第375回(7月1日)天下分け目の大決戦 参院選は与党の正念場
 アベノミクスの是非が最大争点の参院選は6月22日に公示され、7月10日の投開票に向けて各党が舌戦を展開中です。安倍首相は10%への消費増税を2年半延期することの 「信を問う」 選挙と位置づけましたが、実際はアベノミクスによる 「経済の好循環」 の成果を問う選挙です。対する民進、共産、社民、生活の4野党は 「アベノミクスは失敗」 と安倍内閣の退陣を要求、32の1人選挙区で統一候補を擁立し、与党の改憲勢力阻止を目指しています。 しかし政策の合致しない民進 ・ 共産の 「民共合作」 は野合そのもの。安保法制の廃棄を唱えている最中に北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射や、中国海軍の日本領海侵入などが相次ぎました。日本をどう守るのか。野合統一候補は断固粉砕すべきです。3分の2以上の改憲議席を目指しながら、自公与党は改選議席121議席の過半数61議席という控え目な目標を掲げて背水の陣で望んでいます。選挙権年齢が 「18歳以上」 に引き下げられ有権者が240万人増えたことで、与野党ともに 「給付型奨学金」 の創設など教育費の負担軽減、最低賃金を1000円に引き上げなど雇用条件の改善 ―― にしのぎを削っています。そこへ英国が国民投票で欧州連合 (EU) 離脱を決め、同時株安が進行するなど世界経済が激動しました。民進党は増税再延期の税収減を 「赤字国債で賄う」 と無責任な主張をしますが、政府与党は来年度予算編成に備え本格的な内需拡大策を検討中です。ご支援をお願い申し上げます。

57議席を獲得し単独過半数復活
 半数改選の参院選には自民73、民進55、公明24、共産56、おおさか維新28、社民11、生活5、改革10など389人が立候補。前回2013年参院選の433人より44人減りました。内訳は選挙区225人、比例164人で、改選定数121議席を争います。自民党は前回参院選の1人区で29勝22敗と圧勝し、比例を含め全体で65議席を獲得したにも関わらず、首相は今回、「与党で改選過半数 (61議席) 」 を勝敗ラインに掲げています。これは第1次安倍政権の2007年参院選で1人区は6勝23敗、比例を含めても37議席と惨敗。2010年参院選で当選し今回再出馬する自公両党改選数が合計59と少なかったため、首相は慎重に構え、改選数を2人上回るだけの控えめな目標としたものです。だが前回の大勝利で与党は76議席を獲得しており、自民党が踏ん張って57議席を獲得すれば、消費税導入直後の1989年参院選で失った単独過半数122議席を27年ぶりに回復することになります。さらに与党とアベノミクスを支持する 「第3極」 のおおさか維新 ・ 新党改革 ・ にほんのこころを大切にする党や憲法改正に前向きな無所属議員で計78議席を獲得すれば、非改選議員の自民65、公明11、無所属8と合わせ、参院の3分の2 (162) 議席に達するのも夢ではありません。

討論会でアベノミクスの果実強調
 9党首は公示前日に東京 ・ 内幸町の日本記者クラブで開かれた討論会や数回のテレビ討論、街頭演説で激しく火花を散らしています。首相は党首討論会や街頭演説で 「雇用は110万人増え、有効求人倍率は全都道府県で1倍と24年ぶりの高水準だ。3年連続の賃上げも達成し、訪日外国人も1900万人を超えた」 とアベノミクスの果実を強調。 「アベノミスクをもっと加速させるか、後戻りさせるかが最大の争点」 と述べ、民間の力を引き出す規制緩和でも 「電力の自由化などを実現し、20年続いたデフレからの脱却が進んでいる」 と表明しました。特に街頭では 「選挙戦で問われるのは経済政策を力強く前に進めるのか、(前民主党政権の) 低迷した時代に逆戻りするかだ」 と訴えました。日銀の大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略のアベノミクス 「3本の矢」 によって円安 ・ 株高を招き、自動車、電機など輸出産業は高収益を上げ、税収も21兆円増加、基礎的財政収支 (プライマリーバランス) の改善も図られました。これは水が滴り落ちるように大企業から中小 ・ 零細企業へ、中央から地方へ 「成長と分配の好循環」 を図るトリクルダウン戦略を推進したからです。

公明はプレミアム付き商品券発効
 このため 「アベノミクスのエンジンを最大限に吹かす」 と自民党の公約に明記し、「新3本の矢」 には 「GDP - 600兆円」 「希望出生率1.8%」 「介護離職ゼロ」 を新たに掲げ、来年度の骨太方針、規制改革実施計画など4計画を閣議決定しました。首相は伊勢志摩サミットの首脳宣言で提言した通り、中国など新興国の景気減速や原油安などで下振れリスクに向かう不透明な世界経済を好転させるため、機動的な財政出動や構造改革、為替の安定などを推進する姿勢を強め、ややもすれば 「前3本の矢」 で遅れた部分とされる成長戦略を明確にしました。アベノミスクを後押しする与党の公明党も社会保障の充実策について 「赤字国債に頼ることなく、経済政策による果実の活用を含め、可能な限り実現を目指す。軽減税率は2019年10月の消費税率10%引き上げと同時に実施する」 と公約で強調、消費マインドを喚起するため、プレミアム付きの商品券と旅行券の発効などを掲げています。

暴走政治、「安倍のリスク」 と野党
 これに対し4野党の党首は討論会で、「憲法の平和主義を変える安保関連法、憲法9条改正論は認められない。『分配と成長の両立』 の経済政策を訴える」 (岡田克也 = 民進党)、「安倍暴走政治ストップの願いに応え1人区全てで統一候補が実現した。 『格差と貧困の是正』 など共通政策を確認」 (志位和夫 = 共産党)、 「憲法改悪を阻止する選挙。トリクルダウンより 『ボトムアップ』 だ」 (吉田忠智 = 社民)、「景気回復は個人消費の拡大が不可欠。国際紛争は国連中心主義で行う」 (小沢一郎 = 生活) ―― などアベノミクスは行き詰まって 「安倍のリスク」 になったと捉え、政策転換を迫り、安保政策や首相の改憲志向を追及しました。特に岡田民進党代表は街頭演説の第一声で 「アクセルを吹かすアベノミクスの先にあるのは国民生活の破壊」 と主張、与党の3分の2議席獲得を阻止すると強調しました。しかし、4野党は安保関連法の廃止を共通政策にしながら、憲法、日米安保などの基本政策では違いが大きく、岡田氏は共産党との連携で 「政権を共にすることが出来ない」 と述べて共産党主張の連立政権を組むことを否定。憲法も 「未来志向の改正」 を唱えるだけの無責任ぶり。

 北朝鮮ミサイルは与党優勢に加担
 こうした中、北朝鮮は6月22日、中距離弾道ミサイル 「ムスダン」 2発を発射。うち1発が高度1413キロメートルに達し400キロメートル離れた日本海に落下し、実験は成功したと発表しました。同ミサイルの射程距離には日本、グアム、ハワイなどの米軍基地攻撃が入ります。また中国は国際法に基づく 「航行の自由」 と称し同9日、沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域に海軍艦船が進入、15日にも鹿児島県口永良部島沖の領海に情報収集艦1隻を航行させ、日米印3カ国の共同訓練を追尾するなど領海侵犯の既成事実を積み上げています。安保関連法は安保環境の急激な変化に対応するために制定されましたが、北朝鮮が突如、日本国内の米軍基地や原発を狙ってミサイルを撃ち込んだり、中国海軍が尖閣諸島を占拠したら、野党はどう対応するのか。皮肉にも北朝鮮と中国は、自民党の参院選優勢に加担してくれました。一方、第3極の政党は党首討論で、「身を切る改革で借金を増やさず、増税しないで行くべきだ」 (片山虎之助 = おおさか維新)、「経済成長路線で個人所得を増やし、豊かで温かい社会を創る」 (中山恭子 = こころ)、「脱原発を掲げる唯一の保守政党として、『家庭ノミクス』 を進める」 (荒井広幸 = 新党改革) ―― と述べ、アベノミクス支持の姿勢を見せています。


大衆迎合のEU離脱はドミノ懸念 
 気がかりなのは英国が欧州連合 (EU) に残留すべきか離脱すべきかを問う23日の国民投票で、離脱派が勝利したことです。残留を主張した女性のジョー ・ コックス下院議員が凶弾に倒れて同情論が浮上、一時は残留が有望視されましたが、EU諸国を経由して英国に来る難民に紛れてテロリストが流れ込んだり、職を奪われ社会保障が圧迫されていることを不満とする低所得層や、大英帝国の良き時代を回想する高齢者層が離脱を支持、離脱派が過半数を制しました。キャメロン英首相は10月までに辞任する意向を表明、後継には離脱派を率いたポリス ・ ジョンソン前ロンドン市長の名が挙がっています。EU残留を望むスコットランドは 「民意に反する」 とし、英国からの独立を問う2回目の住民投票を求める動きを強め、デンマーク、オランダや仏の極右政党のルペン党首ら右派勢力はEU残留 ・ 離脱を問う国民投票を提唱しており、欧州全体で 「離脱ドミノ」 が懸念されます。離脱派は 「英国を再び偉大に。実権を再び我が手に」 と連呼。国民投票の投票日を 「独立記念日にする」 と叫んでいました。だが、読売の鵜原徹也編集委員はコラムで、政治学者は解説で、「既成事実を糾弾し、移民を憎み、国際協調に背を向け、自国の過去にしがみつく。排他的なナショナリズムに訴えるポピュリズム (大衆迎合) だ」 と指摘し、「国民投票は重要政策を国民が直接決める直接民主主義であり、国会議員が政策方針を決める間接の議会制民主主義発祥の地である英国にはそぐわない。歴史的な過ちを犯した」 と批判しています。

 経済リスクをサミットで首相予言
 孤立主義的ポピュリズムは米大統領選の共和党候補となるドナルド ・ トランプ氏と似通った手法で、英国の残留派は選挙中、ジョンソン氏とトランプ氏がキスするシーンを漫画化し、反対しました。スコットランドを訪問中のトランプ氏は 「英国民は国を取り戻した」 と称賛しましたが、10月の保守党大会でジョンソン氏が首相に選ばれる保証はありません。英国のEU離脱の衝撃は、08年のリーマン ・ ショック以来の世界同時株安、英ポンドやユーロとドルの下落、日本も円高 ・ 株安を招きました。円安 ・ 株高で支えられてきた日本の大手輸出企業も大きな痛手となります。英国には日本の1100近い企業が進出していますが、離脱の結果、EU圏内で関税がかかることになれば、日本企業は必然的に英国から転失。英国は中国主導のアジアインフラ投資銀行 (AIIB) にEUで真っ先に参加したことから、主要貿易相手国は中国にシフト、世界経済、安全保障の両面で脅威が生じ欧州統合は後退します。首相は5月の伊勢志摩サミットの議長として 「英国のEU離脱は成長に向けた更なる深刻なリスク」 と首脳宣言に明記しましたが、"先見の明"の予言となりました。まさに世界経済の下振れリスクが現実化しつつあります。早速、岡田民進党代表は遊説先の長崎市で記者団に、「アベノミクスを支えてきたのは円安 ・ 株高だ。エンジンを吹かしてもうまくいかない」 と語り、政策の転換を訴えました。麻生太郎財務相は事態を憂慮し、為替介入などを慎重に検討していますが、政財界が懸念する中で、参院選後に成長戦略をいかに構築するかが大問題。その意味でも参院選は天下分け目の大決戦。正念場の戦いになりました。