第373回(6月1日)ダブル選は断念 増税延期でいずれ信問う
 150日間の通常国会は6月1日に閉幕。「衆参ダブル選はあるのか」 と政界を震撼させた衆院解散の余震は一旦収まりました。だが、なお今年いっぱいは鳴動が続く気配です。首相は1〜3月期のGDP速報値や伊勢志摩サミットの成果を踏まえ、来春の消費税再増税の可否と衆参同時選を決断する腹構えでした。ところが、国際経済は不透明さを増すばかり。「熊本大地震の復興を最優先すべき最中に政治空白を作ってよいのか」、「衆院最多の自民議席を減らすリスクもある」 ―― などと与党内にも反対があり、首相はとりあえずダブル選を断念し消費再増税を先送りしました。しかし、野党は公約違反だとし内閣不信任案を提出し総辞職を迫りました。そこで、首相は参院選の結果や個人消費の動向などをじっくり見据え、秋の臨時国会末か、次期通常国会冒頭にも解散 ・ 総選挙を断行する考えに傾いています。首相は珍しく自民党衆院秘書の総会にまで出席し 「総選挙と同じように参院選を支援して欲しい」 とゲキを飛ばしました。自公両党は7月10日予定の参院選で3分の2の改憲勢力を獲得しようと総力を挙げて戦います。変わらぬご支援をお願い申し上げます。

伊勢志摩サミット、広島訪問成功
 日本で8年ぶりの主要国 (G7) 首脳会議 (伊勢志摩サミット) は5月26、27の両日、景勝地 ・ 三重県志摩市の賢島で開かれました。G7の首脳は、原油安や中国など新興国経済が減速する中で不透明感を増す世界経済について 「下方リスクガ高まっている」 とし、@金融政策と機動的な財政戦略、構造改革のG7版 「3本の矢」 で世界経済を牽引 A為替の 「通貨安競争」 を回避 BG7が主導して国際的な課税逃れ対策を強化 Cテロ資金対策を強化する行動計画を策定 D中国の南シナ海進出と海洋安全保障を懸念し、北朝鮮の核実験 ・ 弾道ミサイル発射への制裁措置の着実な履行 ―― など 「伊勢志摩経済イニシャチブ」 を含めた首脳宣言を発表。宣言とは別にテロ対策など6分野の付属文書も合わせて採択しました。安倍首相は先立つ5日までの欧州訪問で、各国首相に 「為替市場を安定させ、構造改革の加速化に合わせて機動的な財政出動が求められる」 と要請しました。しかし、財政規律を重視する英独の両首相は財政出動に慎重姿勢を示し、首脳宣言では 「相互補完的な財政、金融、構造政策の重要な役割を再確認する」 と明記するなど、世界経済の安定化を牽引する穏やか表現になりました。首相肝いりの、荘厳で凛とした伊勢神宮へのG7首脳の訪問は26日、G7首脳の全体会合とアジアなどの招待国7カ国を交えた拡大会合も27日に開かれました。

無実の全戦争犠牲者へ追悼を表明
 オバマ米大統領は首相とともに27日夕、広島市の平和記念公園を訪問。原爆死没者慰霊碑に献花、原爆資料館も訪ね、広島 ・ 長崎両市長が立会う中で17分のメッセージを読み上げました。オバマ氏は11月の米大統領選への波及を懸念し 「謝罪」 の言葉を避けながらも、広島、長崎の被爆者を始め 「全ての無実の戦争犠牲者への追悼」 を表明。2009年の 「プラハ演説」 で示した 「核なき世界の実現」 への決意を改めて演説 (所感) に盛り込みました。この後、広島の被爆者2人とも面談し、かつて戦火を交えた日米関係の和解と同盟関係を深化させ、世界から高い評価を受けました。一方、米軍族の男が沖縄県うるま市の女性会社員を暴行 ・ 殺害して逮捕された事件では、安倍首相が25日夜の日米首脳会談で強くオバマ氏に抗議し、在日米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を厳しく求め、オバマ氏は 「心の底からお悔やみの気持ちと深い遺憾の意を表明する」 と最上級の表現で犠牲者を哀悼、全面的な捜査協力を確約しました。だが、基地撤去、地位協定見直しを求める反基地闘争が盛り上がり、27日告示、6月5日投開票の沖縄県議選は、与党に逆風が吹いています。

先手の補正予算7780億円が成立
 「復興に向けて先手、先手で出来ることは全てやる」 ―― 首相は熊本地震発生直後に 「激甚災害」 指定、続いて東日本大災害や阪神大震災などと同じ 「特定非常災害」 指定、さらに10日には初めて大規模災害復興法の 「非常災害」 に指定。13日には被災者支援や復旧 ・ 復興費に充てる2016年度補正予算を閣議決定し、野党の協力を得て17日に成立させました。予算総額は7780億円で内7000億円は 「熊本地震復旧予備費」とし、道路 ・ 橋の復旧や瓦礫処理の進展に応じて具体的な使途を決めます。応急仮設住宅建設などの災害救助費には573億円、被災者生活再建支援費に201億円を盛り込んでいます。財源は全額、国債の利払い費が余った分を充て、新しい国債は発行しません。補正予算案審議の衆院予算委には民進党の岡田克也代表が質問に立ち、「1億総活躍社会はわが党の発案だ」 と “本家争い” 気味にアベノミクスの欠陥を追及。参院選を意識して党首討論並みの論戦を展開しました。「1票の格差」 を是正する衆院選挙制度改革関連法案は与党などの賛成多数で20日に成立。自公が提出した同法案は、衆院定数 (現行475) を10削減し、最高裁判決に沿って1票の格差を2倍未満に収める内容。15年の簡易国勢調査に基づき小選挙区を 「0増6減」 (青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島で各1減)、比例選ブロックを 「0増4減」 (東北、北陸信越、近畿、九州で各1減) します。都道府県の定数配分ルール 「アダムズ方式」 は、2020年の大規模国勢調査に基づいて導入。この方式で実施される衆院選は22年以降になります。

野党が消費増税先送りや中止要望
 18日に11カ月ぶりに開いた党首討論では、同日発表の1〜3月期の国内総生産 (GDP) 速報値を巡り、岡田氏は 「消費が力強さを欠いており、先送りせざるを得ない状況だ」 と述べ、来春4月に予定される消費税率10%への引き揚げを19年4月まで再延期すべきだとの認識を示し、@20年度までの財政健全化目標の堅持 A行財政改革の徹底 B社会保障充実の実行 C軽減税率導入の白紙撤回 ―― の4点を挙げました。共産党の志位和夫委員長も 「消費増税以来日本経済の6割を占める個人消費は冷え込み続けている。10%への増税はきっぱり中止すべきだ」 と中止を要求しました。速報値は物価変動の影響を除いた実質GDPが前期 (15年10〜12月期) 比0.4%増と2四半期ぶりにプラスに転じ、この成長ペースが1年間続くと仮定した年率換算では1.7%増でした。しかし、個人消費の回復の勢いは弱く、企業の設備投資も失速し3四半期ぶりのマイナス。これは原油安などによる世界経済の減速や、年明け以降の急激な円高 ・ 株安で、企業が投資に慎重姿勢を強めたからです。首相は消費再増税について、「リーマン ・ ショック、大震災級の影響が起こらない限り予定通りに行う」 との原則論を強調しつつも、党首討論では 「その状況にあるかないかは専門家に議論してもらい適時適切に判断する。伊勢志摩サミット後に決断する」 と答えました。 

不信任案提出や衆院選で選挙協力
 民進、共産、社民、生活の4野党は19日、党首会談を開き、@内閣不信任決議案の共同提出を検討 A衆院選協力の具体化 B参院選1人区すべてで統一候補実現 C消費増税反対のほかにも共通政策を積み重ねる ―― の4点で合意。岡田氏は “即解散” に結びつく不信任案には最後まで慎重でしたが、ダブル選はないと見定めて提出に応じました。民進党は当初、選挙協力にも否定的でしたが、先の衆院北海道5区補選で野党共闘の効果がある程度見込まれたことから衆参同時選に備えて歩み寄り、夏の参院選と同様に衆院選でも民進、共産両党が選挙協力を進めることで13日に合意しました。民進党の枝野幸男幹事長は 「出来る限りの協力に向けて色々なことを模索し努力する」 と語り、共産党の小池晃書記局長も 「衆院選での協力は初めて。極めて重要で画期的な合意だ」 と強調し、政権批判票の受け皿一本化を評価。社民、生活の党も含め野党4党は衆院選候補者のすみ分けなど協力の具体化に向け調整を急いでいます。

社民は合流断念、解散断行の好環境
 注目されるのは、社民党の吉田忠智党首が12日の党常任幹事会で、民進党への合流を提案したことです。党勢低迷が深刻なうえ、自ら7月参院選比例区での改選を控えており、記者団には 「社民党が参院選を戦う状況は極めて厳しい。選択肢を考えないといけない」 と弁明しました。だが1955年体制の一角を占めた社会党の歴史に幕を下すことに、同じ再選組の福島みずほ前党首らが抵抗したため、吉田氏は18日の記者会見で 「同志に不安を与えた」 とし、合流を断念しました。このように野党は自ら消費増税の先送りを求め、首相がそれに応じるなら、その責任を取って内閣総辞職を迫るなど、2段構えの要求を突き付けました。首相は熊本震災に万全な復旧対策を講じつつ、日本経済の推移にあらゆる事態を想定して会期末まで色々な手を打ってきたため、各紙の内閣支持率は向上。それゆえに野党が内閣不信任案を提出するなら、「国民に信を問う大義名分ができる」 (高村正彦副総裁) と、不信任案を “誘い水” に衆院解散 ・ ダブル選断行の手筈を早くから整えていました。

消費増税再延期を自公両首脳容認
 しかし、首相がサミット初日の全体会合で世界経済の現状について 「リーマン ・ ショック前の現状に似ている」 と指摘、消費再増税の2年半再延期を示唆したことから、サミット後の記者会見で消費再増税の先送りは参院選前に決断すると述べ、28日夜、麻生太郎財務相、菅義偉官房長官、谷垣禎一幹事長と会談、30日にも高村副総裁、二階俊博総務会長、稲田朋美政調会長、公明党の山口那津男代表らに 「消費増税を19年10月まで2年半先送りしたい」 と伝えました。麻生氏は 「延期なら衆院解散で国民に信を問うべきだ」 と反発、谷垣氏も 「財政再建はどうなるか」 と難色を示しましたが、結局、自公両党首脳は容認。4野党は31日、「アベノミクスは破綻した」 と内閣不信任決議案を共同提出。与党は同日、淡々 ・ 粛々に否決しました。野党は 「参院選で安倍内閣に不信任を突きつける」 と32の参院1人区で統一候補を擁立すると浮き足立っています。政府は消費の低迷や進む円高を重視し 「経済財政運営と改革の基本方針 (骨太の方針)」 の大筋を決定、31日の閣議で了承する予定でしたが消費増税を再延期するため先送りしました。昨年より1ヶ月早めて策定した骨太の方針と少子高齢化対策や雇用改革などの中長期計画 「ニッポン1億総活躍プラン」、「日本再興戦略 (成長戦略)」、「規制改革実施計画」 の4計画は参院選の公約になります。