北村からのメッセージ

 

 第53回(11月16日) 安保理が査察決議 支援基本計画延長             


「イラクの武装解除か戦争か」――。国連安全保障理事会は11月8日、イラクに対して期限付きで大量破壊兵器の査察受け入れと廃棄を求める決議を、15理事国がすべて賛成して採択しました。米国は、イラクが従わない場合の武力行使を示唆しており、イラクは同13日、苦渋の末に決議受託を決断しました。しかし、イラクが12月8日に虚偽や開示漏れの報告書を提出した場合は「重大な違反」であるとし、米国は軍事行動に踏み切る構えで、中東は緊迫した事態を迎えています。私は10月末の衆院安保委員会で質問しましたが、政府・与党は19日に期限が切れるテロ対策措置法の基本計画を半年間延長し、海上自衛隊の護衛艦、補給艦の派遣などを継続すると決定しました。佐世保基地からインド洋・アラビア海に派遣されている乗組員の皆さんには大変ご苦労が多いことですが、まずは日本の安全と国際平和のため、さらにご健闘下さるよう、切に祈念いたしております。

決議違反に武力行使

国連安保理の決議は、米英の決議案を数カ所手直ししたもので、イラクに対し

@ 7日以内に決議順守の意志表示

A 30日(12月8日)以内に大量破壊兵器開発計画をすべて開示

B 大統領施設を含むあらゆる施設への無条件、無制限の立ち入り

C 今後の虚偽報告、非協力はさらなる重大な決議違反。査察団の報告に従い安保理で精査

D 安保理は決議の完全履行に向けて「必要な措置」を検討

E 決議違反が継続すればイラクは深刻な結果に直面する――が骨子です。査察の流れは、11月18日ごろ先遣隊を派遣し、45日(12月23日)以内に本隊が査察開始、開始後60日(03年2月21日)で安保理に報告――の手順となっています。フランスは「武力行使には新たな決議が必要」と主張しましたが入れられず、拒否権を持つ5大理事国の中ではロシア、中国とともに慎重に構えていました。

拒否権なく全会一致

しかし、仏、露、中国のいずれも拒否権は発動せず、米から「テロ支援国家」と名指しされて、欠席が予想されていたシリアも最終的には賛成に転じ、全会一致の賛成となりました。これに対し、イラクの国会は11月12日、安保理決議を拒否するよう革命指導評議会(RCC、議長・フセイン大統領)に勧告しましたが、これは国民に対する“ガス抜き”の一種だったようで、結局、フセイン大統領は国連決議を無条件、無制限に受けざるを得ませんでした。とはいえ、米国は、過去11年に16度も安保理決議を反古にしてきたイラクが今回も決議を守るとは見ておらず、着々と武力行使の準備態勢を整えています。決議の「必要な措置」の中には武力行使も含まれているとの解釈で、「既に武力行使の権限は付与された。国連決議はその権限を損なうものではない」との態度です。

25万人の戦力展開

朝日が伝えたニューヨークタイムズ紙によると、武力攻撃は91年の湾岸戦争と同様、空爆の波状攻撃でバグダッドと各地のイラク軍拠点を分断し、イラク指導部を孤立させる。次に地上部隊を投入し、短期間にイラクの北、西、南部に拠点を確保して前線基地とし、攻撃から軍事占領へと切れ目なく移行する。空爆に使うトマホークなど精密誘導兵器の割合は、91年の約9%から、今回は60%以上に増加して攻撃の正確さを増す。動員される兵力は陸海空3軍と海兵隊の計20万―25万人を想定、これに英軍数千人も加わる――との大規模な作戦です。

千機の航空機支援

また読売は、11月2日に空母コンステレーションが米西海岸を出港。地中海に展開中のジョージ・ワシントンと、湾岸のエイブラハム・リンカーンを合わせて空母は3隻、年末までに横須賀を母港とするキティホークなども加わり4隻体制が整う。カタールには陸海空3軍の指揮命令を一元化する戦術作戦センターを設置する予定で、クウェートのファイラカ島にも9月下旬に米海兵隊約2千2百人が派遣され、合同演習が続けられている。湾岸戦争時の半数に当たる約25万人の地上部隊を7百―千機の航空機支援のもとに展開させる作戦で、既に約6万人の配置を終えている――などと報じています。

ブッシュの3種の神器

ブッシュ米大統領が強気になった背景について、朝日は、

@ 米議会で武力行使容認の決議を得た

A その直後の中間選挙で、国家的危機には強い共和党が、上下両院で過半数を抑え勝利した

B 国連安保理決議の採択で国際的な主導権を握った――という“3種の神器”を得たからだ、と解説しています。日本も政府・与党が11月13日、米国がイラク攻撃に踏み切った場合の対米支援策について協議した結果、19日に期限が切れるテロ特措法の基本計画を6ヶ月間延長するとともに、同計画の「装備」の項目を変更し輸送艦1隻を新たに加えることで合意しました。輸送艦は、米軍がアフガニスタンで使用する空港施設整備のための重機などの輸送に限定したもので、輸送回数は1回限り、期間も12月から来年3月までに限っています。これまでは最大で補給艦4隻、護衛艦6隻まで派遣が可能でしたが、これに輸送艦1隻とその安全確保のための護衛艦1隻が新たに加わりました。

人的貢献を延長

日本は同時多発テロ直後の01年10月、テロ対策特措法などテロ関連3法を緊急成立させ、その実行計画に基づき、同11月に佐世保基地の「あさかぜ」など護衛艦3隻、補給艦2隻をインド洋に派遣、同12月には掃海母艦による被災民支援物資を輸送、輸送機による米軍への輸送協力なども実施して、高い評価を受けてきました。湾岸戦争の際、日本は総額130億ドルという巨額の資金援助をしながら、自衛隊派遣を避けたことで批判を浴びたことを思えば、当然、実行計画を延長し、人的貢献をしなければなりません。基本計画の延長は19日の閣議で決定のうえ、国会に報告されますが、装備の変更により派遣隊員も400人増えて最大2800人になりました。米国からは、高い情報収集能力を持つイージス艦(佐世保が母港)とP3C哨戒機の派遣を打診してきました。これには公明党が「慎重に対応すべきだ」と派遣反対を唱えました。

活用望むイージス艦

与党内にも「米国などの艦船と情報共有(データリンク)すれば、憲法が禁じる集団的自衛権に該当する」との批判があることも事実です。しかし、高性能で維持コストの高いイージス艦を佐世保に係留しておくだけでは宝の持ち腐れ。イージス艦の派遣は過去2回見送られていますが、インド洋で活躍する隊員の安全のためにもイージス艦は活用すべきでしょう。また、国連安保理の決議は、イラクに対する武力行使自体を容認するものではないため、自衛隊の支援対象は、あくまでアフガニスタン周辺の対テロ戦争に従事する米軍に限定し、イラク攻撃の際には“間接的支援”に止めるべきだとの議論があります。このため、海上自衛隊の派遣は、重機類の輸送が加わっただけで、従来の補給活動の継続・拡充を軸に6ヶ月間の事業計画延長という中途半端な支援に落ち着きました。これでは派遣隊員の志気にも影響しそうです。私はイラク情勢の緊迫化に合わせ、海上自衛隊の皆さんが最も働きやすい環境を作るため、今後も大いに発言していく考えです。