第351回(7月1日) 9月末まで大幅延長 TPP日米合意加速
 6 月24日に会期末を迎えた通常国会は、9 月27日まで大幅延長され、安全保障法制の審議は新たな攻防に入りました。 憲法学者が 「違憲」 を唱えて野党が勢いづいたため、 安保関連法案の審議が膠着状態に陥った場合、 参院で否決とみなされた 2 か月後に衆院で再可決できる 「60 日ルール」 を視野に、 首相の 「今年夏に成就する」 との公約を実現する意欲を示したものです。  首相は安保法制を成立させて 9 月の自民党総裁選で再選され、 選挙権年齢を引き下げる改正公選法が成立したのを受けて来夏の参院選にも勝利。 3 分の 2 の勢力を確保し、 憲法改正に踏み切る構えです。 米大統領に貿易交渉を一任する 「貿易促進権限 (TPA) 法」 が米議会で成立し、環太平洋経済連携協定 (TPP) の日米合意が加速。 日経平均株価も 18 年半ぶりに IT バブル期を超え、 2 万 1 千円前後に回復するなど明るい展望が開けてきました。 しかし、 経済再生と財政再建の 2 兎を追う首相の前途にはアベノミクスの成長戦略が確実に実現するか。 社会保障費増の 「付けが回される」 と感じる次世代の若者達が参院選でどう意思を表示するか。 不安要素もあり、 安倍政権は剣ヶ峰に立たされています。 お陰さまで私が委員長の衆院安全保障委で審議した 「防衛装備庁」 の新設などの改正防衛省設置法は成立しました。 さらなるご支援、 ご教唆をお願い申し上げます。

法の正当性、合法性は完全に確信
 「1国のみで自国の安全を守り抜く時代ではなくなった。 安保関連法案の正当性、 合法性は完全に確信を持っている」 ―― 首相は憲法学者 2 人が 「違憲」 を指摘した後、 17 日の党首討論で安保環境の変化を強調、 その後の衆院の予算委や特別委の集中審議でも、 集団的自衛権を行使する場合は 「新3要件に当てはまるかどうかが全てだ。 必要な自衛措置は常に国際状況を見ながら判断しなければならない」 と従来の見解を繰り返しました。 これに対し、 民主党の岡田克也代表は 「何も言っていないに等しい」 と首相答弁を批判。 「何が憲法に合致し、 何が違反するのか、 法律で決めなければならない」 と法案を 「憲法違反」 と決めつけました。 共産党の志位和夫委員長も 「兵站 (給油・弾薬などの後方支援) は攻撃の格好の目標。 自衛隊が兵站をやっているところが戦場になる」 と自衛隊のリスクを追及。 維新の党の松野頼久代表は 「審議すればするほど世論調査で内閣の説明が不十分という見方が増える。 政府案の修正協議に応じるつもりは全くない」 と述べ、 維新が提出する対案についての共同修正をきっぱり否定しました。 これは、 維新の橋下徹最高顧問 (大阪市長) と松井一郎顧問 (大阪府知事) が 14 日、首相、菅義偉官房長官と都内で 3 時間も懇談したため、 「維新が “親政権” に傾斜した」 との見方が出るのを、 打ち消そうとしたと見られます。

自民と法修正するも維新内部複雑
 しかし、 維新の党 (国会議員 51 人) は、 橋下氏に近い大阪選出組、 江田憲司元代表や柿沢未途幹事長ら元 「結の党」 の合流組、 民主党出身の松野代表が率いる野党再編派、 片山虎之助参院議員会長や下地幹郎衆院特別委理事ら自民党出身者が、 それぞれ 10 人程度のグループに分かれ、 内部は複雑です。 「大阪組」 は与党と協議し、 「同一労働 ・ 同一賃金」 推進法案を修正する代わりに、 19 日の衆院本会議で労働者派遣法改正案に共産とともに反対に回ったものの、 衆院採決には応じ (民主、 社民、 生活の党は退場)、 柔軟に対処しました。 橋下氏側近の馬場伸幸国対委員長は 「派遣法の進め方は維新らしさが出せた。 安保法制もそういう形で対応して行く」 と述べていますが、 松野、 江田氏らは年内にも民主党の一部や次世代の党などを抱き込み、100 人規模の野党再編を目指しています。 橋下氏は維新がまとめている安保対案について、「政府与党の考え方と思想がこう違うという案じゃないと、(政府案に) 反対した方が良いのじゃないか」 と記者会見で語り、 ツイッターでも 「政府与党案に少し難癖をつけた程度のもの」 と対案を批判、 同党の 「第 3 極」 の立場を重視する姿勢を強調しました。 このため、 大半の議員が 21日に大阪で勉強会を開いて対案を練り直し、 ようやく最終案決定の方向を出しました。 同党は分裂含みの動揺が続いています。

民主の実力行使で 1 週間遅れ可決
 民主党は年金機構の情報流出を問題視し、 首相が出席した 12 日の衆院厚生労働委の集中審議を阻止しようと渡辺博道委員長の入室を拒み、 「実力行使」 に出たため、 与党議員と揉み合いになり、 渡辺氏の携帯電話が一時紛失するなど騒然としました。 この騒ぎで労働者派遣法改正案の衆院可決は 1 週間遅れました。 改正案は @同じ派遣先の職場で働ける上限を 3 年にする A人を代えれば企業は派遣社員をずっと受け入れ可能にする B派遣会社に無期雇用される派遣社員は同じ派遣先の職場でずっと働ける C派遣会社に派遣社員への 「雇用安定措置」 を義務付ける D派遣事業を全て許可制にする ―― が主な内容で、 政府は派遣社員の待遇を改善し、 正社員化の道を開くと強調しています。 しかし、 連合は 「『生涯派遣』になって低賃金が進む改悪だ」と批判。 民主など野党が提出した 「同一労働 ・ 同一賃金法案」 についても、 「待遇の均等の実現を図る」 という文言を 「均等と均衡」 に変えることで維新と与党が修正合意したことについて 「『均衡』 では弱い。 同一賃金にしない場合は罰則があるような厳しい法律を」と訴え、 参院でも抗戦を続け、重要法案の審議は難航しています。

参院選から 18 歳以上に引き下げ
 選挙権の年齢を現在の 「20歳以上」 から 「18歳以上」 に引き下げる改正公職選挙法は 6 月17 日に成立しました。 来年夏の参院選から新たな有権者になる 18,19 歳は計 240 万人で全有権者の 2 %。 人口約 230 万人の宮城、 新潟両県を上回る若者が投票権を得ることになります。 自民党青年局は各県連に 「学生部」 を設置、 公明党は若者向け街頭演説を行うなど、 各政党は早くも参院選対策を強化しています。 参政権の拡大は 「民主主義の根幹」 である重要原則を変更するもので、 1945 年に 20 歳以上の男女と決まって以来 70 年ぶり。 衆参両院選のほか、 地方自治体の首長選や議会選、 最高裁裁判官の国民審査などにも適用されます。 世界の約 190ヵ国 ・ 地域のうち、 約 9 割で選挙権年齢は 18 歳以上。 低年齢化の先頭を切った英国は昨年、 スコットランドで英国からの独立を決める住民投票に 16 歳以上を適用、 8 ヵ月後の 5 月 7 日の総選挙で最大野党の労働党は、 自党を支持する傾向が強い若者の票を取り込もうと保護者の同意で軍隊に入隊できる 16 歳以上への引き下げを公約に掲げました。 日本の公選法案改正は 「民主主義をさらに深める」 ため、 与野党6党が提出、 全会一致で可決しました。 改正法の付則には民法の成人年齢や、 少年法の適用年齢についても 「検討を加え必要な法制措置を講ずる」 が盛り込まれました。 さらに現在衆院選は 25 歳、 参院選は 30 歳と定められている被選挙権を引き下げる改正なども今後の課題となります。 各地の教育現場では 18 歳選挙権に向け、 模擬投票など  「主権者教育」 が始まっています。

首相 「6増6減と2合区」 案評価
 「来年の参院選に間に合わせるべく自民党総裁として、 最大限の努力をして行かなければいけない。 4 党合意案は傾聴に値する」 ―― 首相は 17 日の党首討論で、 維新や新党改革など 4 野党がまとめた 「 6 増 6 減と 2 合区」 案を評価しました。 選挙年齢の引き下げと並行して、 参院選の 「 1 票の格差」 是正策を話し合う参院制度改革検討会は、 自民党が合区案に後ろ向きで、多くの合区導入を求める公明や野党との協議は暗礁に乗り上げていました。 だが、 首相の発言は事実上の方針転換を促し、 各党は本格的な協議に入りました。 最高裁は最大格差が 5.00 倍だった 2010 年と、 4.77 倍だった 13 年の参院選は 「違憲状態」 だったとの判断を示し、 都道府県単位の選挙区制見直しなどの抜本改革が必要だと指摘しています。 しかし、 合区は自民党が伝統的に強い選挙地盤を持つ人口が少ない県が対象となるため、 党内の反発が強く、 党の憲法改正草案に 「参院議員は各都道府県から少なくとも 1 人を選ぶ」 という趣旨の条文を盛り込んだほど。 19 日の党内協議は結論を持ち越しました。

自民案プラス 2 合区の 4 党合同案
 自民党は宮城、 新潟、 長野の定数を 2 ずつ減らし、 北海道、 東京、 兵庫に 2 つずつ追加する 「 6 増 6 減」 案で最大格差を 4.31 倍にする案を提案しています。 維新、 日本を元気にする会、 次世代、 改革の 4 党合同案は、 自民案に加え鳥取と島根、 徳島と高知を合区して 2 ずつ減らし、 愛知と福岡に 2 ずつ追加する 「 6 増 6 減と 2 合区」 案で、 2.974倍の最大格差にする案です。 公明党は、 秋田、 山形など 20 県の選挙区を 10 に合区する 「 10 合区」案で、1.953倍とする案です。 民主党は大阪 ・ 和歌山の統合や鳥取、 島根など 22 府県を 11 選挙区に合区、東京は分区して北海道など 6 都道県に計 12 追加する 「 11 合区と 1 分区」 案で 1.891 倍です。このように共産、 社民党以外の主要政党は既に合区の導入で一致しており、 自民党の溝手顕正参院議員会長も 4 党合同案を 「大変貴重な提案で重く受け止めて検討する」 と述べ、 前向きに決着させようと各党幹部と折衝しています。 このほか、 会期延長前の 19 日、 本社機能を地方に移転した企業などの法人税負担を軽くする 「特別償却」 や雇用を増やした場合に納税額を減らす「税額控除」 など税制を優遇する改正地域再生法が成立しました。 これは地方創生の切り札。 延長国会ではさらに多くの重要法案成立に努めます。