第369回(4月1日)衆参W選の勢い増す政界青嵐 国会益々緊迫
 桜前線が日本列島を北上するに連れ、「衆参ダブル選か、年内解散か」 の政界 “青嵐” も勢いを増して来ました。政府が 3月中旬に開いた 「国際金融経済分析会合」 で、17年 4月からの消費税 10%アップに先送り論が続出したからです。 5月末の先進7カ国首脳会議 (伊勢志摩サミット) で議長を務める首相が、世界経済の減速に配慮するのは当然です。増税先送りを決断する場合は、7月 10日投開票の日程で 「衆参同日選」 に踏み切ることを視野に入れていることから参院選での統一戦線構築が乱される野党は猛反発しています。首相は 14年 11月に消費増税を先送りして解散した総選挙で 3分の 2 勢力を確保しており、ダブル選を回避する場合でも、経済再生のために 16年度予算の前倒し執行と秋の臨時国会で景気浮揚策を盛り込んだ 5 〜 10兆円規模の今年度補正予算案を提出、年内解散に踏み切る公算が強まっています。北朝鮮が挑発行動を続ける中、政府は 29日に安保関連法を施行しました。野党は結束し国会は益々緊迫しています。さらなるご支援をお願い申し上げます。

来春の消費増税先送り姿勢が濃厚
 「現下の経済状況を注意深く見ていきたい。経済が失速しては元も子もない」 ―― 首相は 3月 18日、参院予算委の集中審議で、17年 4月の消費税率 10%引き上げについて、増税先送りの姿勢を示しました。これは 16日から、世界経済の動向を分析するため首相や閣僚が有識者と意見を交換する 「国際金融経済分析会合」 を数回開いた結果によるもので、ノーベル経済学賞を受賞した米国の 2教授も消費増税先送りを提言しました。一人は米コロンビア大のジョセフ ・ スティグリッツ教授で、「 2015年は世界金融危機以降、最悪の年になり、16年はさらに弱体化するだろう」 「今は増税のタイミングではない」 と述べ、来年 4月の消費増税に否定的な立場を表明、主要 7カ国 (G7) が協議して財政政策を検討すべきだと指摘。「アベノミクスにより日本経済は良好であり、率先して日本が国際協調を主導すべきだ」 と語りました。もう一人の受賞者のニューヨーク市立大のポール ・ クルーグマン教授も増税先送りに加え、財政出動で景気を刺激すべきだと主張。米ハーバード大のデール ・ ジョルゲンソン教授は 「日本の生産性は停滞し、米国との差は広がっている」 と指摘しました。分析会合は 5月 26、7両日の伊勢志摩サミットで議長となる首相が世界経済の安定化、南シナ海情勢、北朝鮮の核 ・ ミサイル問題への議論を主導する狙いで開催されました。

物価上昇2%の目標に程遠い状況
 分析会合ではこのほどスイス大使を発令された首相側近の本田悦朗氏と浜田宏一氏 ( 2人とも内閣官房参与) が 「日本丸の難破の危険性がある中で再増税を決行してリスクを負えとはいえない」 (浜田氏) などを理由に、消費増税反対を公然と唱えています。 6日の記者会見で 「分析会合の講師には消費増税に否定的な立場の人選が目立つ」 と記者団が指摘したのに対し、菅義偉官房長官は 「うがった見方だ」 と否定しました。だが、与野党双方から 「増税再延期の地ならしだ」 との声が出、野党は一層反発を強めています。首相が消費再増税を先送りする検討に入ったのは、14年 4月に消費税率を 5%から 8%に引き上げた後、景気の足踏みが続き、日銀の黒田東彦総裁が掲げた物価上昇率 2%の目標達成には程遠い状況にあるからです。アベノミクスは第 1の矢 「量的 ・ 質的に異次元で大胆な金融政策」、第 2 の矢 「機動的な財政政策」、第 3 の矢 「農業の 6次産業化など成長戦略」 で華々しくスタート。円安 ・ 株高で輸出産業は潤い、20年ぶりにデフレ脱却の期待が高まりました。

経済の潮目変わったとトヨタ社長
 ところが、消費税 3 %アップの駆け込み需要の反動減と、企業間格差の増大などで消費が冷え込み、政府が目指す 「経済の好循環」 は絵に描いた餅へ急傾斜の様相です。欧州連合 (EU) でも日本のように消費税を 3 年間で 5 %から 10%に倍増しようとした国は見当たりません。首相は消費増税を先送りする条件として、従来の 「リーマン ・ ショックや大震災のような重大な事態」 に加え、「世界経済の大幅な収縮」 を挙げ、「専門的な分析も踏まえ、政治判断で決める」 と明言、慎重姿勢を取ってきました。財界の反応も敏感で、労組の賃上げ要求に対する 3 月 16日の集中回答では、景気の先行き不透明感から、前年実績を大幅に下回る回答が相次ぎました。製造業を代表するトヨタ自動車が 「経済環境の潮目が変わった」 (豊田章男社長) として、前年より 2500円少ない 1500円のベアを回答。電機では日立製作所など大手が前年半分の 1500円を統一回答しました。それでも、非正規社員の賃上げでは、トヨタが期間従業員の日給を労組側の要求通りに 150円引き上げ、日産自動車も契約従業員を正社員に準じた改善に導くなど前進。首相が官民対話 (政労使会議) で要請した 「官製春闘」 は 3 年連続で実現しています。一方、三菱商事を筆頭に 5 大商社は、中国など新興国経済の成長鈍化に伴う資源バブルの崩壊で、大幅な赤字を計上。政府も 3 月の月例経済報告を 5 カ月ぶりに下方修正しました。

ダブル選を見送っても年内解散か
 しかし首相の念頭には、 @大平正芳、中曽根康弘両政権が衆参ダブル選で大勝した A自らが 14年 11月に消費増税を先送りした解散 ・ 総選挙で衆院 3 分の 2 勢力を確保した ―― 実績感がありそう。ダブル選を見送る場合でも来年 4 月の消費再増税前の今年内に解散の 「伝家の宝刀を抜く」 決意を内心では固めつつあるとの見方がマスコミで強まっています。民主 ・ 共産が統一候補を立てる野党連携を、自民党が 「民共合作」 と命名したのは日中戦争時に蒋介石の中華民国 (国民党) 軍と毛沢東率いる八路軍の中国共産党が協力関係を結んだ 「国共合作」 にヒントを得、有権者に 「共産主義」 への警戒心を炊きつける狙いがあるからです。ただし麻生太郎副総理 ・ 財務相は 14年に消費増税先送りを決めた際に、「日本の持続的な成長のためには社会保障の安定的な財源確保は最も重要だ。引き上げは避けて通れない」 とクギを刺し今回も 「日本の実体経済のファンダメンタルズ (基礎的条件) はしっかりしている。確実に (消費再増税を) 実施させて頂きたい」 と国会で答弁しました。

財政規律派のベテラン議員は反発
 党税務調査会の野田毅 ・ 最高顧問も 15日のBS番組で 「(増税延期を) 議論すること自体が、現実に経済活動の足を引っ張っている」 と指摘、福祉と財政の一体改革を目指す谷垣禎一幹事長ら党内 「財政規律派」 のベテラン議員は反発しています。また、党内には大平氏が死を賭して闘ったダブル選や中曽根氏が抜き打ち的に行った “死んだフリ解散” のダブル選は 「派閥領袖が党内の対立候補を同一選挙区に押し立てて切磋琢磨して闘った中選挙区だからこそ大勝利できた」、「小選挙区比例代表並立制 では候補擁立 ・ 資金配分などの権限が党中枢に集中し過ぎて、必ずしも前回のように圧勝できるとはいえない」 など不安視する向きがあります。ただし、二階俊博総務会長は 「いま消費税問題に言及していること自体、(同日選に向けた) 基盤整備なのだろう。同日選挙に備えるのは政治家として当然だ」 と記者団に語り、衆院議員は常在戦場で臨むべきだとの認識を示しています。

待機児童対策は1億総活躍プラン
 ダブル選に反対が多い公明党内でも、17年夏の東京都議選を重視し、「今夏から来夏にかけ運動員が 1 年中選挙に追われることになりかねない」 として、ダブル選の容認論が出てきました。要は首相が新たに唱えた 「新第 3 の矢」 である 「国内総生産 (GDP) 600兆円」 「希望出生率 1.8%」 「介護離職ゼロ」 の経済活性化策を参院選までに明確に確立出来るか、どうかにかかっています。 「保育園落ちた 日本死ね!」 と題した匿名ブログをきっかけに野党が追求を強めた待機児童問題で政府 ・ 与党は、保育所の拡充や保育士の待遇改善など待機児童解消に向けた緊急対策を打ち出しました。 5月に策定する 「日本 1 億総活躍プラン」 に盛り込む方針です。もう 1 つの大きな課題は衆院選挙制度の改革。大島理森衆院議長は連休明けの 23日から各党との意見調整に乗り出し、議長の諮問機関が答申した定数配分ルール 「アダムズ方式」 の導入時期について、各党が歩み寄る可能性を模索しています。

衆院選改革で注目の大島裁定案
 自民党との会談では、谷垣幹事長が 17日の党会合で 「 1 票の格差」是正のため、2020年国勢調査を基にアダムズ方式を導入する方針を決めたことを報告。公明党は 15年国勢調査速報値に基づいてアダムズ方式と定数 10削減を直ちに実施すべきだと要請していました。だが、公明党は大島氏による 「議長裁定案」 の提示があれば、自民党案に歩み寄る方向を示しています。自民党はアダムズ方式導入までの対策として @小選挙区の 「0 増 6 減」 などで定数を 10削減 A選挙区境界の調整で 「 1票の格差」 を是正 ―― の案をまとめました。0 増 6 減は 15年国勢調査速報値に基づけば、鹿児島、岩手、青森、熊本、三重、奈良の各県が対象になります。ただし、定数 2 の鳥取県などは割る数が 「 1 」 になるため削減対象にはならず、「 1 人別枠方式」 を温存しており、与党内でも 「計算式が分かりにくく不公平だ」 との不満がくすぶっています。合併した民主、維新両党は 10年国勢調査を基準に直ちに実施すべきだとの立場ですが、大島議長が 7 日に示す裁定案の中身が注目されています。

高村氏、民 ・ 維合流を二川柳で皮肉
 「理念捨て 名前を捨てて里帰り」 「強いられた 振りして嫌な 名前捨て」 ―― 自民党の高村正彦副総裁は 14日の党役員会で、川柳二句を披露。前の句は維新の党に多かった 「民主党復帰組」 を指し、後の句は民主党内に根強い党勢低迷への不満を持つ議員を指したと解説。「どちらにとってもいい党名になったのではないか」 と皮肉を述べました。役員会では台湾で 5 月から政権を担う民主進歩党の略称が 「民進党」 であるため、「民進党日本支部だな」 と揶揄する声も起こりました。その民主、維新両党は 27日の結党大会で新党名を 「民進党」 に改め、執行部を刷新し正式に旗揚げ。「改革結集の会」 の 4 衆院議員も合流し衆参両院議員 156人で発足しました。「立憲民主党」 を主張した民主党は世論調査の結果、維新の推す 「民進党」 に破れ、党内の反発は強まりましたが、「民進党を英訳すれば民主党に変わりない」 などと都合よく解釈する向きもあって、不満ながらも了承。結党宣言では 「野党勢力を結集し政権を担う新政党を作る」 と対決姿勢を鮮明にし、結束を固めました。 

予算成立、参院選向け舌戦激化
 96.7兆円という過去最大の 16年度予算は年度内の 3 月 29日に成立。残された環太平洋経済連携協定 (TPP) 承認案の審議に入ります。野党は参院予算委の集中審議や NHK の日曜討論で、「15年度補正予算 3.3 兆円で低所得年金受給者 1 人当たり 3 万円の臨時給付金を支給するのはバラマキ政治だ」 (民主)、「アベノミクスは破綻した。失政はボディブローのように効いてくる」 (共産)、「首相が改憲で目指す 『緊急事態条項』 は、ワイマール憲法を政令に変え、独裁権力を握る武器とした全権委任法と同じで、ナチス ・ ヒットラーの手法」 (社民) などと政策批判を展開しました。参院選目指し舌戦は益々激しくなりそうです。