第345回(4月1日)統一地方選勝利に全力 首相は連休訪米
 春爛漫、桜前線が日本列島を縦断中です。 政府・自民党は11日に2015年度予算が自然成立するのを念頭に、 11日間の暫定予算(約5・8兆円)を3月末日に成立させ、 地方の創生などを看板に12、26日の統一地方選を勝利し長期政権の礎を固める方針です。 首相の思惑通り春闘は円安効果で好況の自動車、 電機など大手輸出製造業が高額のベースアップを回答しました。ただし中央と地方、正規と非正規社員間の格差は増大しており、 農協法、 労働者派遣法の改正など岩盤規制の改革や、 アベノミスク第3の矢「成長戦略」政策を早急に実現し、景気好循環の道筋をつけなければなりません。 自公両党は3月20日、 予定通り統一選前に、 安全保障法制の基本方針で合意しました。 政府はこの方針に沿って安保関連法案を作成、 5月中旬をメドに国会へ提出します。首相は連休中に訪米し4月28日に日米首脳会談を開催、 29日の米上下両院合同会議で演説します。 首脳会談では安保法制を説明、 新しい「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)改定や日米同盟の深化などで意見を交換。 両院会議では「戦後70年の平和国家としての日本の歩み」を語ります。 後半国会では安保法制を巡り激しい論戦が展開されそうです。 ご支援、 ご鞭撻をお願い申し上げます。

自動車・電機大手が過去最高ベア
  「賃金上昇は過去15年で最高となった昨年を上回る勢い。 この流れが広がることを期待したい」――首相は3月18日の参院予算委でこう胸を張りました。春闘は集中回答日の同日、「日産自動車」 が5000円、「トヨタ」 が4000円、「日立・パナソニック・東芝」 が各3000円など自動車や電機の大手が過去最高のベアを回答。 人手不足とあって、「すかいらーく」 も4300円のベア。 外食や建設、運輸など非製造業にも大幅賃上げが広がりました。 昨年の春闘は定昇分を含む平均賃上げ率が2%強と高水準でしたが、 首相は昨年末の総選挙で 「アベノミクスは賃金を増やす政策」 と公約で訴え、 先の政労使会議で 「デフレからの脱却」 として2年続きの賃上げを要請しました。 マスコミから 「官製春闘」 と呼ばれるゆえんです。 円安で製造業中心に好業績が続き経営側には政府に逆らいにくい空気があった上、 不況に戻って消費が落ち込み人件費が高止まりすれば、 ベアがコスト増の重荷になり、 国際競争力を失う懸念があることから、 経団連の榊原定征会長は 「慎重に対応してきたベアに2年続けて応じたのは相当思い切った対応だ」 と、 苦渋の選択であったことを打ち明けました。

正規社員の足を引っ張る“死錘”
 連合の古賀伸明会長は 「経済の好循環に向けて全てを満たすものではないが、 一定の道筋をつけた」 と一定の評価。 しかし、雇用の7割を占める下請けや内需型中小企業は円安で輸入原材料費が高騰し、 賃上げどころではないのが現状。 さらに、 中央と地方、 正規と非正規社員の格差は増大する一方です。 中小企業が中心の日本商工会議所の三村明夫会頭は 「大企業がこれだけ上げたら、その影響が全くないということはない」 と述べ、 4月に本番を迎える中小企業の春闘に備えています。 かつて旧社会党系中央労組の総評 (太田薫議長) は非正規の臨時職員を、 「正規社員の足を引っ張る“死錘”」 と呼んで救援を重視しました。 当時は高度成長期の 「1億総中流社会」 と呼ばれた時代で貧富の差は目立ちませんでした。 ところが、 現在は非正規労働者が4割 (約2千万人) に迫る格差社会。 中央と地方企業の賃金格差も2倍近くに拡大。 人口減の市町村や過疎地ではシャッター通りが多く、 連合も中小企業や非正規社員の処遇改善など格差社会の解消に積極的に取り組んでいます。

民主は代表のお膝元で擁立断念
 来夏の参院選に向け、 与野党が地方での選挙基盤を固める地方統一選は、 知事選が3月26日に告示され、 激戦を展開中です。 前半戦は4月12日投開票の10道県知事選と5政令市長選、41道県議選、 17政令市議選。 後半戦は同26日投開票の約900件の市区町村長・議員の選挙です。 前半戦で自民と民主両党が対決するのは北海道、 大分の2知事選と、 新人同士がぶつかる札幌市長選に留まり、 与野党が現職に相乗りするケースが多くなりました。 民主党は女性候補に 「特別支援金」 50万円を追加給付する方針ですが、 岡田克也代表のお膝元の三重県知事選で候補擁立を断念するなど、 「統一選を反転攻勢のきっかけにしたい」との意気込みは看板倒れの様相です。 逆に安倍首相と山口那津男公明党代表は3月10日の党首会談で、 「地方創生を進めるために互いが協力して統一選を勝利する」との連携で一致。 安保法制の与党協議でも自民党は公明党が主張する 「自衛隊派遣の3原則」を基本方針に取り入れるなど配慮を示しました。「平和の党」を標榜する公明党は所属する地方議員の3割が支持母体 ・ 創価学会婦人部推薦の女性議員で 「地方創生の起爆剤」 との位置づけです。 議員全体の約半数が改選期を向かえており、 自衛隊の活動拡大を目指す政府自民党に対し、 厳しい歯止め措置を要求してきました。

地方創生、原発、安保法制が争点
 統一選は、地方創生、 原発再稼動、 安保法制を3大争点に戦われています。 自民党は3月 8日の結党60年党大会で統一地方選勝利や景気回復などを柱とする15年の運動方針 (公約) を確認しました。 運動方針は 「憲法改正を党是として出発した保守政党の矜持」 を謳っていますが、 首相は 「雇用も賃金も間違いなく良くなっている。 戦後以来の大改革に挑む。 農政の大改革は待ったなし。 日本の夜明けを確かなものにして地方を創生して行こう」 とゲキを飛ばしました。 2060年には少子高齢化で逆ピラミッド型の人口減社会が到来すると見られていますが、政府・与党は地域活性化のために 「まち・ひと・しごと創生本部」 (本部長=安倍首相) を設置、 一極集中を是正するため、 秋田県仙北市、 宮城県仙台市、 愛知県を 「地方創生特区」 に指定、 地域包括システムの構築や疲弊している地域の仕事支援、 医療・介護・子育てなど福祉の充実、 地方移転大学生の奨学金返還免除など手厚い施策を講じようとしています。 政府は3月24日、 地方創生の実現に向け景気の下支えを目指した 「地方消費喚起・生活支援型」 と地域取り組み支援の 「地方創生先行型」 の新たな交付金 (総額4200億円) の配分を発表しました。 野党は 「大手企業が大幅賃上げしても物価上昇に追いつかず実質賃金は10ヶ月マイナスだ」 、 「大企業や富裕層の富が下請け企業や地方に滴り落ちる “トリクルダウン” と言っても、 トヨタの下請け企業だけで約3万社もあって、 賃上げの波及は難しい」 と批判、 企業の地方移転への優遇税制などを唱えています。

他国軍への後方支援拡大も合意
 統一選では安保法制整備も国民の重大関心事です。 自公両党は3月20日、 自衛隊や国連平和維持活動 (PKO) に関わる新安保法制の基本方針について合意しました。 安倍内閣が昨年7月、憲法解釈を変更して集団的自衛権を限定容認するとともに、 他国軍への後方支援を拡大することを閣議決定したのに基づくもの。 憲法9条の下で自衛隊が武力行使できるのは日本が直接攻撃を受けた場合のみで、 海外での活動は朝鮮半島など日本周辺の有事の際、周辺事態法に基づき、補給や人員輸送など米軍への後方支援やPKOに限られています。 しかもPKOには 「参加5原則」があり武器使用は自己防衛のためだけに認められ、 それ以外の国際貢献活動では、 その都度、時限的な特別措置法を作ってきました。 新たな法制では、 他国への攻撃でも、 日本の存立が脅かされ、 国民の生命、 自由、 幸福追求の権利が根底から覆される 「明白な危険」 の3要件があると政権が判断すれば、 集団的自衛権による武力行使ができるようにしています。周辺事態を「重要影響事態」 と呼び換えて周辺事態法を改正、 日本周辺に限らずホルムズ海峡の機雷掃海など遠く離れた場所へも自衛隊派遣を可能にし、 PKO協力法の改正では、米国中心の有志連合など、国連が主導しない人道復興支援や治安維持活動にも参加を可能にします。 また、 自衛隊が戦争中の他国軍に何時でも後方支援できるように恒久法を制定、 物資補給や人員輸送、 弾薬の供給も可能にします。

2プラス2でガイドラインも改定
  政府は法案要綱や条文を作成、 4月中旬以降に与党協議を再開して最終案を決定、 5月中旬に関連法案を国会に提出します。 新安保法制は中国の軍事増強や海上進出、 北朝鮮の核装備など日本の安全保障環境の急激な変化に対応し、 警戒態勢の 「平時」 から尖閣諸島周辺などの「グレーゾーン事態」、 武力行使の 「有事」 まで、“切れ目ない安全保障体制” を構築するもので、国民の生命、 財産、 領土・領海・領空 を守る抑止力を強化するため、 自衛隊の海外での活動を拡大するものです。 これに対し、 公明党は “歯止めない自衛隊の海外派遣”を警戒、 ブレーキとして @国際法上の正当性 A国会の関与など民主的統制の確保 B自衛隊員の安全確保―― の「3原則」 を提示、 自民党はこれを受け入れました。 政府は与党が合意した基本方針を反映させて、 米国とガイドラインの改定作業を進め、 日米首脳会談直前の27日、 日米外務・防衛担当閣僚会合 (2プラス2) で改定に合意する見通しです。

日中韓外相会議で歴史問題牽制
  日中韓3カ国は3月21日、3年ぶりにソウルで外相会議を開き、 3カ国首脳会談を 「最も早期で都合の良い時期に開催すべく努力していく」 との共同声明を発表しました。 だが、 中国の王毅外相は会談冒頭から歴史問題を取り上げ、 記者会見でも発表文に 「歴史を直視」 との表現が盛り込まれたことを 「最も重要な成果」 と強調。 安倍首相が戦後70年に当たって発表する 「安倍談話」や安保法制の整備を念頭に、 日本を強く牽制しました。 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行 (AIIB) には日米両国だけが慎重姿勢を示す中で、先進国、新興国約40カ国が 「創始国メンバー」 入りを目指し、 3月末締め切りを前にドミノ倒しのように参加を表明。 米国優位の国際金融秩序を揺るがしています。 首相は同29日、 親交の厚かったシンガポールのリー ・ クアンユー元首相の国葬に出席、 朴槿恵・韓国大統領とも挨拶を交わし、 日中韓外相会議が成功裏に終わったことを相互確認したということです。 多忙な国会日程を割いて、 現地に約6時間滞在という“とんぼ返り”の強行軍でした。

党首脳も日中関係修復に努める
  高村正彦自民党副総裁は首相訪米に先立ち同26日に訪米、 カーター国務長官に安保法制を説明、 日米ガイドライン改定を話し合いました。 谷垣禎一自民、 井上義久公明の両幹事長は同23日から3日間訪中、 王家瑞 ・ 共産党対外連絡部長との会談で、 6年ぶりに日中与党交流協議会を北京で開くことで合意。 福田康夫元首相と中国に太いパイプを持つ二階俊博自民党総務会長も同26日から3日間訪中、 海南島で開かれた ボアオ ・ アジア ・ フォーラム会議で習近平国家主席と会うなど、 党首脳もこぞって日中関係の修復に努めました。 野党は 「安保法制の整備は改憲に匹敵する」 と反発しており、 後半国会は激しい論議が予想され、 8月10日までの大幅な会期延長が検討されています。 与党協議の詳細は次号の 「北村の政治活動」 で取り上げたいと思います。