第342回(2月17日)成長戦略とテロ対策 与野党論戦白熱化
 「イスラム国」による2邦人拘束・殺害事件が全世界に衝撃を与えている最中、2014年度補正予算が3日に成立。国会論戦は15年度本予算の柱である成長戦略とテロ対策を含む安全保障法制の整備に焦点が移りました。 首相は12日の施政方針演説で、アベノミクス第3の矢の地方創生・女性の活躍推進・農業など岩盤規制改革やテロ対策など安全保障法制に全力を挙げると強調しました。 先の政労使会議で安倍政権が2年連続の賃上げを要請したのを受け、連合は「ベア2%以上」の統一要求を掲げ春闘はたけなわです。国会では春闘に絡む「残業代ゼロ」の労働基準法改正、非正規社員の削減など労政論議も活発化。 4月の統一地方戦後はいよいよ安全保障法制整備の論戦が本格化します。 だがイスラム国が日本をテロの標的に指定したことから国民の生命・財産を守る政権の使命はさらに重く、在外邦人の保護・救出を含む安保法制は完璧な内容が望まれます。 3万6千人が参加する22日の東京マラソン大会や5年後の東京五輪でのテロ対策は万全か。私は衆院安全保障委員長として安保法制整備と日夜取り組んでいます。 更なるご支援、ご教唆をお願い申し上げます。

暴挙許さず人道支援さらに拡充
 「誠に無念、痛恨の極み。非道・卑劣極まりないテロ行為に強い憤りを覚える。 暴挙のテロリストたちを絶対に許さない。 その罪を償わせるために、国際社会と連携してまいる」――首相は過激組織「イスラム国」(ISIL)が1日早朝、フリージャーナリスト後藤健二さんを殺害したとの映像をインターネット上に公開した直後、記者団にこう語り、テロに屈することなく中東への食料、医療などの人道支援をさらに拡充していく決意を表明しました。 公開映像では左手にナイフを持った黒ずくめの男が英語で「安倍よ、勝ち目のない戦争に参加する無謀な決断によって、このナイフは健二だけの殺害ではなく、お前の国民は何処に居たとしても、殺されることになる。 日本にとっての悪夢を始めよう」と宣告し殺害映像を公開、日本がイスラム国殲滅の「有志連合」同盟国としてテロの標的に位置づけました。 政府は同日朝、関係閣僚会議と国家安全保障会議(NSC)を開き、在外邦人の保護・救出、厳格な税関審査など水際作戦強化を協議。3日の「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」(本部長・菅義偉官房長官)会合では@外国の関係機関と連携して情報収集・分析を強化Aテロリストの入国阻止に厳格な入国審査を徹底B空港や公共施設など重要施設の警戒強化――など水際対策を確認しました。 首相は同日の参院予算委で、大使館など在外公館に駐在して軍事関連情報を集める「防衛駐在官」を増強する考えを示しました。

首相がISIL刺激したと野党追及
 野党は国会で一斉に政府の人質事件の対応について検証を求めました。 追及した検証点は、殺害された2人が行方不明になったことを政府が昨夏以降に相次いで把握しながらどんな策を打ってきたか。 イスラム国と敵対するヨルダンに対策本部を置くよりトルコに設置すべきではなかったか。 首相が中東演説で「“ISILと戦う”周辺諸国を支援する」と訴え、難民支援などに2億ドルの人道支援を約束したことや、「その罪を“償わせる”」との首相発言がイスラム国を刺激し、(殺害予告などの)トリガー(引き金)になり、敵国の標的にされたのではないか。 アラブ諸国と対立するイスラエルとパレスチナを同時訪問したのはなぜか――などです。 これに対し政府は@卑劣極まりないテロ行為が国際的な法の裁きを受けるのは当然AISILを恐れるあまり中東への外交、人道支援をやめればテロリストの思う壺になるので難民支援はさらに拡大B日本は「有志連合」には入らず、資金・人的に協力する可能性は全くないC首相の中東訪問は戦後70年の節目に戦後日本が平和国家として歩んできたことを世界に積極的に広めていくため、テロや暴力の最前線に置かれる穏健な中東諸国に食糧・医療など人道支援を約束してきた――など「積極的平和主義」の理念を訴え、今後は有識者の意見を聴取して政府の対応を検証し、公表する考えを示しました。

中尉焼殺の残虐非道な映像公開
 ところが、ISILは4日、ヨルダン国王が訪米し、オバマ米大統領との会談中を狙って、拘束中のヨルダン軍パイロットの中尉を殺害した約9分間の映像をインターネットに公開、高度な「メディア戦略」を駆使して米主導の「ISIL壊滅有志連合」を分断しようと企みました。 しかも、パイロットは、05年にヨルダンのアンマンで起きたテロの実行犯である女死刑囚との交換を強く求めていたISILの捕虜です。 狡猾・卑劣にも中尉の生存を装いながら、実は1ヶ月前の1月3日に檻の中で火をつけて焼き殺すという残虐・非道な映像でした。 イスラム教義の中でも火あぶりの刑はアラーの神だけに許された極刑とされ、全世界のイスラム教徒が狂気・凶暴なISILへ対する批判を高めています。 ヨルダンは直ちに報復の空爆を開始。 オバマ大統領は「組織の凶暴さと野蛮さを改めて示した」と語り、国防予算の「イスラム国」掃討に前年度より2億ドル増額し53億ドルを計上。 各国首脳も一斉にISILを非難。 日本の与野党は5、6日、衆参両院でISIL非難の国会決議を採択しました。

懸念される東京マラソンでのテロ
 心配されるのは「ホーム・グロウン・テロ」と呼ばれるように、貧困層が格差社会に生きる疎外感から、過激組織「イスラム国」に共鳴し、無差別テロに参加することです。 22日の東京マラソンもボストンマラソンで起きたようなテロが発生する危険性があり、要警戒です。 政府は安全保障法制の整備に人質事件対策を取り込む方針で与党協議を続行中です。 昨年7月の閣議決定で自衛隊による邦人救出は「領域国の同意」に基づく邦人救出などの警察的な活動が出来るように法整備を進めるとしました。 しかし、ISILはイラク、シリアの領域を制圧、勝手に「イスラム国」の樹立を宣言し行政機関を設置しており、自衛隊が邦人救出に着手しようとしてもシリアなどの「領域国の同意」は得られそうもなく、邦人救済・保護の自衛隊の派遣は容易ではありません。 私は昨年9月、安倍改造内閣の船出と同時に衆院安全保障委の委員長を拝命。 その後、別項のHP「北村の政治活動」に「切れ目ない安保シリーズH」(10回完)を連載中です。 是非ご一読下さい。

監査権を廃止し一般社団法人へ
 政府は12日に15年度本予算案を国会に提出、 首相の施政方針演説など政府4演説を同日に行いました。 16日から3日間衆参両院で各党の代表質問、 19日から衆院予算委で基本的質疑に入り、4月の統一地方選に影響しないよう暫定予算の編成は極力避けて、3月末の年度内に予算成立を図る方針を堅持しています。 岩盤規制改革の焦点である農協改革は、 自民党農水関係議員と農水省幹部が8日夜、 農協グループの司令塔である全国農協組中央会(JA全中)の万歳章会長と非公式に会談した結果、 地域農協への監査権を廃止して公認会計士の監査に切り替えることで大筋合意しました。 これでJA全中は農協法上の組織から、2019年3月までに一般社団法人に転換されます。 さらに、正会員数を上回る農家以外の準組合員については、地域農協が運営するスーパーなどの事業への利用を制限することが政府与党内で検討されてきましたが、農協側の反対が強いため、5年間調査することとし見送られました。 農協(JA)が自民党の最大支持団体であるため、党内では4月の統一地方選、来年の参院選への影響を懸念する声が多く、政府は今国会に農地法改正案を提出する際、全中が一般社団法人に転換されても、農協の代表・調査機能を持つことを附則に盛り込むことで一定の配慮を示す考えです。 農業に絡む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は3月中に12カ国が閣僚会合を開いて大筋合意する段取りです。 日米協議では、コメ、麦、砂糖、牛・豚肉、乳製品など重要5品目の関税維持を聖域とする日本の国会決議がある中で、米側は自動車関税撤廃との交換条件に主食用コメの輸入拡大を要求するなど、困難な大詰め交渉が続いています。