第335回(11月1日)「W辞任」の信頼回復に一丸 野党は共闘
 臨時国会は早くも会期末の11月30日まで、残り1ヶ月の折り返し点に達しました。重要法案は首相が成長戦略の柱に掲げる「地方創生基本法案」と「女性活躍推進法案」。対決法案は「労働者派遣法改正案」くらいで、安倍改造内閣は順風万帆の航海と見られていました。ところが、「女性が輝く社会」の象徴とされた小渕優子経済産業相が「政治とカネ」問題、松島みどり法相が「うちわ配布」問題で「ダブル辞任」。首相は「辞任ドミノ」を懸念し直ちに後任閣僚を起用して政権の危機を回避しました。だが野党は首相の任命責任を厳しく追及し続け、各紙の内閣支持率も大幅に低下しました。加えてアベノミクスを好感し、米国の景気回復を期待して1万5千円台に回復した日経株価も欧州の経済不安が影響して乱高下の繰り返し。国内消費は消費増税の駆け込み需要の反動減と夏場の天候不順も手伝って回復の足取りが鈍く、首相は来年10月に2%アップの消費再増税が決断出来るかどうか、厳しい局面です。政府は4月の消費増税に当たり昨年8月、有識者の意見を聞く集中点検会合を開きましたが、今回も首相決断を前に、4〜18日まで2回目の点検会合を開きます。近隣外交も厳しい試練を受けています。政治の潮目が変わらないよう政府・与党は一丸となって信頼回復に努めています。さらなるご指導、ご教唆をお願い申し上げます。

辞任ドミノ避け電光石火の人事
 「任命責任は首相の私にある。国民に深くお詫び申し上げる。経済最優先で政策を前に進めていかねばならない。行政、政治に遅滞があってはならないという観点から後任を急いで決定した」――首相は10月20日、小渕経産相と松島法相が提出した辞表を受理した直後の記者会見で国民に謝罪し、後任の経産相に自民党の宮沢洋一政調会長代理、法相に上川陽子元消費化相を電光石火で起用しました。第1次安倍内閣は佐田玄一郎行革相、松岡利勝農相、久間章生防衛相、赤城徳彦農相、遠藤武彦農相の5閣僚が「政治とカネ」などのスキャンダルで相次ぎ辞任、首相自らも体調を壊し退陣に追い込まれた苦い経験があり、それだけ首相には「辞任ドミノ」だけは避けたい気持ちが強くあります。第2次安倍内閣では入念な「身体検査」(身辺調査)をした結果、9月3日の内閣改造まで617日間に亘り全閣僚が交代せず、安定した政権運営を続けてきました。それが、改造人事では「将来の首相候補」とされる小渕氏をはじめ、“5人官女”全員が野党の狙い撃ちに遭いました。

公選法、政治資金規正法で告発
 先ず、松島法相がうちわ配布問題で「いろんな雑音でご迷惑をかけた」と記者会見で発言したことを野党が非難し、参院法務委が3時間遅れて開会、法相が陳謝して正常化しました。山谷えり子国家公安委員長は、在日韓国人に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)で問題となった「在日特権を許さない市民の会」メンバーとの写真を撮ったことで追及を受けました。中でも野党の最大標的にされたのが小渕経産相。小渕氏の2関連政治団体が支援者向けに開いた10,11年の「観劇会」の収支で、参加者から集めた収入(会費)742万円と明治座に支払った3384万円の間に2642万円の差額が判明。そのほか下仁田ネギ・ベビー用品・化粧品など公私混同が疑われる物品購入が指摘され、有権者に金品を「寄付」した場合の公職選挙法や政治資金規正法の虚偽記入に抵触するとして市民オンブズマン群馬は東京地検に告発しました。民主党も松島氏を公選法違反で東京地検に告発しました。江渡聡徳防衛相もとばっちりを受け、政治資金問題に関する資料提示が不十分だとして10月14日、私が委員長を務める衆院安全保障委員会で野党が退席して審議は空転しました。

野党は政倫審や予算委で徹底追及へ
 松島氏が「討議資料を印刷した」と主張する「うちわ配布」も、「有権者への寄付にあたる」として刑事告発されたもので、検察への指揮権を持つ法相の立場を踏まえれば、松島氏の辞任は不可避。松島氏は「法に触れることをしたとは考えないが、国政を停滞してはならないとの思いで辞職を決意した」と無念の退任表明。民主党は両氏を衆院政治倫理審査会で追及、衆参両院の予算委員会でも首相の任命責任を糺す集中審議を行うよう他野党に呼びかけ、野党共闘を強めています。小渕、松島両氏が国会審議に悪影響を与えないために辞任したにも拘らず、野党は21日、衆院本会議の開会を遅らせ審議を拒否するなど一転、攻勢に転じました。 対決法案の労働者派遣法改正案を巡る民主、維新両党の協議は両党が修正案を提出する方向で“民維共闘”が進展、カネに関わるカジノ解禁法案(議員提出)は成立に暗雲が垂れ込めています。労働者派遣法は通訳や秘書など26の専門業務を除き派遣社員の派遣期間を最長3年と定めているのに対し、改正案は業務の枠をなくし全ての業務に条件付で派遣期間の延長を可能としています。 これに民主党は「正社員を減らし、 派遣社員を増やす」と批判し反対。共産、生活、社民3党が同調し、審議が遅れています。

改正労働者派遣法、カジノ法難航
 カジノなど統合型リゾート(IR)を推進するカジノ解禁法案は、公明、民主両党が慎重なため、1時は解禁対象を外国人に限定することにしましたが、日本人の利用に依存症対策などを盛り込む資格要件の規定を入れて、法案を修正する方針を打ち出したため、審議が難航すると見られます。政府は看板政策の「女性が輝く社会」を実現する「女性活躍推進法案」を提出、成立を目指しています。法案は従業員300人超の大企業や国、地方自治体に対し、職場での女性の処遇実態を分析した上で、改善に向けた数値目標を含む「事業主行動計画」の作成と公表も義務付けています。数値目標は採用者や管理職に占める女性の比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況などを勘案し、自主的に定める内容。国は必要に応じ助言や指導、勧告が出来、優良企業を認定する制度も設けます。ただしその一方では、それぞれの企業で女性職員が置かれた状況や課題が異なるため、経営陣に配慮し、一律の数値目標は設けず、従わない場合の罰則規定もないし、300人以下の企業は「努力義務」に留めています。法律は2016年度からの実施予定ですが、女性の登用を集中的に進めるため10年間の時限立法としています。このため、財界も同法の成立を歓迎しています。

女性活躍、地方創生法案も影響か
 政府は10月17日、国家公務員の幹部(指定職)に占める女性の割合が、9月1日現在で過去最高の2・8%に上昇したと発表。昨年10月1日現在は2・2%でしたから、率先して女性登用を推進しています。15年度の国家公務員の採用内定者数によると、「キャリア」と呼ぶ総合職667人のうち231人が女性で全体に占める女性の割合は34・6%と過去最高。首相は指導的地位に占める女性の割合を20年までに30%に引き上げる目標を立て、9月下旬に再開した政労使協議で労使双方の首脳に要請しました。もう1つの看板政策である地方創生関連法案は10月14日から衆院で審議入りしました。歴代の自民党内閣は、竹下内閣の、全国市町村に1億円の交付金を配布する「ふるさと創生事業」、小渕内閣の、15歳以下の子供、65歳以上の高齢者がいる家庭に2万円分の「地域振興券」交付、第1次安倍内閣の、地域活性化に意欲的な自治体に地方交付税の1部を重点配分する「頑張る地方応援プログラム」など様々の政策を実施してきましたが、今回は国主導のバラマキ政策ではなく地方の自主性を生かすプランを策定することにしています。石破茂地方創生相は22日、省庁が横断(横串)的取り組みで地方創生を加速させるため、統一的指針として@地方・企業・個人の自立に資する施策A地方主体の夢のある施策B客観的なデータで各地域の実情を踏まえた施策――など5原則を発表しました。

宏池会4閣僚で安倍政権支える
 女性活躍、地方創生両法案も「ダブル辞任」で審議が遅れ、成立に影響が出てきました。首相は10,11日に北京で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席しますが、プーチン露大統領と首脳会談をする日程は組まれたものの、中国は歴史認識、韓国は従軍慰安婦問題などで反発、両国との首脳会談の開催見通しは不透明です。そうした最中、山谷国家公安委員長、高市早苗総務相、有村治子女性活躍相の3閣僚が秋季例大祭中の10月18日、靖国神社を参拝しました。「国のために散った英霊を尊崇する」首相の意向を忖度しての行動と見られますが、歴史認識問題で膠着している日中首脳会談を思えば、さらに会談を遠ざける行為であるとして、与野党の中から3閣僚の「配慮のなさ」を批判する声が上がっています。どうやら首相が「女性活躍」を期待した女性閣僚の“5人官女人事”は、とんだ“女難人事”に終わり、ただ単に、野党攻勢に火をつける結果になったようです。2閣僚後任の上川法相、宮沢経産相は我が岸田派「宏池会」のベテラン議員です。宏池会4閣僚で安倍政権を強力に支え、信頼回復に努めてくれることを念願しています。しかし、野党は更迭人事後も政治資金問題を厳しく追及して気勢を上げており、自民党内では「野党の選挙態勢が整う前に消費税で信を問うべきだ」との早期解散論が高まっています。