第341回(2月1日)言語道断許せぬ暴挙 安保法整備に影響
 通常国会は1月26日に召集。6月24日まで150日間の長丁場ですが、4月の統一地方選が入るため、与野党の論戦は一段と激しくなっています。「改革断行国会」と名づけた首相は、地方創生を含む成長戦略、農業・医療など岩盤規制改革を断行して統一地方選を勝利し、後半国会では平時・有事の切れ目ない安全保障法制を整備し、長期政権の礎を固めようとしています。野党第1党の民主党は1月18日の党首選で自主再編派の岡田克也元副総理を新代表に選出し、保守リベラルの中道路線で再出発しました。これで維新の党との野党再編は遠のき、政権与党の国会運営はやや楽になると見られました。ところが首相の中東訪問を狙ってイスラム国が2邦人を抑留、2億ドルの身代金を72時間内に払えと要求、1人を殺害するなど極悪非道な蛮行に出、安倍政権を揺さぶりました。農協改革も11日の佐賀県知事選で農協推薦候補が勝利したのを契機に農協側が勢いづき地方選に向けて自民党内で慎重論が相次いでいます。来年は東京で先進国首脳会議、5年後には東京五輪が開催され、テロ対策には万全の備えが必要。私は衆院の安全保障委員長を継続しておりテロ対策、安全保障法制の整備は今国会の最大課題です。よろしくご支援をお願い申し上げます。

首相名指しで身代金2億ドル要求
 「言語道断、許しがたい暴挙だ。ただちに解放を求める」――首相は1月25日未明、「イスラム国」(ISIL)と称する過激派組織に拘束された後藤健二さんの画像がインターネット上に公開され、その画面にもう1人の抑留者・湯川遥菜さんが殺害されたと見られる場面が写っていたのを見た直後にこう語り、テロに屈しない姿勢を強調しました。イスラム過激派組織は首相が中東訪問中の20日午後3時前にインターネットのYouTubeに2邦人拘束の脅迫映像を公開。首相が17日、エジプト訪問中に中東全体で新たに25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明、内2億ドルを難民・避難民1千万人の人道支援に充てると確約したのに対し、「安倍首相は自ら進んで(異教徒の)十字軍への参加を志願し、イスラム国と戦うために2億ドルを支払うという馬鹿げた決定をした」と非難、拘束2邦人に同額2億ドルの身代金を求めました。これに首相は「人命を盾にとって脅迫することは許しがたいテロ行為で強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と現地の記者会見で厳しく応酬。その後の水面下交渉が進展しないまま身代金支払い期限の3日間が過ぎ、湯川氏の殺害映像が公開され、ヨルダンの女性死刑囚の釈放などに要求が拡大されました。

原油価格下落と米空爆で資金枯渇
 イスラム国はイラクのモスル、シリアのラッカを制圧、モスルの石油精製所から産出する石油を密売し、資金源に充てていましたが、原油価格の下落と、米国の2千回近くに及ぶ空爆で約200箇所の石油関連施設が破壊されて資金が枯渇、個人企業に対する人頭税や誘拐者の身代金などで数十億ドルを集め、世界から参集する義勇兵など数万戦闘員の月給などに充ててきました。しかし、日本政府は福田赳夫首相当時の1977年、日本赤軍が日航機をハイジャックしたダッカ事件で「人命は地球よりも重い」として身代金を支払い、服役中の赤軍メンバー6人を超法規的措置で釈放。国際社会から「テロリストを輸出するのか」と批判されたこともあり、安倍政権は身代金要求を飲めば邦人を狙うテロ・人質事件を誘発すると見て、断固拒否しました。そこでイスラム国は日本が身代金支払いに難色を示すと見るや、今度は2005年にヨルダンの首都アンマンの爆破事件に関与し、ヨルダンに収監されている女性死刑囚などの釈放要求に切り替えてきました。イスラム国は残虐行為とネットを使ってハリウッド映画もどきのプロパガンダを展開するメディア広報戦略に長けたプロ集団。オバマ米大統領は世界包囲網の「イスラム国殲滅の有志連合」を構築しました。

地方創生・社会保障・震災復興
 政府は2015年度予算案が年越し編成となったため国会提出が遅れ、施政方針演説は予算案提出後の2月半ばに先送りし、冒頭の首相所信表明演説も民主党が特に求めなかったため取りやめ、麻生太郎財務相(副総理)が14年度補正予算案に関する財政演説だけを行い、27、28両日に衆参両院で代表質問を受けました。補正予算は29,30両日の衆院予算委で審議のうえ衆院を通過。政府与党は本格的論戦が2月中旬以降に延びたことから、2月中旬の補正予算成立、3月末の年度内に本予算成立に期待をかけています。首相は1月25日のNHK党首討論を所信表明に代わるものと受け止め、安倍政権の重点政策を説明、@地方創生A子育てなど社会保障の充実B震災復興C安全保障面で危機管理徹底――を掲げました。衆院予算委ではアベノミクスの成長戦略、所得格差、福祉などを巡って活発な論議が展開されましたが、イスラム国のテロには共産党が国会で「残虐非道」と非難するなど野党も政府のテロ対策を支持しました。各党が4月12,26日の統一地方選に向けて既に走り出しているため、審議が若干遅れても10日間程度の暫定予算編成で乗り切れると予想されます。

懸念は農協改革、党内に慎重意見
 何より懸念されるのは首相が岩盤規制改革の目玉に掲げる農協改革の行方。自民党が1月20日から約10日間開いた農協改革等法案検討プロジェクトチーム(PT )会合には約140議員が参加、全国農協組合中央会(JA 全中)が全国農協に対して持つ「指導・監査権」廃止の是非で紛糾しました。現行農協法では全中に指導・監査権があります。銀行などの金融機関は公認会計士の監査を受けるのに、同じ金融機能を持つ約700農協(JA)に対しては全中が試験を主宰する国家資格の「農協監査士」が担います。会計監査に加え、経営の指導を含む「業務監査」も一体で行います。首相はこうした全中の指導・監査権が外部の目にさらされにくく、画一的な経営指導などで各農協の創意工夫も奪っていると見て「全中は脇役に徹するべきだ」と権限の廃止を主張しています。これに対し、全中の万歳章会長は「農協の特性を踏まえた中央会の監査を維持することは、自立した農協を支える点から是非とも必要だ」とし、全中独自の自己改革案を提示しています。全中は1954年、多くの農協が経営危機に陥ったのを受けて東京・大手町を本部に発足、約200人の組織ながら、職員数21万人、組合員数461万人の農協グループのトップに君臨。全国の農協などから指導・監査、広報活動、農作物対策などを名目に14年度は「賦課金」77億円を集めました。

農協の創意工夫で6次産業化へ
 47都道府県単位の中央会や各地農協(JA)加盟の全農・経済連が集める分を合わせると年間3百数十億円にも達していると言われています。賦課金というより強制的な「上納金」に近いため、各地農協からは減額を求める声も起きています。この資金の1部は政治活動費に使われていますが、指導・監査権がなくなると賦課金を集める根拠がなくなりかねず、全中は猛反対です。農協改革が争点とされた先の佐賀県知事選では、地元農協が立てた候補と政権側が支援した候補が全面衝突、農協擁立候補が勝利する“佐賀の乱”が生じました。農協の政治力は侮れず、自民PT内で公然と反対論、慎重論が噴き上がりました。しかし、高齢化による後継者難、国際競争力の不足など課題山積のわが国農業を強化するには、福井の「JA越前たけふ」が卸業者などへのコメの直接販売を徹底、資材の自己調達を進めて黒字経営を維持しているように、個々の農協が創意工夫を発揮し、休耕田の活用、大規模農地への集約化、質の高い農産物輸出など農業の6次産業化は不可避です。政府与党と農協(JA)が徹底的に話し合い、納得のいく解決策を早急にまとめなければなりません。

民主党は宏池会見習い中道路線
 「『保守中道』と言うか、『中道リベラル』と言うか、かつての『宏池会』が持っていた考え方を包合する形で民主党は存在する」――岡田克也氏は民主党代表選の最中にこう唱え、18日の当選直後の記者会見でも「自民党はずいぶん右にシフトしていて、ど真ん中が空いている。民主党はそこも含め、しっかりと対応できる政策が必要だ」と述べ、民主党が一度は封印した中道路線に復帰すると強調しました。宏池会はもちろん我が会派で、軽武装・経済重視を唱え、憲法改正にもどちらかといえば慎重だった池田勇人、大平正芳、宮沢喜一3元首相が率いたハト派集団。代表選は岡田氏、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚労相の3氏で争われ、1回目投票では細野氏が僅差で1位でしたが、決選投票で2、3位連合の岡田氏が逆転勝利しました。維新の党との野党再編を目指す細野氏と違って、岡田氏は自主再建派。腹心の枝野幸男幹事長を続投させ、保守派の支持を受けた細野氏を政調会長に、長妻氏と蓮舫参院議員を代表代行に、高木義明元文科相を国対委員長に起用。安倍政権下での憲法改正には否定的見解を示すなど、政策の対立軸構築に向かっています。

長崎教会群、世界文化遺産推薦
 政府は1月16日の閣議で長崎、熊本両県の14資産で構成する「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に推薦することを了承、2016年の登録を目指し推薦書をユネスコに提出しました。下村博文・文科相は閣議後の記者会見で「長崎の教会群は世界にほとんど知られておらず、(登録で)キリスト教圏の方々が訪れるとの地元の期待感が大きい。実現できるようしっかり支援したい」と述べました。中村法道県知事、黒田成彦平戸市長、西浩三小値賀町長ら長崎県5市2町代表の訪問団は20日、バチカンのローマ法王庁を訪問、フランシスコ法王の年内来県と遺産登録への支援を求めました。「教会群」は16世紀のキリスト教の繁栄やその後の弾圧を示す城跡、禁教下で信仰を守った集落、19世紀の宣教再開後の教会という3分野の13資産で構成。島原の乱(1637年〜38年)で信者が立てこもった「原城跡」(長崎県南島原市)、禁教を潜り抜けた信者が1865年に外国人神父に信仰を明かしたことで知られる「大浦天主堂」(長崎市)が含まれます。文化審議会は1昨年も「教会群」を2015年の推薦候補に選びましたが、内閣官房に新設の有識者会議が挙げた「明治日本の産業革命遺産」(福岡・佐賀など8県)と競合し首相の出身地山口県も含む「産業革命遺産」が15年の候補に決まっています。

2年にわたり積極的に取り組む
  この「産業革命遺産」にも長崎市の『軍艦島』と呼ばれる「端島炭鉱跡」や「長崎造船所」が構成資産にされており、私は2年にわたり両遺産のユネスコ指定を実現しようと積極的に取り組んできました。 日本の世界文化遺産は1昨年の富士山や、昨年6月に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)で14件。自然遺産を含め18件に上り、2千万外人客誘致の「観光立国」と「街興し」の貴重な資産になっています。 私は昨年8月17〜24日まで衆院の消費者問題等調査議員団に参加し、イタリア各地を訪問。 ローマではイタリア消費者団体と懇談、フィレンツェでは革製品工房と日本企業・クイーポ社を視察、ミラノでは会場の日本館建設会場を視察。 バチカンではフランシスコ・ローマ法王に謁見し中村長崎県知事、田上富久長崎市長から預かった「長崎の教会群遺産」の協力要請書を手渡す考えでしたが、法王が韓国を訪問して不在だったため出発前に協力要請書をバチカン駐日大使に手渡しました。 それが「教会群遺産の推薦」に役立ったと大変喜んでいます。