北村からのメッセージ

 

 第56回(1月1日) 加速する解散風 小泉政権、綱渡り国会             


明けましておめでとうございます。深刻なデフレ、株価の低迷、緊迫したイラク情勢。今年も不透明な年明けですね。でも干支の癸未(みずのとひつじ)は、古来より金運招来、家運隆盛の年。「羊」は太陽の「陽」に通じます。皆さんも元気を取り戻し、明るい新年を過ごして頂きたいと念願しております。保守本流の宏池会(堀内派)に属する者としては、政策集団の英知を傾け、一刻も早く不況トンネルを抜け出せるよう努力したいと考えています。昨年末の臨時国会は野党の非力も手伝い、政府提案の71法案が全て成立。議員提案は「北朝鮮による拉致被害者支援法」など5本、継続法案も7本が成立しました。衆院議運委の1メンバーとして、この成果を喜んでいます。解散含みの通常国会は1月20日に開幕し、与野党の激しい攻防が予想されますが、懸命に働き、実質15ヶ月予算を早期に成立させ、景気浮揚に繋げたいと張り切っています。もちろん総選挙があれば必勝する決意を固めています。年頭に当たり、皆様の変わらぬご声援をお願い申し上げます。

4通りの解散予測

「小泉首相は意外と政局が好きなので、(解散・総選挙が)いつあっても不思議ではない。道路公団や郵政公社、義務教育費国庫負担金見直しなどに、政治がどう(役割を)果たして行くかによって総裁選のあり方(が変わること)になってくる」――。自民党の野中広務元幹事長は昨年11月中旬、共同通信社の講演で解散問題を聞かれるとこう答え、首相の再選阻止に動く気配を見せました。古賀誠前幹事長も昨年末「冒頭解散もあり得る」との趣旨で発言し、解散政局は一挙に火が付きました。小泉首相は早期解散に否定的ですが、マスコミは、「02年度補正予算成立後の冒頭解散」、「03年度本予算成立後の統一地方選挙後半戦と抱き合わせの総選挙」、「金融再生策など重要法案成立後の会期末解散」、「9月の自民党総裁選直前の臨時国会での解散」――の4通りを予測、選挙報道の態勢を固めているようです。吹き出したら止まらないのが解散風。各党代議士が浮き足立つのは当然です。

衆参ダブル選は消える

それに輪を掛けたのが、昨年暮れの民主党の両院議員総会で菅直人氏が党代表に返り咲いたことです。同党はお家騒動でガタピシしましたが、結局、総選挙を戦う野党第一党の顔は菅氏以外にないとして選出されたからです。早期解散には、これまで公明党が反対してきたため、04年夏に任期が切れる衆院と参院を同時に行うダブル選挙の可能性が強いと見られていました。ところが、ダブル選では与党間の選挙協力が期待できず、神崎武法代表が「衆院と参院の選挙制度は違う。同時選挙だと大変な混乱が起きる危険性がある」とダブル選を避ける発言をするなど、同党の総選挙対応が変化しています。この発言も解散政局を加速させたといえましょう。世論が頼りの小泉政権は、1年前の田中真紀子外相更迭で急落した内閣支持率を挽回しようと郵政民営化構想、意表を突いた中幅の内閣改造、日朝国交正常化交渉の再開など大向こう受けする政治課題を次々と繰り出し、何とか60%台の支持率を維持してきました。しかし、内閣発足後2年近く経っても一枚看板の構造改革は、必ずしも成果が上がったとはいえず、しわ寄せは中小企業に苦しく、財界の点数は辛くなりました。不穏なイラク情勢に加え、日朝交渉も膠着状態のままです。

地方議員も政策転換求む

首相は郵政民営化に次ぐ道路4公団改革で悪戦苦闘し、野党よりも自民党内の“抵抗勢力”との闘いに精力を消耗しています。そうした中で自民党内には昨年11月末、地方議員や首長など約6百人が参加して「日本再生改革議員会議」を結成し、参加者は「打倒小泉!」「独裁政治は許されない」などと口々に叫び、「政策転換か総辞職」を求める決議を採択しました。自民党の地方議員といえば、総裁選で小泉支持の原動力になった頼みの集団。この「反小泉集会」は党内で首相の経済政策を厳しく批判する江藤・亀井派が事実上企画したと見られています。大会には同派の亀井静香会長代行や桜井新参院議員のほか、橋本派からも重鎮の野中元幹事長、久間章生政調会長代理らが出席したといいます。

手品みたいな選択肢

亀井氏は各地の講演で「小泉政権の寿命は9月の総裁選までと官僚も判断し、完全なレ−ムダック(死に体)だ。誤りは誤りとして率直に認め有終の美を飾られることを願っている」と批判、同派の江藤隆美会長と一緒に首相官邸に乗り込み、公然と首相退陣を迫ったそうです。注目されるのは国民的人気の高い石原慎太郎東京都知事の動向。石原都知事は亀井、野中両氏と定期的会合を重ねている一方、小泉首相とも時々官邸で会っており、昨年11月初旬には「自民党は絶対、総裁選で(小泉首相を)推さないが、首相を続ける選択肢もあるぞ」と進言したといわれます。これは、総裁選に敗れても退陣せずに解散・総選挙に打って出て、民主党などと首班指名で新たな連立を組み、政界再編を図ることを意味するように見られます。手品みたいな話ですが、選択肢の1つには挙げられましょう。

不気味な「石原新党」論

森喜朗政権の末期に都市議員を中心に「石原新党」論が浮上したことがありますが、その黒幕的存在の亀井氏は「都知事では日本を変えることは出来ないと感じ、国政(復帰)への思いはあるだろう」と新党の可能性に言及しています。石原氏は既に都知事への再選出馬を匂わしていますが、暗殺された石井紘基民主党議員の4月補選に東京6区(世田谷区)から立候補するとの噂が流れており、解散が早まれば国政へ鞍替えすることが十分予想されます。出馬すれば当選間違いなく、自民党が6区の補選候補に内定した越智通雄元経企庁長官(故・福田赳夫首相の女婿)にとっては脅威となりましょう。

唐突な決断が小泉流

そうした意味で解散のケースを想定すると、「石原新党」を封じる思惑や、補正予算案を臨時国会ではなく通常国会の冒頭で処理する方針を決めたことで、冒頭解散はまず消えたと見るのが常識でしょう。次に、補正予算が執行に移り、03年度本予算が3月末に成立して景気好転の兆しがあれば、4月解散、地方統一選との抱き合わせの総選挙が有力になります。さらに、前国会で積み残した有事法制関連、個人情報保護や、税制改革など重要法案が成立すれば、首相は「国政に空白は生じない」として、解散を決断するでしょう。逆に道路改革の党内対立が激化したり、国会運営が激しい与野党攻防で行き詰まるか、イラク情勢や日朝交渉で不測の事態が起きた場合などは、国民に信を問うため、躊躇なく抜き打ち的に解散を断行すると予想されます。小泉首相は郵政民営化の攻防の際にも伝家の宝刀の鯉口を切って抵抗勢力に脅しをかけました。いつも唐突に決断するのが小泉流です。

3兆円の「真水」補正

首相は秋の総裁再選で5年続投の長期政権を狙って、構造改革路線から徐々に景気対策重視に舵を切り替えています。02年度補正予算案では、都市や地方の再生に重点を置いた公共投資に1・5兆円、不良債権処理に伴う雇用対策や中小企業支援策などセーフティネット(安全網)整備に1・5兆円をそれぞれ充当、この「真水」の3兆円に公共投資など地方自治体の負担額などを合わせると4・4兆円。これに、中小企業向けの融資枠や信用保証枠などを加えると事業規模は14・8兆円になります。災害対策や医療費増など義務的経費の増加に約1・2兆円、税収不足2・5兆円の穴埋めが必要ですが、この分は公務員給与の引き下げや、経費の節減など歳出抑制で賄うこととし、国債の追加発行額は5兆円程度となりました。野党は首相の「30兆円枠堅持」の公約違反と追及する構えです。

国民負担増で厳しい闘い

03年度予算は社会保障費など義務的経費の伸びを抑え切れず、一般会計は82兆円弱にとどまる見込みです。このため、公共事業費を前年度同様、3%削減するなど緊縮財政となりました。本予算は02年度補正予算と一体で、実質15ヶ月の「デフレ克服」予算ですが、これで不良債権処理の加速による企業倒産・失業の増加、株価の低落、医療費をはじめとする国民の負担増などを救うのは容易でありません。それに税制改正では庶民には不評の酒類、たばこの値上げも加わりました。首相にとってはまさに綱渡り国会です。昨年10月の衆参統一補選で自民党は圧勝しましたが、それに先立つ横浜市長選は旧民主党系の議員に敗れ、その後も県都の市長選で無党派市長が続々誕生しています。一頃の小泉ブームは去り、総選挙は厳しい闘いになりそうですが、私は国民生活の向上のため国会で精一杯働き、同時に総選挙を戦う態勢を整えて行きたいと考えております。