事罰の適用年齢を刑法に沿って16歳以上から「14歳以上」に引き下げる A殺人・強盗などの凶悪犯罪は、裁判官の裁量によらず「原則逆送」とする B家裁決定に不服の場合、検察官に高裁への「抗告権」を認めるーーなど厳罰化を主張した。さらに保守党は、法の適用年齢を20歳未満から「18歳未満」に引き下げるよう要求した。

 これに対し公明党は「18歳未満」では公選法や民法上の成人年齢などに関わるとして反発、「14歳以上」の刑事罰には合意したものの、『中学生の場合は家裁での保護処分が原則』などの条件を提示、「原則逆送」に最後まで難色を示した。成人同様に公開の法廷で刑事責任を問われることは「保護・育成の法理念を覆す」と反対している。 

 一方、法務省は『政府案として出すなら、法制審議会にかけなければならない。臨時国会には間に合わない』と慎重姿勢を示し、学者や法曹界でも『少年法の理念を大きく変更する恐れがある』との疑念が寄せていた。このため、与党の議員立法による改正案提出となったわけだ。

 そうしたなかで先日、横須賀の少年院を脱走した少年がその日のうちに2件の強盗を働いている。少年法改正の「北風」も重要だが、施設内の保護・矯正、家庭、社会を含む全人教育の「太陽」の方も重要だ。法案審議の過程では民主党が採決直前になって反対する衆院法務委の委員を急に差し替えたり、本会議で欠席者を出すなどドタバタ劇を演じたが、審議未消化の部分もかなりあったように思う。このように問題の多い法改正だけに、成立後の法の運用は「北風」と同時に「太陽」にも十分に配慮せざるを得ないだろう。

  <少年法改正案の骨子>

*刑事罰対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げる

*16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合は、家裁から検察側へ原則逆送する

*家裁は被害者や家族に意見聴取する機会を設け、一定範囲内で事件記録の閲覧、謄写も認める

*凶悪事件などでは家裁の少年審判に検察官の立ち会いを認める

*家裁の少年審判に3人の裁判官による裁定合議制を導入する

*家裁の決定に不服がある場合、検察側は抗告受理の申し立てができる