北村からのメッセージ

 

 第55回(12月16日) “場外乱闘”2題 道路公団民営化             


臨時国会は、野党の内閣不信任案提出もなく12月13日、平穏に閉幕しました。衆院議運委に席を置く私としては、温和な議会運営にほっとしています。野党第1党の民主党がお家騒動を起こし野党攻勢に迫力を欠いたこと、02年度補正予算案の提出や、継続審議の有事法制3法案、個人情報保護法案を次期通常国会に先送りしたことが国会波乱の芽を摘みました。しかし、民主党内の抗争で鳩山由紀夫党代表が辞任する一方、道路4公団民営化推進委の内ゲバで今井敬委員長が辞任するなど“場外乱闘”が激化し、今後の政局に暗影を投げかけています。政府与党は国会閉幕と同時に補正を含めた15ヶ月予算編成に本格的に取り組みますが、閉幕の13日は魔の金曜日。なにやら気の重い年の瀬です。

高速道建設にブレーキ

 民主党の鳩山前代表は、幹事長人事の不手際、衆参統一補選敗北の責めを受け、野党結集・新党構想で局面打開しようと「最後の賭け」に出ましたが失敗して退陣。10日の両院議員総会の選挙で、菅直人前幹事長が代表に返り咲きました。党首選を争った岡田克也幹事長代理を後継の幹事長に据え、対決色を強めています。一方、道路4公団民営化推進委は今井委員長を辞任に追い込んでまで最終報告(意見書)を多数決でまとめました。高速道建設にブレーキを掛ける内容で、与党や地方の反発は強烈です。関連法制を2百本も手直しするため関連法案は再来年の通常国会に提出されますが、これをいかに処理するか。小泉首相は対野党よりも、自民党内の“抵抗勢力”との攻防が一層激化すると予想されます。

 4公団を5つに再編

最終報告が打ち出した民営化後の組織形態は、高速道路の管理と建設を担う民営化会社(上)と、4公団の道路資産と債務を引き継ぐ公的組織の保有・債務返済機構(下)を設立する「上下分離方式」です。民営化会社はリース料を保有機構に支払い、その全額を機構は債務の返済に充てるが、機構の税負担は軽減する考えです。4公団を民営化した上部組織の会社は5つに再編し、日本道路公団(JH)を北海道、東北、関東各県と新潟県の「東日本」、東海4県など東名・名神高速と中央高速の「中日本」、関西、北陸以西と本四連絡橋公団の「西日本」に3分割します。首都高速と阪神高速道路公団は、現在JHが管理している周辺の道路を組み込み、独立させる方針です。JHでは稼ぎ頭の東名、名神の料金収入を全国一帯で使う「プール制」が不採算路線の拡大に繋がったとし、分割することで競争原理を働かせる狙いがあります。

建設継続と抑制派が対立

以上が道路公団民営化の基本構想ですが、最終報告に至るまでには、国土交通省出向者の事務局案に乗る今井委員長(新日鉄会長)、中村英夫(武蔵工大教授)の建設継続派2委員と、田中一昭委員長代理(拓殖大教授)、松田昌士(JR東日本会長)、猪瀬直樹(作家)、大宅映子(評論家)、川本裕子(経営コンサルタント)ら建設抑制派5委員が激しく対立しました。松田氏は

@ 保有機構は発足後10年をめどに解散する

A 民営化会社は10年をめどに機構から道路資産を買い取る

B リース料は約40年間の元利均等返還をベースに長期定額で設定。全額を債務返済に充てる

C 今後の高速道の建設は民間会社が自ら調達。政府保証措置や財投資金の活用を認めない

D 通行料金は民営化と同時に総額で1割引き下げる

E 民営化会社は資産を買い取った後、早期に上場を目指す――など民営化後の資産の取り扱いを厳しくすることで高速道路建設にブレーキを掛ける松田案を提示しました。

事務局は資金調達に3案

つまり、料金収入の使途は債務返済を最優先し、次は料金を引き下げ、高速道建設は最後に回すというもので、今後の高速道建設に一定の歯止めを掛けようとしています。これに対し事務局案は、「未整備の計画路線2300キロの建設中止は許さない」とする党側の主張を入れ、建設費の調達方法に3案を打ち出しました。これは通行料金収入の一部を建設費に回し、民営化会社に高速道建設を義務づけるなど国の強い権限を認める内容です。事務局の最終案では、保有機構の解散、道路資産の買い取り時期は明示せず、リース料は50年を上限に長期固定を設定、高速道の建設も民営化会社が主体的に投資を決定し十分な担保措置を講じる――など、高速道の建設体制を維持する慎重な案を策定しました。

鉄屋、鉄道屋の争い

「国鉄改革の時と小泉内閣は違う」(今井委員長)、「鉄道屋がまとめるのはおかしい」(中村委員)と慎重派が言えば、「鉄道屋とは無礼だ。多数が少数に何故歩み寄る必要があるのか」と松田委員が応酬して今井委員長の解任動議を提出するなど、11月末の委員会は荒れ模様。議事が公開されているだけに、大詰めの委員会は感情的な対立が国民に露わに伝わりました。小泉首相が構造改革推進の「7人の侍」と頼りにした推進委は、「7人の侍の中に敵方の野武士が混じっている」(猪瀬委員)と批判するほど、不信感に満ちた会議となり、とげとげしい雰囲気に包まれたようです。「鉄屋」、「鉄道屋」の確執には、「鉄筋コンクリートの需要を道路建設に期待」する製鉄業と、「鉄道の需要を道路網に侵食されたくない」とするJR、私鉄などの思惑が背景にあるかのように、国民の目には映りました。

“多数決”に委員長辞任

 「行政が受け入れる案でなければだめだ」――。関連法案の国会審議が困難視されることから、今井委員長は12月6日の最終委員会で、公団民営化の積極派と慎重派のそれぞれの改革案を最終報告に併記する収拾案を提示。これに猪瀬氏ら5委員が反対すると、あっさり委員長を辞任して退席し、5委員が賛成した意見書が多数決で最終報告に決定しました。「財界総理」といわれる経団連会長を2期4年も務めた今井氏は、次期日銀総裁の有力候補とされていましたが、こうした不名誉な辞任劇で不幸にも、今井氏の指導力にカゲリが生じたとの見方が強まっています。ともあれ、最終報告は上記の骨子通りですが、05年4月に予定される民営化の意義について「必要性の乏しい道路建設をストップし、40兆円に達する4公団の債務を国民負担が出来るだけ少なくなるように返済することを第一優先順位とする」と明記、新規の道路建設は

@ 民営化会社が採算性に基づき自主的に決定し、建設資金を自力で調達する

A 投資能力が減る分は国や地方との合併施行方式で補う――など、新規建設に厳しい歯止めをかけています。

 40兆円の債務処理優先

 とりわけ、現在、40兆円の債務を約40年の長期定額(元利均等)方式で返済するとしたことが最大の特徴で、JHでは年約1兆円に上っている投資余力が1,2千億円程度に圧縮されます。これにより、民営会社が採算の取れる道路しか自己資金で建設せず、採算を超える分は、国・地方に財源負担を求めることになります。建設方法では

@ 国・地方と民営会社が共同で財源を負担し、建設する「整備新幹線方式」

A 民営化会社が利益や自己調達資金で建設する「内部留保方式」

B 国と地方が税金で建設し、民営化会社が単なる施工業者として参画する「直轄方式」の3案が例示されています。これまで公団丸抱えで建設されていた高速道路の概念は大きく変わり、地方も応分の負担を迫られるわけです。

 自民党、地方は猛反対

 このため、自民党は、「多数決で決めるのは極めて遺憾」(古賀誠・道路調査会長)、「あきれてコメントも出来ない」(村岡兼造・与党高速道路建設推進議連会長)、「自公保3党と小泉首相の政策が対立している法律は、議会で通さない」(亀井静香・前政調会長)と口々に激しく推進委の決定を批判し、高速道推進議連は「通行料金収入を最大限活用して未整備路線の建設」を求める決議を採択、県知事も強く反対しています。国土交通省の幹部ですら「事実上、道路建設が出来ない非現実的な案」と反発しました。高速道は国土開発の基幹事業。鉄道を見ても、約10年間遅れた整備新幹線の盛岡―八戸ルートが開通した時の地域住民の喜びは計り知れず、経済的波及効果は絶大なものです。継ぎはぎの高速道路も計画路線が完成して初めて観光、流通、地場産業育成などの面で経済効果が現れるものです。

 計画路線の早期整備を

先進国の多くは国税を投入して高速道を整備し、無料化が進んでいます。採算性だけを重視しての道路行政は誤りでしょう。6車線を対面2車線に変更する案もありますが、地方の計画路線は早急に整備しなければなりません。最終報告の具体化は3段階に分かれています。第1は政府部内の法案作成作業で、05年4月発足予定の民営化会社や保有・債務返済機構の設置など改革関連法案約2百本を再来年の通常国会に提出します。第2は法案の国会提出に際しての与党内承認手続きで、自民党部会―政調審議会―総務会の関門があります。さらに、第3は国会での法案審議で、つぶすことも修正することも可能です。7月成立の郵政公社関連法で、首相は党内手続きを経ずに法案を国会に提出、党側と激しく対立しましたが、今回も同様な措置をとることが予想されます。私はこの1年間の法制化作業を見守りつつ、地方が納得いく形で成案を得るよう積極的に取り組みたいと念じています。