第334回(10月15日)経済の好循環を推進 野党は対決色強化
 首相が「地方創生国会」と位置づけた臨時国会は9月29日の召集日に、首相の所信表明演説、30日〜10月2日まで衆参両院本会議での各党代表質問、3〜8日まで衆参両院予算委で活発な与野党論戦が展開されました。「若者に魅力ある街づくり」「女性が輝く社会」を唱え、経済の好循環を推進する首相に対し、民主党の海江田万里代表は「(アベノミクスの)副作用が進行し経済対策に不満が高まった」と批判、維新の党の江田憲司共同代表も「さらなる消費増税が出来る状況にない」と指摘するなど野党は対決色を強めています。首相は16,17両日にイタリアで開くアジア欧州会議(ASEM)に出席。11月も10,11日に北京で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、12,13日にミャンマーで開く東アジア首脳会議(EAS)、15,16日に豪州で開く主要20カ国・地域首脳会議(G20 サミット)と切れ目ない外遊日程が目白押しです。だが拉致問題の日朝協議は難航中だし、北京で日本と中・韓・露の首脳会談が開かれるかどうか。目下最大の懸案です。変わらぬご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

女性の活躍で社会の閉塞感打破
 「人口減や超高齢化など地方が直面する構造的課題は深刻。将来に夢や希望を抱きチャレンジする若者こそが危機に歯止めをかける鍵だ。女性の活躍は社会の閉塞感を打破する原動力となる」――首相は所信表明演説で、「地方創生」と「女性が活躍する社会」の意義を強調。さらに「成長戦略を確実に実行し経済再生と財政再建を両立させ『経済の好循環』の実感を全国津々浦々まで届けることが安倍内閣の大きな使命」と胸を張りました。具体的には@伝統あるふるさとを守り若者に魅力ある街・人・仕事づくり推進A農地の集積・多角化など農業の6次産業化Bビザの緩和、免税店の拡大など戦略的な観光立国C上場企業での女性役員数の情報公開義務付けD農業・雇用・医療・エネルギーなどの岩盤規制を打ち抜くための国家戦略特区など特区制度を毎国会で拡充――など「豊かな個性を活かす地方」と「女性が輝く社会」を創る施策を挙げています。また「地球儀俯瞰外交」の成果を自讃し.日中韓首脳会談の早期実現と対露平和条約締結、対北朝鮮拉致問題解決の両交渉を粘り強く継続するなど、東アジアの近隣外交を重視する姿勢を訴えました。しかし集団的自衛権の限定容認や憲法改正などの具体的言及は避け、野党向けの安全運転を心掛けました。

物価上昇はアベノミクスの副作用・・・と 海江田 氏
 このように首相が「守りの姿勢」に徹したのに対し、野党は9月30日の代表質問で、来年10月の消費税率10%引き上げに矛先を絞って追及。民主党の海江田代表は「アベノミクスは企業の利益を最優先する考え方だ。格差の固定化、拡大を容認する政策は国民の暮らしを守る政府の責任を放棄するものだ」と述べ、急激な円安による物価上昇を「アベノミクスの副作用」と決め付けました。また、集団的自衛権について直接触れなかったことを批判し「国民に丁寧に説明すべきだ」と国会での議論を求め、派遣社員の無期限派遣を条件付きで認める労働者派遣法改正案については「一生派遣で働けということか」と反対しました。「是々非々路線」を取ってきた日本維新の会は結いの党との合併後、革新色を強め、江田維新の党共同代表は「規制改革は断行すべきだが、規制で守られた既得権益から組織票や献金を貰う安倍自民党に岩盤打破の改革が出来るのか。4月増税後の経済指標では更なる消費増税を行える経済体力にない。地方創生は公共事業のバラマキに終わるのではないか」と対決色を深め、浅尾慶一郎みんなの党代表も10%消費増税の凍結を主張しました。

民主・維新は国会審議で対決共闘
 民主、維新の両党は代表質問後の2日、国会内で党首会談を開き、「1強他弱」体制の中での国会審議の野党共闘に向けて、@幹事長・国対委員長会談を定期的に開催A政調会長を窓口に基本政策を協議――で合意、野党第1党と第2党が連携して安倍内閣と対決することで一致、8日の初会合では国会での追及対象を副大臣、政務官にまで広げることを申し合わせました。党首会談は民主党が呼びかけたもので、海江田氏は「私たちの協力で安倍首相に圧力をかける」と述べ、江田氏も「民主と維新の両党がスクラムを組む姿を見せる」と共同記者会見で共闘をアピールしました。しかし、会談では海江田氏が、廃案を目指す労働者派遣法改正案に反対するよう協力を求めたのに対し、江田氏は即答を避け、今後の協議に委ねました。維新の党は同法案の賛成に傾いているからです。江田氏は結いの党を解体して日本維新の会(橋下徹代表)と合流、「維新の党」を旗揚げした後も民主党の一部を抱き込む野党再編に意欲を注いでいます。ところが海江田氏が「国会のことは江田氏と話をすればよい」と記者会見で述べたことに対し、橋下共同代表は「公党の代表と(松下一郎)幹事長をないがしろにする発言だ」と怒り、「民維共闘」は最初から難航気味です。

政策抜きでは離合集散の繰り返し
 自民党を離脱した小沢一郎氏らが担いだ細川護煕政権は短命に終わり、20年前に村山富市旧社会党首を首班に担ぐ自社連立政権が誕生。対抗して新生、公明、日本新、民社など野党9党の衆参214議員が横浜に集まって新進党(小沢代表)を結成しました。だが僅か3年で解党し四分五裂の状態。新進党の小沢グループは自由党を立ち上げ、小渕恵三政権下で公明党と自・自・公3党連立政権を組みましたが小沢氏はまたも離脱して民主党を結成。残った二階俊博氏(現自民党総務会長)ら自由党の大半が自民党に復帰した後は自公連立政権となって15年が経過しています。このように野党は政権奪取に向けて離合集散を繰り返してきましたが、政策抜きの共闘は野合に過ぎません。6日発表の読売世論調査の政党支持率は自民の45%に対し、民主4%、共産3%、維新2%、社民1%と野党合わせても10%台で、新進党発足時の20%にも届かぬ有様。“ねじれ国会”解消後の「1強他弱」体制は益々強まっています。2日の参院議運委理事会では本会議に赤いスカーフ姿で出席した松島みどり法相に対し「赤いマフラーの着用をアントニオ猪木氏(次世代の党)には認めていないのに、松島氏にはいいのか」と襟巻き着用禁止の参院規則を盾にクレームがつき、本会議が20分も遅れるというとんだハプニング。それでも、中断はなく代表質問は淡々と終了しました。

消費増税見送りは政策失敗の証明
 論戦の舞台は3〜8日の両院予算委に移り、民主党は前原誠司元代表、枝野幸男幹事長ら論客を立て、「アベノミクス」の評価と消費増税アップの判断、集団的自衛権の限定容認に論点を絞って追及しましたが、首相はデフレ脱却の成果を背景に堂々と持論を展開、議論は平行線をたどりました。前原氏はアベノミクスの誤算点として@円安になっても輸出は伸びていないA金融を緩和しても企業の内部留保に回っているB実質賃金は減少している――などと主張した上、「もし消費税を(10%に)上げなかったらアベノミクスがうまく行かなかったと(首相)自ら証明することになる」と挑発しました。首相はこれに対し「自民党が政権を取り返すまで(の民主党政権下で)円高基調が長い間続いたから、多くの企業が製造拠点を海外に移した」と反論。シーレーン(海上交通路)の機雷掃海についても「ホルムズ海峡はわが国の生命線。石油価格は高騰し、経済は壊滅的被害を受ける」と述べ、集団的自衛権行使の正当性を強調しました。

消費落ち経済に暗雲垂れ込める
 こうして国会論戦をひとまず乗り切った首相は、来年10月からの消費税率10%引き上げに向けて本格検討に入りました。外為市場は約6年1ヶ月ぶりに一時、1ドル110円台まで円安・ドル高が進み、株価も1万6千円台を回復しました。しかし、4月消費増税の駆け込み需要の反動減が収まらない上、原油や農産品など輸入品の高騰に加え、夏場の天候不順が重なって諸物価が上昇。消費が落ち込んで日本経済に暗雲が垂れ込めています。円安は、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国の景気回復を背景に早期に利上げするとの観測が強まり、超低金利の日本で運用するより、高金利が予想される米国で運用した方が得策だと考える投資家が増えたからです。日銀が1日に発表した全国企業短期経済観測調査(短観)を見ても、円安で輸出が伸びて潤ったのは自動車・電機などの大手製造業ぐらいで、原材料を輸入に頼る中小企業や非製造業の景況感は悪化、これが10月1日からの食料品などの物価上昇にリンクしています。財界はこの事態を「株価と景気変動のデカップリング(分離)現象」と呼び、株価が上昇しても景気が冴えない分離現象は避け難いと見ています。

第3の矢成長戦略の構築と執行を
 確かにアベノミクスの第1の矢「大胆な金融緩和」と第2の矢「機動的な財政出動」で物価上昇率は実質2%アップ、長期デフレを脱却し賃金は上昇、雇用も堅調となりました。だが、賃金アップは大企業に偏り、下請け・中小企業に恩恵が及んでおらず、「復興なくして再生なし」(首相)の東日本大震災の復興支援も建設労働者不足と資材費高騰で悪影響が出ています。首相の言う「経済の好循環の実感を全国津々浦々まで届ける」ことは容易ではありません。4〜6月期の実質GDP(国内総生産)の改定値は前期比年率7・1%減と悪化。半年経てば駆け込み需要の反動減も収まり景気回復の動きが強まるとの楽観的シナリオも、消費増税10%への判断材料となる7〜9月期のGDP成長率は、市場の予測でも前期比4・0%と低く見込んでおり、財界は急激な円安に懸念を表明しています。わずか1年半の間に5%の税率を倍増させることは消費税同様の付加価値税制度を採る欧州各国でも経験したことのない試みです。第3の矢「成長戦略」は万全な政策の構築と早急な執行が求められています。

 地方創生・女性活躍本部が始動
 首相の看板政策の「地方創生」と「女性活躍」はどうか。政府は人口減対策や地方活性化の基本理念を定める「まち・ひと・しごと創生法案」を今国会で成立させ、今後5年間に実施する「総合戦略」も年内にまとめる方針です。衆院は9日の本会議で「地方創生特別委員会」(委員長・鳩山邦夫元総務相)の設置を決めました。石破茂地方創生相は2日、増田寛也元総務相ら有識者との懇談会で、「知恵は現場にあり、霞が関、永田町にあるとは思えない。国の制度、仕組みを変えて行かねばならない」と強調。懇談会後に「まち・ひと・しごと創生本部」の基本政策検討チームが初会合を 開き地域活性化事業の検証を開始しました。一方、3日の閣議では首相を本部長とする「すべての女性が輝く社会づくり本部」の設置を決定。7日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)では、今国会に提出する女性活躍推進法案(仮称)の概要を説明。この中には@従業員が300人超の企業に対し管理職に占める女性の比率、勤続年数の男女差など数値目標を含む行動計画の作成を義務付けA優れた取り組みをする企業の認定制度の創設B従業員300人以下の中小企業には努力義務を求める――などが盛られました。 同審議会は9月、 行動計画の作成義務付けには慎重な意見 を報告しましたが「20年に指導的地位に占める女性の割合30」を掲げる首相に押し切られた形です。