第378回(8月16日)「未来チャレンジ内閣」 総裁任期延長論も
 第3次安倍再改造内閣は8月3日に船出しました。首相が「未来チャレンジ内閣」と命名したように、盟友の麻生太郎副総理兼財務相、腹心の菅義偉官房長官ら主要閣僚は留任、稲田朋美党政調会長を防衛相に抜擢、側近の世耕弘成首相補佐官ら8人が初入閣。党4役も重厚な布陣としてアベノミクスを加速させます。幹事長には総裁任期延長論をいち早く唱えた二階俊博総務会長を起用し、長期政権の礎を固めました。首相は自民党候補を破って当選した小池百合子東京都知事との関係修復にも努め、4年後の東京五輪成功に向けて政府と東京都が協力することを確認し合い、8月21日のリオ五輪の閉会式には揃って出席します。また、27、28両日はケニアのアフリカ開発会議(TICAD)、9月2、3日はロシア極東ウラジオストクでの東方経済フォーラム、4、5日は中国・杭州で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議、6、8日はラオスでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、18日から米国での国連総会に出席するなど切れ目ない外遊を計画。訪露での日露首脳会談では年内にプーチン大統領来日の実現を目指し、北方領土問題を前進させようと意欲満々です。「一強他弱」が益々強まる中で、石破茂地方創生相は農水相での入閣要請を固辞、閣外に去りました。2年後のポスト安倍レースは密かにスタートを切ったようです。来年度予算の概算要求の大筋、経済政策も固まりましたが、9月中旬に開く臨時国会は経済再生加速の効果を巡り与野党が対決します。一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

最大のチャレンジは働き方改革
 「デフレからの脱却を最大限まで引き上げ、未来への責任を果たしていくことが最大の使命だ。最大のチャレンジは働き方改革」―― 首相は3日夕、改造後の記者会見で、長時間労働の是正や同一労働同一賃金など働き方改革に向けて年度内に実行計画を取りまとめる方針を示し、改造内閣を「未来チャレンジ内閣」と名付けました。麻生、菅両氏のほか、ベテランの岸田文雄外相、高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相、石原伸晃経済再生相、公明党指定席の石井啓一国交相が留任、丸山珠代環境相は五輪担当相に鞍替えしました。丸山氏は民放アナウンサー出身で、キャスターから政界に入った小池都知事と波長が合うため、女性同士で連携を深め、東京五輪のイメージアップを図ろうとするもの。目玉人事は当選4回で二度目の入閣を果たした稲田防衛相。北朝鮮が5月以来、ノドンなど弾道ミサイル30発以上を日本の排他的経済水域(EEZ)内に発射したのに対し、「わが国の安全保障上、大変脅威で断じて許せない」と批判、自衛隊に迎撃態勢の「破壊措置命令」を発令しました。

中国の公船15隻が接続水域に侵入
 中国は日本の防衛白書に反発し、1日に東シナ海で100隻以上の海軍艦艇が大規模な実弾演習を実施。6日から8日にかけ、尖閣諸島周辺で操業する中国漁船約400隻の「護衛」や「監督・指導」の名目で、機関砲を搭載した海警局所属の公船計15隻を接続水域に進入させ、一部は領海に侵入しました。これは南シナ海での主権の主張を否定した仲裁裁判所の判決受け入れを日本が求めていることに反発したものと見られます。さらに東シナ海の日中中間線付近にあるガス田にレーダー監視カメラを設置するなど東・南シナ海を領海化し、海洋主権を強めています。中国はガス田の日中共同開発の交渉を拒み、艦船などの偶発的衝突を防ぐ「海上連絡メカニズム」の協議も進んでいません。政府は今後、どう対応するか。稲田氏は首相と歴史認識など保守的な政治信条が近く、首相は2月の会合で稲田氏を前に「極めて有力な首相候補者だ」と褒め上げたほどです。中韓両国は終戦記念日の靖国参拝を欠かさないタカ派の稲田氏の行動と、今後の安保政策に警戒を強めています。

ベテラン配置し派閥均衡を重視
 改造内閣の派閥別では、最大派閥の細田派から4人、額賀、岸田、麻生、二階の各派から2人ずつ、石破、石原両派からは各1人が入閣。石破氏が固辞した農水相には石破派の山本有二元金融相を充て、副大臣・政務官ポストも派閥均衡を重視しました。しかし、新人は世耕氏のほか同じ側近の加藤勝信官房副長官を一億総活躍・働き方改革相に起用、信頼を最優先する"お友達内閣"の色合いも残っています。首相は当初、自民党役員人事では、谷垣禎一幹事長、二階総務会長を続投させる考えでしたが、谷垣氏が自転車で走行中に転倒して頸髄手術を受けて続投を固辞したため、調整力に定評がある二階氏を幹事長に、細田博之幹事長代行を総務会長に、茂木敏充選対委員長を政調会長に起用しました。いずれも過去に党三役経験のある重鎮揃い。これに古屋圭司元国家公安委員長を選対委員長に充て、手堅い党の新四役が誕生しました。特に二階氏は田中内閣以来、公明党や中国との間に太いパイプがあり、与党間で意見対立があった消費税の軽減税率を巡って、事態収集に動いたり、首相の党総裁任期延長にも前向きな発言を繰り返すなど、首相の信頼は抜群です。

民主党代表選に蓮舫氏ら三氏出馬
 9月2日告示、15日投開票の民主党代表選には、蓮舫代表代行(野田佳彦前首相グループ)、長島昭久元防衛副大臣、若手の玉木雄一郎衆院議員の3氏が出馬の意向を表明、保守系の前原誠司元外相、細野豪司元環境相の2人は一本化調整を進めています。地元・三重地方区の参院選に勝利したことで、引責辞任のケースに当たらないとしていた岡田克也代表は、7月30日に記者会見し、「参院選でどん底の状態から反転攻勢の一歩を踏み出すことが出来た」と評価しながらも、「一区切りをつけて、新しい人に(党を)担ってもらった方が政権交代可能な政治を作る意味で望ましい」と述べ、代表引退を表明しました。これを受けて蓮舫氏は正式に出馬、野党共闘については岡田代表の路線を継承する姿勢を示す一方、共産党とともに政権を目指す可能性は明確に否定し保守系へ配慮を示しました。前原氏は前回の代表選で出馬を見送り、細野氏支持に回った経緯から「今回は出番」との思いがあるようで、2人とも参院選はともかく、政権選択の衆院選での共産党との共闘には否定的です。だが、細野氏は前原氏との一本化ではなく、蓮舫支持に傾いていると言われます。

 アベノミクス再加速でデフレ脱却
 秋の臨時国会は、民進党の代表選を待って9月中旬に開幕しますが、政府は2日の臨時閣議で、事業規模が約28.1兆円の大型経済対策を決定しました。前回のHPで述べたように、対策はリニア中央新幹線の建設を8年間前倒しなど「21世紀型のインフラ(社会基盤)整備」に約10.7兆円投じるのが目玉で、中には長崎-福岡間など3新幹線整備の前倒しも含まれます。政府は経済対策が実質国内総生産(GDP)を短期的に1.3%程度押し上げる効果があると試算しており、日銀が7月29日に決めた追加の金融効果との相乗効果でアベノミクスを再加速させ、デフレ脱却を目指します。08年のリーマンショック以降の経済対策としては3番目に大きな規模で、対策に盛り込まれた公共事業を行うための国と地方の実質的な財政支出は約7.5兆円となります。政府はこの経済対策を柱とする16年度第二次補正予算案を秋の臨時国会に提出、成立を目指すとともに、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認を実現する方針です。

 課題多く臨時国会は激しい論戦か
 また、政府は参院選での争点化を避けるために見合わせていた、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で11月に派遣する陸上自衛隊に対し、3月に施行された安保関連法で実現可能になった「駆けつけ警護」と「宿営地の共同警護」の任務を付与する考えで新任務実施の訓練を開始します。一方、関東・信越は連日、40度に迫る猛暑で熱中症患者が続出する中、6日の広島、9日の長崎では被爆71周年の平和記念式典が開かれ、国民は熱い平和の祈りを捧げました。その合間の8日、平和と震災復旧を希求される天皇陛下は「高齢となった天皇の望ましい在り方」とのお考えを、国民向けのビデオメッセージでご発表、生前退位のご意向を示唆されました。陛下のお言葉を重く受け止めた首相は秋にも有識者会議を設置し、皇室典範の改正や特別法の制定に向けて議論を開始することにしましたが、民進、共産を含め与野党は慎重に対応する姿勢を見せています。このように9月中旬開幕の臨時国会は天皇制から経済開発まで審議課題が幅広く、与野党の論戦は激化しそうです。なお、平和の祭典・リオ五輪で日本は海外開催での過去最多メダルを獲得する勢い。中でも我が長崎県が誇る内村航平選手は、体操男子個人総合でロンドンに次ぐ金メダル2連覇の偉業を達成しました。この快挙を皆様と共に心からお祝い申し上げます。