第343回(3月1日)15年ぶりに株価回復 成長戦略は成功
 通常国会は2月19日から衆院予算委で本格論戦に入りました。首相が「改革断行国会」と位置づけたように、12日の施政方針演説で首相は「戦後以来の大改革」を36回も連呼。成長戦略の柱である農協改革など岩盤規制改革を推進していく姿勢を強調しました。 これに対し野党は16日から3日間、衆参両院の代表質問で「アベノミクスが格差社会を増大した」 「集団的自衛権行使の限定容認は立憲主義に反する」 などと攻め立てましたが迫力はなく、 予算委審議も淡々と進んでいます。内閣府が発表した2014年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報は3期ぶりにプラスで、年率換算の実質成長率は2・2%増となりました。円安の影響を受け、自動車、電機など大企業の業績が伸び、東証上場企業の純利益は前年比約3・5%増の26・5兆円前後になる見通しです。これを反映しトヨタ、日立、東芝など大手企業が6000円のベアを要求、経団連が前向きに対応するなど春闘は真っ盛り。 冬季ながら原油安で物価も安定しており、日経平均株価はITバブル以来約15年ぶりに1万8千円台を回復。内閣支持率も軒並み50%台に載り、安倍政権は安泰です。 だが今夏に法制化を図る安保法制を巡る自公の与党協議は難航中で、衆院安保委員長を務める私は、よくよく勉強して臨まねば――と覚悟しています。更なるご支援、ご教唆をお願い申し上げます。


「戦後以来の大改革」達成に意欲
 政府・自民党は過去最大規模、96・3兆円の2015年度当初予算を3月末の年度内に成立させようと懸命。 衆院予算委審議を月末まで続けましたが、総選挙の影響で予算案提出が遅れたため、自然成立には3月2日までに衆院を通過させなければならず、 日程的には極めて窮屈です。首相は施政方針演説で農協改革推進のほか、@基準に適合する原発の再稼動 A正規雇用を望む派遣労働者の機会拡大 B安全保障法制の整備C戦後70年目の節目に発信する首相談話D憲法改正に向けた国民的議論の深化 E地方創生F女性が輝く社会の構築――など諸改革に取り組む意欲を表明しました。 代表質問で野党第一党の岡田克也民主党代表は「経済政策には成果の果実を分配する視点が欠落、正規雇用が減り、非正規雇用が増加したことが格差拡大の要因」とアベノミクスの弊害を指摘、昨年7月の閣議決定にも「一内閣の判断で憲法の重要な解釈を変えたのは立憲主義に反する」と追及しました。

ピケティ講師に格差社会質す民主
 民主党は「格差」を国会論戦の最大テーマに据え、「不平等が拡大」と警鐘を鳴らし130万部の世界的なベストセラーになった「21世紀の資本」の著者で、消費増税にも反対するトマ・ピケティ・パリ経済学校教授を1月末に招き幹部が勉強会を開催しました。これをもとに岡田代表や長妻昭代表代行らが首相と格差論争を展開しました。 だが、首相は「ピケティは経済成長を否定していない」と反論しつつも「しっかり成長して果実がどのように分配されるかが大切」と巧みに岡田質問を肯定的に取り込んで答弁、 論争は噛み合いませんでした。共産党の志位和夫委員長も「首相の経済政策がもたらしたのは格差拡大だけだった」と岡田氏に同調しました。 しかし、江田憲司維新の党代表は「アベノミクスの方向性には賛成」とまず評価した後、 「だが、(アベノミクスの)金融政策はカンフル剤でしかない。(JA全中の)組織いじりが農政の大改革なのか」と手順を追及しました。このように維新の党は基本的には首相の成長戦略に賛同しており、野党の足並みは乱れています。

大詰めのTPP交渉前に農相辞任
  安倍内閣の懸念材料は、 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉や農協改革の主役である西川公也農水相の政治資金問題でした。 西川氏は自らが代表の「自民党栃木県第2選挙区支部」が2012年9月、 国の補助金交付が決まった県内の木材加工会社から300万円の寄付を受け、 同社の顧問も務めていたことが発覚。 さらに、党のTPP対策委員長としてTPP交渉に参加する直前の13年7月、 砂糖の業界団体「製糖工業会」の関連企業から100万円の寄付を受けたことも判明。 砂糖、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品の農産5品目がTPP交渉の焦点であるだけに、 衆院予算委では民主党の玉木雄一郎議員らから「ダミー会社を迂回させた脱法献金だ」と追及を受けました。 西川氏は当初、 「違法性はないが農水大臣の職責に鑑み、いささかも疑問を持たれないよう返金した」と答弁しましたが、 2月23日夕、 「自らの問題で、農政改革をやる時に国会や内閣に大変迷惑をかけているので辞任したい」と安倍首相に辞表を提出。 首相は直ちに辞任を受理し、後任に林芳正前農水相を充てました。 ところが、首相は玉木氏の質問中、「日教組どうするの、日教組はやっているよ」と閣僚席からヤジを飛ばし、 大島理森予算委員長から注意を受ける一幕がありました。ヤジの背景には、 同様に国から補助金を貰っている日教組から民主党議員が(政治献金などの)支援を受けている、 との思いが首相の念頭にあったようです。 ヤジは予算委で波紋を描き、首相は一両日、 「不快の念を持たれたとしたら申し訳ない」とヤジの釈明と陳謝に追われましたが、 野党は首相の任命責任を追及、24日の国会は空転しました。

安保・改憲に軽いタッチで安全運転
 「戦後以来の大改革」をぶち上げた首相は、 国会運営にことのほか神経を使っています。 繰り返し述べてきた「戦後レジューム(体制)からの脱却」は影を潜めていますが、 これは首相が戦後70年の今年、植民地支配と侵略を認めてお詫びした「村山談話」に代わる「首相談話」を出す考えであり、 首相の歴史認識に米中韓3国が懸念を表明していることから、国会では安保・改憲には軽いタッチで、極力安全運転を目指したのでしょう。 しかし、 首相は戦後70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」を設置、座長に西室泰三・日本郵政社長,座長代理に首相の政策ブレーンの北岡伸一・国際大学長を起用するなど16委員を選出。 首相は4月下旬にインドネシアで開催のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)と5月の日米首脳会談で、 同懇談会がまとめる基礎的考えを表明する意向です。 党是の憲法改正についても過激組織ISILの人質事件を重視し、 来夏の参院選後に衆参両院で3分の2以上の賛成を得て改正案を発議、国民投票にかける日程を描くなど本腰を入れています。

安保政策「3本の矢」に首相ご執心
 首相は2月4日、船田元自民党憲法改正推進本部長と会談し、 いきなり憲法9条の改正でなく「『環境権』『緊急事態条項』『財政規律条項』など多くの政党が合意できる項目から取り上げていくのが適切だ」と指示しました。 特に首相は「積極的平和主義」の理念のもと、集団的自衛権の行使容認、 他国軍を支援する開発協力、武器輸出3原則の緩和を安全保障政策の「3本の矢」とし、 安保関連法制の取りまとめに全力投球中。 このように首相は施政方針では軽く触れた安保、 改憲、70年首相談話ですが、 着々と実現の布石を打っています。安保法制の整備法案は4月の統一地方戦後の後半国会に一括上程され、 5月連休に訪米する首相とオバマ米大統領との日米首脳会談のメーンテーマになります。だが、 「平和の党」公明党との与党協議は難航しています。 自公両党の「与党税制協議会」は、 1年半先送りした消費税を10%にアップする際に生活必需品などにかかる消費税率を低く抑える軽減税率の検討を始めました。 しかし統一地方選を控えて軽減税率に積極的な公明と、 税収が減ることを懸念する自民には温度差があり、 これも合意に達するのは容易でなさそうです。

選挙権「18歳以上」に引き下げへ
 このほか国会には自民、民主など与野党9党・会派が選挙権年齢の「18歳以上」へ引き下げる公職選挙法改正案を共同で再提出。 成立すれば終戦以来70年ぶりの引き下げとなり、公布して1年後に適用されるため、 早ければ来年夏の参院選から実施されるようになります。 年齢引き下げでは、 22日の沖縄県与那国町で行われた住民投票で、 中学生以上の未成年者や永住外国人も有権者となり、 注目されました。 投票は陸上自衛隊「沿岸監視部隊」の配備受け入れの是非を問うもので「賛成」が過半数を占めました。 反対派は監視レーダーの電磁波による健康への懸念などを訴えましたが、 同町は過疎化が進み、 人口は昨年末現在約1500人。 推進派は自衛官約150人やその家族の移住による税収増などの誘致効果を見込み、 外間守吉町長は「防衛省を含めて行政運営がスムーズに進む」と安堵しています。 与党協議は別稿「北村の政治活動」切れ目ない安保法制Iに詳報しました。 ご一読下さい。