北村からのメッセージ

 

 第59回(2月16日) 高まる消費税上げ論議 年金改正絡む


 今年は年頭から政財界首脳の間で消費税率引き上げをめぐる発言が相次ぎ、国民に不安と苛立ちを与えています。消費税の増税論議が活発化したのは、来年(04年)の年金制度改革が迫り、財源の捻出が緊急課題になってきたことが背景にあります。しかし、消費税はこれまで大平、中曽根、竹下、細川、橋本と歴代内閣を激しく揺さぶる政局の波乱要因となってきました。四月の統一地方選、今国会中にも予想される解散・総選挙を前に国民に不人気の増税論議はタブーです。そこで、小泉首相は「議論は結構だが、私の首相在任中は引き上げない」と繰り返し言明しています。与党内では「社会保障制度の抜本的改革こそが本当の『聖域なき構造改革』だ」として勉強会が発足するなど、政局がらみの動きも出てきました。消費税引き上げは、落ち込んだ国民の消費意欲をさらに減退させ、制度改正で目減りする年金生活者の暮らしを圧迫します。財源問題をどう克服し、国民が納得する社会保障制度を確立するか。私はこの1年間福祉行政と取り組んできましたが、各種選挙を勝利するためにも、より良き制度を目指し鋭意検討していきたいと念じています。

 14年度16%の奥田案

デフレ不況が加速する中で、所得税の確定申告が17日から始まります。中小企業経営者やサラリーマンにとっては年に一度、煩わしい納税制度と対面する日です。その矢先、財界首脳や閣僚が新春早々、消費税の増税に言及。国民の重税感を一層深めています。口火を切ったのは奥田碩・日本経団連会長。元旦に発表した政策提言「奥田ビジョン」で、04年度から毎年1%ずつ消費税の税率を引き上げ、2014年度には最終的に16%とする案を打ち出しました。奥田会長は「社会保障制度を持続的可能なものにするための制度設計について、国民的な議論を早急に行う必要がある。それを喚起する目的であえて消費税率引き上げに触れた。2、3年で議論を尽くしスタートしてほしい」と述べています。

各閣僚の賛同で一気噴出

「直間比率を見直し、間接税をもう少し負担してもらわざるを得ない」(塩川正十郎財務相)、「まず歳出の無駄をなくすことにウエートを置いたうえで、中長期的視点から(増税)議論は必要」(竹中平蔵経済財政・金融相)、「国民に安心感を与え、消費の拡大に繋がる」(平沼赳夫経済産業相)、「財政状況や(税率面で)他国とのバランスを考えて今後大いに議論しなくてはならない」(福田康夫官房長官)と各閣僚は、1月7日の閣議後の会見で、奥田会長が提案した社会保障費の財源確保策に賛同しました。翌8日には自民党の麻生太郎政調会長が「税金は広く薄く、という基本に立ち返れば、消費税は非常に大きな課題だ」と発言。12日には坂口力厚生労働相も「社会保障と地方財政は、増税で賄うことはやむを得ない。年金保険料を出す人の数が減る中で、将来の年金財源を確保するのは至難の業」と講演、消費税の引き上げに期待を表明、引き上げ論議は一気に噴出しました。

1%アップで財源確保

政府税制調査会(会長・石弘光一橋大学長)も1月17日から、社会保障と税制の関係を主要テーマに、中長期的な税制の在り方を検討し始めました。消費税論議が政府与党内や財界で広がっているのは、少子高齢化に伴い、増大する社会保障費を賄うために消費税率の引き上げは将来、避けて通れないとの判断があるからです。年金制度の改正は5年に1度行われていますが、前年99年(平成11年)の改正では、安定的な財源確保を前提に、来年の04年(同16年)から基礎年金(国民年金)への国庫負担割合を現行の3分の1から2分の1に引き上げることを決めています。ところが、03年(同15年)度の予算編成では、歳入に占める借金の割合を示す国債依存度は44・6%と戦後最悪。景気低迷により法人税や所得税といった直接税の伸びが期待できず、税収が歳入の6割弱という財政の赤字体質が続いています。年金の国庫負担率引き上げで初年度に必要な財源は約2兆7千億円ですが、これを消費税率に直すと1%強引き上げればよいことになります。

歴代内閣が選挙で敗北

現行の消費税制度は税率5%のうち1%分(2兆5千億円)は地方消費税で、国庫に入る4%分も、そのうち3割弱は地方交付税として地方財政に充当する仕組みです。海外では、消費税に当たる付加価値税率が昨年1月現在で、フランス19・6%、英国17・5%、ドイツ16%などと2桁が大勢となっています。財務省は諸外国並みに間接税の比率を次第に高め、年金制度など社会保障財源に充当したいのが本音です。しかし、「一般消費税」(税率5%)の大型間接税導入を最初に試みた大平正芳首相は、79年10月の総選挙で自民党の過半数割れとなり、中曽根康弘首相も87年2月、「売上税」(同5%)法案を国会に提出して、4月の統一地方選で大敗しました。後の竹下登内閣は89年4月に税率3%の消費税法を成立させたものの、リクルート事件の影響を受け、消費税を盛り込んだ89年度予算成立と引き換えに退陣。同年7月の参院選で大敗した後継の宇野宗佑内閣もわずか2ヶ月で総辞職。細川護煕内閣は94年2月、消費税を「国民福祉税」に改め、税率を7%に引き上げる意向を表明しましたが、連立を組む社会党などの猛反対で5日後に撤回、退陣に追い込まれました。橋本龍太郎内閣は98年4月から税率を5%に引き上げて、同年7月の参院選で敗北し退陣しました。このように消費税は歴代内閣にとって鬼門です。

封印の首相こそ守旧派

このため、9月に総裁再選を目指す小泉首相は、「私の任期中は引き上げない」と再三、消費税の増税論議に封印をしてきました。しかし、社会保障費の財源破綻を懸念する与党内には、消費税率引き上げを念頭に社会保障制度の抜本改革を迫る動きが現れました。自民党“抵抗勢力”のドンとされる野中広務元幹事長や古賀誠前幹事長、保守新党の二階俊博幹事長らの勉強会がそれです。道路公団民営化で首相と対立した古賀道路調査会長は「これこそ真の構造改革」と、総裁選前に提言を取りまとめる方針です。自民党内には「勉強会が改革派で、消費税封印の首相が守旧派だ」との声も挙がっていますが、政局絡みで消費税率引き上げ論議が高まれば、首相の解散権を縛る結果にもなりかねないようです。

公費負担57兆円に急増

いずれにしても、少子高齢化で年金給付額は今後も増大の一途。厚生労働省は昨年末に、保険料を将来固定し、給付額を財政状況に合わせ上下させる新方式を提案しました。紙数の都合で詳細は次回以降に譲りますが、その新方式でも国民負担は厚生年金・国民年金だけで05年度の8兆8千億円から25年には13兆5千億円に増えるといいます。また、同省の推計だと、年金・医療・介護に対する公費負担は、現行制度を維持した場合、05年度の25兆円から25年度には57兆円まで急増すると見込まれます。これを消費税で賄うなら欧州並みの2桁の税率が必至でしょう。欧州では食料品など生活必需品を低税率に抑える複数税率化が進んでいますが、消費税の見直しにはきめ細かな配慮が必要です。財界は「社会保障費の負担増大が、企業の国際競争力を失わせる重荷になっている」として、消費税引き上げ論議に火を付けていますが、経済再生による税収回復こそが最良の解決策です。今年は年金制度、医療、介護など社会保障の改革がデフレ克服と並ぶ最大の課題ですが、私は大いに勉強して財政、税制と公費負担の在り方を包括的に検討、新時代の社会保障制度を確立していきたいと考えています。