北村からのメッセージ

 

 第52回(11月1日) 金融再生で党猛反発 議運委に再就任             


臨時国会は10月18日の小泉首相所信表明演説を巡る各党代表質問で舌戦の火蓋が切られ、衆参両院の予算委員会でも激しい論戦が展開されました。政府の総合デフレ対策は同30日発表されましたが、野党は今日のデフレ、金融危機を招いたのは小泉内閣の失政であるとし、政策転換などを厳しく追及しています。私は今国会から、衆院の議院運営、安全保障、農林水産、災害対策特別の4委員会所属となり、代わりに厚生労働委は外れました。安保委は基地の町佐世保出身議員として、当選直後にも席を置いた極めて重要なポスト。それに、議運委は本会議の設定や法案処理の段取りなど、野党折衝が絡む責任の重い委員会です。1年生議員ながら自民党の国会対策委員と議運委員を掛け持つことは、大変光栄に思っています。早朝から議会に張り付き予算委をウオッチするなど、ハードな任務ですが、大過なく国会の裏方を全うできるよう、皆様のさらなるご支援をお願いします。

 陸奥宗光の談話引用

今国会は「金融国会」の様相ですが、朝日新聞は、経済・金融に加え、北朝鮮の核開発問題、大島理森農水相の元秘書官の口利き疑惑が争点になるとして、「3K国会」と呼んでいます。議運委では早速、元農水相秘書官の参考人招致問題などが議題に上がりました。「他策なかりしを信ぜむと欲す」――。小泉首相は所信表明演説の中で、第2次伊藤博文内閣の陸奥宗光外相の談話を引用し「他の誰であっても、これ以外の策はなかったに違いない」との思いを込めて、日朝正常化交渉の再開と構造改革断行の決意を表明しました。

所信表明は

@ 日朝問題は敵対関係から協調関係に歩むのが日本の国益にかなう選択で、交渉を通じ拉致問題の真相解明に努める

A 日本経済の再生は半年間で改革を加速。デフレ克服に向け政府・日銀一体で総合的に取り組む

B 官から民へ郵政、道路、医療改革に続き肥大化した公的部門の抜本的縮小に取り組み、簡素で効率的な政府を作る――が骨子でした。

 具体策欠く所信表明

 しかし、総合デフレ対策では「経済情勢に応じて大胆かつ柔軟な措置を講じ、金融システムと経済の安定を確保する」とか「不良債権処理を本格的に加速し、平成16年度には終結させる」など期限を明示するだけで具体策に乏しく、マスコミの評価も厳しいものでした。代表質問で野党は「小泉不況国会の様相だ。経済の厳しさは首相の無為無策、経済失政によるもの。予算の組み替えや歳出削減、国有資産売却で補正予算を編成すべきだ」(鳩山由紀夫・民主党代表)と迫る一方、「国債30兆円枠が堅持できなくなれば明らかに公約違反」として、首相が政策を転換すれば退陣要求する構えを見せています。従来の代表質問は、与党が首相演説を持ち上げ激励するのが恒例でしたが、今回は与党代表が首相の施政を厳しく批判するなど異様な雰囲気。堀内光雄自民党総務会長は、「改革だけで成長を実現するのは困難。早急に景気対策を講じて補正予算を編成し、国債30兆円枠にとらわれるべきではない。枠は政策の操作目標に過ぎない」と政策転換を訴えました。

 諮問機関の人選見直せ

 太田昭宏公明党幹事長代行も「デフレを止めなければ税収も伸びず、財政再建は遠のく」と、30兆円枠の撤回を求めました。極めつけは青木幹雄自民党参院幹事長。竹中平蔵金融兼経財相のもとで不良債権処理加速策を検討している「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」をやり玉に挙げ、「少人数の民間専門家が参加するプロジェクトチームの結論だけで金融行政が展開された場合、結果責任を誰がとるのか」と不満を述べ、「今ある審議会、諮問機関などを全て白紙に戻し人選を見直すのも1つのやり方。首相は君子豹変し、政策を断行・実効するリーダーシップを強く望みます」と注文を付けました。これは明らかに道路関係4公団民営化推進委の猪瀬直樹氏や「金融特命チーム」強硬派の木村剛氏らを念頭に、学者や評論家など民間人多数を重用する首相の政治手法に対し、青木氏が党内不満のガス抜きを図ったものです。本会議場では与党議員から苦笑と拍手が起きました。

 ハゲタカが乗っ取る

「竹中氏の正体はハゲタカ(外資系企業)の代理人だ。首相は竹中さんに(経済政策を)丸投げしている」――。自民党の亀井静香前政調会長は10月24日、都内の講演で首相が信頼する竹中金融兼経済相と首相をこっぴどく批判しました。同相の「特命チーム」が22日にまとめた“未公表”とされる不良債権処理加速策の中身について、亀井氏が<日本の金融界は破綻し、外国資本に乗っ取られてしまう>との危機意識を強め、かみついたものです。マスコミに伝わった竹中氏の加速策は、不良債権を銀行のバランスシート(貸借対照表)から切り離す(オフバランス)ことを目指し、銀行の勘定を国が事実上、強制的に管理する強硬手段だけに、金融業界は猛反発しました。与党も、竹中氏が金融相就任後の米誌のインタビューで、不良債権処理の加速に関連し、「巨大銀行の破綻も躊躇しない」との見解を示したとも取れる報道が、株価を急落させたとして同相の責任を追及、25日に予定した総合デフレ対策は了承せず、30日に持ち越しとなりました。このように竹中金融相と自民党や民間金融の確執は、国会を離れた場外乱闘の様相を深めてきました。

 頭取の首切りが条件

竹中金融相の加速策は、前回のホームページで紹介した通り、

@ 資産査定の厳格化

A 自己資本の点検

B コーポレートガバナンス(企業統治)の発揮――の「竹中3原則」を具体的に肉付けしたものです。内容は「銀行の資産査定を厳格化し不良債権に対する引き当て強化(竹中3原則の1)などで過小資本に陥った銀行を対象に、既存の不良債権を『旧勘定』に分離して公的資金を注入(同2)し損失を帳消しにする。それ以外は『新勘定』に繰り入れて健全化を図るが、過小資本に陥った銀行の頭取を退任(同3)させる」という、銀行の勘定を国が強制的に管理する制度です。特に、引当金の増額に加え、銀行が不良債権処理の過程で支払った税金の還付を見込んで、自己資本に参入する「繰り延べ税金資産」(税効果会計)の参入ルールを、米国並みに厳格化することを打ち出しました。また、『新勘定』では新経営陣の責任範囲を明確にし、金融庁に経営健全化計画を提出させることや、不良債権の買い手となる整理回収機構(RCC)には、政府系金融機関を活用するなどの改組案も盛り込みました。つまりは、「不良債権で身動きできない銀行は公的資金で救済するが、その代わりに頭取の首を差し出させ、『新勘定』で再生する業務には監督の厳重な目を光らせる」という厳しいハードランディング(強行着陸)の手法です。

 麻酔抜きのガン手術

竹中氏は銀行トップと3回、意見を交換しましたが、大手7金融グループのトップは会談後、「突然のルール変更は金融監督行政の連続性を欠く」、「性急な制度変更は経済全体に打撃を与え、国益を損なう」などの共同声明を発表しました。銀行側は「試合途中に2ストライクでアウトと宣告するようなルール改正だ」と怒り、行政訴訟を起こす構えです。「重症の患者に断食を強いておきながら、麻酔も輸血もしないでガン手術をすれば即死だ」、「机上の空論を実験されたのではたまらない。国民の付託を受けていない学者がどうやって結果責任を負うのか」、「銀行の貸し渋り、貸し剥がしが一層強まり、健全な中小企業も倒産する」――。自民党内でも激しい批判が渦を巻きました。患部だけでなく“全脳摘出”手術を予告された銀行トップは驚天動地でしょう。結局、竹中金融相と与党3党の幹事長・政調会長の協議で、

@ 『税効果会計』のルール変更は、不良債権の無税償却拡大といった優遇措置とセットにし、04年3月決算期に予定した実施時期は、「速やかに導入」と表現し、先送りする

A RCC(整理回収機構)から再生機能を分割し、不良債権買い取りの機関である『産業再生機構(仮称)』を新設する

B 政府の『産業・雇用対策本部(仮称)』を立ち上げ、中小企業への支援措置などを充実させる――などの修正を加えて決着しました。金融界の抵抗が強い経営陣の交代は、企業再生と一体で行う方針で加速策には触れられていません。

 不信任案に造反?

こうして

@ 金融・産業の再生

A 経済活性化に向けた構造改革の加速策

B セーフティネットの拡充――を三本柱とする総合デフレ対策は、30日にようやくまとまりました。だが、不況業種に限らず健全企業にとっても、資金集めが困難な金融危機は深刻です。雇用、中小企業対策などのセーフティネット(安全網)をいかに構築するか、総合デフレ対策の根幹に安全網を位置づけなければなりません。首相は次期通常国会に安全網を中心とする補正予算案を提出しますが、年末の税収状況を見ても国債30兆円の枠は当然外れそうです。10月27日の衆参7選挙区統一補選は、自民党が5勝。求心力を維持した小泉首相は構造改革と金融・経済政策の転換を含む総合デフレ対策を一層推進する構えです。しかし、公明党の神埼武法代表が「直ちに首相の経済運営が信認を得たわけではない。政府・与党一体の経済政策をやってほしい期待の表れだ」と述べたように、首相と与党内部の対決構図は消えていません。野党も政府、与党の足並みの乱れを厳しく突くでしょう。

解散回避に努力

「与党から経済政策でノーと突きつけられた。官僚も小泉内閣は来年9月(総裁任期)までと判断している。完全にレームダック(死に体)になった」――と選挙前、亀井氏は相変わらずの毒舌を吐きましたが、古賀誠・前幹事長も遊説先で、首相を織田信長になぞらえて「1つ間違えると改革の道半ばで、安定した新しい政権を国民が求めることも十分あり得る」と警告しています。1議席にとどまった民主党は国会論戦で体制を立て直し、新たな攻勢を掛けようとしていますが、当然のことながら、国会終盤には内閣不信任案が提出されるでしょう。自民党内に経済運営の不満が高まっている時だけにその際、造反者が出ないとも限らず、国対、議運の委員としては気懸かりなところです。野党につけ入られないよう、総合デフレ対策では安全網をしっかり構築、国民の期待する03年度予算案を編成し、年内解散・総選挙を避けるために、一層の努力をしたいと念じています。