第355回(9月1日)終盤国会緊迫 第3弾の成長戦略構築へ
 延長国会は9月から安全保障法制審議の決戦に突入、緊迫しそうです。首相は終戦記念日に発表した「安倍談話」が世界で注視され、中韓両国からも一定の評価を得たことから、政局運営に自信を深め、安保法案を成立させて9月末の自民党総裁選で再選を果たし、来夏の参院選でも勝利し悲願の改憲体制を固めようとしています。安保法制に反対する野党5党は国会周辺で盛り上がる反対デモを背景に、法案の強行採決を阻止、廃案に追い込もうと連携を強め、この攻防が規制緩和などの重要法案審議に影響しています。内閣府が8月17 日に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)の速報値は年率換算で1・6%のマイナス。中国経済の減速などによる輸出の不振と個人消費の冷え込みが原因です。景気浮揚にはアベノミクス第3弾の成長戦略が必要不可決。8月末に来年度予算の概算要求を決定しましたが、これを9月にどう肉付けするか。日本列島は8月、豪雨・雷雨・竜巻・双子台風に襲われました。政界の9月台風も激しいと予想されます。私は防衛、エネルギーを含む離島対策、漁業振興などと取り組んでいますが、さらにご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

歴史認識に区切り付ける意向示す
 「国内外に斃れた全ての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫に哀悼の誠を捧げます」――首相は終戦記念日前の14日、「安倍談話」を発表しました。有識者会議「21世紀構想懇談会」(西室泰三座長)の報告書を参考に首相がまとめ、閣議決定したもの。@武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段として2度と用いてはならないA植民地支配から永遠に決別B先の大戦への深い悔悟の念で不戦を誓うC痛切な反省と心からのおわびを表明してきた歴代内閣の立場は今後も揺ぎない――を骨子とし、「積極的平和主義を高く掲げ、世界平和と繁栄に貢献していく」と強調しています。戦後50年の「村山談話」、60年の「小泉談話」がそれぞれ1300字だったのに比べ3400字と膨大な分量ですが、村山・小泉談話で使われた「植民地支配」「侵略」「反省」「おわび」のキーワードは、ぼかした表現で全て盛られています。その上、「あの戦争に何ら関わりのない子や孫、その先の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」とし、歴史認識問題に区切りを付けたい意向も示しました。米、豪、比、インドネシア、台湾などは安倍談話を歓迎、中国は「真摯な謝罪」を求め、韓国は「残念な部分が少なくない」(朴槿恵大統領)としながらも、両国とも一定の評価を下しており、日中韓首脳会談が開ける可能性が強まってきました。

北方領土訪問し実効支配を誇示
 ロシアは安倍談話に一切コメントせず、メドベージェフ首相は22日、北方領土の択捉島を訪問。紗那近郊で露政府が開催している若者向け愛国イベント「全露青年教育フォーラム」に出席しサハリン州の知事代行と協議、択捉・国後両島を「先行発展地域」として経済特区に指定、両島の経済開発を加速する方針を確認しました。同首相は大統領在任中の2010年11月と首相就任後の12年7月に国後島を訪問、択捉島は初めてですが北方領土訪問は3回目。ロシアは併合したウクライナ南部のクリミア半島でも愛国イベントを開いており、北方領土でもロシア領としての実効支配を誇示した形になりました。岸田文雄外相は直ちに駐日露大使を外務省に呼び、「日本固有の領土訪問は、国民感情を傷つけ、極めて遺憾だ」と抗議しました。これにより、安倍首相と蜜月関係にあったプーチン露大統領の年内訪日は見通しが立たず、北方領土返還を巡る首脳会談は遠ざかる虞が出てきました。

防衛省内部資料を巡り特別委紛糾
 国会は8月11日の参院平和安全法制特別委で共産党が説明を求めた防衛省の内部資料を巡って紛糾、1週間中断しました。資料は中谷元防衛相の指示で5月に作成。法案が最速で8月に成立すると想定し、日米防衛協力の新指針(新ガイドライン)と安保法案に沿って検討すべき項目を列挙したものです。野党側は安保法案の成立前に「成立を前提とした内部資料を作成したことは自衛隊の独走であり、シビリアンコントロール(文民統制)上、問題だ」と激しく抗議して審議を中断。19日にようやく再開したものの、内閣提出法案75本のうち成立したのは農協法改正案、女性活躍推進法案、マイナンバー法改正案など50数本。岩盤規制改革である労働者派遣法改正案などの重要法案は衆院を通過したまま参院審議が大幅に遅れています。労働基準法改正案、民法改正案、議員立法のカジノ法案は次期国会へ先送りとなりそうです。首相出席を求めて21、25日は特別委、24日は予算委の集中審議を行い、野党側は安保法制を厳しく追及しました。(別項「北村の政治活動」を参照)。

無投票3選で5野党安保法制共闘
 9月6日投票の岩手県知事選は、20日の告示日に他の候補の届け出がなく、無所属現職の達増拓也氏が無投票で3選を果たしました。自公両党は4月に出馬を表明した元復興相の平野達男参院議員を支援しましたが、平野氏は「県政ではなく安保関連法案が争点となり、不本意だ」として出馬を断念。達増氏を支援した民主、維新、共産、生活、社民の5野党党首は19日、盛岡市で共同記者会見し、安保法制反対で共闘する考えを表明しました。内閣府発表のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%減、この成長が1年続くと仮定した年率換算では1・6%減となり、3・4半期(9ヶ月)ぶりにマイナス成長に転じました。安倍政権が春闘で企業に賃上げを強く働き掛けたにもかかわらず、賃金の伸びが物価上昇のペースに追いつかないことが個人消費低迷の原因です。消費増税に伴う家計負担が増える中で医療・介護などの支出が増え、食品や日用品の価格が、円安による原材料費の上昇分に転嫁されて上がり続けているのが原因。賃上げの恩恵も一握りの大企業の正規社員に偏り、2千万人に近い非正規社員や中小企業との格差は増大しています。

概算要求一般会計は102兆円突破
 また、円安で伸びるはずの輸出も、中国、アジアや米国など主要相手国向けが低調で、6期(1年6ヶ月)ぶりに減少に転じています。特に、人民元切り下げの繰り返しや、天津の工場大爆発の影響で原油の需要が減少し、減速した中国経済が不安要因で、円高・ドル安が進み、日経平均株価は25日、約半年ぶりに1万8千円を割り込み、世界同時株安。その後も乱高下を続けています。政府は緩やかに景気が回復していくと見て、「補正のような経済対策は想定していない」(甘利明経済財政担当相)としていますが、「一億総中流」意識が失せて、企業間、地域間、正規・非正規間の格差が増大。放置すれば「失われた20年」に逆戻りしかねない状況で、全ての解決策は今月から始まる予算編成作業に掛かっています。今年の概算要求額は一般会計で102兆円を突破。高齢化で膨らむ社会保障費の伸びが原因で、厚労省は社会保障費の自然増分約6千7百億円を含む約30兆6千億円を要求、大卒後も職探しをする若者を正社員として採用した企業への助成金制度などを創設します。

初の5兆円超視野に防衛費枠拡大
 農水省は14・8%増の2兆6497億円を要求、飼料用米などの振興や土地改良・農業農村整備事業の増額を目指します。内閣府は沖縄振興予算を90億円増の3429億円とし、「沖縄県北部地域大型観光拠点推進調査」に1億2千万円を計上しました。経産省は原発再稼動を認めた自治体の「恩恵」を増やし、「電源立地地域対策交付金」として868億円を要求しました。内容が乏しい福祉予算に比べ、眼を引くのは防衛予算が3年連続増大したことです。防衛費の概算要求は5兆0911億円で過去最大。15年度は概算で5兆0545億円要求し、当初予算は4兆9801億円と5兆円を僅かに下回りましたが、16年度は当初予算で「初の5兆円超え」を視野に要求。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ、潜水艦の警戒監視を行うSH60 哨戒ヘリ、弾道ミサイル防衛を担うイージス艦、最新鋭のステルス戦闘機F35、新たな空中給油機、各師団や旅団に新設する即応機動連隊の機動戦闘車の購入費用などが盛り込まれています。防衛省はこれらの防衛費を中国国防費と比較すれば、「中国は過去10年間で約4倍、過去26年間で約40倍の規模になった」 とホームページで強調しています。

総裁選で首相の無投票再選確実へ
 自民党総裁選は9月8日告示、20日投開票と決まりましたが、谷垣禎一幹事長は22日、「幹事長は時の総裁を支えていくのが仕事だ。無理に争いを作る必要は必ずしもない。安倍さんの下で安定した政治を作っていくことが大事ではないか」と述べ、安倍首相の無投票再選が望ましいとの認識を表明しました。細田、二階両派に続き岸田、石原両派が27日に首相支持を決め、額賀、麻生、山東各派も領袖が支持を表明、全派が首相支持でまとまりました。自民党内には石破茂地方創生相や野田聖子前総務会長を推す声もありますが、石破氏は「内閣が課題を負っている時に閣僚がそんなことが言えるか」と消極姿勢を示し、野田氏は党活性化のため「総裁選を行うべきだ」と必要性を訴えていますが、無派閥ゆえに自身の出馬に必要な推薦人20人を集めるメドが立っていないようです。内閣支持率は40%前後と低迷していますが、「安倍一強」には変わりなく首相の再選が確実になりました。首相は2018年までの総裁任期を得た場合、憲法改正を見据えた政局運営を進めるとみられます。与党は衆院で改正発議に必要な3分の2議席を持ちますが参院では不足。マスコミは@野党が内閣不信任案を出せば抜き打ち解散A来夏の参院選と同時に衆院選も行うダブル選B17年4月の消費税率10%へのアップ前の17年冒頭の解散――を予測しています。