第365回(2月1日)4課題に果敢挑戦 甘利氏辞任で政権打撃
 通常国会は 2015年度補正予算が成立後、1月22日に首相の施政方針など政府 4演説と、26 〜 28日間に各党代表質問が衆参両院で行われ、与野党が激しい論戦を展開しました。施政方針で首相は 「介護離職ゼロに向けて介護人材 25万人育成」 などの政策を掲げ、アベノミクス 「新 3本の矢」 達成の決意を表明、昨年末に慰安婦問題で日韓が合意したなどの外交成果を強調しました。 補正予算案審議で野党は低所得者年金の臨時給付金支給を 「参院選のバラマキ対策」 と一斉に批判しましたが、首相は無事乗り切り本予算の年度内成立を目指しています。辺野古移設が絡む沖縄県宜野湾市長選で現市長が再選したことも安倍政権には安堵材料。経団連が 「昨年を上回る年収ペースの賃上げ」 を経営側の交渉方針として打ち出し、連合も昨年より控えめな 「ベア 2%程度」 の要求に留めたため今春闘は穏やかな展開になりそうです。しかし主要閣僚 ・ 甘利明経済再生相が 「政治とカネ」 疑惑で辞任したことは内閣にとって大打撃でした。原油安と中国経済の減速から株安と円高に歯止めが掛からず、アベノミクスで好況だった株式市場は乱高下を続けています。また、国際テロの被害は中東に限らず、インドネシアなどアジアにも広がりを見せ、5月の伊勢志摩サミットの警備体制が懸念されます。緊張続きの国会ですが、倍旧のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

日本が世界の中心で輝く1年へ
 「開国か、攘夷か。150年前の日本はその方針すら決められなかった。自公与党は 3年間の大きな実績の上に、いかなる困難な課題にも果敢に “挑戦” してまいりたい」 ―― 首相は施政方針演説の冒頭、滅び行く徳川幕府を見て嘆いた幕臣 ・ 小栗上野介の言葉を引用し、「名目GDP (国内総生産) は 28兆円、雇用は 110万人以上増えた」 などの成果を強調した上、1億総活躍社会、経済成長、地方創生、外交の 4重要課題に挑戦する決意を表明しました。1億総活躍社会では正規 ・ 非正規の待遇格差を是正し 「同一労働 ・ 同一賃金」を実現、介護離職ゼロの実現に向け 2020年初頭までに 50万人分の特別養護老人ホームを増設、これに伴い25万人の介護人材を育成するなどが柱。環太平洋経済連携協定 (TPP) 対策では攻めの農業推進で 「農政新時代」 の到来を掲げ、農林水産物の輸出拡大を図ると力説。外交では、5月の主要国首脳会議 (伊勢志摩サミット) や日中韓サミットで議長国を務めることから、「日本が世界の中心で輝く 1年になる」 と強調。積極的平和主義に立って、混迷する世界経済の安定に向けた対応を主導する考えを明示しました。

北の核実験容認せず 「対話と圧力」
 日韓関係は 「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」 と位置づけて重視するとの前向きな姿勢を表明。北朝鮮の核実験については 「断じて容認できない」 と抗議、「対話と圧力」 を貫きながら拉致問題を解決する意向を強めました。20日に成立した補正予算は一般会計総額 3兆 3213億円で、低所得年金受給者向けの 1人あたり 3万円の臨時給付金支給と、「 1億総活躍社会」 実現に向けた関連施策に 1兆 1646億円やTPPの大筋合意を受けた国内対策に 3403億円、「農業農村整備事業」 に 940億円を計上したなどが柱です。野党は補正予算案審議で、6月までに 65歳以上の年金受給者で住民税非課税の約 1130万人に臨時給付金 3万円を支給するのは 「バラマキで究極の参院選対策だ」 と一斉に批判。年明けからの大幅な株価下落についても経済失政が原因として追及。しかし首相は 「日本経済のファンダメンタルズ (基礎的条件) は確かだ」 と一蹴。補正予算での野党攻勢は不発に終わりました。施政方針など政府 4演説に対する代表質問 ( 26〜28日) の後、2月 1日から衆院予算委で 2016年度予算案の審議に入ります。一般会計の総額は 96兆 7218億円で、当初予算としては 4年続けて最大を更新。看板政策の 1億総活躍社会の実現に重点配分しています。24日に投開票された宜野湾市長選は、同市の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り国と県が訴訟合戦を展開中の激しい選挙戦でしたが、自公与党推薦で現職の佐喜真淳氏が移設反対の新人 (元県職員) 志村恵一郎氏を破って再選。移設問題は進展するものと期待されます。

「わなを仕掛けられた」 甘利経再相
 野党が色めき立ったのは、甘利明経済再生相の 「政治とカネ」 疑惑。21日の参院決算委員会で厳しい追及を受け、「しっかり調査して、国民の疑惑がもたれないよう説明責任を果たしたい」 と苦しい答弁。疑惑は同日発売の 「週刊文春」 に掲載されたもので、国と地方自治体が全額出資する都市再生機構 (UR) とトラブルになった建設会社の総務担当者が、甘利氏の公設秘書にURへの口利きを依頼し、謝礼として 2013年 8月に現金 500万円を渡し、甘利氏にも大臣室と地元事務所で 2回、計 100万円を手渡したという記事。この総担当者が実名で証言、文春の編集者を通じて 「記事内容を裏付けるメモや録音、データがある」 とコメントしたことから 「わなを仕掛けられた」 (高村正彦自民党副総裁) との見方もあり、騒ぎは大きくなりました。口利きが事実であり、政治資金収支報告書に記載されていないとすれば、斡旋利得処罰法違反や政治資金規正法違反 (虚偽記載) などに当たる可能性もあります。

TPP署名式や国会審議に悪影響
 思わぬ敵失に沸いた民主、共産、維新など野党 6党は甘利氏の経済演説前に衆院本会議場を退席しました。甘利氏は 「 1週間以内 ( 28日まで ) に第 3者を交えて調査した結果を公表する」 と述べて同夜、スイスに向け出発、同国で開かれたダボス会議に日帰りで出席し、帰国後の 28日に記者会見し @大臣室と地元事務所で計 100万円を受け取ったが政治資金として適切に処理 A秘書が受け取った 500万円のうち 200万円は適切に会計処理したが、残り 300万円は秘書が流用した B金銭授受や接待を多数受けた秘書 2人の辞表を受理した ―― などと釈明した上、「秘書の監督責任と政治家の矜持に鑑み、閣僚を辞任する」 と述べ、引責辞任しました。首相はいったん遺留しましたが、辞表を即刻受理、後任に石原伸晃元幹事長を任命しました。だが、甘利氏が TPP の交渉を一手に担ってきた担当相でもあるだけに野党は追及姿勢を崩さず、2月 4日にニュージーランドで開く TPP 署名式の出席や、今後の TPP 大筋合意の国会承認、農業対策など関連施策法案の審議に影響を与えそうです。

衆院選改革で読売が私の懸念掲載
 「衆院選挙制度に関する調査会」 (座長 = 佐々木毅 ・ 元東大学長)は 14日、答申書を大島理森衆院議長に提出しました。答申は衆院定数を現行の 475(小選挙区 295、比例選 180) から 10 (小選挙区 6、比例選 4) 削減するもの。小選挙区の議席配分は、従来の方式より人口比を反映させる 「アダムズ方式」 を採用しており、東京、埼玉など 1都 4県で選挙区数が増え、青森、岩手、長崎など 13県で各 1 減らす 「 7 増 13減」 となり、都道府県の最大格差は 1.621倍に縮小されます。答申内容と私の所感は先号で詳しく述べたので重複は避けますが、読売新聞は衆院選企画 (上中下) を掲載。16日朝刊には 「人口比例が合理的だという考え方は本当に正しいのか (長崎 4区、北村誠吾氏)」 との私の懸念を載せました。同紙は自民党内に 「地方の声が益々中央に届かなくなり、地方創生に逆行する」、「都市の議席を増やすために地方の議席を減らすいびつな制度だ」 などの反対意見が相次いだことも報じています。

政治 ・ 政策の均衡崩れると村松教授
 読売はまた、2013年の衆院選挙区確定審議会会長だった村松岐夫京大名誉教授のインタビュー記事を 20日に掲載、村松氏は @ 1票の格差問題で司法から 「違憲状態」 の判決を繰り返され、立法府は追い込まれている A格差是正に取り組めば取り組むほど都市部議員が増えて地方議員が減り、日本政治と政策の均衡が崩れる B日本には地理的多様性があり、地域の特徴を大事にする視点は失うべきでない C格差是正と同時に 「衆院と参院は同じ性格でいいのか」 といった根本的問題に取り組むべきだ D各党が 「身を切る改革」 といって議員定数の削減だけ唱えるのも問題だ ―― などの趣旨で色々提言しました。答申には民主、維新が賛成。共産、社民は反対。おおさか維新は 「削減数が足りない」 と不満。自民党選挙制度改革問題統括本部長の細田博之幹事長代行は 2月下旬に公表予定の 15年国勢調査人口速報値で試算し、都道府県ごとの定数は据え置いたまま、格差を 2倍未満に抑える代替案を検討中です。私は地域の視点と声を重視した選挙改革を実現するよう期待しています。