第360回(11月16日)日中韓首脳会談で成果 長崎で核廃絶訴え
 安倍首相は 1、2日にソウルを訪問、3年半ぶりの 日中韓首脳会談で 「3カ国の定期的な首脳会談再開」 で合意。 初の日韓首脳会談では 「慰安婦問題の早期妥結を目指し交渉を加速」 で 一致。 両国との関係改善はまずまずの成果を収めました。 野党は 10、11日の衆参両予算委で首相の外遊成果、米軍普天間飛行場の辺野古移設、原発再稼動など一連の問題を追及しましたが維新の党の分裂で野党連携に迫力なく、これも無事乗り切りました。安倍政権はTPP大筋合意後の農村対策を強化するなどアベノミクス 「新3本の矢」 を来年度施策に活かそうと懸命です。南シナ海では人工島の巡視活動を巡り米中の緊張が続き、日米同盟強化の抑止力向上が望まれます。折りしも長崎市で 「原爆許すまじ」 のパグウオッシュ会議が開かれ、英国の体操世界選手権大会では、我が長崎が誇る内村航平選手が 37年ぶりの団体総合、史上最多 6連勝の個人総合、鉄棒種目とトリプルの金メダルを獲得。平和の祭典リオデジャネイロ五輪の出場権も入手し、感動を与えました。この 2つは世界平和に貢献する長崎の姿を象徴的に示すもの。皆様とともに内村氏の快挙を讃えましょう。師走も近く多忙ですが、さらなるご支援をお願い申し上げます。

長崎で初のパグウオッシュ会議
 「原爆は科学者の助言で開発が始まったと聞く。長崎を最後の被爆地にするために、力を貸してください」 ―― 被爆者の山脇佳朗さん (81)は定年退職後に身に付けた英語で語りかけ、世界の科学者が立ち上がり、鳴り止まない拍手を送りました。第 61回パグウオッシュ会議世界大会は11月1日から5日間、長崎市の長崎原爆資料館で開かれ約 40カ国から約 200人の科学者が参加しました。同会議は 1954年、静岡県焼津の第5福竜丸が太平洋で操業中に、米国がビキニ環礁で行った水爆実験の 「死の灰」 を浴びて乗組員 1人が帰国後に死亡したため、原水爆禁止運動が国民的に広がり、翌年 8月 6日に広島で開かれた 「第 1回原水爆禁止世界大会」 に 3千万を超える署名が集まりました。これをきっかけに、反核運動は海外にも広がり、哲学者バートランド ・ ラッセルと物理学者アルバート ・ アインシュタインが 「核兵器の廃絶と戦争の廃止」 を訴えたラッセル ・ アインシュタイン宣言を発表。湯川秀樹博士もこれに署名しています。その 2年後の 57年にカナダの漁村パグウオッシュに、米、旧ソ連、西欧、東欧、中国などの物理学者ら 22人が集まり、核兵器の危険性、放射線の危害、科学者の社会的責任について討議しました。この後、パグウオッシュ会議の名称で毎年開催され、1995年にノーベル平和賞を受賞。日本での開催は同年と 2005年の 2度、広島市で開かれたのに続き、長崎は 3回目で今回が初めて。「長崎を最後の被爆地に」 を合言葉に、核兵器廃絶の確約を求める 「長崎宣言」 を発表して 5日、閉幕しました。

田上長崎市長の平和賞複製品贈呈
 「戦争の廃絶という、人類が進むべき方向に沿っているのだろうか」 ―― 河野洋平元衆院議長は 3日、同会議の夕食会でスピーチし、安保関連法の成立や武器輸出 3原則の撤廃などを例に挙げて批判。東電福島第一原発事故が初めて討議テーマの 1つになった原子力利用の在り方に関連し、 「ドイツが脱原発を決めたことに注目したい。事故で放射能を拡散させるリスクがゼロになる魅力ある選択肢だ」 と評価しました。今大会では平和賞のメダル複製品が田上富久長崎市長と広島市の担当者に贈られました。オバマ米大統領は 2009年、「核兵器のない世界の実現」 を訴え、翌年には米露両国が配備する戦略核兵器を約 30%削減する条約に調印しました。こうした功績でノーベル平和賞を受賞しましたが、国連本部で 5月に開かれた核拡散防止条約 (NPT) 再検討会議は最終文書を採択できず決裂して閉幕。軍縮交渉は行き詰まっています。それどころかプーチン露大統領はウクライナ紛争で戦術核の有効性を示唆する発言までしました。世界には約 1万 6千発の核兵器が配備され、米露が 90%以上を保有するといわれ、中国も配備数を明らかにしないままです。不拡散では、イランの核活動を大幅に制限する合意が実現しましたが、北朝鮮はNPT体制を否定し、核開発を続けています。日本は安全保障を米国の 「核の傘」 に頼っているため、核兵器の法的禁止を主張しにくい立場ですが、昨年 10月、国連の 「核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明」 に賛同しました。 被爆県長崎こそ、 核廃絶を強く訴えて行かねばなりません。

来年東京で定期的首脳会談を再開
 「特定の過去にばかり焦点を当てる姿勢は生産的ではない。日韓、日中の間には協力と発展の歴史がある。日中韓協力の前向きな歴史を紡いでいきたい」 ―― 1日の日中韓首脳会談で、首相は未来志向の関係を築く意向を強調。この結果、3カ国による定期的な首脳会談の再開や 3カ国の自由貿易協定 (ETA) の交渉促進など経済関係の強化、北朝鮮の核開発阻止などを盛り込んだ共同宣言を採択。来年は日本が議長国となり東京での開催が決まりました。日中韓は 08年から毎年、持ち回りで首脳会談を開いてきましたが、12年 5月の会談以降、同年 8月の李明博韓国大統領 (当時) の島根県 ・ 竹島上陸や天皇への謝罪要求、9月の沖縄県 ・ 尖閣諸島の国有化に対する中国の反発、慰安婦問題を巡る日韓間の対立から 3年半中断していました。 関係改善のため、この日の会談では対立の要因となったこれら 2国間の政治的懸案には具体的に踏み込まなかったものの、歴史認識を巡って李中国首相は 「協力は歴史などの敏感な問題を善処する上で成り立つが、一部の国の間では未だに深い理解が成り立っていない」 と指摘。朴大統領も 「この 3年間、流動的な北東アジア情勢で 3カ国首脳会議が開かれなかった」 と述べ、暗に歴史問題で日本に注文をつけました。だが、李首相は首脳会談直後の 4日、榊原定征経団連会長ら日中経済協会の訪中団と 6年ぶりに北京で会談、日本側が求めた規制緩和や自由貿易の促進について、「しっかりと行っていく」 と述べ、ビジネス環境の改善を約束。日本の対中投資など経済交流は活発化しそうです。

「将来世代に障害残さない」 と首相
 約 3年半ぶりの日韓首脳会談は 2日、韓国大統領府で開かれ、「慰安婦問題を巡る政府間協議を継続し早期に妥結」 を目指し、年内にも外務省局長の協議を加速することで一致しました。首相は日韓正常化50年の節目にあたり、「未来志向の協力関係を構築する上で、将来世代に障害を残すことがあってはならない」 と会談後、記者団に語り、問題解決への意欲を示しました。さらに 「日本が主張すべき点は申し上げ、韓国側の早期対応を促した」 と述べ、東電福島第一原発事故に伴う日本水産物の輸入規制やサンケイ新聞前ソウル支局長のコラム問題の解決を求めたことを示唆しました。 朴大統領は就任以来、「加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変えられない」 と言い続けてきましたが、オバマ米大統領の要請や韓国内から日本との関係改善を求める声が強まり重い腰を上げたのが実態。外相を交えた少人数で 1時間、拡大して 45分にわたる長時間の会談で朴氏は慰安婦問題で 「被害者が受け入れられ、国民が納得できるレベル」 の速やかな解決を求めました。

賠償問題は解決済み堅持し平行線
 しかし、日本政府は 「1965年の日韓請求権 ・ 経済協力協定で 5億ドルの経済協力を行っており、慰安婦問題では歴代首相が謝罪を繰り返し、95年に設立した日本の財団法人 「アジア女性基金」 を通じ、募金 6億円と公金 48億円をもとに、韓国の 61人を含む台湾、フィリピンの元慰安婦計 285人に 1人当たり 200万円の 「償い金」 や医療福祉事業などを実施。「賠償問題は法的に解決済み」 の立場を堅持しています。このため、会談で双方の主張は平行線を辿り、決裂回避のため 「早期妥結を目指す」 ことで着地点を求めざるを得ませんでした。韓国聯合ニュースは 「関係正常化を一歩先に進めた」と評価しながらも、「合意文、昼食会、共同記者会見のない 『 3無』 の会談だった」 と揶揄しています。外相級協議でも難航が予想されますが、会談で両首脳は北朝鮮の核開発問題で日米韓 3カ国の緊密な協力を続けることで一致、首相は南シナ海での中国の人工島造成問題で 「現状は国際社会にとり懸案事項だ。米韓と連携したい」 と述べ、朴氏は 「環太平洋連携協定 (TPP )に参加を検討している」 と表明。日米韓の協力体制を堅持する姿勢を確認しました。外務省局長級会議は早速 11日にソウルで開催、慰安婦への財政支援拡大など打開策の協議に入りました。

維新分裂 ・ 泥仕合のままダブル選
 大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙は 22日に投開票されます。 4年前のダブル選で初当選した松井一郎知事と橋下徹市長が進めた 「大阪維新政治」 への評価が主な争点です。大阪維新の会は 5月の住民投票で 「大阪都構想」 が否決され、 橋下氏が 「政界引退」 を表明しましたが、2日に新党 「おおさか維新の会」 (代表=橋下市長) の設立を総務相に届出、 「地方から改革を進め、日本の行政 ・ 統治機構を変えていく」 と同構想への再挑戦もダブル選の公約に掲げています。 新党に名を連ねたのは下地幹郎衆院議員や片山虎之助参院議員ら衆参 15人で馬場伸幸衆院議員ら大阪系 4人も将来は合流、橋下氏が 12月 18日の市長任期満了まで暫定的に代表を務めています。維新の党の松野頼久代表ら残留組は 15人全員を除籍とした上で会派の離脱を認めますが、これにより維新の党に所属していた 51人の国会議員は残留組が 26人、新党合流が 19人、無所属が 6人となりました。同党は相変わらず、政党交付金と議員を巡る 「カネとヒト」 の分取り合戦で泥仕合を演じています。大阪府知事選でも菅官房長官と親しく 「官邸寄り」 とされる松井氏に対抗し、自主投票の公明を除く自 ・ 民 ・ 共の 3党が支援する無所属新人が立候補したものの、連携は難しい情勢。これらが影響し、10、 11日の衆参予算委で野党は首相外遊、TPP、原発再稼動などの問題点を浮き彫りにしただけで、まとまりがなく著しく迫力が欠けた追求となりました。 

聖域も再協議対象のTPP概要公表
 政府は 5日、英語版の TPPの概要と付属文書を公表。これは関税撤廃や経済ルールの自由化にとどまらず、女性の社会参加や児童労働の禁止、環境保護の徹底など人権や環境への配慮を促したのが特徴です。ただし、日本の農水産物については、協定発効の 7年後からは米 ・ 豪 ・ 加 ・ チリ ・ ニュージーランドの 5か国の要請があった場合、再協議ができる規定と、日本の無関税の輸入枠や、輸入が急増した時の緊急輸入制限 (セーフガード) についても見直しができることが盛り込まれています。政府は TPP交渉で、コメ、牛 ・ 豚肉など 「重要 5項目」 の関税を維持した成果を強調してきましたが、同日の自民党農林水産関係会合で、日本の 「聖域」 が再び脅かされる可能性が残されたとの懸念が表明されました。このため、党の小泉進次郎農林部会長らが 6日から北海道、長崎県など 7道県を 「地方キャラバン」 して回り、農家の要望を吸い上げ、TPPの国内対策に生かすことにしています。