北村からのメッセージ

 

 第57回(1月16日) 波乱含み通常国会 経済・防衛で白熱

 暦のうえで正月休みはたっぷり10日近くもあり、皆様は家族の団らん、旅行にと素晴らしい新年を過ごされたことでしょう。私も久方ぶりに選挙区の皆さんと国政をゆっくり語り合うなど有意義な正月を送りました。残念ながら高校サッカーで長崎・国見高校の3連覇は成リませんでしたが、13日に成人の日を迎えた全国152万人の成人諸君には心から「おめでとう」とお祝い申し上げます。それにしても、暮れから正月にかけて寒気団が日本列島を襲い、九州、四国の一部にも雪が降るなど底冷えの日々が続きました。何やら政治、経済、社会生活の全てに厳しい「冬の季節」到来を暗示していますね。いよいよ第156通常国会は20日に召集されますが、解散政局の中で与野党の対決姿勢は強まり、波乱含みの展開となりそうです。今年も大いに活躍しますが、よろしくご支援下さい。

 疾風怒濤の年

 「内憂外患こもごも疾風怒濤のごとく来る年だ。小泉政権のエネルギーで疾風怒濤のごとく乗り越えて参りたい」――。自民党の山崎拓幹事長は4日、こう決意を述べました。国会ではデフレ経済の克服と、イラク・北朝鮮情勢への対応が最大課題。まず、都市や地方の再生に重点を置いた公共投資に1・5兆円、不良債権処理に伴う雇用対策や中小企業支援策などセーフティネット(安全網)整備に1・5兆円を充当する02年度補正予算を1月中に成立させることを目指します。野党は国債の追加発行額が5兆円を超えたことから、「国債発行30兆円枠堅持の公約違反」と激しく追及しています。次に、24日提出の03年度予算案の年度内成立を図りますが、デフレ不況が募るさ中、企業は3月期決算に向けて青息吐息。経済再生が最大の焦点になります。米大統領は減税の前倒しなど10年間に総額6740億ドル(約80兆8千億円)の史上最大の総合経済対策を発表しましたが、米国に比べると日本の来年度予算、税制改正は緊縮基調が目立ち、やや心配です。

 統一地方選控え攻防激化

 野党は小泉内閣の“経済失政”がデフレ不況をもたらしたとして、国会では厳しく追及する構えです。とくに東京都、神奈川県などの知事選や県議選(4月13日投票)、各県の市長選、市町村議選(同27日投票)など4年に1度の統一地方選が迫っており、党勢拡大を意識して与野党の国会攻防は一段と激しさを増すと思われます。統一地方選後の国会では重要法案が目白押し。中でも有事関連3法案と個人情報保護法案、イラク復興支援新法案(仮称)などの審議が山場を迎え、衆院の有事法制特別委だけでなく私の所属する安全保障委員会でも安保の審議を尽くすことになります。有事関連3法案は「武力攻撃への対応に関する基本原則や、有事における自衛隊の円滑な活動、安全保障会議の機能強化」などが骨子で、与党は昨年秋の臨時国会で、不審船や大規模テロなどへの対処を新たに盛り込んだ修正案をまとめましたが、野党各党は同案に反対、継続審議になっています。

 イラク攻撃と有事法制

 イラクでは国連による核兵器などの大量破壊兵器の査察が進んでいます。結果次第で米国は早ければ今月中か来月にもイラク攻撃を決断する構えで、ペルシャ湾岸に空母4隻、B1爆撃機3機を集結、海兵隊ら約3万5千人を新たに派遣し、地上兵力は湾岸戦争当時に派遣した25万人の約半分に当たる約12万人以上に膨らませる計画を着々と進めています。これに対し、イラクのサダム・フセイン大統領は「国連査察はイラク軍基地や合法的な軍事製品に関する完全なスパイ(諜報)活動」と非難、「我々はあらゆることに対する準備を完了した。空中戦で負けてもライフル銃の地上戦では勝てる」と国営テレビで徹底抗戦の演説をぶち挙げました。未(ひつじ)歳は動乱の年。12年前は湾岸戦争が起きており、今年も一触即発の危機を迎えています。しかし、フランス、ロシア、中国の国連安保常任理事国は、イラクの査察に拒否権は発動しなかったものの、「米国のイラク攻撃の狙いは、イラク原油にある」と見て、米国の早期攻撃には冷ややかな態度です。

 米の狙いは石油権益

 イラクは、サウジアラビアに次いで世界第2位の1120億バレルの原油埋蔵量を誇っています。湾岸戦争後、国連の経済制裁で原油輸出は食糧、医薬品など人道物資輸入のためだけに許されていますが、イラク原油が世界市場に放出されれば需給が緩んで、原油価格は一気に下落し“原油市場の民主化”が進むと予想されます。石油産業の多いテキサス州出身のブッシュ米大統領がイラク戦争に勝利し、イラクの石油権益を獲得すれば、米国の市場影響力は倍加するとして各国は警戒しているわけです。米国と共同歩調を取り続けた英国も最近は慎重な姿勢に転じており、開戦がいつになるか、全く予断を許さない情勢です。いずれにしても、日本は原油輸入の約9割を中東地域に依存しており、中東が不安定になれば日本経済は大打撃を受けます。イラク戦争が始まった場合に備え、アフガニスタンでの米英軍を後方支援する最新鋭のイージス艦を派遣しましたが、ペルシャ湾航行の日本タンカーを守るために海上警備行動を発令して、護衛艦を派遣することも検討中です。

 緊張の北朝鮮核開発

 イラク攻撃が開始となれば、民間人の死亡だけでなく大量の負傷者、難民が予想されますが、政府が攻撃時に提出予定のイラク復興支援新法案は、戦争後のインフラ復旧や化学兵器の処理に自衛隊を活用する内容となる見通しです。一方、北朝鮮の核開発計画問題が日朝正常化交渉再開のアキレス腱となって日朝会談は暗礁に乗り上げ、北東アジアの緊張を高めています。日朝首脳会談に前後してケリー米国務次官補が訪朝した際、北朝鮮が核兵器に転用できる濃縮ウラン利用の原発をひそかに開発しているのを認めたことがこの問題の発端。米国は米朝枠組み合意の約束違反として、重油50万トンの供給をストップしましたが、北朝鮮は「電力不足を補うためにも凍結原子炉の稼働再開は当然であり、民族の尊厳と生存権確保のために自衛手段を講じざるを得ない」として、核査察カメラに覆いをかけ、国際原子力機関(IAEA)の査察官を国外に追放しました。平然と約束を反故にしながら、米国に責任を転嫁するあたり「盗人猛々しい」という表現がぴったりします。

 北の瀬戸際外交

 ここから北朝鮮の、危機直前まで突っ張る“チキンレース”が、米国に対し仕掛けられました。お得意の瀬戸際外交です。IAEAに対する書簡では「中断した原子力発電所の建設を完成させ、(使用済み)燃料棒を安全に保管する準備の一環として、放射化学研究所(再処理施設)も稼働させる」と述べ、プルトニウム抽出に繋がる核燃料の再処理施設の再稼働も短期間に完了することを表明しました。これに対し、米国が北への経済封じ込め政策を唱えると、北朝鮮は核不拡散条約(NPT)からの脱退と、IAEA核査察協定の拘束から完全に離脱することを宣言しました。一方ではイエメンにミサイル輸出の貨物船を送ったり、38度線の南北休戦ラインに機関銃を配備したり、わざと米国を刺激する行為に出ています。これは米国が対イラク戦に忙殺されている間は北朝鮮を攻撃することはないと見て、94年当時に成功した瀬戸際外交を再び展開しているといえましょう。

 米は封じ込め政策

 94年6月の核危機では、当時の金日成主席を相手にクリントン政権が北への軍事攻撃を決意する直前まで緊張を高めましたが、カーター元大統領が仲介に入り、北朝鮮の濃縮ウラン利用原発の建設を凍結する代わりに、米国が日韓協力のもとに朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を発足させ、軽水炉型原発を建設、完成まで重油50万トンを毎年供給することで米朝の枠組み合意が成立、北朝鮮の思惑は達成されました。後継の金正日総書記もこの瀬戸際外交を踏襲しています。だが、ブッシュ大統領はクリントン政権のように甘くはありません。あくまでもブッシュ氏は、イラク、北朝鮮をイランと並ぶ「悪の枢軸」と決めつけ、北朝鮮への外向的、経済的圧力を強める新たな封じ込め政策を採ろうとしています。それは、北朝鮮が核施設の再稼働を止めなければ国連安保理事会に働きかけ、禁輸措置、送金の停止などの経済制裁を科すとともに、北朝鮮船舶のミサイル輸出に対する臨検や航行阻止などで大量破壊兵器の拡散防止や兵器輸出の収入源を断つ方針です。

 核放棄の代償否定

 北朝鮮の経済は日韓両国から送られるカネで何とか動いていますが、米国の封じ込め政策の中で日韓両国の対北朝鮮貿易制限が中核に据えられると、北朝鮮の経済は干上がります。昨年末の韓国大統領選では廬武鉉氏が次期大統領に選出されました。2月就任の廬氏は金大中大統領の「太陽政策」を継承する融和政策を掲げていますが、北朝鮮は分厚い「核のマント」を着込み、次々に核カードを切ろうとしています。7日にワシントンで開かれた日米韓3カ国の対北朝鮮政策調整会合(TCOG)で米国は、韓国の要請も受け、ようやく「北朝鮮と対話の用意がある」ことを表明しましたが、共同声明では「米政府は北朝鮮に核開発放棄の義務を履行させるための代償は与えない」と強調しています。「代償」とは北朝鮮が求める「相互不可侵条約」と同条約制定に伴う北朝鮮への優遇措置を指します。

 ミサイル実験で緊迫

 北朝鮮は韓国が「太陽政策」で援助した金剛山の観光開発資金(約5億ドル)を軍事費につぎ込んだと想定されているほか、干ばつなどの農作物被害で数百万人の国民が飢餓状態にあるといわれています。最貧国同然に国家経済は疲弊しており、膨大な費用がかかる核施設の再稼動は到底出来ないとの見方もあります。米国が核放棄の代償を否定すれば、北朝鮮は我慢できずに折れてきて、瀬戸際外交は破綻するとブッシュ大統領は読んでいるようです。その場合、膠着状態にある日朝交渉にも若干好転の兆しが芽生えるかもしれません。しかし、NPT脱退宣言の翌11日、首都の平壌では100万人の反米集会が開かれ、開戦前夜の光景を呈しました。北朝鮮の駐中国大使は同日の記者会見で、03年までの凍結継続を表明していたミサイル発射実験の再開があり得ると述べました。まさに北朝鮮は、鉄製の龍にカマキリが刃向かう2“蟷螂の斧”のような姿勢ですが、前にも指摘したように、日本列島周辺でノドン、テポドンなどの実験が行われれば、昨年9月の小泉訪朝で調印した日朝平壌宣言に違反するばかりか、日本国内は一挙に緊迫し騒然となるでしょう。

 重要法案は目白押し

 有事関連3法案の国会審議はこうした要素も絡まり、白熱した論議を呼びそうですが、内閣法制局の『持っているが、行使は出来ない』といった論理矛盾の集団的自衛権の解釈などは国際常識からみてもおかしく、大きな論議を呼ぶことは必然です。山崎幹事長は有事法制の審議だけでも大幅な会期延長が必要だとし、「6月の会期末や、大幅延長があった場合は9月の総裁選直前の衆院解散・総選挙がありうる」と述べ、党総務会で野中広務元幹事長から「不謹慎な発言だ」と抗議を受ける一幕がありました。山崎幹事長は、総裁選前の総選挙で自民党が勝利した場合、小泉首相が無投票で総裁に再選されることを意識して発言したものと見られています。重要法案はこのほか、教育基本法、雇用保険法、食品衛生法、外為法、祝日法の各改正案、産業再生機構設置法案、出会い系サイト規制法案、裁判迅速化促進法案(いずれも仮称)、人権擁護法案など盛りだくさんですが、紙面の都合で割愛し、今回は最も注目される有事法制と防衛問題に絞りました。他の法案は次回以降に解説したいと思います。故郷の正月で十分英気を養った私は、重要法案の法制化に向けて各委員会で論陣を張ろうと、闘志を燃やしているところです。