第332回(9月13日)主要6閣僚で体制堅持 再消費増税は苦境
 「実行実現内閣」を看板とする第2次安倍改造内閣が9月3日に船出しました。 麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官らキーパーソンの6閣僚が留任、 首相との確執が表面化した石破茂幹事長は地方創生担当相として閣内に取り込み、 女性閣僚も小泉内閣と同じく最多の5人を抜擢。党役員人事は、 谷垣禎一法相を総裁経験者としては初めて幹事長に、 派閥領袖を3役に起用するなど重厚な布陣となりました。 国民の評価は一挙に高まり、 各紙の内閣支持率は急上昇。景気回復への期待感から約8ヶ月ぶりに円安・株高が進みました。 支持率回復は経済再生、地方創生などの重要課題と取り組む首相に追い風となります。 しかし、 8%への消費増税の駆け込み需要の反動減で4〜6月期のGDPは前期比6・8%減と大幅に落ち込み、 来年10月に10%へ再引き上げの判断材料となる7〜9月期のGDPも台風・長雨被害による野菜の高騰などで消費の回復が遅れています。 デフレ脱却―賃金上昇―設備投資拡大など、景気好循環の道筋をどうつけるか。 29日に開幕する臨時国会では、野党攻勢が強まると見られます。 私はこの度の党人事で、安全保障法制を整備する衆院安全保障委員長を拝命しました。 多忙になりますが、一層のご支援をお願い申し上げます。

景気好循環の実行実現内閣強調
 「(アベノミクス)3本の矢で景気の好循環が生まれ始めた。 景気回復の実感を全国津々浦々にまで届けるのが内閣の使命。 心機一転、 大胆かつ力強く諸政策を実行するための内閣改造だ」――首相は改造後の記者会見で実行実現内閣として国民の負託に応える姿勢を強調。
 留任の高村正彦副総裁が「重厚なサプライズ人事」というほど、 首相は意表を突く人事で挙党一致態勢を構築しました。 幹事長に前総裁の谷垣法相、 総務会長に二階俊博衆院予算委員長という公明党と風通しの良い2人の派閥領袖、 政調会長に衆院当選3回の若手・稲田朋美行政改革相を、 選対委員長に茂木敏充経済産業相を起用しました。 原発の再稼動が問われる10月の福島、普天間基地の辺野古移設で揺れ続ける11月の沖縄の両知事選と来春の統一地方選、 衆院議員の任期も年末で折り返し点を迎えます。 党人事は衆院解散も視野に各種の選挙対策を睨んだ重厚なシフトです。 改造内閣では脱デフレを定着させ、 景気の好循環を確保し、 切れ目ない安保法制を整備するため、 麻生、菅氏のほか、 中韓両国との関係改善や北朝鮮の拉致被害者再調査など山積する外交課題を処理する岸田文雄外相、 成長戦略の成否を左右する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉がヤマ場を迎えた甘利明経済再生兼TPP担当相、 6年後の東京五輪担当の下村博文文部科学相が続投、 与党公明党の太田昭宏国土交通相も留任し、 主要6閣僚による安倍政権の骨格を堅持しました。

隗より始めよ、で女性5閣僚抜擢
 注目されるのは改造後の記念撮影で、首相が5人の女性閣僚に囲まれ、相好を崩したことです。第一次小泉内閣でも民間人を含め5人の女性が起用されましたが、 首相は「女性が輝く社会の実現」を唱え、 「20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」と公約してきただけに、 「先ず隗より始めよ」で、 改造では高市早苗党政調会長を総務相に、 小渕優子元少子化相を原発再稼動と取り組む経済産業相に充て、 新人の有村治子氏を新設の女性活躍相兼行革相に抜擢するなど、 女性5閣僚全員を議員から起用しました。 第1次内閣で官房長官に起用され“お友達内閣“と評された塩崎恭久氏も厚生労働相で久々に登板、 早速、 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する120兆円について、 「リスクを抑え安全で効率よい運用のため、 きちっとしたガバナンス(管理の仕組み)を作る」と述べ、 外国債券などへ分散投資の運用改革を唱えたため、 期待感から円相場は約8ヶ月ぶりに106円台の円安、 株価も約7ヵ月半ぶりに1万5800円台を回復しました。 内閣支持率は朝日、 毎日が47%と低迷していますが、 読売は前回調査より13ポイント高い64%に押し上げ、 日経60%、 共同も54・9%などテレビ局を含め軒並み上昇しました。

中国もハト派谷垣・二階氏に好感
 経団連の榊原定征会長は「デフレ脱却から新たな成長という経済再生の第2章に向け、 政策実現を期待できる内閣だ」と述べ、 自民党への政治献金の関与(自主的献金呼び掛け)再開を決めるなど財界3団体も歓迎ムード。 各国も挙党態勢の改造を評価しましたが、 中国外務省の報道局長は、 中国と太いパイプを持つ二階総務会長や、 就任前の習近平国家主席と会談したこともある「リベラル・ハト派」で外交的に穏健な立場の谷垣幹事長が起用されたことについて「2人が安倍政権の対中政策に前向きな影響を及ぼし日中関係の推進者になることを希望する」と期待感を表明しました。 習近平氏は8月、 訪中した福田康夫元首相とひそかに会談、 安倍首相批判とは裏腹に日中関係の改善を模索している様子。 首相は6〜8日、 財界首脳の経済ミッションを引き連れてインド洋2カ国を歴訪。 バングラデシュのハシナ首相との会談では、日本が5年以内に最大5000億円の政府援助(ODA)を行う見返りに来年10月の国連安保理事会の非常任理事国選で、日本への立候補国一本化で合意。 スリランカの大統領とは巡視船を供与し海洋安全保障の連携強化を確認するなど成果を挙げました。 首相の「地球儀俯瞰外交」は小泉元首相を1国抜いて、歴代首相最多の49カ国。 中国を訪問すれば50カ国に達します。11月に北京で開催されるAPEC(東南アジア諸国連合)では懸案の日中または日中韓首脳会談を実現し、 閉塞状態を打開してほしいものです。

石破氏は存在感アピールに懸命
 首相要請の安保担当相を固辞し、地方統一選まで幹事長を続投する意欲をTBSラジオで表明して、首相との対立が表面化した石破氏は、地方創生担当相を受託したことで、マスコミから「無役にならず、閣内に封じ込まれたことで求心力が失われた。もはや総裁選のライバルは谷垣幹事長や岸田外相に移った」などと揶揄され、弁明に大童。就任後のテレビ番組では「公共の電波で言うべきことではなかった。いかなる理由でも良くなかった」と反省しきり。「若者が夢や希望が持てる街づくりを進める。人口減問題は構造的課題で先送りが許されない」「コストを下げ、付加価値を高める創意工夫と英知結集が肝要」と存在感を懸命にアピール。臨時国会に提出する地方創生基本法案の準備や概算要求の仕分け作業に意欲的に取り組んでいます。8月末に出揃った2015年度予算の各省概算要求は一般会計で総額101兆7000億円に達し、初めて100兆円を突破しました。政府は急激な人口減に歯止めをかけるため、50年後に人口1億人を維持する目標を掲げており、各省庁の要求では「女性や若者の起業支援」「高齢者や子育て世代が暮らしやすいコンパクトシティーの推進」「地域起こし協力隊の活動強化」など女性の活用、街づくり、防災、医療、雇用など多岐にわたり子育て支援や地方の産業育成、山村振興など地方創生関連事業が並びました。

縦割り・バラマキ要求は厳重精査
 これは有識者で作る「日本創成会議」(座長=増田寛也元総務相・岩手県知事)が5月、「40年には子供を産む世代の女性(20〜39歳)が半分に減り、全国市区町村の半数に当たる896自治体が消滅し、東京もブラックホール化する」と警告したのを受けたもの。政府は5日に発足した「まち・ひと・しごと創生本部」の方針を踏まえ、年末に向け本格的な予算編成作業に入ります。しかし、各省庁の概算要求は看板を掛け替えただけの縦割り行政が目立っており、麻生副総理・財務相は「『これが地方創生だ』という定義がはっきりしないように見える」と述べ、バラマキ予算要求には厳しく精査する考えを強調しました。石破地方創生担当相も「省益重視の縦割り行政でなく、国益を守る“横串”の行政でローカル経済を立て直す」と概算要求を総点検する構えです。危機感を強めた33都道府県93市町村は10月、「人口減少に立ち向かう自治体連合」を立ち上げ、@子育て支援A雇用基盤再生B教育・環境など生活基盤整備――など「地方版総合戦略」を策定する考えです。

安保・TPP・再増税で国会激論
 内閣府が8日に発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)の改定値は、個人消費や企業投資が低迷したことで、8月速報値の6・8%減からさらに0・3ポイント落ち込み、年率換算7・1%減に下方修正しました。首相は11月に発表する7〜9月期のGDP速票値を踏まえ、消費税率を来年10月から10%に引き上げるかどうかを決断しますが、消費増税に参画した本田悦朗内閣官房参与が半年から1年半の実施延期を提唱するなど苦しい立場。29日開幕の臨時国会は集団的自衛権の限定容認など安保法制、年末に決定の日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定とTPP交渉、再消費増税の可否などを巡り激しい論戦が予想されます。 
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