第354回(8月16日)国際貢献目指す 終戦記念日に安倍談話
 猛暑お見舞い申し上げます。 広島・長崎両市は原爆投下から70回忌。8 月 6 日の広島には 100 カ国、 9 日の長崎には 75 カ国の代表が平和記念式典に参加して核廃絶と恒久平和を祈りました。 戦後 70 年の節目に当たる 15 日の終戦記念日に、首相は 「先の大戦への反省に立ち日本は平和国家として戦後を歩み続けた。 今後もより国際貢献に取り組む」と未来志向の 「安倍談話」 を発表。安全保障関連法案を今国会で成立させ、 「積極的平和主義」を貫くとの姿勢を強調しました。 安倍談話は戦後 50 年、60 年の村山、小泉談話 に盛り込まれたキーワードである、過去の 「植民地支配」 からの訣別と 「侵略」 への 「おわび」 に触れ、 「こうした歴代内閣の立場は今後も揺ぎない」 と継承する決意を述べた上、 「不戦の誓いの堅持」を強く発信しました。このため、中韓両国は一定の評価を下しており、今後予定される両国との首脳会談には、よい影響を及ぼしそうです。しかし、環太平洋連携協定 (TPP) 交渉は大詰めで足踏み状態。北朝鮮との対話も進まず外交課題は山積みです。 また、憲法学者らの 「違憲論」 を背景に、高校生グループまで参加したデモ活動が国会周辺を取り巻き、 野党は法制化反対機運を盛り上げています。 各紙の内閣支持率も 40 %前後に落ちて世論は厳しくなり、安倍政権はまさに正念場です。 衆院安保委員長の私は曲がり角の安保行政の推進役として日夜努力しています。一層のご支援をお願い申し上げます。

積極的に国際秩序の安定に寄与
 首相は終戦記念日前日の 14 日、 「戦後70年談話」 を発表。この中で 「日本は先の大戦で無謀な戦争を行った深い反省に立ち、戦後一貫して平和国家としての道を進んだ。今後も未来志向の関係を重視して国際貢献を果たす」 と述べ、持論の 「積極的平和主義」を強調しました。 これは首相が 4 月下旬のバンドン会議 (アジア ・ アフリカ会議) の 60 周年記念首脳会議で演説した内容を踏襲したもの。 同会議は 1955 年に 「侵略の脅威、武力行使によって他国の領土や政治的独立を侵さない」 との 「平和10原則」 を採択しています。 首相が「バンドンで確認された原則を、い  かなる時でも守り抜く」 と誓い、 先の大戦への 「深い反省」 を表明したことを中国は前向きに評価。 習近平国家主席との会談が 5 か月ぶりに実現し 「政府間対話や民間交流を進め、 戦略的互恵関係を推進し地域や世界の安定、繁栄に貢献していく」 ことで一致しました。 韓国の朴槿恵大統領は植民地解放を祝う 15 日の光復節記念式典で、 「物足りない部分が少なくない」 と批判しながらも、 「歴代内閣の立場は今後も揺ぎないと国際社会に明確に表明した点に注目している」 と演説し、 安倍談話を行動で示すよう求めました。 これにより、初の日韓首脳会談が開かれる兆しが見えてきました。

過去の反省踏まえ中韓交流活発化
 14 日の安倍談話は有識者の 「21世紀構想懇談会」 (座長 ・ 西室泰三日本郵政社長) がまとめた報告書を参考に、 首相自らが調整、 自公両党に諮り、 閣議決定して発表したものです。 西室報告書は @日本は満州事変以後、 大陸への侵略を拡大、 無謀な戦争でアジア諸国に多くの被害を与えた A 1930 年代以降の政府、 軍部の指導者の責任は誠に重い B戦後日本は大戦への痛切な反省に基づき戦前の日本とは全く異なる国に生まれ変わった ―― などと総括。 「中国とは過去への反省を踏まえ、あらゆるレベルで交流を活発化させ、 韓国とは一緒に和解の方策を考え、 責任を共有することが必要だ」 と提言しています。焦点の歴史認識に関しては村山談話と同じく 「侵略」 を明記した上、アジア諸国への 「植民地支配」 も過去の 「痛切な反省」 も認めています。 しかし、 実際に公表された安倍談話は首相がこれまで 「全体として (村山 ・ 小泉両談話を) 受け継ぐ」 と国会で答弁してきた域を出ず、 肝心なキーワードの 「おわび」 は別の表現にしました。 この点に中韓両国は少なからず不満を表明しています。

ASEAN会議で日中韓朝外相会談
 岸田文雄外相は 6 日、マレーシアで開かれた東南ア諸国連合 (ASEAN) 地域フォーラム (ARF) 閣僚会議に出席した際、中 ・ 韓 ・ 朝の外相と個別に会談、王毅中国外相には、中国が東シナ海で一方的に進めるガス田開発に関し 2008 年に結んだ共同開発の基本合意を実施するための協議を再開するよう要求、王外相は首相談話について 「中国人民や国際社会が関心を持っている。歴史に責任ある態度で正しく向き合ってほしい」 とダメ押しをしました。 尹韓国外相には安倍談話を 「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」 と説明。 李北朝鮮外相には延期されている日本人拉致被害者らの再調査結果の報告を早急に行うよう求めました。 この時点で中韓両外相は安倍談話に重大な関心を示しました。

TPP交渉は医薬品、乳製品で漂流
 7 月末の 4 日間、米ハワイ州マウイ島で開かれた環太平洋連携協定 (TPP) 交渉の閣僚会合は、医薬品開発データの保護期間、乳製品の低関税率拡大などを巡って隔たりが解消できず、大筋合意を見送りました。 これ以上の漂流はできず各国は引き続き交渉官 レベル で妥協案を探り、  9 月にも閣僚会合を再開し決着しようと模索しています。 甘利明TPP担当相は 「もう 1 度閣僚会合を開けば全て決着するだろう」 と記者会見で楽観的見通しを述べました。 だが、夏期休暇に入るうえ、米国は来年秋に大統領選を控え、年内に国会で審議を開始しないと批准手続きが難しくなり、日本も国会審議を来年の通常国会に持ち越すと、来夏の参院選に影響を与えかねず、日程的に苦しくなります。 最大の難関は 「知的財産」 分野のうち、新薬の成分データの保護期間。米国は国内の強大な薬品メーカーの利益を保護するため、10 年以上の保護期間を主張。 しかし、豪州や新興国などは、保護期間が長くなると期限切れデータを使った安い 「ジェネリック (後発 )薬品」 を利用しにくくなり、財政負担や国民負担が重くなると反発。 5 年以下を求め続け、交渉は暗礁に乗り上げました。

日米間もコメ、自動車で最終局面
 もう 1 つは乳製品問題。輸出額で世界最高のニュージーランドは 「乳製品の輸出を増やす措置を勝ち取らなければ、 TPP に価値はない」 と攻勢をかけ、 日本にはバターや脱脂粉乳の低関税率輸入枠を拡大するよう要求。 カナダなど各国に対しても市場開放を迫りました。 10 月の国政選挙を控えたカナダには逆に妥結を急ぎたくない思惑があり、 鶏肉などの市場開放には強く反対しています。 大筋合意を目指し連携してきた日米間でも、コメ、自動車を巡る関税協議が最終局面を迎えています。米国産コメの輸入拡大では、日本側が主食用のコメを無関税で輸入する     「 TPP 特別枠」 を作り 7 〜 8 万トン程度、豪州にも米国の 10 分の 1 程度を認め、合わせて 10 万トン未満の特別枠とする方向で最終調整し、米側は確実に輸出できるよう日本政府に保証を求めていました。また、日本製の自動車部品にかけられている関税 (大半は 2. 5%) は、約 300 ある自動車部品のうち、少なくとも5割超については即時撤廃される方向となり、日本側はさらに、エンジンやギアボックスなど価格の高い主要部品にも即時撤廃の対象を広げるよう求めていました。TPPはアジア経済圏を巡る米中の覇権争いが強まる中で自由貿易の原点を構築するものですが、農産物で日 ・ 米 ・ 豪 ・ 加 ・ ニュージーランドの利害が対立。 まして日本は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目の関税を堅持するよう国会決議しており、交渉決着後は奥野長衛氏が新会長就任した JA 全中など農業団体に対する説得工作が難しくなりそうです。