第371回(5月1日)政財界にも活断層 成長戦略構築し乗り切る
 震度6、M7.3の熊本 ・ 大分巨大地震。犠牲者49人の冥福を祈り被災者10万人に心からお見舞いを申し上げます。政府は地震発生の4月14日夜、直ちに非常災害対策本部を開き @自衛隊員2万5千人派遣 A食料 ・ 水 ・ 医療の提供 ―― など万全の支援を講じました。この影響で15日から再開されるはずだった衆院TPP特別委員会は延期され、首相も17日に予定した衆院北海道5区補選の応援も取りやめました。幸い、与野党総力戦となった同24日の補選は自民党が接戦で勝利。首相は余震が続く大型連休中の5月1日に出発、先進7カ国 (G7) の伊、仏、ベルギー、独、英とロシアを歴訪します。これは5月26、27日の主要国首脳会議 (伊勢志摩サミット) の議長として世界経済、テロ対策など主要テーマの選定に備えG7各国の意向を打診するためです。外遊で最も重視するのは6日のロシア南部のソチで開くプーチン露大統領との会談。既に日露外相会談では北方領土問題の協議が確定しています。首相は外遊や伊勢志摩サミットの成果を踏まえ、来春の消費再増税を先送りするかどうかを決断します。それにより首相が 「7月10日の衆参ダブル選」 を断行するか、年内解散に踏み切るかが明白になります。それまでに成長戦略が功を奏するよう政府与党は一体となり景気回復を軌道に乗せねばなりません。一層のご支援をお願い申し上げます。

領土解決は経済協力が必要の認識
 岸田文雄外相は4月15日、来日したラブロフ露外相と外務省飯倉公館で会談し、5月6日に安倍首相のロシア訪問で合意。北方領土問題の解決に向けた平和条約締結交渉のため、首相の訪露後、原田親仁政府代表とモルグロフ露外務次官による協議の早期開催でも一致しました。日露外相会談は昨年9月に岸田氏が訪露して以来のこと。岸田氏は会談の冒頭、「私が訪露して以来、様々なレベルで対話が続いている。肯定的な流れを歓迎したい」と述べ、ロシアが北方領土を含む千島列島の防衛強化を表明したことを念頭に、「日露双方が静かな交渉環境を維持するため、双方の国民感情を傷つける言動は避けるべきだ」 と自制を求めました。ラブロフ氏は 「受け入れ可能な解決策を達成するには、全ての分野で例外なく協力を進めなければならない」 と述べ、経済などの協力が必要との認識を示しました。ロシア経済は原油など資源価格の下落や、ウクライナ南部クリミア半島の併合に反発した米欧などからの制裁の影響で低迷しています。1年以内の訪日を約束しているプーチン大統領は6日にソチの大統領別荘で開く日露首脳会談で、在任中に北方領土の解決を強く望む安倍首相からシベリア極東開発などで経済協力を引き出したいと考えていると見られます。

引き分けは 「面積等分論か」 の憶測
 日露両政権は日露平和条約の締結時に北方領土問題の解決を図ろうと多年交渉を続け、これまで4島一括返還ばかりでなく、歯舞 ・ 色丹2島先行返還論、これに国後を加えた3島に択捉島の半分をプラスし、北方4島の面積を折半する 「面積等分論」 など様々な案が登場していました。ウクライナ制裁に日本が加わるまで、安倍首相と蜜月関係にあった柔道愛好家のプーチン氏は2012年3月、一部外国メディアとの会見で 「引き分け」 論を披露。日本では 「それは面積等分論ではないか」 との憶測を呼びました。しかし、ロシアは依然、強硬姿勢を崩さず、北方領土を含む千島列島 (クルリ諸島) で社会基盤整備と防衛基地の強化を着々と進め、ラブロフ氏はかつて、北方領土について 「第2次世界大戦の結果、ソ連 (露) 領になったという歴史的事実を認めなければ、 (交渉の) 前進は不可能だ」 と強調しました。日本との隔たりは大きく、6日の日露首脳会談でも進展は難しいと見られます。

総力戦の北海道補選は自民が勝利
  私が所属する衆院環太平洋経済連携協定 (TPP)特別委は民進党の審議拒否で空転した後、15日に再開されましたが、首相が熊本の被災状況を説明しただけで約3分後に流会し、18、9日に審議をやり直しました。20日に予定した首相と岡田克也民進党代表らの党首討論も震災対策優先を理由に延期され、野党は参院TPP特別委設置にも難色を示しました。この遅れで4月中のTPP協定承認と関連法案の衆院通過は困難視され、継続審議を決めて参院選後の臨時国会で審議をやり直すことになりました。北海道5区、京都3区の衆院ダブル補選は自民党が京都で不出馬。町村信孝前衆院議長の死去に伴う北海道補選は与野党が総力を挙げて闘いました。24日投開票の結果、町村氏の次女の夫で、元商社社員の和田義明氏が民進、共産、社民、生活の党推薦の野党統一候補で、社会福祉士の池田真紀氏を破りました。野党4党は勝利すれば参院選での野党共闘が一挙に進み、衆院選小選挙区でも野党共闘が加速する可能性もあると見て、アベノミクスやTPPの欠陥などを主な争点に闘いました。だが、和田氏は公明、日本の心を大切にする党の推薦に加え、鈴木宗男氏が代表を務める北海道の地域政党 「新党大地」 の協力も取りつけ、 「1票、1票の積み重ね」で与党陣営が接戦ながら勝利をおさめ、参院選に弾みをつけました。首相は先行き不透明な経済の中で政権運営に自信を深めています。オバマ米大統領が5月の伊勢志摩サミットで来日する際、広島の平和記念公園を訪問することも確実になりました。2009年のノーベル平和賞を受賞したオバマ氏は、広島の演説で核廃絶の 「核なき世界」 を訴え、政治的遺産 (レガシー) とする考えであり、同行する首相にとってもプラスになると見られます。


衆院選挙制度改革案の成立目指す
  衆院選挙制度改革は、大島理森衆院議長が4月13日に7党の国対委員会幹部と会談し、今国会中に関連法案を成立させるよう求めたのに対し、自公両党と民進党は15日にそれぞれの法案を衆院に提出。22日に衆院本会議で審議入りし与党案は28日に衆院を通過、5月中旬に成立する公算が強まりました。大島議長は会談で、「衆院制度改革関連法案は他の政策案件と違う」 と指摘した上、「3度違憲状態と判断した最高裁に対して、立法府として回答を示すことは大変重いものだ」 と迅速な審議を促しました。首相は今国会で関連法案を成立させれば、次期衆院選での違憲判決を回避でき、解散環境も整うと読んでおり、「1票の格差是正はアダムズ方式を2020年国勢調査後に導入する」 との自公合意を主導してきました。自公両党はアダムズ方式導入を柱に、小選挙区 「0増6減」、比例代表 「0増4減」 の法案を提出。民進党はアダムズ方式を即時導入したうえで、2010年の国勢調査に基づき小選挙区を 「7増13減」 とする内容。両案を審議した衆院政治倫理確立 ・ 公選法改正特別委は、委員長ポストを握る民進党も協力的で、2回の審議を経て与党案を参院へ送付しました。

G20会議は世界経済の行方懸念
 「世界経済の成長は緩やかでバラつきがあり、下方リスクや不確実性が残っている」 ―― ワシントンで4月14、5日に開かれた主要20か国 ・ 地域 (G20)財務相 ・ 中央銀行総裁会議は、世界経済の行方に懸念を表明する共同声明を発表して閉幕しました。タックスヘイブン (租税回避地) を使った節税の実態を暴露した 「パナマ文書」 が流出。欧州の銀行が深く関与していたほか、キャメロン英首相、習近平中国国家主席、プーチン露大統領ら世界首脳の側近や親族の行った資金運用の疑惑が明るみに出、抗議デモが広がったアイスランドではグンロイグソン首相が辞任しました。G20の共同声明では 「課税逃れを防ぐため、全関係国 ・ 地域に金融機関の口座情報を交換する仕組みへの参加」 を求めており、経済協力開発機構 (OECD) が情報交換の枠組みつくりを主導します。麻生太郎財務相は 「足元の市場を踏まえ為替レートの安定が重要である点が改めて確認された。パナマ文書に関心が高まったが、情報交換は極めて有意義だ」 と評価しました。マイナス金利を導入した黒田東彦日銀総裁は13日、ニューヨークの講演で 「必要だと判断すれば、ためらわずに金融緩和を進める。技術的に限界はない」 と述べ、追加の金融緩和を行う考えを強調しました。

骨太や1億総活躍プランを前倒し
 しかし、日銀が物価上昇2%を目指し、異次元の 「量的 ・ 質的金融緩和」 を打ち出して4年目に入りましたが、原油安、新興国の不況、消費低迷が足かせとなって日本経済は足踏み状態を続けています。先号でも述べましたが、円安で好調だった輸出産業の自動車、電機も豊田章男トヨタ社長が言うように 「経済の潮目は変わった」 ようで、5大商社も赤字を計上しました。熊本 ・ 大分の大地震は、日奈久、布田川の両断層帯が連鎖、誘発して震源が移動。M7 以上の大地震や震度1以上の余震を1千回近くも起こしました。関が原合戦の1600年前後に起きた南海トラフ活断層の慶長豊後、慶長伊予大地震に似ていると地震学者は解説、南海トラフ巨大地震は30年内に起きると予言しますが、政財界にも活断層は縦横に潜んでいます。熊本大震災で部品の下請け会社が罹災したトヨタ、ソニーなどは操業を一時停止。カタールで開いた産油国の石油相会議は増産凍結の合意を見送るなどで、円高 ・ 株安が続いています。順風万般の安倍政権ですが、油断すれば一夜にして崩壊する危険があります。首相は衆参同時選を意識し 「経済財政運営と改革の基本方針」 (骨太の方針)、「日本再興戦略」、「日本1億総活躍プラン」 の決定時期を昨年より約1ヶ月前倒ししました。伊勢湾サミット直後の5月末に成長戦略を決定して参院選公約に盛り込みます。

240万新有権者に成長戦略訴え
政府は25日、熊本地震の激甚災害指定を持ち回り閣議で決定。首相は同日の非常災害対策本部会議で 「財政面での支援を強力に講じる」とし、2016年度補正予算案の編成を決めて26日、7野党1会派の党首の協力を取り付けました。補正予算は被災者支援、復旧に限定し5千億円を超える見通しで、5月13日に閣議決定して国会に提出、19日までに成立させる方針です。アベノミクス新3本の矢は 「国内総生産 (GDP) 800兆円」 「希望出生率1.8%」 「介護離職ゼロ」 ですが、野党が衆院補選で 「アベノミクスは破綻した」 と喧伝したように 「絵に描いた餅」 に終わっては国民の支持は得られません。成長戦略の柱はTPP関連法の成立などであり、1億総活躍プランには @同一労働 ・ 同一賃金 A給付型奨学金の新設 B待機児童ゼロ対策 C観光立国 ―― など子育て支援と若者向けに重点を置いた施策を強く打ち出す構えです。7月の参院選では18歳以上が240万人増えますが、政府与党は一丸となって施策を煮詰め、新有権者に訴えていく方針です。さらなるご支援をお願いします。