第376回(7月16日)自民が大勝 内閣改造し経済対策強化へ
 7月10日投開票の参院選で自民党は大勝。非改選議席と合わせ参院でほぼ単独過半数に達し、公明党と、おおさか維新の 「第3極」 政党などと合わせ改憲勢力を確保しました。首相は8月3日にも第3次政権2度目の内閣 ・ 党役員人事を断行して基盤を強化、悲願の憲法改正に取り組みます。 また中国の経済減速、原油安、英国のEU離脱などで混迷を深める世界経済に対処するため、秋の臨時国会に10兆円超の16年度第2次補正予算を提出、年末にかけ 「成長と分配の好循環」 を図る成長戦略を煮詰め、17年度予算編成に盛り込みます。その合間を縫って首相は15、16日にモンゴルで開いたアジア ・ 欧州首脳会合 (ASEM) に出席、9月には中国で開く主要20か国 ・ 地域 (G20) 会議とロシア極東を訪問、国連総会にも出席するなど多彩な外遊をこなし、地球儀俯瞰の積極的平和外交を展開する方針です。舛添要一知事辞任に伴う東京都知事選は 31日が投開票日。14日の告示には小池百合子 ・ 元防衛相と、自民党都連や区長 ・ 市長 ・ 町長の各会が推薦し、行政手腕の豊富さから民進党内にも支持者がいる増田寛也 ・ 元総務相が立候補して自民党は分裂選挙。これに野党統一候補の鳥越俊太郎氏も加わり混戦模様となりました。私は参院選の期間中、長崎4区の支部長として地方区の金子原二郎候補を応援。皆様にご支援を要請しましたが、お蔭さまで野党統一候補を破ることが出来ました。一層のご指導、ご支援を  お願い申し上げます。 

与党と 「第3極」 で改憲勢力確保
 10日投開票の参院選は約3倍の少数激戦でしたが、自民党は当選後の追加公認1を含め改選121議席の過半数に迫る55議席を獲得。非改選議員の65議席と合わせると120議席の新勢力を回復。これに旧民主党を離脱して現無所属の平野達男元復興相が13日に自民党入りを希望、近く受理されるため27年ぶりに単独過半数の122議席を復活する見通しです。公明党も14議席と健闘、同党の非改選議員11を合わせた与党全体では145議席に達し、憲法改正に前向きなおおさか維新、にほんのこころを大切にする党の 「第3極」 政党や無所属を合計すると、衆院同様に参院でも改憲勢力の3分の2(162)議席を獲得、大勝しました。これは、首相が勝敗ラインに掲げた 「与党で改選過半数61議席」 をはるかに超えた成果ですが、首相は憲改正について、「参院選で是非が問われたとは考えていない。今後、衆参両院の憲法審査会で与野党がしっかり議論してほしい」 と述べ、慎重姿勢に徹しています。民進、共産、社民、生活の野党4党は 「アベノミクスは失敗だった」 と安倍内閣の責任を追及。32の1人選挙区で統一候補を擁立し、与党の改憲勢力阻止を唱え、安保法制の廃棄を唱えて闘いました。しかし、中国海軍の尖閣諸島周辺など日本領海侵入、北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射実験など安全保障環境が急激に変化する中で、国民が野党に不信感を強め、英国が国民投票で欧州連合 (EU) 離脱を決め、世界経済が混迷したことにも 「政策 ・ 理念の合致しない野合には期待できない」 と国民が反発したものと見られます。

増税延期の税収不足をどう捻出か
 「アベノミクスを一層加速せよと国民から信任を頂いた。しっかりと内需を下支えできる総合的かつ大胆な経済対策を実施する」 ―― 首相は参院選後の記者会見でこう語り、安倍内閣の使命の重大さを強調しました。10%への消費増税を2年半延期することの 「信を問う」 参院選でしたが、増税2%の延期で失う8兆円の税収をいかに捻出して社会保障財源を確保するか。日銀が発表した6月の短観では企業の景況感を示す業況判断指数が大企業 ・ 製造業で6となり横ばいで、2期連続悪化。これは英国のEU離脱決定前の景況感であり、実際はさらに悪く16年度の企業収益は悪化するとの見方があります。野党は 「年金積立金管理運用独立法人」 (GPIF) が運用する15年度の公的年金積立金運用収益が、5兆数千億円の赤字になったと追及しました。中国の景気減速への懸念や原油安などで15年4月に1万9千円台だった日経平均株価が16年3月末には1万6千円台に下落したことが影響したもので、本格的に市場で運用を始めた01年度以降の収益の累積は約45兆円の黒字となっており、厚労省は 「短期的に見ると運用結果が赤字になることもあるが、長期的には黒字だ」 と説明しています。だが、英国のEU離脱による円高 ・ 株安の乱高下も不安材料です。

インフラ投資に財投金利引き下げ
 参院選で野党は 「株高と為替で吊り上げたアベノミクスは行き詰まった。企業増税で約370兆円も潤った企業の内部留保を吐き出させろ」 と主張しました。これに対し、政府は企業収益を投資や賃金に振り向け、消費を増やす 「景気の好循環」 を実現しようと ①財政投融資資金による低利融資の拡充 ②保育 ・ 介護施設の整備促進 ③プレミアム付き商品券の配布 ―― など個人消費の喚起策を打ち上げ、秋に開く臨時国会で10兆円超の補正予算を編成、年末の17年度予算編成ではアベノミクス 「新第3の矢」 の成長戦略など万全の政策を盛り込む方針です。財投の貸出金利引き下げは民間企業のインフラ (社会基盤) 投資を引き出すのが狙い。低利融資の拡充や、保育 ・ 介護施設の整備促進などの財政出動を図ります。政府は主に国債の一種である財投債を保険会社などの機関投資家に販売し、企業に貸し出す財投の原資を得ています。民進党の岡田克也代表は社会保障の財源に赤字国債の追加発行を主張していますが、赤字国債や建設国債の借金ではなく、独立採算制での財投を利用することで、財政健全化に大きく影響する一般会計の赤字を抑えることが可能になります。

待機児童、保育士改善では全党一致
 政府自民党は 「アベノミクスのエンジンを最大限に吹かす」 を参院選公約に掲げ、「新3本の矢」 の 「GDP600兆円」 「希望出生率 1.8%」 「介護離職ゼロ」 の成長戦略を訴えましたが、与野党ともに公約で競い合ったのが待機児童問題で、ポイントは保育士の待遇改善。自民、公明両党の共通公約となった 「ニッポン1億総活躍プラン」 は、保育士の賃金を月額約6千円、経験を積んだ人なら最大4万円程度引き上げると明示。その上、自民党は17年度末までに保育の受け皿を50万人増やすと公約しました。民進、共産、社民の3党は、保育士の月給を5万円引き上げると主張。共産党はさらにその後5年間、毎年1万円ずつ上積みし、計10万円の賃上げを図り、30万人分の認可保育所増設も掲げました。一方、介護の分野でも担い手不足は深刻で、自民党は公約通り50万人の介護基盤を整備したうえで、介護職には月給平均1万円の処遇改善を唱えてきました。問題は消費税の延期に伴い不足する社会保障財源をいかに手当てするか。自公両党は行政改革などで捻出する考えですが、英国のEU離脱に伴う世界経済の混迷で、益々財源対策は必要になってきました。

 官房長官、財務相の処遇が最大焦点
 内閣改造では、首相の女房役として在職日数が1290日超と歴代最長となった菅義偉官房長官と、首相盟友の麻生太郎副総理兼財務相の処遇が最大の焦点です。国会では憲法改正に向けた動きが活発化するため、幹事長ら党3役人事では野党受けの良い人材が起用される見通しです。9月にも開く臨時国会は環太平洋経済連携協定(TPP)の承認が最大課題です。日米など12カ国が合意したTPPは日本が輸出する工業品の多くに掛けられている関税がゼロになり日本経済の成長につながるとして、自公両党、おおさか維新など 「第3極」 政党は早期発効を目指します。政府が昨年12月に公表したTPPによる 「影響評価」 は、農林水産物の年間生産額が1300億 ~ 2100億円減少しますが、コメは新設する特別輸入枠と同量を備蓄米として政府が買い入れ、米価への影響を遮断すると確約しました。また、農林水産品の総合輸出戦略を定め、「2020年の輸出額1兆円目標」の前倒し達成を目指し、生産コストの低減、地域産品のブランド化、生産から輸出までの6次産業化 ―― など農水産業の高付加価値化を推進します。これに対する野党は国会で決議したコメや麦など 「重要5品目」 の関税維持が守れなかったなどを理由に、TPP合意に反対しています。参院選ではTPPへの反発が強い1人区の青森、岩手、宮城、山形、福島の東北5県で農業票が与党から離反し、福島選挙区の岩城光英法相が落選しました。米国でもトランプ共和、クリントン民主の両候補ともに自動車産業の支持を得るためTPPに反発しており、11月の大統領選が終わって来春以降になるまで、米議会の承認は難しい見通しです。

 先制攻撃の小池氏はタレント票争う
 東京都知事選には、自民党都連の推薦が得られなかった小池氏が 「落下傘なしに飛び降りる」 と “早出しじゃんけん” で先制攻撃の出馬を表明した上、「当選したら都議会を解散する」 と都議連を刺激する発言をしたため、自民党内は反発し分裂選挙。これに俳優で首相との面識がある石田純一氏が 「市民団体連合会の要請を受けた。野党の統一候補なら出る」 と8日の記者会見で表明しましたが、野党幹部に 「実務経験のない候補者は無理」 と否定されて出馬を断念。代わって元サンデー毎日編集長の鳥越俊太郎氏が “後出しじゃんけん” で出馬を表明、民 ・ 共 ・ 社 ・ 生活の4野党は鳥越氏を統一候補に決定しました。民進党都連は初め、元経済産業省官僚の古賀茂明氏の擁立する動きを見せていましたが、古賀氏は鳥越氏の支持を表明。過去に、共産 ・ 社民両党の支援で出馬した宇都宮健児 ・ 元日弁連会長も3度目の出馬に意欲を示していましたが、鳥越氏支持に回り、小池 ・ 増田 ・ 鳥越の三つ巴の戦いになりました。小池、鳥越両氏はともにキャスターとして過去に活躍しておりTVタレント合戦の様相も加わっています。14日の告示日にはかつての 「政界の牛若丸」 こと山口敏夫元労相ら18人も出馬を届け出、21候補で争う賑やかな選挙になりました。