第368回(3月16日) 改憲勢力確保にダッシュ 正に天王山の攻防
 2016年度予算の年度内成立が確定したことで、首相は政局運営に自信を深め、「憲法改正は在任中に成し遂げたい」 と国会で答弁。環太平洋経済連携協定 (TPP) 関連法案、衆院選挙制度改革法案など重要法案を早急に仕上げて 7月の参院選で大勝、衆参両院で各 3分の 2以上の改憲勢力を確保しようとダッシュしています。国連安保理事会は 2日午前 (現地時間)、北朝鮮の 4回目核実験に対する制裁決議を全会一致で採択しました。これには非常任理事国としての日本が大きな役割を果たしています。 5月の伊勢志摩サミットのリハーサルとなった 2月末の東京マラソンの警備体制も万全でした。名護市辺野古移設を巡る代執行訴訟も国と沖縄県は 4日に和解。首相は 「辺野古移設が唯一の選択肢」 としながらも工事の中断を指示。 6月 5日の沖縄県議選と参院選を睨んで 「一時休戦」 に持ち込んだものです。野党は首相の臨機応変な政局運営に 「衆参同時選への布石」 と警戒しつつ野党結集の動きを強めています。一方与党内部では、改憲ではなく加憲を唱え、衆院制度改革も衆院議長の諮問機関が答申した 「アダムズ方式」 の即刻導入を迫る公明党と自民党の間に隙間風が吹いています。中国の経済減速、原油安など世界経済が低迷する中でアベノミクス 「第 3の矢」 の早期実現も大きな課題です。一層のご支援、ご叱声をお願い申し上げます。

世界経済収縮では増税先送り示唆
 「自民党は党是として憲法改正を掲げる。私は党総裁であり、先の総選挙でも訴えているから、それを目指していきたい。憲法改正には衆参両院 3分の 2の多数がなければ発議できない。他党の協力も頂かなければ (改正は) 難しい」 ―― 首相は予算案の通過を待っていたように 2日の参院予算委でこう切り出しました。その後も来年 4月の消費税率 10%引き上げについて 「世界経済の収縮次第では」 と先送りを示唆。米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る代執行訴訟でも和解勧告をあっさり受け入れ、「一時休戦」 としました。首相は 7月参院選を 「自公対民共」 の戦いと国民に印象づけ、民主党は 「レッテル張りだ」 と猛反発。参院選で首相は争点になりやすい課題での世論の反発を避け、野党分断の手を打ちつつあります。首相の自民党総裁任期は 18年 9月までで、参院選は改憲勢力拡大に向けたラストチャンス。既に通算在職日数は祖父 ・ 岸信介元首相を超え戦後第 6位ですが、安定政権下で任期を満了すれば、池田勇人、中曽根康弘、小泉純一郎の 3元首相も追い抜き、祖父弟の佐藤栄作、吉田茂両元首相に迫る戦後第 3位の宰相に名を連ねます。さらに中曽根氏のように論功行賞で任期延長があれば 20年東京五輪を主催することも夢でありません。

争点隠し敵ながら天晴れと民主党員
 辺野古移設を巡る代執行訴訟で、首相が裁判所の和解勧告を受け入れたことは与党内から歓迎されましたが、野党は猪突猛進? する首相に衆参同時選挙の警戒を強めています。沖縄県では移設問題が選挙の争点になりやすく、与党は苦戦を強いられてきましたが、6月 5日投開票の沖縄県議選 ( 5月 27日告示) や参院選を控え、「世論の反発が和らぐのではないか」 、 「首相の決断が参院選にプラスに働く」 と期待する声が広がりました。読売によると、一方の野党は 「争点隠し」 だと警戒、民主党議員の中には自らのツイッターに 「敵ながら天晴れ。移設方針は変えないが、参院選で沖縄に寄り添ったと言い訳できる。消費増税先送りをサプライズで発表して衆参同時選挙。もう決まりだろう」 と “予言” しました。これは首相や周辺が消費増税について微妙に変化した発言を続けているからです。これまでは 2017年 4月の消費税率 10%引き上げについて、首相らは 「リーマン ・ ショックや大震災のような重大な事態」 が起きない限り、予定通り実施する考えを強調してきました。

世界経済の大幅収縮見て軌道修正
 ところが、最近は予定通りの税率引き上げ方針を明言しながらも、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」 ( 24日の衆院財務金融委)、「株価、市場変動のみでなく実体経済にどういう影響が出るかも含め考えないといけない」 ( 26日の衆院総務委) と微妙に軌道修正。菅義偉官房長官も 26日の記者会見で、橋本内閣が消費税率を 5%に引き上げた際、景気悪化で税収が減った例を上げ、「世界経済の収縮が起きれば、税率を上げても税収は減るのだから、そういう政策は取るべきでない」 と援護射撃しました。世界経済の収縮を象徴するのは中国です。中国の第 12期全人代 (国会) 第 4回会議が 5日開幕。李克強首相が演説した 2016 〜 20年の経済 ・ 社会政策 「第 13次 5カ年計画」は、成長率目標を前計画の年平均 7%から引き下げ、「6.5%以上」 に設定すると表明。歳入不足を補う財政赤字比率を国内総生産 (GDP) の 3%と前年 ( 2.4%) より引き上げ、その分を公共事業や企業減税に充てる方針を示しました。

習近平主席はゾンビ国有企業撲滅
 中国では製鉄、炭鉱など重厚長大産業の生産性が上がらず、国や地方の党組織から多大な支援を受け続け、実質破綻しながらも生き延びる 「ゾンビ国有企業」 が多く、習近平国家主席は @ 「小康 (ゆとりある) 社会の全面的建設 A改革の全面的深化 B全面的に法によって国を治める C全面的に厳しく党を治める ―― の 「四つの全面」 を党規約に記載。習氏が唱える 「供給側改革」 には、「ゾンビ企業」 の整理、「一帯 (ベルト) 一路 (ロード)」 構想が盛り込まれました。李首相は 2月末に上海で開かれた主要 20か国 ・ 地域 (G20) 財務相 ・ 中央銀行総裁会議で、企業向け減税やインフラ建設など構造改革を国際公約しましたが、肥大化した国有企業の淘汰や過剰生産設備の統廃合が可能かどうか。日本でもバブル崩壊後ひたすら構造改革を推進しましたが、 20年にわたる長期デフレを体験しました。中国が日本政策を踏襲して構造改革に鋭意取り組んでも中東を含む産油国の原油安、欧州の経済不振などから世界経済の好展開は望めず、首相は経済の推移を見守ることにしたものです。

新9増15減案、自民案に公明難色
 首相にとって頭が痛いのは、高市早苗総務相が 2月 26日の閣議で 2015年国勢調査の速報値を報告。速報値によると、現行 295の衆院小選挙区で 「1票の格差」 が 2倍以上だったのは 12都道府県の 37選挙区。最大格差は 2.334倍で、10年調査による前回区割り改定後の 1.998倍から拡大。人口最小は宮城 5区で、最多は東京 1区でした。衆院選挙制度改革の有識者調査会に盛られた議員定数 10減 (小選挙区 6、比例代表 4) と新たな議席配分方法の 「アダムズ方式」 を導入して速報値を試算した結果、答申が示した 「 7増 13減」ではなく、小選挙区は 20都県で 「9増 15減」 となり、実質はさらに 2増 2減の内容。 9増 15減を実施した場合、都道府県間の格差は現行の 1.885倍から 1.668倍に縮小され、自民党案では現行と変わりがありません。自民党は削減対象が多く、現職議員への影響が大きいとして早期の受け入れに慎重で、首相も同日の衆院総務委で、「アダムズ方式を含め、都道府県を超えた大規模な定数是正は、10年毎の国勢調査で行うべきだ」 と強調。速報値段階では先に自民党が提起した 「 0増 6減」 案を推進する考えを示しました。民主、維新の党などは新方式を基本的に受け入れる意向ですが、公明党内には 「自民党案では最高裁の 『違憲状態』 判決の要請に応えられない」 として自民党への譲歩に反対する向きが多く、自民党内では 「最後は大島理森衆院議長の裁定に委ねるしかないのでは」 との声が出ています。

民主 ・ 維新合流は党名変更で難航
 「 3月中に合流」 を正式合意した民主、維新の党は 27日の結党大会を目指し党名変更、 党綱領、政策を巡って大詰めの折衝を続けています。党名変更は新党準備協議会の下に設置した分科会で 「立憲民主党」 と 「民進党」 に絞り込み、「世論調査」 をした結果、14日に 「民進党」 に正式決定しました。民主党は党名変更に前向きな姿勢を見せたものの、岡田克也代表の念頭にあるのは少なくとも 「民主」 の名前がポスターに残る案。岡田氏は輿石東参院副議長 (日教組出身) や野田佳彦前首相、連合の神津里季生会長らと個別に協議を重ねましたが、「下部組織は民主党の名前で走り始めている」 として理解が得られず、これに対抗する維新の江田憲司前代表は 「全面刷新」 を求めて譲らず党名変更は難航しました。この経過を見ても野党再編は困難が予想されます。一方、気がかりなのは朝鮮半島有事を想定して 7日から開始した米艦合同軍事演習。米韓両国は北朝鮮が 4回目の核実験、長距離弾道ミサイルを発射したのを受け、韓国軍 30万人、米軍 1万 7千人、米原子力空母や最新鋭ステルス戦闘機 「F22 」 などを投入した過去最大規模の演習を開始しました。

参院選で自公が 「民共合作」 を粉砕
 北朝鮮は、金正恩第 1書記を葬る 「斬首作戦」 だと抗議。北朝鮮国防委員会は 「米韓への総攻撃に入る」 と宣言し、「南朝鮮の主要攻撃対象を射程圏内に置く攻撃手段の実戦配備、米本土を標的にする強力な核攻撃手段が発射待機手段にある」 と強調、10日にスカッド ・ ミサイルらしき短距離弾道弾 2発を日本海 500キロ沖合いに発射して威嚇。一触即発の事態を迎えています。世界経済の推移を見ても、アベノミクス第 3の矢で 「成長と分配の好循環」 が実現できるかどうか。東日本大震災から 5年となる 11日、「復興なくして日本の再生なし」 を唱えてきた首相は、今後の 5年間を 「復興 ・ 創生期間」 と位置づけ復興を加速化することを決めました。首相はさらに 13日の党大会で、夏の参院選は 「自公連立対民共の対決になる」 と述べ、「日米安保廃棄の共産と手を組む民主党に負けるわけにはいかない」 と党の結束を呼びかけました。後半国会では外交、内政で統一戦線を組む野党と 「民共合作」 を粉砕する自公与党が、参院選に向けて正に天王山の戦いを迎えようとしています。