北村からのメッセージ

 

 第54回(12月1日) 国債発行5兆円追加 補正分捕り合戦


慌ただしい師走となりました。自民党議員も臨時国会の審議と並行して、02年度の補正予算案と03年度の本予算案編成に向けて忙しく、日夜汗を流しております。小泉首相は政府・与党の合意を受けて、11月22日の閣議で、02年度補正予算案の編成作業に着手するよう各閣僚に指示しました。政府・与党の合意事項は、都市や地方の再生などに重点を置いた公共投資に1・5兆円、不良債権処理に伴う雇用対策や中小企業支援策などセーフティネット(安全網)整備に1・5兆円をそれぞれ充当、この3兆円に加え、災害対策や医療費増など義務的経費の増加に約1・2兆円、税収不足2・8兆円の穴埋めが必要ですが、この分は公務員給与の引き下げや、経費の節減など歳出抑制で賄うこととし、国債の追加発行額は5兆円程度になる見通しです。

党は5割増で押し切る

「国債発行30兆円枠の堅持、従来型公共投資の抑制」――。これが小泉政権発足以来の公約でした。しかし、景気低迷により大幅な税収不足の穴埋めを迫られ、金融再生策実施に伴う不良債権処理の加速でデフレ圧力の増大が懸念され、自民党の堀内光雄総務会長が真っ先に「10兆円規模の補正予算」を要求。これに野中広務元幹事長、古賀誠前幹事長が同調するなど、党内では公共事業による需要対策を5―7兆円規模に膨らまそうとする大合唱が起きました。このため、財政規律を重視してきた小泉首相、塩川正十郎財務相も景気刺激策を補正に盛り込まざるを得なくなりました。この結果、公共投資1兆円、セーフティネット1兆円の当初案は、5割増に党側から押し切られました。首相は記者団に「税収欠陥への対応、デフレに伴う総合対応策の手当、構造改革路線の強化という観点から補正予算編成を指示した。経済は生き物でしょ。政策転換なんか全くしていない」と“改革路線の強化”を強調しています。だが、野党は明らかな公約違反、政策転換だとして、同25日の参院予算委で激しく追及しました。

安全網と新規公共投資

各省庁は首相の指示を受けて、計3兆円の予算枠獲得を狙い、分捕り合戦を展開していますが、補正予算の目玉は不良債権処理の加速に伴う「安全網」の整備と即効性の高い「新規の公共投資」。厚生労働省は中高年者を雇った場合に助成する特別奨励金の大幅拡充と、リストラされた労働者の支援特別奨励金や、自治体での臨時雇用を奨める「緊急地域雇用創出特別交付金」の金額上乗せを図っています。雇用保険料の引き上げ凍結問題もにわかに浮上、補正予算で一般会計から繰り入れることを検討しています。経済産業省は、中小企業向け融資の焦げ付きを肩代わり返済する「公的信用補償制度」への資金投入、先端技術分野への研究開発費投入の前倒しと国の研究開発機関の施設整備を盛り込む考えです。文部科学省も創業や新産業支援の大学研究施設整備と学校建物の耐震化を求めています。

地方都市事業を推進

国土交通省は、10月末の「総合デフレ対応策」に、都市再生策の決め手として羽田空港の再拡張や東京外郭環状線道路の整備、電線地中化などを既に盛り込んでいますが、これに関西空港2期工事や05年の愛知万博に向けた中部空港の建設も加え、補正予算と03年度本予算にうまく振り分けて要望する構えです。これに対し、自民党は大都市の再生に偏らない地方都市の事業を推進するよう求めています。IT(情報技術)を所管する総務省は、役所や学校などを高速ネットワークで結ぶ地域イントラネット整備やITベンチャー支援事業を要求。環境省も、地域温暖化対策や化学物資の研究などで国立環境研究所の施設拡充を要求しています。農林水産省は、地域産業の競争力強化、物流機能強化という名目なら、土地改良や漁港整備など同省が手がけてきた従来型公共事業は全て「構造改革推進型の公共投資」に当てはまるとして、費目を読み替えて要求しようとしています。

地場産業育成策を

このように各省は補正予算獲得に懸命ですが、これで不良債権処理の加速による企業倒産・失業の増加、株価の低落、医療費をはじめとする国民の負担増などが救えるでしょうか。塩川財務相は、真水は5兆円でも公共投資の地方負担分を含めた数字は7,8兆円、これに先行減税を足せば10兆円の規模になると考えているようです。しかし、国も地方も台所は火の車で、地方が負担増に応じられるかどうか。特に産業の空洞化が進む地方では雇用が保たれるよう、従来型公共事業や地場産業育成策を要望する声が高まっています。小泉首相は「改革路線の幹の部分と、変えても良い葉の部分を見極めて国政に当たる」とし、「幹に当たるプライマリー・バランス(財政の基礎的収支)を10年代初めに黒字化する目標を堅持する」と述べ、首相就任以来の財政再建路線をなおも強調しています。

デフレ克服15ヶ月予算

首相が財政規律にこだわりたい気持ちはよく分かりますが、「03年度にデフレを脱却する」との構図が崩れつつある現状では、野党に政策転換を批判されようとも、先行減税を含む03年度本予算と今回の補正予算は一体で、実質15ヶ月の「デフレ克服」積極予算とすることが強く望まれます。都市再生策も地方都市の活性化を重視した施策が優先されなければなりません。国会活動と併せ予算編成で益々忙しくなりますが、私は元気一杯に活躍し、年の瀬を乗り切りたいと思っています。