第370回(4月16日)TPP法案巡り攻防 決戦の衆院北海道補選
 会期末まで 50日足らず。後半国会は環太平洋経済連携協定 (TPP) の承認案など重要法案を巡る与野党論戦に入り、私も衆院 TPP 特別委の委員として多忙を極めています。首相は 3月末に米国で開かれた 「核安全サミット」 に出席、オバマ米、朴槿恵・韓国両大統領と会談して対北朝鮮への連携強化を図りました。 6日には来日したウクライナのポロシェンコ大統領と会談して同国への支援継続を確約。 4月下旬からの大型連休中は 5月 26、27日の主要国首脳会議 (伊勢志摩サミット) の議長として世界経済、テロ対策など主要テーマを確定するため、先進 7カ国 (G7)の欧州各国を歴訪、 3ヵ月半ぶりに首脳外交を本格化させます。訪欧の際はロシアに立ち寄りプーチン露大統領とも会談し北方領土問題を進展させる方針です。首相が来春からの消費税 10%アップを見送る姿勢を示していることから、7月衆参ダブル選の風圧はさらに強まっています。それを占うのが 24日の衆院北海道 5区補選でTPP関連法案審議にも大きな影響を与えます。一層のご支援をお願い申し上げます。

10兆円規模の予算前倒し指示
 首相は 4月 5日の閣議で、景気好循環の促進策として 2016年度予算を例年より前倒しして執行するよう指示しました。公共事業を中心とする予算 12.1兆円について、16年度上半期 (16年 4月 〜 9月末)に 8割程度の 10兆円規模を契約済みとするのが目標。原油安 ・ 円高傾向が続く中、首相は 3月 29日の記者会見で 「世界経済の不透明感が増している」 と懸念を表明しており、世界経済の減速を受けて悪化した景気のてこ入れを図り、7月の参院選前に景気を押し上げる狙いを込めています。 8割程度の前倒しはリーマン ・ ショックに見舞われた後の 09年度予算以来です。前倒しの対象は道路や上下水道の整備など公共事業や、東日本大震災の復興事業など。8割程度達成できれば、例年と比べ 1兆円以上の国家予算が上半期に集中して執行されます。15年度補正予算内の 3.3兆円で決めた所得の低い年金受給者に対する 3万円の給付金についても、出来るだけ早く対象者に届くようにします。

TPPは百年の計、成長戦略の柱
 「 TPP は国家百年の計だ。アジア太平洋地域に新たなルールを作ることは、日本の国益になるだけでなく必ず世界に繁栄をもたらす。我が国の成長戦略の切り札としていく」 ―― 首相は 5日の衆院本会議で TPP の意義をこう強調しました。政府が 「アベノミクスの柱」 と位置づけ、後半国会の焦点である TPP の関連法案は、農林水産関連 4法案と著作権法や独禁法など制度改正を伴う 7法案の計 11本をまとめた一括法案。私が所属する衆院 TPP 特別委員会で審議し、5月中の協定承認と法案成立を目指しています。TPPが発効すれば、参加国への輸出品にかかる関税の約 99%は最終的に撤廃され、銀行やスーパー、コンビニにかかっている外資規制の一部もなくなり、日本企業が海外に進出する機会も広がることから、政府は輸出拡大を促し、GDPを約 14兆円押し上げる効果があると試算しています。これに対し、民進党の山尾志桜里政調会長は衆院本会議で 「重要 5品目の約 3割で関税が削減・撤廃されており、国益が守られたと強弁するのは無理がある」 と指摘しました。

交渉録や委員長ゲラ巡り審議拒否
 野党はコメ、牛 ・ 豚肉、乳製品など 「重要 5品目」 の関税維持を求めた国会決議に違反した内容であるとして、甘利明 ・ 前 TPP 相と米通商代表部 (USTR) のフロマン代表との日米閣僚協議の公証記録の公開を要求しました。また違法献金疑惑で 1月に辞任し、「睡眠障害」 として自宅療養を続けている甘利氏の参考人招致を求めて同日の衆院TPP特別委の審議入りを拒否、冒頭から対立しました。結局は与党側が論点メモの一部公開と、7日付で駐英国大使となる鶴岡公二 TPP 首席交渉官の参考人招致に応じ 6日から審議入りしました。だが、民進党は 7、8両日の集中審議で、政府が交渉記録をほぼ黒塗りで提示したことを繰り返し批判。自民党 TPP 対策委員長として交渉に携わった西川公也委員長が出版予定の著書ゲラについても標的にして責め立てましたが、首相は 「外交の交渉経過を公表している国はない。常識だ」 と突っぱねました。民進党は 8日の特別委を退席し 15日に再会されるまで審議拒否しました。

衆院北海道補選で与野党が総力戦
 町村信孝前衆院議長の死去に伴う 24日投開票の衆院北海道5区補選は 12日に告示され、谷垣禎一幹事長が陣頭指揮しました。参院選の前哨戦として民進、共産、社民、生活の 4野党が統一候補を立て、自民党も首相が 「全員野球で勝利をつかみたい」 と役員会で発破をかけ、総力戦で臨んでいます。北海道補選の選挙区には、TPP による海外からの農産物輸入増で影響を受ける札幌、江別、千歳各市の農業関係者が多く、与党内には 「補選前に強引な採決はすべきでない」 との声や、 「成立時期を参院選後に遅らすべきだ」 など選挙への影響を懸念する声が出ています。米国でも 11月の大統領選に立つ民主、共和両党の有力候補が反対しており、オバマ政権下で TPP 承認案が米議会で成立する見通しは立っていません。このため、自民党内には 「参院送付後に成立できず廃案になるなら、衆院に法案をとどめ置き、次期国会で審議を継続すべきだ」 との慎重意見も出始めています。

合流後の民進党内は賛否両論混在
 民進党は前身の民主党時代、野田佳彦元首相が関係国と TPP の協議入りを示したものの、党内の反発を招いて党分裂の一因となりました。一方の維新の党は 14年衆院選の公約に 「TPPに積極的に関与する」 と明記し、合流後の民進党内には賛否両論が混在しています。しかし、TPP が実現すると総人口約 8億人、世界の国内総生産 (GDP) の約4割を占める巨大な経済圏が生まれます。日本にとって自動車や関連部品、化学製品など工業品の輸出増が期待できるほか、約 80万人の雇用が生まれます。国会決議に沿って重要 5品目の関税維持に努めた結果、逆に牛 ・ 馬肉、乳製品など輸入品の価格が下がって消費者の恩恵が見込まれます。生産から販売までの農業産業 6次化、育成支援、攻めの農業などを国民に分かり易く説明して国会論議を深め、関連法案をぜひ今国会で成立させねばなりません。

自民、民進が衆院選挙制度で別法案
 もう 1つの大きな案件は衆院選挙制度改革です。大島理森衆院議長は 7日、与野党 9党の代表と会談し、自民、民進両党がそれぞれ検討している関連法案を国会で早急に審議するよう要請しました。6日までに自民、民進両党がそれぞれ提出した法案骨子は、議長の諮問機関が答申した都道府県の定数配分ルール 「アダムズ方式」 の導入では一致していますが、導入時期に関する両党の隔たりは大きく、法制化は難航が予想されます。自民党が示した骨子には 1票の格差是正策として、2020年の大規模国勢調査 (国調) に基づきアダムズ方式を導入することを明記。それまでは 15年の簡易 (速報値) 国調に基づき、定数 10削減 (小選挙区 6、比例選ブロック 4) するとの記述に留めています。大島氏が定数削減の手法を法案に明記するよう要請したのに対し、谷垣幹事長はアダムズ方式の考え方に準じて、小選挙区を 「0増 6減」、比例選ブロックを 「0増4減」 すると説明しました。この手法はアダムズ方式の即時導入を求めていた公明党に配慮したもので、自公両党はさらに詳細を煮詰め、合意した議員立法の法案を国会に提出します。一方、民進党は 10年の国調に基づき小選挙区を 「7増13減」 することなどを柱とする関連法案を大島氏に示しており、与党とは別に提出する法案の審議を求めます。最高裁は 1票の格差について過去 3回の衆院選で 「違憲状態」 の判断を下しており、「改革が実現しないと、解散権が縛られる」 との見方もありましたが、首相の積極姿勢もあって、4月内にも本格審議が始まりそうです。 

消費増税先送りに首相踏み込む
 国会ではこのようにTPP関連法案と衆院選挙制度改革を巡る論戦が緊迫化しています。これに加えて首相は 3月末の訪米に、消費再増税反対を公然と唱える本田悦朗内閣官房参与を同行させ、夕食会に米国の経済学者を招いて、国内の 「経済分析会合」 同様に消費再増税の意見を聴取。さらにワシントンで同行記者団と懇談し、経済情勢によっては 「政治判断」 で消費増税の先送りに踏み切る可能性を示唆しました。このため政界では衆参同時選挙への警戒が一層高まっています。首相は懇談で、「解散の 2文字も 『か』 の字も頭の片隅にない」 と述べながら、リーマンショックや大震災の事態が起きない限り、予定通り増税する考えを強調した上で、「延期するかどうかは、発生事態の下で専門的な見地からの分析を踏まえ、政治判断で決定する。延期には法改正が必要になる。その制約要件の中で適時適切に判断していきたい」 と踏み込んだ発言をしました。首相は 5月 18日発表の 16年 1 〜 3月期の GDP 速報値などの経済指数を踏まえて最終決断、伊勢志摩サミットで G7 が協調して内需拡大に取り組む方針を打ち出す際に、増税先送りの可否を決断する構えです。

岡田氏、公約違反で総辞職要求
 「解散は首相の頭の片隅にはないが、真ん中にあるのだろう」 ―― と言う声が政界ではもっぱらですが、民進党の岡田克也代表は 3日、与野党党首級が出演した NHK 番組で、「首相は、次は必ず増税するといって衆院を解散した。さらに延期となれば明白な公約違反だ。辞任に値する」 と内閣総辞職を要求。共産党の志位和夫委員長も 「アベノミクスの破綻がはっきりした」 と語り、再増税に反対。自民党の高村正彦副総裁は直ちにフジテレビで、「総辞職というなら国民に (信を) 聞いてみることになる」 と解散の可能性に言及しました。ここにきて岡田氏は 「延期するにしても、しないにしても苦渋の決断だ」 と記者会見で曖昧な発言を繰り返しています。それは野田前首相ら増税派と税率引き上げに慎重な維新の党出身議員らとの間に温度差があるためでしょう。旧民主党では税率引き上げに反対した小沢一郎氏らが自らのグループを率いて集団離党。一緒に離党した松野頼久維新の党元代表らが民進党に再合流しており、増税先送り論議を活発化させれば路線対立を再燃しかねないとの懸念があるからです。民進党は党の清新さをアピールするための切り札として政調会長に抜擢したマドンナの山尾志桜里衆院議員に関連して、自ら代表を務める政治団体を巡る 「政治とカネ問題」 が急浮上、2党合流 ・ 再生出発の出鼻をくじかれています。

 G7 外相が平和記念館 ・ ドーム見学
 伊勢志摩サミットの先陣を切った G7 外相会議は 10、11日に広島で開かれ、核軍縮 ・ 不拡散の実現に向けた 「広島宣言」 と、中国の名指しは避けながらも 「南シナ海情勢の緊迫化を懸念し、あらゆる一方的行動に強い反対を表明」 するとの海洋安全保障に関する G7 外相声明、北朝鮮の核実験 ・ 弾道ミサイル発射を強く非難する共同声明を採択し閉幕しました。一向は広島平和記念資料館を見学し、原爆死没者慰霊碑に献花した後、ケリー米国務長官の提案で急遽、原爆ドームを視察。ケリー氏は記者会見で 「みんな広島に行くべきだと思うし、米国の大統領もその 1人になってほしい」 と述べ、オバマ米大統領がサミットで来日する際、平和記念公園を訪問する可能性を示唆しました。広島 ・ 長崎の被爆地出身でホスト役を務め、G7 外相の平和記念資料館と原爆ドーム訪問に腐心された岸田文雄外相 (わが派 ・ 宏池会会長) の面目は躍如。岸田氏は 「G7 外相により史上初の訪問、献花を行った。被爆の実相に触れてもらい、広島宣言とも相いまって、核兵器のない世界に向けた国際的機運を再び盛り上げるという歴史的な一歩になった」 と記者会見で満足げに語りました。