第350回(6月16日)安保法制攻防ヤマ場 学者が違憲合唱
 今国会の焦点である安全保障関連法案は、憲法学者 3 人が法案の根幹を揺るがす 「違憲」 を唱えたため野党攻勢に弾みがつき、 最大のヤマ場を迎えています。 民主党は10本に束ねた 「一括法案」 をバラして審議するよう要求。 成立阻止に向けて野党共闘を強めています。 もう1つの焦点の労働者派遣法改正案は、 日本年金機構の個人情報流出問題で、 衆院厚生労働委の審議が遅れ、 マイナンバー法改正案も参院での採決が持ち越されるなど、 与党の国会運営に支障を来たしました。 政府与党は 24 日会期末の国会を大幅延長し、 安保関連法案など重要法案を全て成立させるべく国会戦略の練り直しを進め、 街頭宣伝活動も活発化しています 。首相は 7〜8 日、 ドイツで開かれた主要国首脳会議 (G7サミット) とウクライナを訪問、 来年日本で開く サミットを 「三重県の伊勢志摩で開催する」 と正式に発表、 歓迎されました。 激動国会が続きますが、 一層のご支援をお願い申し上げます。

露骨な戦争参加法案と小林教授
  4 日の衆院憲法調査会で参考人の長谷部恭男早大教授 (自民推薦)、 小林節慶大名誉教授 (民主推薦)、 笹田栄司早大教授 (維新推薦) の3人が揃って、 集団的自衛権行使を可能にする安保関連法案は 「憲法違反」 とレッドカードを突きつけました。 民主党は 5 日の安保特別委で、 「3人とも口を揃えて違憲だといった。 政府は法案を撤回した方がいい」 と迫り、 岡田克也代表も 「一括法案をバラして再提出しそれぞれ 2、3 国会かけて審議すべきだ」 と述べ、維新などに野党共闘を呼びかけました。 政府は集団的自衛権の限定容認をした昨年 7 月の閣議決定以降、 「戦闘が行われている現場」 以外での後方支援なら、 憲法が禁じる 「他国の武力行使との一体化」 に当たらないとしてきました。 ところが長谷部教授は 「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない。 法的な安定性を大きく揺るがす」 と批判。 小林教授も 「(軍へ物資補給の)兵站なしに戦闘はできない。 露骨な戦争参加法案だ」と述べ、 共産党の志位和夫委員長が委員会で指摘した 「後方支援も軍事的措置。 軍事支援に間違いない」 との主張を是認、 志位氏の「戦争法案」 論を肯定しました。

年金機構個人情報流出の不手際
 自民党推薦の学者が国会でよもや 「違憲」 を唱えるとは思いもよらず、 加えて、 日本年金機構から 125 万件の個人情報がサイバー攻撃を受けて流出した 「漏れた年金」 問題が発覚。 第 1 次安倍内閣で 「消えた年金」 が大きな問題になっていただけに、 谷垣禎一幹事長は 「国会運営について緊張を欠いていた。 大変申し訳なく思う」 と 5 日の政府与党連絡会議で謝罪しました。 「漏れた年金」 を日本年金機構は @不正アクセスが発覚した 5 月 8 日以降も添付ファイルを開ける職員がいた A警察に相談するまでに約 10 日掛かった B漏れた情報の 55 万件は内規が定めるパスワードの設定がされず、 情報がそのまま外部に流れた C厚生労働相への報告も 20 日後だった−−など不手際が指摘され、 相変わらず同機構の 「危機管理の欠如」 が浮き彫りにされました。 ウイルス感染のパソコンが国内、 米国など 6 サーバーと不審な通信をしたことが判明。 公表が遅れたため、 年金受給者に 「なりすます」 詐欺の可能性があり、 衆院厚労委で塩崎恭久厚労相が野党から厳しい追及を受け、 労働者派遣法改正案の審議が遅れました。 国会では個人情報保護法改正案を審議中です。 国民一人ひとりに 12 桁の番号を割り振る共通番号制度関連法改正案のマイナンバーについてもサイバー攻撃の虞があり、 野党は来年 1 月から始まるナンバー制度について 「国民の関心が高いので慎重に対応すべきだ」 と主張し、 4日に予定していた参院内閣委での採決を延期しました。 民主党の枝野幸男幹事長は 8 日の記者会見で、 「新事態が発生したのだから、 衆参で違う採決でも止むを得ない」 と参院採決に抵抗する構えを見せています。

反戦マグマ噴出抑え一斉街頭行動
 憲法学者の 「違憲」 合唱が世論へ影響を与え、 各紙の内閣支持率もやや下がりました。 勢いづいたのは反戦グループ。 「戦争をさせない 1000 人委員会」 と 「解釈で憲法 9 条を壊すな ! 実行委員会」 は 7 日、 主要紙に 14 ・ 24 の両日に 「国会包囲活動」 を募る全面広告を載せ、14 日に大動員をかけました。法学や政治学など専門家で作る「立憲デモクラシーの会」も6日夜、東大で「立憲主義の危機」 シンポジュウムを開き憲法学者が安保関連法案に危惧を示しました。 朝日によると憲法学者が呼びかけた安保法案の廃案を求める声明に賛同した学識者は 186 人です。 首相の祖父 ・ 岸信介首相が安保条約改定に調印したのは 1960 年 1 月。 それから 6 月にかけ全学連などの反安保闘争が急速に盛り上がり、 樺美智子東大生が国会内で圧死するなどの惨劇が生まれました。 反戦マグマが噴出しないよう、 マスコミ、 世論の動向には要注意。 自民党は全国の県連会長、 選対支部長に分かり易い安保法制ビラを大量に送り、 青年局が 7 日に全国約 80 カ所で一斉に街頭行動を展開、 東京新宿では谷垣幹事長が 「隙間の無い抑止の体制を作ることで日本の平和と安全を保とうとしている」 と国民に理解を求めました。 今後も車座集会を各地で開くなど宣伝に大童です。

ウクライナ、アジア投銀など討議
 小林教授は憲法審査会で民主、 維新、 共産各党の委員から議題になかった安保関連法案について 「憲法違反と思うか」 と問われ、 「違憲」 と答えたまでで、 本来は憲法 9 条の改正を主張しています。 従って小手先の解釈改憲より、 堂々と自民党の党是の改憲を実現するため、 来夏の参院選で 3 分の 2 の勢力を確保することが最良の策と思われます。 自民党は 5 日、 都道府県連に参院選候補を早急に選定するよう指示し、 態勢固めに入りました。 選挙権年齢を現在の 「20 歳以上」 から 「18 歳以上」 に引き下げる公選法改正案は 4 日の衆院本会議でほぼ全会一致で可決、 今月中に参院で成立の運びとなりました。 来夏の参院選では 18,19 歳の約 240 万人が新有権者となるため、 各党は早くも若者の選挙取り込みにしのぎを削っています。 ドイツ南部の保養地エルマウで開かれたG7 サミットはウクライナ問題や中国による岩礁埋め立てが進む南シナ海問題、 気候変動対策、 エネルギー、 テロ対策などが主議題。 ロシアが昨年 3 月以降、 ウクライナ南部のクリミア半島を編入し、 東部で親ロシア派武装集団の活動を支援しているのに対し、 オバマ米政権は欧州連合 (EU) や日本をリードし経済制裁を強化してきました。 ロシア抜きのサミットは 2 年連続の開催。 今回もG7 が連携しロシアへの制裁を維持することで合意。 初日の 「世界経済」 の討議では、 中国が主導するアジアインフラ投資銀行 (AIIB) の情報を共有することで一致しました。 地球温暖化対策では、 2050 年までに世界全体の温室効果ガスの削減量を、 10 年比で 40 〜 70 %の幅の 「上方」 とする、 新たな長期目標を盛り込んだ首脳宣言を採択しました。

仏 ・ ウクライナ大統領と個別会談
 安倍首相はサミットに先立つ 6 日、ウクライナの首都キエフでポロシエンコ同国大統領と会談、東部で活動を続ける欧州安保協力機構監視団に日本から専門家を派遣する意向を表明しました。共同記者発表では 「力による現状変更を決して認めず、 法の支配、 主権、 領土の一体性を重視していく」 と述べ 、 クリミア併合を認めないと強調しました。 これがロシアを刺激し、 プーチン大統領の年内訪日は益々遠ざかることになると懸念してか、 7 日昼はオランド仏大統領と日仏首脳会談を開き、 首相は北方領土問題を念頭に 「 (ウクライナで) ロシアへ圧力と共に対話も必要」 と述べ 、 首脳間対話が必要との認識で一致。 首相は 「中国による岩礁埋め立ては急速に進展しており懸念を共有したい」 と呼びかけ、 オランド氏は 「平和と安定に向け対話で問題を解決していくことも重要だ」 と合意。 首相が安保関連法案について、 「成立すれば日仏の協力の余地が拡大する」 と説明したのに対し、 オランド氏は 「日本の取り組みに連帯を表明する」 と支持を確約。 首相はサミットでも首脳宣言に盛った 「東 ・ 南シナ海での緊張を懸念」 の口火を切り、 外交の成果を挙げました。

悠久の歴史、伊勢志摩でサミット
 「日本の美しい自然、豊かな文化、 伝統を世界のリーダーたちに肌で感じてもらえる場所にしたいと考えた」 −−首相は 5 日夕、外遊出発前の羽田空港で来年に議長国として開くサミットを三重県の伊勢志摩で開催すると発表しました。 日本での開催は 08 年の北海道 ・ 洞爺湖に次ぐ 6 回目。 開催地を巡っては志摩市に加え、 長野県軽井沢町、 仙台市、 新潟市、 浜松市、名古屋市、神戸市、 広島市の計 8 都市が名乗りを上げました。 だが、 日本の伝統や文化を重んじる首相が「伊勢神宮は悠久の歴史を紡いできた。 大小の島々には日本の原風景とも言える美しい自然がある」 と語るように、 リアス式海岸の絶景で知られる伊勢志摩の中でも英虞湾の賢島は周囲約 7 キロの島、 真珠養殖で名高い。 会場となる 「志摩観光ホテルは 1951 年開業の純洋式リゾートホテルで昭和天皇をはじめ皇族が多く宿泊。 地元警察の警備経験が豊富な上、 島には 2 箇所に橋が掛かっているだけで警備がし易い特質があります。 伊勢志摩は二階俊博総務会長選挙区の隣県。 二階氏は先に 3 千人の観光業者を引き連れ訪中し習近平国家主席に首相の親書を手渡した親中派で、 首相の信頼が厚く、 賢島開催は首相が今後の政局を睨み二階氏の協力に期待を示したとマスコミは見ています。