第347回(4月28日)5か月ぶり日中首脳会談 安保法制で攻防
 4月26日に行われた統一地方選でも自民党は大勝し安倍政権の基盤は一層固まりました。首相は21,22日にインドネシアで開いたバンドン会議に出席して夏に公表する「70年談話」の基本概念を発表。中国の習近平国家主席とも5か月ぶりに会談し日中関係の改善を図る方針で一致しました。26日から5月3日まで訪米して28日は日米首脳会談、翌29日は歴代首相として初めて米議会上下両院合同会議で演説。首脳会談では日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定などで正式合意、両院会議では「積極的平和主義」に基づく日米同盟の深化を強調しました。統一地方選の勝利に加え、春闘でもベアの実績を積み上げて経済好循環の道を切り開いた首相は、アベノミクスの成長戦略である岩盤規制改革を推進する農協法、労基法の改正案など重要法案の成立に全力を挙げています。安全保障法制を巡る与党協議は4月21日、公明党が自衛隊海外派遣の歯止め措置として強く求めた「例外なき国会承認」を自民党が受け入れて大筋で決着。日米ガイドラインとの整合性を図り、24日に実質合意しました。5月15日ごろ閣議決定し、衆参両院に設置される特別委に一括上程します。野党が強く反発しているため、国会を大幅延長して成立を目指す方針です。後半国会は激しい攻防が予想されますが、一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

自民勝利、無投票当選多く低投票率
 統一地方選の後半戦は4月26日、142市区町村長選と586市区町村議選が行われ、組織力が強い自民党(同党系無所属を含む)が後半でも大勝し来夏の参院選の基盤を固め、公明党も健闘、非自民票を集めた共産党も議席を伸ばしました。告示日には政令指定市以外の89市と東京特別区の11区・計100の市区長選と、全国295市と東京21区・計316の市区議選、それに122町村長選と373町村議選が準備されました。しかし、89市長選のうち県庁所在地の長崎、津(三重県)を含め、3割に当たる27市が無投票当選を決め、諏訪(長野県)では告示日に早々と新人の女性市長が誕生しました。町村長選でも53人が無投票当選、市町村議選では15市と89村の計104選挙区が無投票で1176人が当選。実際に選挙が行われたのは上記の市区町村でした。田上富久長崎市長は「市民に訴えたいことがあったので、選挙期間が1日で終わったことは残念だ」と喜びの中にも複雑な表情を見せました。 女性の時代を反映し89市長選に出馬した女性候補は13人で、うち4人が当選。295市議選の女性候補者は1260人、町村議選には490人が立候補し、全体候補に占める割合は過去最高でした。市長選は12日投票の県知事選と同様、全体では立候補者が少なく与野党の相乗り候補が多く、無投票に加え投票率も落ち込み地方選の空洞化が目立ちました。

大手平均8500円賃上げ、中小努力
 「桜前線が北上し、全国に桜が咲いていくように、昨年は15年ぶりに賃上げが実現した。今年は昨年を上回る。景気回復の暖かい風を全国津々浦々に届けることが使命だ。地方創生を力強く進めていく」――首相は4月18日、首相主催の「桜を見る会」でこう挨拶しました。メーデーを挟んで中小企業の春闘はたけなわ。大手輸出製造企業が円安効果で21年ぶりに大幅賃上げを達成したのに比べ、企業労働者の7割を占める内需型の中小企業は円安で逆に輸入原材料の高騰などにより賃上げ率の伸びが低く、労使交渉はこれからが本番。大手企業の賃上げ率が前年に続いて2%を超したのは、デフレ脱却を目指す安倍首相が政労使会議で賃上げを繰り返し要求した結果によるもの。4月16日に発表された大手企業の回答・妥結状況の第1回集計を業種別に見ると、ベア・定昇分を含め、自動車が約9800円、機械金属8600円、繊維7900円、食品7600円と平均8500円台に達しています。この影響で日経平均株価は1時期、ITバブル期以来15年ぶりに2万円を突破しました。甘利明経済再生相は同日、三村明夫日商会頭と会談し、「全国に経済の好循環を届けるには、中小企業の賃金改善が極めて大きい」と強調しました。大手と中小企業、中央と地域の格差は増大するばかり。日商の調査では中小企業の43・8%が賃上げを予定しているそうです。

日中首脳会談で戦略的互恵推進
 安倍首相は4月21〜23日、バンドン会議(アジア・アフリカ会議)の60周年記念首脳会議に出席、「バンドンで確認された原則を、日本は先の大戦の深い反省と共にいかなる時でも守り抜くと誓った」としたうえ「日本は戦後一貫して平和国家としての道を進んだ。未来志向の関係を重視して国際貢献を果たす」と演説しました。これは「侵略の脅威、武力行使によって他国の領土や政治的独立を侵さない」との1955年の同会議で採択された「平和10原則」を引用し、先の大戦への「深い反省」を表明したもの。これに中国は前向きの評価を示し、韓国は「お詫び」の言葉がなかったと反発しました。この後、中国の習近平国家主席と5か月ぶりに会談、「政府間対話や民間交流を進め、戦略的互恵関係を推進し、地域や世界の安定、繁栄に貢献していく」ことで一致。首相は約4年ぶりに日中安保対話を開催したことを評価し、日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの早期運用を開始したいとの意向を表明。習主席は「中国は(2つのシルクロードの)『一帯一路』の建設とAIIB(アジアインフラ投資銀行)の創設を呼び掛け、国際社会から歓迎されている」と述べて日本の参加を促し、「歴史を直視してこそ相互理解が進む」と歴史認識についても言及しました。

バンドン会議で「深い反省」表明
 バンドン会議での首相演説は、首相が終戦記念日に発表予定の「70年談話」のリハーサルとなるもの。50周年記念の2005年会議には当時の小泉純一郎首相が出席しましたが、毎年の靖国神社参拝で中韓関係の悪化を招いていたことから、小泉氏は無用な軋轢を回避しようとしてか、「村山談話」を引用して演説しました。戦後50年の8月15日に発表された村山富市元首相の「村山談話」は、米国はじめ世界から寄せられた支援と協力に深謝するなど「戦後の歩み」に触れ、「過去の一時期『植民地支配と侵略』によってアジア諸国の人々に対し多大な損害と苦痛を与えた歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて『痛切な反省と心からのおわび』の気持ち」を表明しています。小泉氏も「痛切な反省と心からのお詫び」を踏襲しましたが、同時に「過去を直視しアジア諸国との相互理解と信頼に基づく未来志向の協力関係を構築し、テロ防止・根絶など国際社会の一員として役割を果たす」ことを強調しました。今回のバンドン会議は中国の習国家主席、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長ら27首脳が出席、首相の歴史認識に重大な関心を寄せていたため、首相は「痛切な反省」、「お詫び」などキーワードは使わないものの、「深い反省」を表明し、未来志向・国際貢献の姿勢を強調したものです。出発の21日は靖国神社の春季例大祭が始まった日ですが、首相は近隣諸国に配慮し、供え物の「真榊」を奉納しただけで参拝は見送りました。

ガイドライン改定で日米首脳合意
 首相は29日の米議会両院合同会議で約30分演説、先の大戦を戦った日米両国が同盟を結び、自由で民主的な国として世界の平和と発展に貢献してきた経緯、日米ガイドラインの改定や日本の安保法制整備で同盟関係を深化させている現状を説明、「積極的平和主義」路線を強調しました。日米両政府は4月27日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)をニューヨークで開き、日米ガイドラインの改定で合意、翌28日にワシントンで開かれた日米首脳会談で合意を正式に確認。会談では環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を年内に決着させる方針でも一致しました。アジアでの「リバランス政策」を掲げるオバマ大統領は安倍首相を国賓待遇で大歓迎、会談でともに日米同盟の深化を謳い上げました。ガイドラインは日米安保条約に基づき、日米間防衛協力の枠組みや方向性を示した文書。東西冷戦が激化した1978年11月に旧ソ連の脅威を想定して設定、97年9月には北朝鮮の核疑惑や弾道ミサイルの開発を受け、朝鮮半島の有事など日本の「周辺事態」が起きた時に、後方地域で米軍に補給や輸送・警戒監視などの支援・協力ができるように改定しました。

TPP交渉はコメ、自動車で平行線
 さらに、近年の中国の海洋進出や米国の軍事費削減など国際情勢の変化で再び改定の必要性が出てきたと判断、2013年10月の2プラス2で再改定に合意。今回は集団的自衛権の行使容認や平時の協力拡大など14年7月の閣議決定を踏まえ、18年ぶりに改定しました。新ガイドラインは「切れ目ない防衛協力」と日米同盟の「グローバルな性質」を盛り込み、日米の協力分野を3分野から5分野に拡大。ミサイル防衛などの米艦船への給油といった支援を平時から可能とし、尖閣諸島を念頭に「離島防衛」を明記し武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」での協力やサイバー攻撃対処も新設しています。一方、TPP交渉を巡る日米の閣僚会談は19,20両日、東京で甘利明TPP担当相とフロマン米通商代表部(USTR)代表の間でコメ、自動車を中心に夜を徹して断続的に開いたものの、物別れに終わり、23〜26日はワシントンに舞台を移し、実務者協議を続けましたが結論は出ませんでした。日本は関税維持を国会決議した「聖域」の農産物5品目のうち、コメについては関税ゼロか、低い税率で米国産米を輸入する「優遇枠」を設けることで一致していますが、優遇枠を年約5万トンに留めたい日本に対し、米国は約20万トンに増やすよう主張。日本が10万トンまで譲歩する案を示しても拒否
して隔たりは埋まらず、平行線をたどりました。

5月末合意はTPA法案の成否次第
 自動車分野では日本は米国が輸入する数百種類の自動車部品の関税(2・5%)を即時撤廃するよう要求。米国は一部の部品は受け入れつつ、主要部品は20〜30年間かけた段階的な撤廃を主張して譲らず、これまた平行線。ただし米議会が16日、オバマ大統領に通商一括交渉権(TPA)を付与する法案を提出、上下両院の委員会で審議中のことや、牛・豚肉の関税を大幅に引き下げる代わりに、輸入が急増した場合に関税を戻す「セーフガード」を設ける枠組みで双方が合意するなど着地点が見えてきています。日米はTPA法案の5月中成立に期待をかけ、5月下旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合で大筋合意したいと考えてきました。しかし、米議会は民主、共和の与野党双方に反対派を抱えていて、TPA法案の成立見通しは立っていません。安倍首相は訪米前に民放テレビで、「9合目まで来たが、最後がなかなかきつい」と控えめな説明。首脳会談ではやむを得ず、「年内に新しい自由貿易圏を作る」との前向きなメッセージを発信することが精一杯のようでした。

各国首脳に被爆地訪問誘う岸田外相
体調不良を理由に町村信孝衆院議長が4月20日、わずか4か月の在任期間で辞任。後任には大島理森衆院予算委員長が就任し、町村派の会長は山東昭子元参院副議長が引き継ぎました。わが派の宏池会(岸田文雄会長)は13日に東京・芝の東京プリンスホテルで「宏池会と語る会」を開きます。岸田外相は27日、2プラス2と同じニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説し、冒頭、70年前に広島、長崎に原爆が投下されたことに触れ、「被爆地(広島)出身の外相として、被爆地の思いを胸に、核兵器のない世界に向けた取り組みを進めたい」と訴えました。そのうえで@核兵器保有国(米露英仏中5か国)が、核弾頭の数や種類、配備状況などを定期報告するA核兵器削減交渉の「多国間化」も提唱し、すべての核兵器保有国が協議して削減の加速を図る――よう求めました。日本の取り組みとしては、核兵器の非人道性を国際社会に訴えるため、広島と長崎の惨禍を各国に伝えていく決意を改めて表明。各国の首脳や閣僚、国際機関のトップらに被爆地訪問を働きかけました。また、北朝鮮の核・ミサイル開発については、「国際社会全体の平和と安定に対する脅威だ」と指摘し、開発停止を求める強いメッセージを会議の合意文書に盛り込むよう主張しました。NPT再検討会議は5月22日まで開かれ、核軍縮の促進や核不拡散の強化に向けた合意文書の採択を目指します。安保法制の与党協議と法案審議の見通しは別項「北村の政治活動」の「切れ目ない安保法制シリーズ」で取り上げます。