北村からのメッセージ

 

 第46回(8月1日) 改正離島振興法  どう活かす地域計画


通常国会は、延長42日間を含む半年以上の長丁場を経て7月末に閉幕しました。重要法案は、改正健康保険法と郵政関連法が成立したものの、有事法制、個人情報保護法案は流産しました。野党は、小泉改革以前の「政治とカネ」に絞った論議に終始し、低調な国会でした。しかし、10年間延長の改正離島振興法が成立したことは、画期的なことです。1953(昭和28)年に、同法が議員立法で制定されてから半世紀、時限立法の同法は今回で5回目の10年間延長です。五島列島の小値賀町で生まれ育った私は、国会議員秘書当時から、離島問題をライフワークとして真剣に取り組み、市議、県議時代も一貫して振興策を探求してきました。今回は国会議員として晴れて改正法の制定・推進に関わったことは大変光栄であり、大いに満足しているところです。改正法は期間の延長に加え、都道府県が各市町村の離島振興計画案を国の振興計画策定に反映させるのが特徴です。これまでのような「格差是正」ではなく、「自立的発展」に向けてどのように改正法を活かしていくか、「創意工夫」が求められています。皆様とともに良い案を考えていきましょう。

 独立国並み漁業が荒廃

わが国の離島は6千8百余。総面積は1万平方キロ余で、ほぼ新潟県に近い広さ。そこに約150万人が住んでいます。松下晃一・水産経済経営研究所代表によると、離島の漁業だけでも、91年の離島統計では、821の漁港、7万余の漁船、303の漁協、1500の加工場、約3万2千の漁家、5万7千人の就業者を数え、水揚高110万トン、生産額約3千億円もあって、1つの独立国並みの規模を誇っていたそうです。ところが最近(99年の統計)は、離島各地の人口が激減、高齢化と過疎化が急速に進み、北海道、瀬戸内海、沖縄などでは無人島化が目立つほど荒廃。漁業就労者は4万人に落ち込み、水揚げ高も60万トン、2千3百億円に減少、これが離島経済を直撃しています。

 合併協議の大型離島  

離島が抱える問題には、漁業ばかりではなく交通のアクセス、医療、情報、文化、教育、物価など、様々なハンディキャップがあります。私は法改正に先立ち、自民党離島振興委の1員として、10月末から11月初旬にかけて長崎県対馬と鹿児島県屋久島・種子島を視察しました。対馬を例に挙げれば、博多から138キロ、韓国の釜山まで50キロの遠い孤島。6町からなり面積708平方キロ、人口約4万1千2百人で、江戸時代は10万石の対馬府中藩でした。6町は目下、大「対馬市」を目指し町村合併を協議中の大型離島です。産業は漁業266億円(うち魚類・真珠養殖業100億円)、観光70億円(推定観光客約58万人)農業10億円、乾椎茸7億円、木材4億円で、漁業が中核といえます。

 道路はライフライン

しかし、全面積の89%は森林という険しい山岳地帯で、戦前は軍事要塞地。対馬振興の50年はまさに道路整備の苦闘の歴史でしたが、縦貫道は開通したものの未だに未改良区間が多く、基礎集落を結ぶ地方道は手つかずで、生活基盤の整備が著しく遅れています。    中央で論議されているような高速道建設などの話ではなく、対馬では生産活動を支援し、救急患者輸送など医療福祉を向上させるためにも、ライフラインの道路整備は緊急課題であると痛感した次第です。また、岐阜檜に優るとも劣らぬ対馬檜などを多く出荷するためにも、拠点港の周辺整備に早期着工、対馬林業を振興させるべきだと感じました。

 文化交流、防衛も加味

さらに、対馬は、元寇など過去の紛争に絶えず巻き込まれ、江戸時代には往還する朝鮮通信使が必ず立ち寄った国境の離島。釜山市景山区との姉妹島締結でアリラン祭、ちんぐ音楽祭などが盛んですが、サッカーW杯で日韓友好が深まった今日、善隣外交のパイプとしての役割がますます高まっています。その半面、200カイリの排他的経済水域(EEZ)設定で、離島全体が国際的な漁業管理に揺さぶられ、密漁にも悩まされています。おまけに、不審船問題が起きて離島周辺の水域は不安定になり、防衛の側面からも重要視されています。郷党の大先輩、虎島和夫・党離島振興委員長は「改正法には離島地域の均衡ある発展だけでなく、新たに領海や排他的経済水域を守るうえでの離島の重要性を強調し、国際交流促進なども盛り込んだ」と述べておられます。確かに離島は漁業、林業など産業面ばかりでなく、文化交流、防衛などでも果たす役割は大きいといえましょう。

  自主的意思で計画策定

党の離島振興委員会は、全国を手分けして視察した結果を踏まえ、法改正の意見書をまとめました。その骨子は、21世紀にふさわしい離島振興法とするため

@ IT(情報技術)を活用して、交通ハンディキャップの克服を軸に、「格差是正」から「自立支援」への転換を図る

A 離島振興計画策定に際しては、市町村の主体的意志で作成

B「農山漁村と都市との共生・対流を進める会」と連動した計画を策定――などです。これをもとに法改正では地方分権を反映し、国が定めていた離島振興計画の策定方法を大きく変え、国は基本方針を策定するだけで、地方が具体計画を定めるように転換しました。地域の意見を最大限採り入れるシステムにしたのは画期的なことです。

医療、観光にIT活用

交通面でハンディキャップが大きい離島でのIT活用は、中央機関病院との診断協力など遠隔医療をはじめ、教育学習、生産活動、観光など多面的に期待されています。旅館の予約などが簡単にできるインターネット網や光通信交換機、携帯電話用鉄塔など高度情報通信体系の整備は喫緊の課題。特に観光は、離島の生活、産業、環境との連携を深め、例えば「獲る」「育てる」漁業から「観る」漁業へ発想を転換、各種の養殖場見学や漁港での鮮魚即売などを一層活発化し、「癒しと観光」の大メッカに切り替えることが望まれます。

 過去に観光立国独立論

「五島列島を独立させて、フリータックスの観光立国とする。俺が初代の大統領だ」――。恩師の白浜仁吉元郵政相は生前、よくこんなジョークを飛ばしました。朝鮮半島との歴史的交流が深い対馬の視察では、地元から白浜先生と同趣旨の「国境の島としてノータックス、フリーゾーン」の要望が出されました。石原慎太郎都知事は全国的なカジノの解禁を訴えていますが、ギャンブルを奨励するよりも、離島を経済特区として消費税免除など観光振興の優遇税制を実施したり、自然公園法の開発規制を取り払って観光資源である海岸部の利活用、交通ハンディキャップ克服の施策を推進する方がベターだと私は考えます。