第349回(5月29日)安保法制の論戦開始 再編含みで野党共闘
 今国会最大の争点である安全保障法制は、5月26日の衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われた後、衆院に設立された特別委を舞台に激しい論戦に入りました。 政府は他国軍を後方支援する「恒久法案」 と自衛隊法改正など 10 改正案を 1 本に束ねた 「一括法案」 の 2 本立てで、計 11 法案を国会に提出しました。 野党は入口の国対委員長会談で @法案の総称や特別委の名称に 「平和安全」 の言葉を入れたのは国民を欺く行為 A一括法案でなく改正 10 法案を 1 本ずつ再提出せよ B米議会で 「法案成就」 を公約した首相発言を取り消し、 長時間審議すべきだ ―― と反発し冒頭から荒れ模様。 さらに、 首相が安保法制化や憲法改正の強い味方として盛んにエールを送ってきた維新の党最高顧問の橋下 徹 大阪市長が 12 日、「大阪都構想」 の住民投票に敗れて政界引退の意向を表明。 野党再編を目指す民主党は、 安保法制審議で維新の党と共闘・連携し、 来夏の参院選での選挙協力に繋げたいとしています。 首相にとっては大きな痛手ですが、 安倍政権は国会会期を大幅延長してでも国際公約の安保法案を必ず成立させようと背水の陣です。
一層のご支援、 ご鞭撻をお願い申し上げます。

同盟強化が抑止力と法制意義強調
 「不戦の誓いを将来に亙って守り続けて行く。そして国民の命と平和な暮らしを守り抜く」 ―― 首相は 14 日夕、 安保法制を閣議決定した後の記者会見で、 胸を張りました。 また、 アルジェリアやシリアなどでのテロで日本人が犠牲になったことや 北朝鮮による弾道ミサイルの脅威などを挙げ、「私たちはこの厳しい現実から目を背けることは出来ない。切れ目ない対応をしっかり整えていくこと、(日米の) 同盟関係がしっかりしていることは抑止力につながる」 と法整備の意義を強調。野党の 1 部から上がる 「戦争法案」 との批判に 「無責任なレッテル貼りは全くの誤り」 と反論しました。 中国は軍事力増強と 「一帯一路」 (2つのシルクロード) 建設構想をもとに 東 ・ 南シナ海に海洋進出、 北朝鮮は 「戦略潜水艦の弾道ミサイル水中発射実験に成功した」 と9日に発表するなど、 拉致問題の対日回答を引き延ばし弾道ミサイル開発や核武装を加速。 安保法制の整備は喫緊の課題です。 閣議決定の翌日に国会提出した安保関連法案は、 戦争中の他国軍を海外派遣の自衛隊が後方支援する恒久法の 「国際平和支援法案」 と、集団的自衛権の行使を前提にした武力攻撃事態法改正案など 10 本の現行法改正案を1本に束ねた 「平和安全法制整備法案」 の 2 段重ね対応です。

野党は国民欺く稀代の悪法と追及
 「安保法制は相互に関連し合うので、一括法案で全体像を示した」と与党協議の自民メンバーは言い、 政府与党幹部は 「国会で分かりやすく懇切丁寧に説明する」 と述べています。 しかし、 新ガイドラインの上位にある日米安保条約は 「日本と極東の平和と安全の維持」 を目的としていることから、 野党は 「条約改定の手続きを飛ばして法制化を急ぐ政府だ」 と強く反発しています。 民主党の枝野幸男幹事長は 「恐らく戦後最大の法案だ。 戦後 70 年間の基本的な方針や専守防衛の言葉の使い方を、 政府与党は勝手に変えているようだ」 と批判。 5月17日の NHK 番組で同党の細野豪志政調会長も 「専守防衛を乗り越えるもので、 安倍政権の進める集団的自衛権の行使は容認しない」 と野党共闘で法案の成立阻止を目指す考えを強調。 「稀代の悪法を阻止したい」 (小池晃共産党政策委員長)、「武力行使可能の戦争法案」 (吉川元社民党政審会長) と口々に批判しました。 審議入り前の国対委員長会談では、 自民党が衆院で80時間の審議時間を提案したのに対し、 野党は法案の総称や特別委に 「我が国及び国際社会の平和安全法制特別委」 と名付け、 「平和安全」 を協調したのは、 安倍政権が世論のイメージを気にしたもので、 「国民を欺くものだ」 、「10改正案を一括法案に束ねるのは極めて乱暴」 、「少数政党にも特別委に参加させろ」 と反発しました。

維新 「橋下劇場」 閉鎖で分裂危機
 「第三極」 政党として存在感を示してきた維新の党は 17 日、橋下徹最高顧問が 「大阪都構想」の住民投票に敗れたため、 勢いを失いました。 橋下氏は 12 月の任期満了まで大阪市長を務めた後、 政界を引退すると表明、 江田憲司代表も引責辞任し、 後継代表に松野頼久幹事長が昇格しました。 橋下氏は 2010 年、 地域政党 「大阪維新の会」 を立ち上げ、 「日本維新の会」 に名称を変え、「既得権益打破」 を掲げて国政に進出。 12 年の衆院選挙では石原慎太郎都知事と組んで民主党とほぼ同じ 54 議席、 比例区で約 850 万票を獲得。 小泉元首相の政治姿勢を真似て「発信・破壊型劇場政治」、「ポピュリズム (大衆迎合) 政治」 で改革政党を全面に押し出し、 江田氏率いる 「結いの党」 と合流、 第2野党の維新の党を結成しました。 しかし、大阪都構想が頓挫し「橋下劇場」 は閉鎖。 改革の旗とリーダーを失った現在、 江田氏ら野党再編派と地域政党色を残した 「大阪組」 との間に亀裂が生じ、 再分裂する事態も予想されます。 安倍政権は改憲派で安保法制にも積極的だった橋下氏に秋波を送ってきましたが、 松野氏は元々民社党出身で、細野同党政調会長、 江田氏と並ぶ野党再編 3 羽烏。 民主党は来夏の参院選を睨み、 選挙協力や安保法制阻止の共闘を画策しています。

内外政策混迷し政権戦略再構築へ
 後半国会は 3 度目の提案となった労働者派遣法改正案の成否も大きな課題。現行法は、無制限に派遣社員を受け入れる仕事を通訳や秘書など専門 26 業種に限定していますが、 改正案では、「業務の区別をなくし、派遣期間を一律原則3年」とし、派遣は「臨時的・一時的が原則」と謳っています。 しかし、 派遣労働者は職場 (課のレベルを想定) を変えれば 3 年を超えて派遣されるため、 労組側は企業が勝手に部署を替えたり、 正社員に昇格させることは少ないと見て、「企業が一定の条件下、 ほぼ全ての仕事で派遣労働者を使い続ける」 と批判。 “使い勝手優先” の 「一生派遣合理化法案」 と反対、 野党共闘で阻止する構えです。 岸田文雄外相や長崎、広島両市長が ニューヨーク の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議で求めた、「世界の政治指導者や若者らの被爆地 ・ 広島、長崎の訪問」 は、中国の反対で 「核兵器禁止条約」 の文言とともに削除され、 中東非核地帯構想 も イスラエル に配慮する米国の反対で最終文書は採択されず会議は決裂。 オバマ大統領 の ノーベル平和賞受賞はその意義が薄れました。 環太平洋経済連携協定 (TPP) 合意の鍵を握る貿易促進権限 (TPA) 法案は 22 日夜、 米上院が可決し一歩前進しましたが、 下院は難航しており、 先行きは依然不透明。 1〜3 月期の国内総生産 (GDP) の実質成長率は2 四半期続けてプラス成長。 内閣支持率も好調ですが、 安倍政権は内外政策とも混迷の兆しで、政権戦略の再構築を迫られそうです。

強制労働だと中韓は遺産登録反対
 長崎など 8 県の 23 施設で構成する 「明治日本の産業革命遺産」 の世界文化遺産登録は、6月28日からドイツで開く世界遺産委員会で最終決定されます。 ユネスコの諮問機関 イコモス (国際記念物遺跡会議)は 「西洋から非西洋国家に初めて産業化の伝播が成功した」 と評価して登録を勧告しましたが、 韓国は戦時中に朝鮮人の強制労働が行われた 7 施設が含まれていると批判、中国も韓国に同調し登録に反対しました。 自民党の二階俊博総務会長が 5 月下旬、 3 千人の観光業者を引き連れて訪中した際、 習近平国家主席は人民大会堂での歓迎宴で、 「日本は侵略の罪を覆い隠し、 歴史を歪曲している」 と挨拶。 首相の歴史認識を批判しました。 日本政府の高官は 「いたずらに政治問題化させて妨害するのは品位に欠ける」 と非難、 「両国が問題視する (強制労働の) 年代や歴史的背景は異なる」 と指摘、 国連教育・科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員国の ドイツ (議長国) と ポーランド、 セルビア、クロアチア、ジャマイカ、コロンビア など10カ国に内閣 ・ 外務 ・ 文科の 3 府省から 6 人の副大臣、政務官を派遣。 今後も全委員国に派遣を続行、賛同を求めます。

生産施設と護岸の最少保存整備案
 7 構成資産の1つは、 島影が軍艦 「土佐」 に似ていることから軍艦島と呼ばれる長崎市の端島炭鉱で、 観光客の人気を集めています。 だが炭鉱住宅の保存費用は最大で 158 億円と見込まれ、 資金不足に加え修復技術も確立されていないなど課題が山積。 長崎市は今年度中に保存計画を策定しますが、 国内最古の鉄筋コンクリート造りで 1916 年建築の地上7階、 地下1階建ての鉱員住宅 「30号棟」 は風化が進み、 倒壊寸前であるため、 市は保存が困難と判断しました。 このため、 市は産業遺跡としての価値を構成する 「生産施設」 と 「護岸」 だけを保存整備する最少額案を 11 億円とし 「居住施設」 は優先度をつけて劣化の進行を抑制する保存方針を申し合わせました。 これにより炭鉱住宅の 3、16、17、65 棟 ( 4〜10 階建て) と端島小中学校校舎の 70 号棟の計 5 棟を 「優先度上位」 と位置づけ、 5 棟を保存対象にした場合の費用を約 50 億円と見込みました。 これをどう捻出できるか。 前途多難です。

委員長報告後に設置法可決し参院
 攻防が続く安保関連法案は抽象的で極めて多岐に亙るため、 前回のHPと同様 「北村の政治活動」 のシリーズでポイントを詳しく指摘する考えです。 是非お読み下さい。 なお、「防衛装備庁」の新設と背広組が制服組をコントロールする 「文官統制」 の規定を全廃する防衛省設置法改正案は、 私が委員長を務める衆院安保委で可決され、 5月 15 日の衆院本会議で私の委員長報告の後に賛成多数で可決、 参院に送付されて今国会で成立の運びです。