第374回(6月16日)参院選で激突 消費増税再延期の信問う
 6月1日に通常国会が閉幕。与野党は22日公示 ― 7月10日投開票の参院選に突入しました。首相は来年4月の消費税率10%への引き上げを2年半先送りすることとし、「参院選で国民に信を問う」 と表明。自公両党で改選定数 (121) の過半数に当たる61議席の獲得を目標に闘っています。自民党の参院選公約は、第2次安倍内閣で4月に有効求人倍率が全都道府県で1倍を超え、賃金も3年連続で上昇したなどの成果をアピール。「アベノミクスのエンジンをさらに吹かす」 とし、 ①保育の受け皿を50万人増加 ②介護職員の月額1万円アップ ③給付型奨学金の創設 ―― など少子高齢化対策を重点に経済再生の目玉政策に掲げました。野党は 「消費増税の先送りはアベノミクスの失敗で、内閣総辞職すべきだ」 と迫り、経済のほかに安保法制の廃棄、改憲反対などでも足並みを揃え、32の参院選挙区1人区で統一候補を擁立しています。政策の合致しない民進、共産の 「民共合作」 や統一戦線は断固粉砕しなければなりません。与党が参院選に勝利するには、社会保障費の財源確保など第2次補正や来年度予算の編成に全力投球が必要です。一層のご支援をお願い申し上げます。

伊勢志摩合意踏まえ大胆経済政策
 「これまでの約束とは異なり、公約違反と言う批判は真摯に受け止めている。新しい判断について参院選を通じて国民の判断を問いたい」 ―― 首相は国会閉会の1日、記者会見で14年衆院選の公約に違反していることを率直に認め、増税延期は世界経済の危機回避に向けた主要国首脳会議 (伊勢志摩サミット) の合意を踏まえ、議長国として責任ある対応を取ることを理由に挙げました。さらに 「熊本地震で観光、農業、製造業など経済や暮らしに打撃を受け、日本経済にとって新たな下振れリスクになっており、再びデフレの長いトンネルへと逆戻りするリスクがある。アベノミクスをもっと加速させるか、後戻りさせるかが最大の争点だ」 と述べ、総合的、大胆な経済対策をこの秋、講じる考えを明示しました。それには 「構造改革を断行し、将来の成長を生み出す民間投資を喚起することだ」 とし、 ①TPP (環太平洋経済連携協定) の早期発効 ②雇用形態に関わらない均等待遇 ③同一労働同一賃金の実現 ④非正規の言葉を一掃 ―― など労働制度改革による内需拡大策を挙げました。

骨太の方針など4計画を閣議決定
 政府はこれを基に2日、「経済財政運営と改革の基本方針」 (骨太の方針)、「ニッポン1億総活躍プラン」、「規制改革実施計画」、日本再興戦略」 (成長戦略) の4計画を閣議決定しました。4計画は自民党の参院選公約と、来年度予算編成の基本的な考え方を示したもので、アベノミクス 「新3本の矢」 の 「GDP ― 600 兆円」 「希望出生率1.8%」 「介護離職ゼロ」 の成長戦略を示しています。従って4計画は重なる部分が多くあります。そこで骨太方針を取り上げ、内容を検討してみましょう。骨太は先ず、 【日本経済の現状と課題】 で 「アベノミスクで経済再生 ・ デフレ脱却は大きく前進したが、中国の成長鈍化、資源価格の下落などを背景に世界経済の不透明感が増した」 とし、「伊勢志摩サミットを踏まえ、日本がリーダーシップを発揮し、先進7カ国 (G7) が機動的な財政政策で協力することが重要」 と強調。 【成長と分配の好循環実現】 では 「消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期し、20年度の基礎的財政収支の黒字化という財政健全化目標を堅持する」 と公約しました。

成長戦略加速し個人消費を喚起
 次に 【結婚 ・ 出産 ・ 子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現】 では 「経済成長の隘路の根本には、人口減少 ・ 少子高齢化という構造的問題があり、待ったなしの最重要課題である」 とし、 ①保育の待機児童は17年度、放課後児童クラブの待機児童は19年度末の解消を目指す ②同一労働同一賃金の実現など非正規労働者の待遇改善と正社員転換、長時間労働是正に取り組む ③民間企業の配偶者手当ての在り方検討を促す ④介護離職者をなくし、介護施設整備に国有地の利用推進 ⑤歳出改革で子育て支援充実 ―― などの具体策を列挙。 【成長戦略の加速】 では高規格幹線道路や整備新幹線、リニア中央新幹線など広域的な高速交通ネットワークの早期整備 ・ 活用を通じた人的 ・ 物的流れの拡大 ―― を挙げました。ほかに 【個人消費の喚起】 【成長と分配を繋ぐ経済財政システムの構築】 【経済 ・ 財政一体改革の推進】 【当面の経済財政運営と17年度予算編成に向けた考え方】 も総花的に挙げました。これらは9月に開く臨時国会で論議し、来年度予算編成でどう肉付けするかが課題です。

農水産業の経営安定や子育て支援
 自民党が3日に発表した参院選公約は、{希望を生み出す強い経済}、{科学技術の振興}{安定的で低廉なエネルギー}、{観光立国}、{財政の健全化} ―― など経済再生に向けてアベノミクスを強化し 「成長と分配の好環境」 を柱に据え、消費増税の2年半延期では 「赤字国債に頼ることなく、安定財源を確保して可能な限り社会保障の充実を行う」 と明記しています。これは民進党の岡田克也代表が 「消費増税を2年先送りし赤字国債を社会保障充実の財源に充てる」と主張したのに反論し、増税延期やアベノミスク成果の税収分を社会保障費に回そうというものです。このほか公約では、指導的地位を占める女性の割合を3割にする {女性改革}、本社機能の地方移転や農林水産業の経営安定など {地方創生}、災害復興の加速や国土強靭化、最低賃金1000円の実現、子育て支援、持続的な社会保障制度の確立、テロ対策など{安全安心}、積極的な平和外交の展開と揺ぎない防衛体制の確立、北朝鮮の拉致被害者全員の即時帰国、国民合意の憲法改正など{国の基本} ―― と盛り沢山です。

アベノミクスは失敗 ・ 総辞職と野党 
 これに対し野党は、首相が15年10月に予定した消費増税を16年4月に延期すると決めた際、「再増税は予定通り断行する」 と述べ14年衆院選の公約にも謳い、その後も 「リーマンショックか大震災級の事態が発生しない限り引き上げる」 と国会末期まで繰り返し述べてきたことを 「増税再延期をひたすら隠して野党要求の予算委審議を避け通した。公約違反で “詐欺行為” だ」、「サミットをうまく利用して世界経済の下振れリスクを吹聴するが、アベノミクスは格差を拡大し失敗した」 と批判。さらに増税の判断を 「総裁任期の外に放り出した無責任な行動。経済失政で内閣総辞職をすべきだ」 と追及しています。国際金融情勢が変動する中、個人消費や設備投資に民需の力強さを欠いているのは事実で、経済再生と財政健全化の双方を一体で実現するのが極めて重要。問題なのは消費増税分を充てる予定だった子育て支援や介護の充実など社会保障費の確保を予算でどう組み立てるか。参院選では与野党の経済論戦が一段と活発化しそうです。参院選の前哨戦とされた5日の沖縄県議選は、うるま市の女性会社員殺害事件で反基地闘争が激化した影響もあり米軍普天間飛行場の名護市辺野古移転に反対する翁長雄志知事派が過半数議席を維持しました。与野党の党首は22日の公示に向け32の1人区で舌戦を展開中ですが、「政治とカネ」 問題を問われた舛添要一東京都知事の追い込まれて15日に辞表を提出したため、参院選では与党に逆風が吹いています。