第340回(1月16日)経済最優先表明 予算年度内成立に全力
 首相が「改革断行国会」と位置づける通常国会は26日に召集されます。年頭の記者会見で首相は「アベノミスクは成長途上。経済対策を早期に実行に移し、実りある改革へと成長させる」と経済最優先で取り組む決意を表明しました。首相は@景気回復を全国津々浦々に波及A地方活性化策実現で4月の統一地方選勝利B9月の自民党総裁選で無投票再選――と3段構えの長期政権戦略を描いています。今年は戦後70年、自民党結党60年、日韓正常化50年の大きな節目の年。集団的自衛権行使を限定容認する安全保障法制の整備に加え、夏の終戦記念日に発表する安倍談話は「未来志向」の内容とし、第1次政権の「戦後レジューム(体制)からの脱却」に繋げ、党是である改憲の足場も固める方針です。 アベノミクスは確かにデフレ脱却のムードを高めました。  しかし昨年4月の消費増税後は個人消費が冷え込み、昨春闘で2%台に載せた賃上げも物価上昇に追いつかず、円安による原材料高で中小企業は苦境に立ち、大企業と中小企業、都市と地方の格差は増大しています。 今年度のGDP成長率見通しは前年度より 0・5%減です。民間活力を引き出す成長戦略「第3の矢」の諸政策を早急に実現しないと安倍政権は失速します。 政府与党は15年度予算の年度内成立に燃えています。一層のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

地方創生、岩盤規制打破の決意
 「未(ひつじ)には、木に枝葉が茂り、果実にようやく実がついてきたという意味がある。全国津々浦々、1人でも多くの皆さんにアベノミクスの果実を味わっていただきたい」――首相は5日、伊勢神宮参拝後の記者会見で、経済再生に最優先で取り組み、地方に経済の好循環を波及させると訴えました、総選挙でアベノミクス継続の信を得た首相は、会見でも衆院選の公約に掲げた、@震災復興A教育再生B社会保障改革C外交・安全保障D地方創生E女性が輝く社会――などを列挙し、農業、医療など業界団体が死守してきた「岩盤規制」打破の決意を表明、地方活性化策を順々と説明しました。アベノミクスは、異次元・大胆な金融緩和と機動的な財政出動の「2本の矢」で円安・株高を招き、企業業績が回復しました。 しかし、好況に潤って賃上げに応じたのは自動車・電機など輸出関連の大企業だけで、全国7割を占める下請け・中小企業は円安による輸入原材料高で圧迫され、庶民生活も消費増税と円安に伴う物価高で実質賃金は低下、消費は停滞しています。

レーガン手本のトリクルダウン
 アベノミクスはレーガン元米大統領の経済政策「レーガノミクス」がお手本。「トリクルダウン」と呼ばれ、税制優遇策によって高収益を上げた企業から、利益が徐々に下請け・中小企業、 さらには地方へ“滴り落ちる”さまを指します。経済政策を有効に浸透させるには短兵急な改革が必要。 先号で詳報したように、政府は昨年12月27日、個人消費の刺激に主眼を置いた総額約3・52兆円の経済対策を決定。その裏づけとなる2014年度補正予算案を1月9日に閣議決定しました。 補正予算は14年度当初予算から災害復旧を除いた公共事業費を4千億円に抑え、3・12兆円に圧縮しました。26日召集の通常国会に提出し、2月中旬の成立を目指します。経済対策は地方自治体の施策を国が支援する総額4200億円規模の交付金創設が柱で、「地域消費喚起型」と「地方創生型」の2種類からなっています。4月の消費増税や円安に伴う物価上昇などで、消費の不振が続いているため、消費換起型は、プレミアム付き商品券やふるさと名物商品・旅行券などの地元の発行、低所得者層への燃料費補助、子育て支援などに取り組む自治体を助成します。地方創生型の交付金は、地域の中堅企業・中小企業が大都市の優秀な人材を受け入れる「お試し就業」費用の半額を助成、地域経済の中核的企業に対し試作品開発や内外の販路開拓支援、宿泊・観光施設での多言語表示、バリアフリー化の支援などを行います。これは12月26日の「まち・ひと・しごと創生本部」有識者会議で了承を得た、人口減対策や東京一極集中の是正を掲げた「長期ビジョン」と2020年までの地方創生の「総合戦略」に基づくものです。

交付金創設等で30万人雇用創出
 「地方が個性を活かし、自らの情熱で新たな地平を切り開く第一歩を踏み出すことが出来た」――首相は同会議で満足げに述べ、政府が地方の取り組みを積極的に後押しする考えを強調しました。15年度から5ヵ年の総合戦略では、自治体が自由に使える交付金創設のほか、本社や研究開発拠点を地方に移した企業の法人税を減免する制度や国の研究機関の移転、インターネットなどを活用して自宅で働く「テレワーク」を進めるなどで地方に若者30万人分の雇用を創出。それを受け皿に東京圏から地方へ4万人転出させる一方、地方からの転入を6万人減らし、転出入を均衡させるというもの。首相が言う「アベノミクス」の恩恵を全国津々浦々にまで届けるという、安倍政権の看板政策である地方活性化の具体策を並べています。これらの施策が効果を上げれば、50 年代に実質国内総生産(GDP)で 1・5〜2% の成長率が維持出来ると見ています。長期ビジョンは、1昨年時点で1・43の出生率が「若い世代の結婚・子育ての希望が実現すると1・8程度に向上する」と分析。男性の育児休業の取得率を2%から13%に高め、新規学卒者の県内就職率を72%から80%に上げる目標を掲げ、出生率が30年に1・8、40年に人口維持に必要な2・07に回復すれば「60年に総人口1億人確保」との長期目標が実現できると推計しました。

統一地方選占った佐賀県知事選
 安倍政権が地方創生に力を注ぐのは、4月12,26日に4年に1度の統一地方選が行われ、北海道、神奈川など10道県の知事選、41道府県議選などが予定されているため、成長戦略を強化し、景気好循環の恩恵を地方や中小企業に広げる必要があるからです。統一地方選を占うものに、安倍政権と農協(JA全中)が激突した11日の佐賀知事選がありました。政権側が農業などの岩盤規制改革に同調する樋渡啓祐・前同県武雄市長を擁立したのに対し、地元農協は総務官僚出身の山口祥義・前総務省過疎対策室長(元長崎県総務部長)を担ぎ,保守分裂の戦いとなりました。結果は過去最低の投票率で、政権支援の樋渡氏が敗北して思わぬ“佐賀の乱”。政府は樋渡氏が武雄市長時代に地元医師会の反発を押し切って市民病院を民間委譲した実績を誇っていただけに、成長戦略の柱である「岩盤規制改革」での手腕発揮に期待をかけました。だが滋賀・沖縄両知事選に続き連敗、農協法改正を巡る国会の攻防や、10知事選など統一地方選へ冷や水を浴びせるものと懸念してます。

景気回復と財政再建の2兎追う
  菅義偉官房長官は御用始めの5日、内閣府で「景気回復と財政再建の2兎を追う」と訓示しました。17年4月に先送りした消費税率10%への引き上げは「再延長しない」と退路を断ち、1000兆円超の借金を抱える危機的な国の財政は「20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する」と健全化を公約に掲げています。2兎を確保するのは容易ではありません。政府は14日、過去最大となる総額96・3兆円の15年度当初予算を閣議決定しました。政策予算は約72・9兆円で、うち31兆円超を年金・医療など社会保障費、約5兆円を垂直離着陸のオスプレイや水陸両用車、新型戦闘機F35の購入など沿岸監視、離島防衛強化の防衛費に充てています。地方税収増で地方交付税は7年ぶりに15兆円台に抑えました。予算総額のうち税収は54・5兆円程度を見込み、税収や税外収入で賄うのは60兆円程度で、新たな借金として発行する国債は36・9兆円(国債依存度38%)と6年ぶりに40%を下回りました。過去に発効した国債の借り換え(借換債)も120兆円を下回り、15年度の基礎的財政収支は13・4兆円程度の赤字額になります。緊急経済対策の補正予算は2月中に、15年度本予算も3月末の年度内に成立させる構えです。

安保一括法案の攻防が最大焦点
 通常国会では、昨年7月に閣議決定した集団的自衛権行使を限定容認する一括法案を巡る攻防が最大の焦点になります。民主党は18日投開票の代表選に岡田克也元代表ら3氏が立候補。3氏とも「党の再生」を訴えていますが、党の「多様性」を強調するばかりでまとまった政策推進の姿勢がなく、国会で野党第1党の結束が示せるかどうか。国民は同党の今後の対応を注視しています。政府は統一地方選に与える影響を重視し、安保一括法案の国会提出と日米防衛協力の指針(ガイドライン)の公表は、統一選後まで見合わすよう慎重に構えています。首相は国会召集前の16〜21日間、財界代表を引き連れエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナの中東4カ国を訪問します。 しかし連続テロ事件が起きたフランスのパリで11日、テロに抗議してオランド仏大統領ら欧州首脳が勢揃いの100万人行進、仏全土で370万人が行進に参加するなど国際情勢は緊迫化。中東に広がる過激主義とテロなどの戦火に加え、露・中両国の覇権主義に自由主義陣営が反発し、ロシアによるウクライナのクリミア編入に対しては、欧米が制裁措置で応酬するなど、米欧・露中の関係が新たな東西冷戦の様相を深めています。