北村からのメッセージ

 

 第40回(5月1日) 水産白書と魚ソング 魚資源の復元を

目に青葉 山時鳥 初鰹――。鰹のタタキが美味いシーズンですね。その鰹・マグロ漁を抑制する「中西部太平洋マグロ条約」が00年9月に採択されて以来、水揚げ量が減り、食卓が寂しくなっています。BSE(牛海綿状脳症)騒ぎで、国民の嗜好が肉類よりも魚類に向かっているというのに残念なことです。皮肉なことに「おさかな天国」のCDが今、スーパーなどの鮮魚売場で流行っています。これは農水官僚が魚離れ防止のために依頼して作った曲で、10年後に大ヒットしたもの。水産庁は4月26日、水産白書を発表しました。「水産この1年」のトピックスやコラム、具体例を織り込んだユニークな白書です。わが選挙区、長崎県北松浦郡鷹島町の漁師体験事業も記述されています。前回の鯨に次いで、「おさかな天国」の曲や白書など、漁業を皆さんと検証してみましょう。

 おさかな天国
♪好きだとイワシてサヨリちゃん タイしたもんだよスズキくん イカした君たちみならって ぼくもカレイに変身するよ♪
サンマ ホタテ ニシン  キス エビ タコ  マグロ イクラ アナゴ シマアジ
サカナ サカナ サカナ   サカナを食べると   アタマ アタマ アタマ♪
アタマがよくなる   サカナ サカナ サカナ   サカナを食べると♪
カラダ カラダ カラダ  カラダにいいのさ  さあさ みんなでサカナを食べよう
サカナはぼくらをまっているOh!♪(1番の歌詞)作詞・井上輝彦 作曲・柴矢俊彦

 官僚が仕掛け人
かつてNHKが「ダンゴ三兄弟」をヒットさせたように、昨年秋頃から子供たちが口ずさむ「サカナ サカナ サカナ」が人気を集めています。時あたかもBSEによる牛肉消費の落ち込みで、サカナの消費が徐々に伸びてきた頃です。3月発売のCDは初登場でヒットチャート第3位に躍り出たと朝日新聞は伝えています。「おさかな天国」の仕掛け人は当時、農水省水産流通課長だった石原葵・現食糧庁長官です。朝日によると、石原氏は減少気味のサカナの消費を回復させようと90年10月、英国人教授を東京に招き、「魚を食べると頭が良くなる」シンポジウムを開いたり、本も出版。さらに興味をそそる曲作りを思いつき、作ってもらった6曲の中から選んだのが「おさかな天国」だそうです。

 CDに注文殺到
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は91年、この曲を千本のカセットテープにして、鮮魚店やスーパーに無料で配布。96年には約2千枚のCDを自主制作し販売していましたが、全漁連のシーフードセンターに購入の問い合わせが殺到。10社のCD会社からも引き合いがあったためポニーキャニオンから3月20日に発売した、といいます。農水省が厳しい批判を受けたBSEや肉の偽装事件で肉離れが進んでいますが、牛肉が売れない分、魚類に関心が寄せられているのは事実のようです。しからば、日本のサカナの実体はどうか。政府は昨年6月、今後の水産政策の指針となる「水産基本法」を制定しました。

 トピックスにノリ不作
水産白書(平成13年度水産の動向に関する年次報告)は、同法10条に基づき公表する第1回目の白書で、従来の漁業白書をリニューアルしたもの。国民に親しまれるため、1年間に生じた水産の重大な動きや国民的な関心事をトピックスにまとめ、特集テーマに「水産資源の現状とその持続的利用に向けた課題」を取り上げています。トピックスは@水産基本法の制定A有明海ノリ不作その後B北方四島周辺水域の第三国漁船サンマ操業CWTO(世界貿易機関)新ラウンド立ち上げD豊かな海へ資源回復計画E新たな水産公共事業FIWC(国際捕鯨委員会)下関会議に向けて――の7項目です。

干拓事業と無関係か
この中で平成12年度末のノリ不作は、農水省調査検討委員会の「原因は珪藻赤潮の発生に伴う栄養塩濃度の低下による“色落ち”だ。この赤潮は秋期の大量降雨、続く晴天による高水温で異常発生した」との中間まとめを詳報しています。しかし、4月24日に水門開放調査を始めた諫早湾の干拓事業については「関係機関と連携し有明海の環境改善に向け、さらに調査を進める」としながらも「13年度漁期は11月に一部漁場で再び“色落ち”が発生したものの、その後気象や海象に恵まれ、養殖業者が養殖管理の徹底を図ったことから、生産量・金額とも7年度から11年度漁期の5カ年平均を上回る結果になった」と評価、不作と干拓事業は無関係であることを示唆しました。

回復力超えた漁獲
また白書では、水産基本法と同時制定の漁港漁場整備法に基づき、来年度を初年度とする「漁港漁場整備長期計画」が策定され、藻場・干潟などの水産資源の生育環境を保全・創造する自然と共生型の新たな水産公共事業が推進されることになり、具体策が明示されています。特集の「水産資源の現状と持続的利用に向けた課題」では、水産資源についてEU(欧州連合)の漁業政策などを例に挙げつつ、数量的に説明しています。四方を海で囲まれたわが国の排他的経済水域は国土面積の10倍以上と広大で、世界の主要漁場の1つ。もともとこの水域は水産資源が豊かで200種類以上の魚が日本人の生活を潤してきましたが、資源の回復力を超えた漁獲や、水域環境の悪化などで近年、資源量が大幅に減少してきたことを心配しています。北海道や東北・関東沿岸の底魚キチジ、北部日本海域のスケトウダラ、瀬戸内海のサワラなどはいずれも漁獲量が激減。スケトウダラ漁は平成11−13年に13隻の自主減船を行い、乗組員の失業、水産加工業の縮小を招いたと述べています。

 作り育てる漁業推進
水産資源は、使っただけ減少する地中の化石資源と違って、子孫を残す能力を持つ生物資源であり、人間の利用形態、水温、水質など環境の変化によって調整できる特性を持っていると指摘。危機に瀕している水産資源の回復と持続的な確保は喫緊の課題であり、国内的にも国際的にも資源管理に主体的・積極的に取り組むことがわが国の責務だとしています。このため、資源評価の一層の向上、TAC(漁獲可能量)削減など適切な制度運用に取り組むほか、悪化の著しい重要資源は新たに導入されたTAE(漁獲努力可能量)管理制度も活用しながら資源を回復すべきだと強調しています。特に、これまで実績のあるシロザケ、ホタテ貝、車エビ、真鯛、ヒラメなどを積極的に増殖するため、大量放流を可能にする種苗の量産、放流効果の向上など「作り育てる漁業」の推進を謳っています。

 鰹・マグロの減船
鰹やマグロ類については、世界的に過剰な漁獲能力の削減が求められ、平成11年にはFAO(国連食糧農業機関)の水産委員会で「漁獲能力管理の国際行動計画」が採択され、わが国は遠洋かマグロ延縄漁船の2割に当たる132隻が減船とされました。さらに、翌12年9月、中西部太平洋の鰹・マグロ類について、資源管理の枠組み作りを目的とした「中西部太平洋マグロ条約」が、日本、韓国の反対を押し切り採択されました。中小漁業は、マグロ延縄、鰹一本釣り、イカ釣り、沖合底引き網、巻き網が主体ですが、真イワシ、サバ類の漁獲量減少に加え、鰹やスルメイカなどの価格低下もあって、漁業収入が前年度に比べ10%も減少しています。このため、撤退する中小漁業者も多く、平成13年の許認可隻数は遠洋鰹・マグロ漁が630隻で同9年より152隻減、沖合底引き網漁が459隻の同73隻減、近海鰹・マグロ漁が246隻の同60隻減などとなっています。

 厳しい中小漁業
収入の割に漁船、漁具などの必要経費が支出の大半を占める中小漁業の厳しい財務内容。それに進行する高齢化などを見ると、漁業就労者は減少する一方で、後継者養成も容易ではなさそうです。こうした漁業の将来を考えると、初夏の味覚、旬の初鰹を安心して味わううことは出来ません。初の水産白書は色々な問題を提起していますが、気が利いたコラム、写真・図表などを至る所に配置し読みやすくしてあります。中でも水産資源の管理では、伊勢湾のイカナゴ、秋田県のハタハタなどの具体例。各地の漁業活性化では、岡山県日生町の観光底引き網、石川県七尾市の定置網漁業ブランド販路開拓などの取り組み例を挙げています。この中から、最後にわが選挙区の地域起こしを紹介して筆を置きましょう。

 鷹島町の地域起こし
長崎県・鷹島町の「地域起こし」である漁師体験事業は、鷹島阿翁漁業共同組合が「担い手育成」、「地域活性化」、「漁業高齢者の活用」の対策として始めたものです。子供や一般の人たちが漁業を身近なものとして理解を深めてもらえるよう、定置網漁業の現場や水産加工場の見学や魚の調理方法などの指導を行っています。また、ビデオ機器を備え、漁具、漁法の模型や写真が展示された体験学習室と、調理体験室などが備わった「体験漁業管理施設」も整備しています。技術指導は、豊富な知識、熟達した技術を持つ高齢漁業者が主に担当。体験事業を通じて、漁業の担い手育成や観光PRのほか、高齢者が生涯現役として生きがいをもって生活することを期待しています。