北村からのメッセージ

 

 第51回(10月16日) 金融国会開幕 首相に内憂外患の秋


10月18日召集の臨時国会は難問山積、冒頭から波乱含みの雲行きです。小泉首相は9月末、自民党3役の留任と中幅の内閣改造を断行。総合デフレ対策を掲げて「毎日が嵐」(首相談)の国会を突っ切る姿勢です。しかし、日朝国交正常化交渉は死者多数が判明した拉致事件の解明が難しく、株価の低落を見ても不良債権の処理は容易ではありません。しかも、人事でもたついた民主党は体制を立て直して、野党共闘を軸に小泉内閣の政策転換を厳しく追及する構えです。さらに27日に7地区で行われる衆参補欠選挙の結果がどう出るか。小泉内閣はまさに内憂外患の秋を迎えています。不良債権処理では、倒産や銀行の貸し渋りが増えると予想され、我々、衆院厚生労働委員会の課題として、雇用対策や中小企業対策などのセーフティネット(安全網)の構築が大きな使命になってきました。

 3つの基本方針

首相は内閣改造の基本方針に

@ <経済の活性化>は政府・日銀が一体となってデフレ克服に取り組み、04年度に不良債権問題を終結させる

A <行財政改革>は「官から民へ」の流れを加速、道路公団の改革とともに、郵政公社を郵政民営化の第一歩として準備を進める

B <外交>は日朝国交正常化交渉を再開し、地域の不安定要因を除去する――と明記、

これを“踏み絵”に留任閣僚を選別、路線の違う柳沢伯夫金融担当相を事実上更迭しました。後継の金融相ポストは竹中平蔵経済財政相が兼務しました。首相は9月の日米首脳会談で「不良債権の処理を加速させる」と国際公約、危機的状況にある金融システムの再生に取り組んでいます。竹中金融兼経財相は、銀行が保有する不良債権処理の加速策として査定の厳格化、自己資本の強化、企業統治(ガバナンス)の強化の3原則を掲げました。

 公的資金注入が狙い

竹中3原則は

@ 銀行の資産査定を厳格に見直し、貸し倒れ引当金の積み増しを求める

A この過程で自己資本が足りなくなったら、公的資金を注入する

B その代わりに経営者の責任を追及し、国民の理解を得る――というものです。

同相は直ちに官民によるプロジェクトチームを編成、「04年度終結」のアクションプログラム(行動計画)の策定を指示しました。チームの中には「問題企業は退場すべきだ」という“企業淘汰”のハードランニング(強行着陸)路線を採る木村剛氏(金融コンサルティング会社会長=日銀出身)が起用されました。金融機関へ公的資金を注入する手段には、今年3月までの時限立法の「金融機能早期健全化措置法」がありましたが、4月のペイオフ解禁に合わせて期限が切れました。このため、同相は、公的資金投入を容易にするための新法案を検討しています。

ペイオフ解禁も再延期

首相はデフレ克服を最優先課題とし、

@ 雇用対策、中小企業対策を軸とする補正予算の検討

A 証券・土地税制改革など1・5兆円の先行減税

B さらなる金融緩和――などデフレ対策を総動員した『緊急対応戦略』を月内にまとめ、推進する意向です。

金融庁はこれまでペイオフについて、利子の付かない普通預金の「決済性預金」と当座預金を恒久的に全額保護し、来年4月予定の全面解禁は5ヶ月間猶予するという方針でした。ところが、株価が急落したため、竹中金融兼経財相は首相と協議してペイオフ全面解禁の2年間延期を決定、公的資金注入と併せた「金融安定化関連法案」を臨時国会に提出する方針です。

 自民党は間接注入

不良債権の処理では自民党も

@ 整理回収機構(RCC)が時価よりも高い実質簿価で銀行の不良債権を買い取る

A 役員の総退陣や若返り、給与スリムかなどを条件に公的資金を銀行に再注入する

B 自己資本比率が2%を割った銀行は業務停止し、一時国有化する――などを提案しています。

竹中氏が考える公的資金の注入は、経営者の責任を厳しく問う強権的な「直接注入」であるのに対し、党側の主張は、RCCが主体的に介入する「間接注入」であり、経営者の顔も立って金融機関が受け入れやすいものです。その間にあって塩川正十郎財務相は「直接、間接の2本立て注入があってもよい」との柔軟姿勢です。

 政策転換で厳しく対決

「通貨の番人」日銀も、金融機関が保有する過剰な持ち合い株を減らすため、大手行が持つ上場株式を直接買い取ると発表しました。これは主要国の中央銀行にも例がない“禁じ手”といわれています。さらに、米国の金融機関の厳格な査定方式である「債権の割り引き現在価値」を導入、貸し倒れ引き当ての強化策を取り入れるよう大手行に求めるなど、日銀は小泉首相のいう「政府と一体」の施策を次々と打ち出しています。しかし、首相が内閣改造を断行し、日銀が大幅に舵を切り替えても、株価はバブル崩壊後の最低を記録し、なおも低迷を続けています。長期デフレはトンネルから抜け出せず、自由経済の総本山である金融は非常事態です。自民党は不良債権のガン退治と景気刺激のために補正予算措置を強く求めており、政府与党首脳も補正予算案の提出でほぼ合意に達しました。

野党は対決姿勢

首相は今年度予算で「国債枠30兆円」を堅持してきましたが、金融システムの再生と総合デフレ対策を短期間に達成するには、中小企業対策や雇用対策に絞った補正予算の編成もやむを得ないとの考えに傾いていますが、「今度の国会では考えていない」と記者団に語り、次期通常国会の冒頭で処理する可能性を示唆しています。そうなれば、野党は国債発行との絡みで首相の公約違反を追及するとともに、「債権処理は着実に進み、公的資金投入は不必要」と主張してきた金融庁の政策転換、さらには日朝正常化交渉など、内外の重要課題に矛先を絞り、国会では厳しく対決するでしょう。失業率は依然5・4%の横這いを続けていますが、不良債権処理の加速により、建設、不動産、流通など深刻な不況業種や構造転換企業、下請け中小企業などの倒産が増え、経営健全な企業も銀行の貸し渋りの影響を受けてリストラが進むでしょう。

セーフフィネット構築

坂口力厚生労働相は「不良債権処理の“大手術”には雇用確保の“輸血”が必要」と述べていますが、全く同感です。国民の痛みに備え、再就職支援の充実、公的雇用枠の拡充、雇用保険の運営改善、ワークシェアリング(雇用機会の分かち合い)、中小企業の資金繰りを助ける政府系金融機関の活用、各種の税制改革――など雇用、中小企業対策のセーフティネット構築が緊急課題になります。臨時国会は、まさに金融国会の様相を深めていますが、私は与野党論戦と並行して、03年度の予算編成ではこれらの課題解決に全力を尽くし、次期通常国会で法制化を図るため、元気いっぱい取り組む覚悟です。